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■日々徒然■

志摩
【5566】【菊坂・静】【高校生、「気狂い屋」】
 雑貨屋銀屋。
 店は開いてます。商品もアクセサリーから服から最近は怪しげな薬までおいてある。
 店主は銀狐の妖怪だとか。
 店主以外にも他の妖怪が出たり入ったり。色々と面倒事もあったり飽きはなく。

 さて、そこで何をします?

 お客様次第です。
日々徒然 〜逆らえない笑顔〜



 日々変わらない?
 日々変わっていく?
 何でこんなことになったんだっけ。
 今日は―――




 そう、それは全部偶然。
「あっ……」
「こんにち……わっ!」
 奈津ノ介は後ろから小判にアタックをかけられ、その手にしていた薬品が飛ぶ。
 そしてその前方には、銀屋に遊びに来たところの菊坂静がいた。
 綺麗なビンに入っていた透明のそれはしっかりと静へとかかってしまったのだ。
 頭からぐっしょりと、ぽたぽたと数滴、雫も落ちている。
「ごめんなさい、あ、あー……」
「わー、すごいよ奈津さん! 成功だよ!」
「小判君……」
「え、何が……あ…………」
 ざわりと、ゆるゆると。
 静は自分の身に起こる異変に気がつく。
 自分の黒髪がどんどんと長くなって、腰あたりで伸びるのが止まった。
 静は自分の姿を確認し、そして奈津ノ介と小判に向かってにっこりと笑う。
「……これは、どういうことかな?」
「毛生え薬を作ってくれって頼まれて……それが静さんに……すぐ解毒剤作りますから、本当にすみません……」
「そうなんだ、まぁ……不慮の事故だし、小判君もこれから気をつけてね」
「うん、ごめんなさい」
 静は苦笑をする、と同時に小さなくしゃみを一つ。
「静さん、服乾かしましょう、僕のをお貸ししますから」
「借りれるなら……お願いします」
 こっちです、と階段を上がるように静は奈津ノ介に促される。二階へと通されるのはこれが初めて。
 少しきしむ階段を上がりきると、そこに南京錠のかけられた頑丈そうな扉がある。でもそこは通りすぎて、奥へと手招きされる。
「や、ちょっと散らかってるんですけど……見なかったことにしてください」
「え、うん」
 からりと開け放たれると、その先は奈津ノ介の私室だ。散らかっているというけれどもそんな事は無い。
「ええと……うん、これなら多分……」
 ごそごそと箪笥から奈津ノ介が取り出してきたのは浅黄色の着物だ。
「これをどうぞ。ぬれた服は小判君に渡せば洗濯機回してくれますから。僕は解毒薬作ってきます。きっと髪の毛切ってもまた伸びると思うので……」
「お願いします」
 はい、と奈津ノ介は言って部屋から出て行く。
 ここで作るんじゃないんだな、と静は思うが今は着替えるのが先だ。
 奈津ノ介から借りた着物に袖を通す。
 少し薄暗い部屋には、ちょこちょことランプがあったり本が置いてあったりといかにも奈津ノ介らしい、といった感じだった。
「今度お願いしてまたよく見せてもらおう」
 静は一つ、楽しみを見つけて知らず微笑む。
 着替え終わってその部屋を出て、そして階段を下りていくとそこには小判がちょこんと座って待っていた。
 静の姿を見ると立ち上がって、選択するもの貸して、と言ってその手から服を奪い取って奥へと向かう。
 と、いつの間にか和室では音原要ともう一人、黒髪の女性がお茶を飲んでいてふっと目が合う。
「こんにちは」
「静さん、こんにちはー。話は小判君から聞きましたよ、災難でしたね」
「あはは……まったく。ええと……僕は菊坂静と言います。初めまして、ですよね」
「うん、初めましてなのじゃ。私は蝶子、奈津の友達なのじゃ」
 自己紹介と挨拶と、そうしている間、静は上から下まで視線を送られているのを感じる。
 悪意はないのだけれども、どこか居心地が悪い。
「静君は美人さんなのじゃ」
「そうですね、いいなぁ……」
「……となったらやることは一つなのじゃ」
「やること……?」
 蝶子はふふっと何か企んでいるような表情を浮かべ静を見た。
 静は、その表情を本能的に怖い、と思い一歩後ずさりをした。
「静君、こっちにくるのじゃ」
「えっと……」
「早く早く!」
 躊躇う静に業を煮やしたのか、蝶子はがしっと静の手を引っ張り座らせる。
 そしておもむろに、弄り始めたのは髪の毛。
「おおお、綺麗な髪なのじゃー!」
「本当、すごーい」
「えっと……あの……」
「静君は黙っておるのじゃ!」
「はい……」
 きっと強い声色で言われ、静は黙る。
 何をしているのか、予想はつく。
 髪の毛を弄って遊ばれているのだ。相手が女性、ということで強く言うことも出来ず、静はされるがままだ。
 と、そんな所に小判が帰ってきて、そして静と要、蝶子を見る。
「……どうせならお化粧もしちゃえばいいのに」
「なっ、小判君!?」
「あ、確かに。私とってきますね!」
「お願いするのじゃ要君!」
 要は立ち上がるとたたっと階段を駆け上がって、帰ってくる。その手には古い化粧箱がしっかりと握られていた。
「借りてきました……! さ、静さん」
「え、ほ、本当にするの? するの?」
 もちろん、と笑ったのは要も蝶子も同じタイミングだ。
 先程から感じていた逆らえない、という雰囲気は当分崩れそうに無い。
「静君、目を閉じるのじゃ」
「もう閉じてます……」
「おにーさん笑顔が引き攣ってるよー」
「小判君、それ気のせい気のせい!」
「うんうん、楽しんでおるのじゃ!」
 それは要さんと蝶子さんがです、と静は心の底で思う。
 そして二十分後。
 どこからともなく持ち出されてきた艶やかな女物の着物を、有無を言わさぬ強制力で着せられ、静はどこからどう見ても女の子、になってしまっていた。
 傍にはやりきった、と満足そうな蝶子と要。小判も似合うよ、と二人を止めずに見ていただけだ。
 相手が女性子供、静は強く言う事も出来ず、怒るに怒れない状態。もちろん笑顔は硬く、引き攣っていた。
 と、からりと戸口が開く音がする。店の中に入ってきたのは藍ノ介だった。
 手ぶらでどうやら散歩からでも戻ってきたのだろう。
「今戻ったぞ。お、蝶子も来て負ったのか…………ええと……」
「こんにちは」
「しず、か……?」
 そうです、と静はにこりと笑む。
 藍ノ介は、首を一度かしげ、そしてじっと静を見詰める。
「な、汝……女だったのか……! すまぬ、すまぬ静……! わしはずっと男だと思っておった……!」
「は?」
「化粧もちゃんとして……どうしたのだ。汝、嫁にでも行くのか?」
 にこにこと、本人悪気は無いのだろう。だけれどもそれは静の地雷を次々と踏んでいく。
「僕は、生まれてから今まで、ずっと男ですよ」
「え、お? ならば何故そのような格好を……」
 にっこり。
 静はにっこりと笑みを藍ノ介に送るのだけれども、それは威圧感をびしびしと感じさせるものだ。
 藍ノ介はそれを真っ向から受けとめ、そしてどうしたらいいものかとたじたじだ。
 その様子を残り三人は、関わらない方が身の為だと声を出さず、息を潜めて見守っていた。
「それは聞かないでほしいことなんですよ、ね」
 語尾が強調される。
 ちょっとだけ暗雲が立ち込める雰囲気。
 と、そんな雰囲気の中、奈津ノ介が階段を下りてくる。手には小瓶を抱えて、どうやら解毒剤が出来た様子。
 降りてくると同時にこの状況を一目で見て、全て理解する。
「静さん、すみません、本当に……親父殿オツムがアレだから……」
 まぁまぁ、と静と藍ノ介の間に奈津ノ介は割って入る。
 静の肩に手を置いて、落ち着いてくださいと言い聞かせる様子は傍から見れば、ちょっといいカップルだ。
「でもね、奈津さん……!」
「遊びに来たぞー」
 奈津ノ介に静が少し詰め寄った時だ、がらっとまた戸が開く音、そこに立っていたのは遥貴だった。
「……な、奈津に彼女が……!」
「な、何言ってるんですか! 僕です!」
「遥兄さん!」
 静と奈津ノ介が声を出すタイミングは同じだった。
 遥貴は、しばし二人を見て、そして奈津ノ介の隣にいるのが静だと気がつく。
「や、すまん。ぱっと見ただけだったからよくわからなかったんだ」
「ちょっと声、上ずってましたよ」
「そう……かな?」
 静は苦笑する遥貴を見る。なんだか静だとわかって少し安心していたような、そんな感じだ。
「まぁ、じっと僕をみても女だと思ってた人もいるし……」
「ああ、この面子から考えると藍ノ介しかいないな、それ」
「その通りです」
「うっ……わ、悪いと思っておる!」
 決まりの悪そうな藍ノ介を傍目に奈津ノ介は静に小瓶を一つ渡す。そこには薄い青の液体。
「今日、髪を切って、お風呂に入った後くらいにこれを髪にかけてください。それでもう大丈夫ですから」
「うん、もうこんな風にされるのごめんだからね」
「あははは……僕も昔一度、蝶子さんたちに遊ばれてますから……」
「奈津子ちゃんじゃな」
 ニヤリ、と蝶子は笑う。奈津ノ介はあはは、と力なく笑って溜息をついた。
「やる気満々の彼女たちを止めれる人はいないんですよ……」
「あー……それわかります……」
 静と奈津ノ介は小声で言葉を交し合う。
 女の人って怖いんだよね、と思いながら。
「あ、もうおにーさんの服も乾いてるかなー。俺みてくるね」
 今思い出した、と小判はたたーっと奥へと走っていく。要がその後ろを追いかけていくのもしっかりと視界に入った。
 と、静はじーっと頭の先からつま先まで、眺められる視線に気がつく。
 それは遥貴の視線だ。
「どうかしました?」
「あ、や……静は嫌だと思うだろうが、似合っているなと……うん、奈津とも似合いだった」
「僕は男ですよ」
 あなたも僕をおもちゃにするんですか、とにこりと笑む。遥貴はそんなことにはしない、と笑って返すのだけれどもそれが本当か少し疑わしい。
「僕よりも、あなたの方が釣り合うでしょう?」
 瞳をぱちくり、と遥貴がする。そして少し困ったように、笑う。
「そうだと、良いんだけど……今はまだありえんな」
「なんでです?」
「奈津の方がちっちゃい」
 そんなに二人の身長はかわらないんじゃないだろうか。
 子供のような理由に、静はぷっと吹き出して笑った。
 おかしいことじゃないだろう、と遥貴は言うのだけれどもおかしい。
「あはははは、奈津さん、苦労するだろうなぁ……」
 その奈津ノ介は、藍ノ介と何事か話しており、というか何かお小言を言っていた。
 静は二人ともちょっとずれてる、と思いながら笑う。
「服乾いてたよおにーさん!」
「あ、本当? じゃあ着替えてこようかな」
 乾いた静の服を持って駆け寄ってきたのは小判。はい、と手渡され静はありがとうと受け取る。
「それならまた僕の部屋でどうぞ。着物も……全部置きっぱなしで大丈夫です」
「ありがとう、奈津さん」
 けれどもささっと着替えてしまおう、と歩みだす静の腕をがしっと掴むものがいる。
 それは蝶子だ。
「まだ、まだ駄目なのじゃ……! 静君も写真をとるのじゃ……!」
「え……」
 蝶子の目は真剣で、どこか恐ろしい。
 これは、断ったら身に危険が迫る。
 そんなことを今日感じたのはもう何度目なのか、感覚が麻痺してしまっている。
 奈津ノ介を見ると、逆らわない方がいい、と目が言っており。それは他の面々も同じだった。
 静はしょうがない、と一つ溜息をつきながらいいですよと頷いた。
 その後の嬉しそうな蝶子の表情といったら忘れられそうに無い。




 何でこんなことになったんだっけ。
 今日は―――
 今日はもう、忘れられない一日になっちゃったな……



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」】

【NPC/蝶子/女性/461歳/暇つぶしが本業の情報屋】
【NPC/奈津ノ介/男性/332歳/雑貨屋店主】
【NPC/音原要/女性/15歳/学生アルバイト】
【NPC/小判/男性/10歳/猫】
【NPC/藍ノ介/男性/897歳/雑貨屋居候】
【NPC/遙貴/両性/888歳/観察者】

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■         ライター通信          ■
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 菊坂・静さま

 女装をテーマに今回もまたありがとうございましたー!ええ、もう私も思いっきり楽しませていただきました!蝶子さんに遊ばれることとなりましたが逆らわない方が身のためです、切実に…!静さまにとってはある意味災難なこととなりましたが、楽しんでいただければ幸いですv
 ではではまたどこかでお会いできれば嬉しく思います!