■All seasons■
雨音響希 |
【5566】【菊坂・静】【高校生、「気狂い屋」】 |
All seasons
夢と現実、現実と夢、そして現実と現実が交錯する館、夢幻館。
「おや・・?どうしたのですか?本日はなにも予定はありませんが・・・。」
穏やかな微笑をたたえながら、青の瞳を細める男性が1人。
どう見ても高校生にしか見えない彼の名前は沖坂 奏都(おきさか かなと)。
この夢幻館の総支配人だ。
「そうですねぇ。たまにはゆっくりとしていかれてはどうです?何時もは・・色々と騒がしいでしょう?」
眉根を僅かにひそめ、苦笑交じりでそう呟く。
「けれど・・騒がしいのもまた一興。貴方のお望みのままに。」
奏都はそう言うと、大きな両開きの扉を押し開けた。
金具の軋む音が耳障りなまでに甲高い音を立てる。
「何処かへ行きたいのでしたら、それもまた一興。全ての扉は全ての場所へと繋がっているものですから。そう、それこそ、夢へも現実へも、過去へも未来へも・・。」
クスリと、小さく微笑む奏都は恐ろしいまでに艶やかな妖艶さを放っていた。
女性めいた艶かしさは、恐怖と紙一重だ。
「過去へも未来へも・・は、少々大げさすぎましたね・・。さぁ、どうぞ。夢幻館へようこそ。」
促されるままに中に入る。
今度は音もなく、扉が閉まった。
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All seasons 【 甘い疑い 】
□約束を果たしに□
菊坂 静は大きな袋を片手に夢幻館の前に立ち尽くしていた。
前回、紅咲 閏の悪戯によって、神崎 魅琴と恋人同士になってしまった静は、一連の流れの中で他の住民(特に梶原 冬弥と片桐 もな)に迷惑をかけてしまい、更にもなにいたっては泣かせてしまうと言う事態に発展してしまった。
勿論その全ての元凶は閏であり、静には非がないどころか被害者だったが・・・。
謝る静にもなが泣きながら許さないと言い、それではどうしたら許してくれるのかと質問したところ、もなは3つばかり我が儘を言ったのだった。
まず1つ目は次回来る時になにか甘いものを持ってくる事。
静は先ほど美味しいと評判のお店でクッキーを1缶購入した。
料理は出来てもお菓子は作った事がないために、その味を保証する事は出来ない。そのため、どうせなら美味しいものを食べて欲しいからと思い、クッキーを買ったのだが・・・。
静は夢幻館の両開きの扉を見上げると、押し開けようとして・・・手を引っ込めた。
心の中で、何度も彼女の名前を呟く。
“片桐さん”ではなく“もなさん”だと。
うっかり気を抜いてしまえば“片桐さん”と呼びかけそうになってしまう―――
そう、これがもなの我が儘の2つ目だった。
あともう1つあるのだが・・・恐らくそれは静から行動を起こさなくても大丈夫だろう。
一呼吸置いた後に、そっと扉を押し開けた。
キィっと、か細い声を上げて扉が開き・・・中から何かがこちらに向かって走って来た。
前回来た時と同じ・・・だから、静はさして驚いた風もなく少女を受け止めた。
小さな身長に、華奢な肩。
可愛らしいリボンで結んだツインテールをブンとスイングさせて、満面の笑みで静を見上げる。
「静ちゃん、また来てくれたのぉ〜!?」
ギュっと静の腰に抱きついてくるもなの頭を優しく撫ぜると、ふわりと柔らかく微笑んだ。
「そう。久しぶりだね、もなさん。」
そう言った瞬間、もなの顔がパァァっと輝いた。
前回来た時も可愛らしい人だと思っていたが・・・この笑顔は、そこらのアイドルよりも数倍可愛らしかった。
「静ちゃん、あたしの事“もな”って呼んでくれてるのぉ??」
「約束だったからね?」
嬉しいっ!と言って、全身からピンク色のオーラを出す。
「あと、はい。クッキー。」
「え・・・?うそ!買って来てくれたの〜??」
「約束だったからね。」
「静ちゃん大好きっ!!それじゃぁ、一緒にお茶しよ〜?今日はねぇ、魅琴ちゃんと奏都ちゃんと冬弥ちゃんがいるのっ!」
そう言って、静の腕をグイグイ引っ張る。
玄関を抜け、ホールの扉を勢いよく開けると、もながすぅっと息を吸い込んだ。
「みんなぁぁっ!静ちゃんがねっ、クッキー持って来てくれたのぉっ!」
「静・・・?」
奥のソファーから冬弥が顔を覗かせ、その隣で寛いでいた魅琴も顔を出す。
奏都がパタパタと走って来て―――
「お久しぶりです。再びお越しくださって、嬉しいです。」
「これ、クッキーなんですけれども、もし宜しければ・・・」
「早速お茶にしよ〜?奏都ちゃん!紅茶出してっ!」
もながそう言って、テテテっと走る。
「もなさん!走るとまた転びますよ?・・・もなさんもああ言ってますし、お出ししてしまっても宜しいでしょうか?」
「えぇ、ゼヒ。」
「静ちゃん!こっちこっち〜!!」
もながブンブンと手を振る。
静がもなの隣に座り、その隣に冬弥が座った。そして、冬弥の隣には魅琴が座る。
「んで?クッキーっつー事は前回のもなの我が儘を叶えに?」
「えぇ。」
「んあ〜?このクソチビ、マイハニーに我が儘なんか言いやがったのか?」
魅琴の言葉に、もなが冷たい笑顔を向ける。
「まだそんな戯言抜かしやがってんの?寝言は寝て言え!」
・・・ちなみに今の発言はもなだ。
普段の高い、ちょっと甘めボイスは何処へやら、低い声は少年のようだった。
「もな・・・口が悪い・・・。」
「冬弥ちゃんとか魅琴ちゃんのが口悪いじゃんっ!」
「あんなぁ、俺らはそれが普通の口調だから仕方ねぇんだよ。お前の場合は怒るとその口調になるだろ?急に変わってビビんだよ!」
そう言った後で、静の顔を覗き込んだ。
驚いたか?と、口に出しては言わないものの、その瞳は語っていた。
別に気にしてないと、首を振る。もながどんな言葉を発しようと、可愛らしいものは可愛らしい。
それに、誰だって怒った時には口調が少々悪くなるものだ。
「そー言えば、我が儘3つくらい言ってただろ?甘いもの持ってきて〜と・・・あと、なんだったか?」
「もなって呼んでって言うのと、次に来た時は一番にあたしの事ギュってしてね〜って!」
「んで?」
叶えたのか?と小首を傾げる。
「えぇ。呼び名は“もなさん”ですし・・・後は・・・」
「ギュって言うかね、あたしが抱きついた系?」
「や、俺に訊かれても。」
もなが冬弥の顔を見ながら語尾に疑問符をつける。
「そうだね、もなさんが抱きついてきて・・・」
「なにぃ!?んじゃ、俺も抱きつ・・・」
「いたら、怒りますよ?魅琴さん?」
奏都がキッチンの方から大きなお盆を手に、笑顔出てくる。
―――どうしてあんなにも爽やかな笑顔なのに、黒いものを背負っているのだろうか、とても不思議である。
大きく真っ白なお皿に綺麗にクッキーを飾りつけ、人数分のティーカップを置き、ティーポットをテーブルの中央に置くと、奏都がもなの隣に腰を下ろした。
5人掛けの丸テーブルの上は華やかだった。
真っ白なティーポットの下のほうには淡いピンク色の小花が散っており、時折蝶々が鮮やかな黄色を撒き散らしている。
「なんか、輪になってるみたい〜!」
「そりゃそーだ。5人掛けの丸テーブルなんだからな。」
もなの可愛らしい発言に、魅琴が見も蓋もない返しをする。
それを受けて冬弥が長い溜息をつき―――
奏都がポットの中から紅茶のティーパックを取り出して小皿の上に置いた。
もながパタパタとキッチンの方へと走って行き、ミルクと砂糖のポットを取り出してきてテーブルの真ん中に置いた。
ニコっと満面の笑みで静を見詰めた後で、チョコリと頭を下げる。
「いただきまぁ〜す☆」
「どうぞ。」
思わずこちらも微笑んでしまうほどに、もなの笑顔は輝いていた・・・・・・。
■おいくつですか?■
「美味し〜っ!!」
そう言ってパクパクとクッキーを食べるもなを見ながら、買って来て良かったと思わず心の奥底で呟いていた。
これだけ美味しそうに食べられるなら、クッキーとて本望だろう。
「あぁ、もなさん・・・口の端にクッキーがついてますよ。」
「ふぇ?」
「あ、ほんとだ。」
「え?え?どこぉ・・・??」
もながゴシゴシと口を拭うが、クッキーは取れない。
クスリと小さく苦笑した後で静が親指でクイっと拭ってあげた。
「急いで食べなくても、沢山あるから大丈夫だよ。」
「うん!解ってるっ!」
そう言いつつも、もながクッキーを食べるスピードは早い。黙々とクッキーに手を伸ばし・・・。
「もなは甘い物が好きだからな。夜ご飯なにが良いかって訊くと大抵、ケーキぃ〜!とか言うんだぞ?」
信じられるか?と言って冬弥が困ったように苦笑いを浮かべる。
夜ご飯にケーキ・・・この調子なら言い出しそうだ。
でも、それも笑って許せてしまえるほどに、もなには無邪気な可愛らしさがあった。
「しっかしよぉ、ったく、それでも・・・・」
魅琴が何かを言いかけて、チラリと静の方を見やった。そして、ニィっと口元に笑顔を浮かべ―――
「なぁ、静。このクソチビいくつに見えるか?」
「もなさんですか?」
うーんと小さく唸って、もなを見詰める。
頭の高い位置で結ばれたツインテール。可愛らしいフリルの付いたスカートは膝上で、頭に揺れるリボンはベビーピンクだ。
今現在はクッキーをただひたすら一生懸命食べており、先ほど静が取ってあげたのにも拘らず、もなの頬には再びクッキーのカスがついている。
「そうですね・・・13歳くらいですか?」
「お・・・中学生に見えたか!?」
「もっと年下なんですか?」
「いや。ま、でも、コイツはいつも小学生に間違われるからな。」
確かに無理もない。静だって、先ほどの“低音少年ボイス”がなければ小学生ですか?と訊いていたところだ。
「実年齢はおいくつなんです?」
「もな、お前いくつだ?」
冬弥の質問に、口の中にほうばっていたクッキーを何とか飲み込むと、にっこり微笑んだ。
「16!」
「え・・・!?もなさん16歳なの?」
コクリと頷く。
静は思わずもなの事をマジマジと見詰めた。
16歳・・・16歳・・・どう贔屓目に見ても16には見えない。
「はは、驚いただろ〜?みんな驚くんだよ。ま、たま〜に年相応の時も無きにしも非ずだけどな。たま〜に。」
魅琴がそう言って、紅茶を1口飲むと髪を掻き揚げた。
「んで、俺はいくつに見える?」
「そうですね・・・神崎さんは・・・」
「ふぇ?し・・・んぐんぐ・・・ちゃん・・・。」
もなが静の服の裾をツンツンを引っ張る。
恐らく“静ちゃん”と言ったのだろうが、口の中にモノが入っているために良く聞き取れない。
「もな、口の中のものを飲み込んでからしゃべろ。」
冬弥がそう注意をして、もながゴックンとクッキーを飲み込む。
「静ちゃん、みんなの事もあたしと同じように呼んであげないと、あたしばっかズルっ子してるみたいじゃん〜!」
「同じように・・・って言われても・・・。」
「おー!いーじゃんそれ!っつー事は?俺は魅琴さんってわけか?」
「ソーソー!ね?ダメぇ?」
「そんな事ないよ。」
そう言って、もなの口の端についたクッキーを親指でツイっと取る。
「そうですね、魅琴さんは・・・21歳くらいですか?」
静の言葉に魅琴がニヤリと微笑むと、そっと、まだ未成年なのだと告げる。
「19だ。」
「見えないよね〜。こんな可愛げのない19歳なんて、あたしイヤぁ〜!」
「てんめぇ!このクソちんちくりん!お前だって年相応に見えねぇじゃねぇかよっ!俺だってお前みたいな16歳なんてイヤだね!どー見たって小学生じゃねぇか!発育不足のチビっ子がっ!」
「なにそれぇっ!魅琴ちゃんなんか、大っ嫌いっ!!」
そう言って、静の陰に隠れると、魅琴に向かってベーっと舌を出す。
「こんのガキがっ!」
「ったく!ちったー大人しくしろぉっ!」
冬弥がそう叫んで、魅琴の頭をガンと殴る。
「んで俺だけ殴んだよっ!」
「阿呆!お前のが年上のクセに、なぁに大人気ない事してんだよ!大体、隣でキャンキャンキャンキャンうっせーんだよ!」
静の隣で繰り広げられる不毛な口喧嘩に、思わず笑顔が引きつる・・・。
「ねーねー、静ちゃん。奏都ちゃんはいくつだと思う〜?」
今回の原因の1人だと言うのに、もなが急に話題を変えた。
恐らく、飽きたのだろう・・・・・・・。
「奏都さん・・・そうだな・・・。」
じっと奏都を見詰める。
外見年齢は17,8歳くらいだ。銀色の髪と、青い瞳の好青年そうな顔立ちで、いつも穏やかに微笑んでいる。
「18歳くらい?」
「んっとね、奏都ちゃんは23歳なんだよ〜♪」
「そうなんですか?」
ほんの少し、驚き混じりにそう言うと、奏都が困ったように視線を揺らしながら1つだけ頷いた。
「見えませんか?」
確かに、外見はもな同様年相応には見えないが・・・言われてみれば、落ち着いた雰囲気と言うか、身に纏っているオーラと言うかが、若干年上のように思える。
冷静に考えてみれば、全てを優しく包んでくれそうな笑顔も、18歳の高校生にはちょっと出来ないかも知れない・・・。
「じゃーさ、冬弥ちゃんはいくつだと思う?」
「そーだな・・・。」
考え込むように下を向き、つーっと冬弥に視線を向ける。
そして、ふわりと柔らかく微笑み―――
「25歳ですよね?」
「うぉぉぉいっ!!!なんで俺だけ言い切り系っつーか、確認系なんだよ!なんだその、これで合ってますよね系の口調はっ!!」
「あれ?違いましたか?」
「全然ちげぇよっ!つーか、あの自信はどっから沸いてきたんだよ!」
「僕が見た所、冬弥さんは酷く苦労症のようですし、心配で・・・」
そう言って視線を髪に向け、困ったように額に手を当てて溜息をつく。
そして、ポンと肩を叩いて「頑張ってくださいね、応援してますから」と囁く。
「こらぁぁぁぁっ!なんの心配をしてんだ!な・ん・のっ!苦労症っつーか、苦労かけてんのはコイツラだ!コ・イ・ツ・ラ!」
「ですから、心配で・・・」
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!そもそも俺は25じゃねぇっ!魅琴と同じだ!」
「そうですか・・・それなのにそんな・・・」
そう言って視線を意味有り気に逸らし、口元に手を当てる。
「し〜〜〜ず〜〜〜か〜〜〜!!!!??」
冬弥の怒りの低音ボイスを避けるように、静はにっこりと穏やかな微笑を浮かべると今度は逆に自分の年齢を訊いてみる。
「え〜?静ちゃん??ん〜〜18,9くらい??」
魅琴ちゃん達と同じくらい?と、小首を傾げながらもなが予想する。
「そうですね、18歳くらいですか?」
「だな、そこら辺が妥当かもな。」
「僕、15歳ですよ?」
サラリと言ってのけた静の顔を、住人達が穴が開くほど見詰める。
「ふぇ・・・?うそ・・・静ちゃん、あたしより年下なのぉ〜??」
「そうだね。」
こちらも、もなと同じ意味合いで驚きだ。
まさかもなが自分よりも年上だとは・・・想定範囲外だった。
「つー事は、高1か?」
「えぇ。まぁ。」
「ヤッベー!なんかわけぇ〜!!」
魅琴がシュタっと立ち上がり、静の背後に立つと急に椅子を引いた。
あまりの出来事に驚きのあまり一瞬硬直し・・・気がついた時には魅琴の腕の中だった。
「つか、お前軽っ!」
「そーですか?」
その瞬間、静の笑顔が今までのものとまったく違うモノに変わった。
主にもなに向ける、穏やかで優しい笑顔とは違う、どこか色香を含んだ夜の顔。
魅琴が、そう来なくっちゃなと小さく呟き、静の髪をそっと撫ぜる。
「おいおいおい・・・昼間から夜の雰囲気を醸し出すなっ!」
冬弥の呆れた声が響き、続いてもなの心配そうな声が頼りなさ気に揺れる。
「魅琴ちゃん、なにする気??」
「つか、お前ら忘れてるかもしんねーけど、俺と静はラブラブなわけ。」
つまり、前回の閏のクスリの事を未だに引きずっているのだ・・・。
「あれは閏ちゃんのクスリのせいで・・・」
「ばぁか!一度愛を誓い合った男女の仲は誰にも壊せねーんだよ!」
「馬鹿はどっちだ!何度も言うけど、静は男で・・・」
「俺にとってはノープロブレム!」
魅琴がそう言って、静に微笑みかけ・・・
「愛し合っちゃってんだもんな〜?」
な〜?と言われても、どうにも答える事が出来ない。まぁ、危なくなったらなんとかかわせば良いだけの事だし・・・。
そう思った時、静の視界の端にもなの顔が映った。
見る見る曇って行く表情は、丁度雨の振る前の空模様と似ていた。
―――あ・・・泣いちゃう・・・。
「さぁ、いざ行かん!めくるめくワンダーワー・・・」
ぎゅっと、魅琴の首筋に抱きつく。
それははたから見れば、静が自主的に魅琴に甘えたかのようで・・・けれど、その一瞬後にそんな考えはガラガラと音を立てて崩れ去る。
グラリと魅琴の身体が傾き、冬弥が慌ててそれを支える。
静がなんとか体制を整えて綺麗に地面に着地し、真っ先にもなに駆け寄る。
あまり手荒なマネはしたくなかったのだが、かと言ってもなをもう泣かせたくはなかった。
もなの泣き顔は、可愛らしいけれどもあまりにも心が痛むものだったから―――。
「大丈夫だから、ね?」
もなと視線を合わせるようにして屈み、頭を柔らかく撫ぜる。
「・・・つか、静。お前いくつっつったか?」
魅琴をなんとか床に寝かせた冬弥が、引きつり気味の笑顔で静にそう尋ねる。
なんだか不信感バリバリのその表情に、思わず苦笑してしまいそうになる。
「15歳ですよ。」
「・・・お前絶対15歳じゃないだろっ!!!!!」
「どうしてですか?」
「15か!?15なのか!?それが15の男子の取るべき行動なのか!?」
「冬弥さん、落ち着いてください。」
見苦しいですよ。と、奏都が穏やかな笑顔でそう囁く。
これだけワーワー騒いでいるにも拘らず、奏都はまったりとしたティータイムを楽しんでいるようだった。流石は23歳である。18歳の少年には出来ない芸当をサラリをやってのけている。
「年齢詐称してるだろ!?」
「そんな・・・僕はちゃんと15歳ですよ。」
「その笑顔が怪しい!ぜぇぇぇぇってーもっと行ってる筈だ!お前、マジいくつだよ!!」
「ですから・・・」
「ねーねー、静ちゃんさぁ、みんなに敬語使う必要ないよぉ〜!」
もなが静の服の裾を引っ張りながら、満面の笑みでそう言う。
「そうかな?」
「うん!あたしにしゃべってるのと、同じ風に皆にもしゃべって大丈夫☆」
「それなら、これからそうしようかな。」
「つか、話をそらすなぁぁぁぁぁっ!!!!」
「冬弥ちゃん、五月蝿いよぉ〜!!」
キャンキャンと叫ぶ冬弥を眉根を寄せながらもなが見詰め・・・
「静ちゃんが15って言ってるんだから、15でしょ〜?」
「俺は認めねぇ!ぜぇぇってー認めねぇっ!」
「ご自由にどうぞ?」
にっこりと、魅琴に見せるのと同じ微笑を冬弥に向ける。
ソレを受けて、冬弥の顔が明らかに引きつり―――
「ぜぇぇぇぇぇぇぇって〜〜〜俺は騙されねぇからなぁぁぁぁぁっ!!!!!」
〈END〉
◇★◇★◇★ 登場人物 ★◇★◇★◇
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
5566/菊坂 静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」
NPC/片桐 もな/女性/16歳/現実世界の案内人兼ガンナー
NPC/梶原 冬弥/男性/19歳/夢の世界の案内人兼ボディーガード
NPC/神崎 魅琴/男性/19歳/夢幻館の雇われボディーガード
NPC/沖坂 奏都/男性/23歳/夢幻館の支配人
◆☆◆☆◆☆ ライター通信 ☆◆☆◆☆◆
この度は『All seasons』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
そして、いつもいつもお世話になっております。(ペコリ)
前回のお話の後日談と言う事でしたが・・・本当に騒がしい館ですみません(苦笑)
プレイングにそって冬弥には最後、叫ばせてみました。恐らく、冬弥は静様の年齢を疑っております。
『甘い疑い』と意味ありげな副題がついておりますが・・・甘い(クッキー)疑い(年齢)と実はバラバラの意味をもっていたり・・・。
もなと静様のシーンでは、ほのぼのとした柔らかい雰囲気を出せていればと思います。
それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。
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