■日々徒然■
志摩 |
【5566】【菊坂・静】【高校生、「気狂い屋」】 |
雑貨屋銀屋。
店は開いてます。商品もアクセサリーから服から最近は怪しげな薬までおいてある。
店主は銀狐の妖怪だとか。
店主以外にも他の妖怪が出たり入ったり。色々と面倒事もあったり飽きはなく。
さて、そこで何をします?
お客様次第です。
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日々徒然 〜いつもの、日常〜
日々変わらない?
日々変わっていく?
二人と一緒。
それは良くあることなんだけど今日は外。
何かあるような気もするね。
けど―――
からりと扉を開けた瞬間、丁度店から出ようとしていた二人とばったり菊坂静はであった。
それは奈津ノ介と南々夜。
南々夜は、いつもと変わらず、十分高い背にさらに上げ底の下駄を履き、じゃらじゃらと鎖やら装飾ものをつけご機嫌。
奈津ノ介は淡い水色のサマーセーターとジーンズと、いつもと印象が違う。
「あれ、どこか行く……みたいだね。タイミング悪かったかな?」
あ、と声を漏らし静は苦笑。
けれどもそんなことないと奈津ノ介は首を横に振る。
「今からちょこちょこ買い物です」
「しぃ君も行こー?」
「行っていいの?」
「全然構いませんよ。荷物持ちが増えたなんて思ってないですから」
「思ってるんだ……うん、でも面白そうだからついて行こうかな」
何を買いに行くのか興味もある。
静は微笑しつつそれを想像して笑う。
「じゃあしゅっぱーつ!」
ノリとしてはえいえいおー、遠足気分の南々夜の後ろを奈津ノ介と静は並んでついていく。
ふと、静は何を買うのだろうとそれを二人に問う。
「お店の品物と、あと食料品です。品物は良いものがあったら、なんですけど……」
「奈津さんのお眼鏡にかなうものがあれば良いね」
「そうですねー、要さんが蝶モチーフのものがほしいと言っていたので、そういうのもあると良いんですけど」
「しぃ君も何かほしいものあるー?」
「僕?」
と、ほしいもの、と突然聞かれ静はあるかなぁ、と考える。
「うーんと……」
「そんなに真剣に考え込まなくても」
「あ、じゃあほしいもの見つけたら教えるね」
世間話などなど織り交ぜつつ、二人と共に静がたどり着いたのは路地裏の小さな小さな、お店だった。
銀屋と同じように雑貨屋のようなのだが雰囲気は一段とあやしい。
「えっと……ここは?」
「同じく妖怪がしてるお店です。まぁまぁ、入って入って」
「え、うん」
背中をずずいっと押されつつ入った店内は薄暗く、細い細い通路が続く。
「こんにちはー、あっは、てんちょー。お願いしてたやつー」
「店長、どうも」
「はじめまし……誰もいませんよ」
笑顔で覗き込んだカウンター、そこには誰もおらず静はキョトンとする。
「んー、ここ、ここだよー。てんちょーちっさいから」
「ちっさい?」
ここ、と南々夜が指差した先には小指の先くらいの大きさの、少女。
「座敷童の店主さんです。小さいので気をつけてください」
「菊坂静です」
店主は静を見上げて、そして一つお辞儀を返す。
「……ちょっとかわいい……」
と、南々夜はごそごそとカウンターの中へと入って何かしている最中で。
それが少し気になる。
「何してるんですか?」
「んー、頼んでたものをー……あったー」
南々夜が取り出したのは、一振りの刀。鞘は黒なのだけれどもなにやら蓮のような模様が掘り込んである。
幼少時の破壊的センスを知っているだけにちょっと意外。
「これね、ボクのお気に入り。この前刃こぼれしちゃったから修理に出して貰ってたんだー」
「じゃあ直ったんだ。よかったですね」
「うん、よかったー」
静が笑顔で言うと、本当に嬉しそうに彼は頷く。
「直って良かったですね」
「ん、なっつーももういーの?」
「はい、僕のほしいものは来週らしくて」
カウンターの店主にそうなんですよね、と奈津ノ介が聞くと、なんとなく彼女が頷いているのがわかる。
「静さんは何かありました?」
「僕は……うーん、いっぱいあってわからないかな。そういえば蝶モチーフのものは?」
「あ、忘れる所だった……」
うっかり、というように奈津ノ介は苦笑すると店主にぼそぼそと何事か言う。そして何か言われ、カウンターを覗き込み一つの箱を取り出す。
「何が入ってるの?」
「かんざしです」
ぱかっと開いた箱の中、そこには色々なかんざし。その中で、蝶モチーフのものを一つ見つけて静は取り出す。
「これ、蝶だね」
「ですね、じゃあこれ。店長、今度一緒に御代払いますね」
かんざしを一つ、箱の蓋は閉められもう一度同じ場所へと返される。
「じゃーてんちょーまたねー」
と、いつの間にか南々夜はすでに出口。
行きましょうかと促されて静もそちらへ向かう。
ぺこっと一つ頭をさげてから店の外へ。ちょっとだけ、眩しい。
「さー、あとは食料品だけです」
「近所のスーパーよって帰るんだよねー」
「そうです、静さんも今晩うちでご飯食べていきます?」
「いいの?」
荷物もち分のお礼です、と返され静は笑う。
「じゃあご馳走になろうかなぁ」
と、細い路地、すれ違うものと肩がどん、と触れる。
「あ、ごめんなさい」
「あぁ!?」
静の肩にぶつかって、振り向いたのはいかにも、不良ですという体で。
「誰にぶつかってんだよ!!」
「え、だからごめんなさいって」
どん、と静の肩を突き放すように乱暴に。
その衝撃に静はよろめく。
「しぃ君だいじょーぶ!?」
「はっ! しぃ君て何歳だよー、幼稚園児みてー」
「だなー」
くくっと笑う声に静はむっとして睨む。
その視線に不良たちは何だと睨みかえす。
「んだよっ!」
気に入らないと、彼らの一人がどんと静を突き飛ばす。
その力は強くて狭い路地裏、静は壁に打ち付けられる。
「痛っ……!」
ちょっと痛い、と思わず声が漏れる。
と、同時に傍の二人の雰囲気がざわつくのを感じる。
「貴方達、静さんは謝ったのに……」
「てか悪いのそっちだしー……」
相手を睨む鋭さはこちらの方が上手で。
なんだかまずそうな雰囲気を感じ取って静は大丈夫と言うのだけれども。
「いーえ、静さんに乱暴しておいてタダで帰すワケにはいきません」
「でも大したことないし」
「しぃ君、気持ちの問題なんだよ、気持ちー。なっつーやっちゃって、ボクがやると手加減できないー」
その言葉にもちろんです、と奈津ノ介は満面の笑みで。
「先に路地抜けちゃってください。すぐ行きますから」
「え、でも奈津さん一人じゃ……」
「しぃ君いこー。うん、ここから先は見ないほうがいいよー。地獄絵図、阿鼻叫喚」
「え、ちょっ、それ反対に心配っ!!」
いいからいいから、と背を押されて、後ろの視界を塞がれて。
それでも静の耳にはなにやらものすごい音と悲鳴が聞こえてくる。
「なっつー、怒ってたからねーあっは」
奈津さんを怒らせちゃ駄目だ。その前に笑い事じゃないよ、南々夜さん。
そんなことを静は思っていた。
暫くして路地裏から追いついてきた奈津ノ介の表情は、とてもとても、良い笑顔で。
何がどうなったのか静は容易に想像できた。
「さー、買い物行きましょう」
「うん……怪我とかない?」
「はい、大丈夫です。でも……心配してくれてありがとうございます」
ちょっとはにかんで、静に向けられる笑顔。
それがちょっと特別なものみたいで、静は何故か嬉しい。
「なっつー、しぃ君ー、はーやーくー」
と、いつの間にスーパーの前にたどり着いていた南々夜に手を振って呼ばれて、二人は歩く速度を速める。
「何話してたのー? 二人は仲良しさん?」
「そうなのかな?」
「そうです」
「あっは、ボクも仲良しさんー」
そうして仲良く三人でスーパーに入って買出し。
大荷物で店から出、てくてくと銀屋へ。
「これ全部、食べるの?」
「ええ、三日でなくなりそうですね」
それぞれ両手いっぱいに買い物袋を持って。
「うち、人がいっぱい来ますからね。まぁ、それが日常なんだけど……」
「そうだね、いつも賑やか」
「賑やかなのはー、好かれてる証拠だよー、ね?」
他愛の無い話をしながら道を行く。
見慣れた道筋。
店が見えてくると、その入り口の前で立っている人が一人。
「あ、藍ノ介さんだ」
「……なんで仁王立ち……」
「遅い! 何かあったのかと心配したぞ!」
「偉そうに……」
「何かあったといえばあったけど……」
苦笑しながら静が言うと、何だそれはと藍ノ介は食いつく。
つめよる藍ノ介に押されつつ、静はええとと言葉を捜す。
「あったけどなかったです。ほら静さんが困ってますよ、親父殿離れて離れて」
「うおっ! 蹴るな奈津!」
「両手ふさがってますから。静さんも邪魔だと思ったらがすがす蹴っていいですからね。遠慮しなくていいですよ」
「うん、わかったよ」
「静が悪の道に!」
「あははー、藍ちゃん邪魔ー」
汝ら皆鬼だ、と騒ぐ藍ノ介。奈津ノ介はにっこり笑顔を向ける。
「僕が良いと言ったら良いんです。ご飯抜きますよ」
その言葉に逆らえるわけもなく。
そんなやり取りを、静はにこにこ笑いながら眺めていた。
これが日常。
何かあるような気もするね。
けど―――
けど、本当は何も変わりないのかも。
<END>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
【5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」】
【NPC/奈津ノ介/男性/332歳/雑貨屋店主】
【NPC/南々夜/男性/799歳/なんでも屋】
【NPC/藍ノ介/男性/897歳/雑貨屋居候】
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■ ライター通信 ■
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菊坂・静さま
いつもありがとうございます、ライターの志摩です。
お買い物ー!ということで楽しんでいただければ幸いです。恐ろしくて奈津ノ介のわーわー!な所は書けませんでした(ぇ)静様にトラウマを作りたくない!と思いまして(それほどすさまじいのです…)見ないほうが良いです、良いです……
静様に楽しんで貰えれば幸いです。ではまたご縁があってお会いできれば嬉しいです!
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