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■都会の闇■

水凪十夜
【6077】【菊理路・蒼依】【菊理一族の巫女、別名「括りの巫女」】
麗らかな午後、よろず屋【童夢】には大変似つかわしくない少女がドアの前に佇んでいた。
【童夢】代表の葛城戒はその少女の存在に気付いていながらも知らない振りをしてのんびりと新聞を広げ見ている。
一方、助手のリオはそっとドアの外の気配をうかがっていた。
「戒さん、あの子当分帰りそうにないですよ」
「……頑固だな。ったく、お前追い払ってこいよ」
「嫌ですよ!俺は彼女の依頼をきいてあげるべきだと思ってますし」
「あのなー……あんなガキに依頼料が払えると思ってんのか?俺達は無料奉仕やってんじゃないんだぞ」
「何か余程の理由があるから、ずっとドアの前で待ってるんじゃないですか?」
「なら、お前一人で受け持ってやれよ」
冷たくあしらわれ、リオはムッと顔をしかめた。
「この間貸したお金……」
ぽつりと呟く様なリオの言葉が言い終わる前に、戒は勢い良く入り口のドアを開けていた。
「おい、チビ!どうした?さっさと簡潔に言ってみろ!」
突然開かれたドアに少女は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐにそれは助けを請う者の顔にかわった。
少女は向けられた救いに手を伸ばし泣き叫ぶのだった。
「お願いっ、お願いだから猫ちゃんを助けてっ!!」

必死な少女からほのかに漂って来る"魔"の匂いにリオは小さく顔をしかめた……――
都会の闇


麗らかな午後、よろず屋【童夢】には大変似つかわしくない少女がドアの前に佇んでいた。
【童夢】代表の葛城戒はその少女の存在に気付いていながらも、知らない振りをしてのんびりと新聞を広げ見ている。
一方、助手のリオはそっとドアの外の気配をうかがっていた。
「――戒さん、あの子当分帰りそうにないですよ」
「……頑固だな。ったく、お前追い払ってこいよ」
リオの言葉に戒はいかにもめんどくさそうに髪をかきあげ、シッシッと数度手を振る。
「嫌ですよ!俺は彼女の依頼をきいてあげるべきだと思ってますし」
「あのなー……あんなガキに依頼料が払えると思ってんのか?俺達は無料奉仕やってんじゃないんだぞ」
「何か余程の理由があるから、ずっとドアの前で待ってるんじゃないですか?」
「なら、お前一人で受け持ってやれよ」
冷たくあしらわれ、リオはムッと顔をしかめた。
「この間貸したお金……」
ぽつりと呟く様なリオの言葉が言い終わる前に、戒は勢い良く入り口のドアを開けていた。
「おい、チビ!どうした?さっさと簡潔に言ってみろ!」
突然開かれたドアに少女は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐにそれは助けを請う者の顔にかわった。
少女は向けられた救いに手を伸ばし泣き叫ぶのだった。
「お願いっ、お願いだから猫ちゃんを助けてっ!!」

必死な少女からほのかに漂って来る"魔"の匂いにリオは小さく顔をしかめた……――





結局少女の依頼を受ける事にしたよろず屋【童夢】。
しかし、相手は幼い少女。その対応への自信が無い為、戒はある助っ人に声をかけていた。
「どんな方なんですか?」
助っ人に興味津々なリオ。戒は脳裏に助っ人の姿を思い浮かべ小さくため息を吐いた。
「会ってみりゃ分かるさ。……願わくば、あの事は忘れてくれてるといいんだがな」
「?」
しばらく時間が過ぎ、約束の時間ぴったりにその助っ人はやって来た。
偉そうにイスに踏ん反り返っていた戒は立ち上がると、助っ人である菊理路・蒼依の前に立った。
「急に呼び出して悪かったな。つーか、久し振り!」
「あら……」
蒼依は事務所内をくるりと見回し、そのあまりの貧乏さにため息を吐いた。
「今日こそ貴方に貸していたお金、全額返してくれると思ったんだけど……まだ駄目みたいね」
「ぐっ!……まだ覚えていやがったのか、お前……」
「当然でしょう?ちゃんと利子も付いていってるから、早めに返金した方が身の為よ?」
「利子……っ!?」
頭を抱える戒に、リオはやれやれと深く頭をうな垂れた。
自分からも借金をしているとゆうのに、蒼依からも借金をしているとゆう事実に呆れた様子。
そんなリオに気付いた蒼依は、頭を抱える戒を放置しリオへと向き直った。
「戒、この子は……」
今だ頭を抱えたまま、戒は声だけを返した。
「そいつはリオ。俺の下僕でもある助手だ」
「ちょっ、誰が下僕なんですか……」
一瞬反論しようとするが、何を言っても無駄だと悟っているのだろう。
勢いはいっきに落ち、かわりに本日何度目かのため息をついた。
「貴方はリオ君って言うの?私は蒼依、菊理路蒼依よ、宜しく」
自分へと差し出された蒼依の手を、リオは握り返し笑った。
「初めまして、蒼依さん。リオです、よろしくお願いします」

――蒼依へ状況説明をし、三人は揃って少女の案内で猫の居る場所へと向かうのだった。





古びた廃墟。見た感じ的に言えば洋館みたいな外観だ。
少女は学校帰りにここで猫を見かけ、何度か遊んでいる内に仲良くなったと言う。
しかし、最近少し様子がおかしく、突然化け猫の様な荒い声を上げたり苦しむ様にのた打ち回ったりしているとの事。
この場所に踏み入った瞬間、リオに激しい悪寒が駆け巡った。
その様子に蒼依と戒は一瞬眉をしかめたが、言い出さないリオを問い詰める事はせず話を進めた。
「さて、とりあえずはその猫を探さなきゃならねぇ訳だが……」
ボロボロの門を開け、その洋館の巨大さに戒はため息をつく。
「これだけ広いと手分けした方が早そうね」
蒼依の意見に、戒もリオも賛成と頷く。
「それじゃ、蒼依とリオはそいつと一緒に三人で。そして、俺は一人で。……それいいか?」
「「…………」」
全く同じ意味を持つ二人の視線に戒はやれやれと肩をすくめ、両手を軽く挙げた。
「サボッたりしねぇよ。……おら、作戦開始だ。何かあったら大声で呼べよ」
それだけ伝えると戒はそそくさと洋館の中へと消えていく。
残された三人。少女は不安そうに顔を伏せ今にも泣き出しそうな程だ。
蒼依は背を屈め、少女と同じ視線にすると優しく笑った。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。貴方の大切なお友達を助けてあげましょう?ね?」
優しい蒼依の言葉に少女は無邪気な笑顔でコクリと頷く。
少女の頭をなで、蒼依はその手を握った。
「さ、リオ君。私達はどうするのかしら?」
「とりあえず、戒さんが中に入りましたから俺達は庭を見てまわりましょう。かなり広いみたいですし」
「そうね、そうしましょう」

建物自体も相当な大きさだが、庭もとても広く、そこら辺中に鬱蒼と雑草が生え連なってる。
相当長い間誰にも手入れされず放置されていたのだろう。
昔は綺麗に咲いていたであろう花々も枯れ果て、無残な姿を残している。
「随分と色々な植物を育てていたみたいね」
「そうですね、これだけ広い庭ですし……ガーデニングが趣味だったんでしょうか…………――?」
辺りを見回しながら歩いていたリオがふっと足を止める。
急に足を止めたリオに、蒼依も少女も同じ様に足を止めリオを振り返った。
「リオ君、何か見つけたの?」
「……えぇ、……これを見て下さい」
リオは枯れた枝の一部を少女から遠ざける様にして蒼依の目の前に差し出す。
それは完璧に枯れているとはいえ、ある物の特徴を示していた。
「……これは……」
「コカノキ……だと思います。それに、コカノキだけじゃない。その他にもここに枯れ残っている草花ほぼ全てが……」
リオの顔が険しくなる。二人の全身に嫌な予感が広がっていく。
「つまり、ここの家主はそういった事に手を染めていた……っとゆう事?」
「恐らくは。ですが、これだけの種類。売っていた……っとゆうよりは……――実験していた……っと言った方が合っているかもしれません」
リオと蒼依は目を合わせ、その視線を少女へと移す。
二人の視線の意味が分からない少女は不思議そうに顔を傾げた。
恐らくこの場所は麻薬の実験施設として使われていた。
実験施設とゆう事は、ほぼ間違いなく人体実験も行われていたであろう。
先程から感じていたリオの悪寒は段々と激しさを増し、それは絶対的な確信へと変わっていく。
「蒼依さん、ここに入った時から感じていたのですが……」
「――死者の怨念……って所かしら?」
「はい。それも、かなり強力……「猫ちゃんっ!」
「「!?」」
真剣な話に二人の注意が少女から離れた瞬間、少女は枯れ草をかきわけ走り出す。
その目の先には真っ黒い猫が一匹、こちらを見て不気味な鳴き声をあげている。
少女に駆け寄る様に猫もその足を走らせる。
「まずいっ!君っ、その猫に近づいちゃ駄目だっ!」
「猫は私に任せて、リオ君は彼女をっ!」
蒼依は一歩前に踏み出し、その手を猫へと勢い良く向ける。

――ヒュッ

小さく風を切る音。瞬間、蒼依の手には赤い糸が絡まっており、ふっと周りを見ればそこらかしこに紅糸が張り巡らされていた。
紅糸は猫にも絡まりその動きを封じている。
「ニィギャァーーーッッ!!!」
不気味な鳴き声上げ、猫はその体を激しく動かし紅糸から逃れようと暴れまわる。
「猫ちゃん!」
「駄目だっ!」
更に駆け寄る速度を早めようとした少女をリオが抱き上げ、猫から遠ざかる。
「離してよっ!猫ちゃんを助けてくれるんじゃないのっ!?」
持てる精一杯の力でリオの腕から逃げようとする少女。
出来る限り傷付けない程度の強い力でリオは少女を抱きしめ、視線を蒼依へと向ける。
猫の力が強いのか、視線は真っ直ぐ猫のまま蒼依が言う。
「これは……ちょっと厳しいわね。まさに化け猫と呼ぶに相応しい……いえ、化け猫なんてもんじゃないわね」
「やはり、ここの怨念を吸収してしまったみたいですね。猫はそうゆう物に敏感であると同時に、弱くもありますから……」
「どうするの?流石にこのまま拘束しておくのは無理よ」
暴れまわる猫に蒼依は少し辛そうに顔をゆがめている。
次の瞬間、猫の力がいっそう膨れ上がり紅糸を引き千切ってその身に自由を取り戻す。
間髪居れず、鋭い草が蒼依目掛けて放たれる。
「!」
「蒼依さんっ!」
リオは素早く蒼依と少女を自分の背に隠す様に立った。
無数の鋭い草はスピードを緩める事無くリオへと向かってくる。

――風……盾。

それは小さなリオの言葉。
その言葉に反応する様に大きな風の盾が三人の前に立ちふさがる。
強固な風の盾は、鋭い草の進入を許さず全て跳ね返す。
「……すごいわ。これが、リオ君の力……」
「猫ちゃんっ、猫ちゃんっ!!」
これだけの状況を見ても、心配そうに猫に駆け寄ろうとする少女。
蒼依はしっかりとその手を掴み、リオの背より前に出る事を拒む。
「……いい?あの猫は、もう貴方の知っている猫じゃないの」
「違うよっ!私の知ってる猫ちゃんだよ!!」

――風……刃。

歌う様に発せられるリオの言葉。
先程の壁同様、風がカマイタチとなり猫へと目掛けて襲いかかっていく。
「ニィギャッ!!」
機敏な動きでそれらを避けきる猫。
その姿は先程の普通の猫から、見るからに化け猫と分かる様子へと変化していた。
目は不自然な程に大きく見開かれ、血の様に真っ赤に染り、足の爪は鋭い刃となり、全身の毛が逆立ち怒りをあらわにしている。
「全く、戒は何してるのかしら。これだけの騒ぎ、気付かないはずないのに」
「……気付いてはいるでしょう。恐らく俺達がチャンスを作り出すのを待っているんだと思います」
リオの言葉に一瞬蒼依は目を見開き、ふっと表情を緩めた。
「貴方達、随分と通じ合っているのね」
「そうではないですよ。あのめんどくさい事を嫌う戒さんですから、なんとなく考えが分かるだけです」
それが通じ合ってるのよ……っと心の中で蒼依は小さく微笑んだ。
蒼依の腕の中に居る少女は変化した猫の姿に体をふるわせている。
「何……?猫ちゃん……どうしちゃったの?」
「しばらく目を閉じていなさい。……耳も塞いで」
「猫ちゃんを……助けてくれるんだよねっ!?」
「…………えぇ、"救って"あげるわ」
真剣な蒼依の目に、少女は素直に頷き言われた通り目と耳を塞ぐ。
それを確認し、蒼依は立ち上がりリオの隣へと並ぶ。
前方に身構えている猫の背後には、またも無数の鋭い草が狙いを定める様に浮かんでいる。
「戒を信じるしかないわね」
「……はい」
「私が動きを止めるから、リオ君はあの草の処理と……猫の気を逸らしてスキを作ってくれるかしら?」
「……分かりました。――行きますっ」
リオの言葉が響いた瞬間、三人を覆っていた風の盾は消える。
それを狙い、猫はここぞとばかりに先程の数倍の数の鋭い草を放つ。
しかし、それらは全てリオの風の力で無力となり地へと落ちる。
間髪入れず、蒼依の紅糸が張り巡らされ再び猫はその動きを封じられる。
「……っ、ごめんなっ!」
リオは猫に近づき軽い突風をあびせた。
その時、猫の殺気は一瞬全てリオへと向けられた。

――ズキューンッ!!!

瞬間を逃さず、タイミングバッチリに銃声は鳴った。
三人の遥か後方から戒は銃を構え立っていた。
戒の撃った銃弾は、見事に猫の脳天に命中し、動きが止まった。
蒼依が紅糸を解くと、その体はドサリと地へ落ちる。動く気配はない。
「――よぉ、お疲れ」
陽気な戒に、リオと蒼依はキッと鋭い視線を向ける。
意気の合った二人の視線に戒はビクリと肩をすくめ、静かにその場にたたずむ。
「……猫……ちゃん……?」
目と耳を塞いでいた少女がゆっくりと動き出す。
止める者は誰もいない。
「猫ちゃ……」
少女が近づき声をかけるが、猫はピクリとも動かない。
「なんでっ……助けてくれるって……!猫ちゃんっ!」
「…………ニャ……」
「!」
小さな鳴き声。
弱々しいけれど、どこか嬉しそうな鳴き声。
「……貴方にありがとうって……」
蒼依の言葉に、少女は黙り、ただ猫をその胸に強く抱きしめるのだった。





夕暮れ。
少女は全てを受け入れ、最後には可愛らしい笑顔を見せ家へと帰って行った。
姿が見えなくなるまで見送った三人はホッと息をつく。
「なんとか無事解決したわね」
「そうですね、蒼依さんのおかげです」
にっこりと微笑むリオに、蒼依も微笑返す。
「あら、リオ君のおかげよ。フフ、私を守ってくれてありがとう」
「いえ、蒼依さんのお力がなければ解決出来ませんでしたよ」
やたらと仲良さげに話す二人。
居所なさげに戒は二人の数歩後ろを歩いていた。
「……それにしても、戒……」
「なんだよ?」
蒼依の呼び声に、不機嫌丸出しで返事を返す戒。
「随分と今回は楽してくれたじゃない。それなのに、おいしい所は持っていって…………お仕置きしていいかしら?」
「はっ!?……おわっ!!!」
いいかしら?っと言い終わった瞬間には既に戒の全身に紅糸が絡んでいた。
もちろん、戒は身動き出来ず目を点にしている。
「なっ、蒼依!てめぇっ、どうゆうつもりだっ!!」
「私への借金。……リオ君への借金もあるんでしょう?」
「えぇ、それなりな金額が」
「リオ……お前っ……!!」
蒼依とリオは顔を見合わせ、ニヤリと微笑み合う。
「借金返済の為に、そこで営業活動でもしてなさい」
「あ、それいいですね。戒さん、しっかりとお願いしますね」
「なっ……!!」
「私達は夕飯でもいかが?」
「そうしましょうか。俺いいお店知ってるんですよ」
「あら、それは楽しみだわ」
戒の事なんか眼中に無いと言わんばかりに二人はさっさとその場から離れていく。
しっかりと全身に紅糸が絡み、動けない戒は腹の底から叫ぶのだった。
「蒼依っ、リオっ……お前らっ……!!…………っくそ、離せぇえええええっっ!!!」



―fin―



*******登場人物(この物語に登場した人物の一覧)*******

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【6077/菊理路・蒼依/女性/20歳/菊理一族の巫女、別名「括りの巫女」】

NPC
【葛城 戒】
【リオ】


*******ライター通信*******

菊理路蒼依様

初めまして、ライターの水凪十夜と申します。
この度はよろず屋【童夢】の二人にご協力下さりありがとうございました。
蒼依様の素敵な技"紅糸"を存分に使わせて頂いたのですが、いかがでしたでしょうか?
"リオに守ってもらう"と"戒を縛り付ける"のエピソードも盛り込ませて頂きました。

戒を拘束した後、リオと蒼依様はお洒落なレストランで楽しく食事をした様です。
しばらく会話を楽しみ、仕方ない……っとゆう事で戒を釈放。
一人怒り狂う戒ですが、リオと蒼依様は当然気にする事はなく……(笑)
色々な意味で、リオにとっても戒にとっても充実した1日となった様です。
願わくば、蒼依様にとっても充実した良い1日となっていると嬉しいです。

誤字脱字がございましたら申し訳ございません。それでは、楽しんで頂ける事を願って……。