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■ドキドキ肝試し■

志摩
【5686】【高野・クロ】【黒猫】
 現在扉を開けると白い砂浜、な銀屋。
 今日は肝試し大会が行われる。
 奈津ノ介はその準備に走り回っていた。
「はい、じゃあくじひいて一緒に行く人決めてくださいね」
 あたりは暗闇。ぼうっと灯りは狐の炎だった。
 聞こえるのは海の満ち干きの音だ。
「この裏山の道上がっていって、そこにある祠においてある貝殻持って帰ってきてくださいね」
「脅かすことに喜びを感じるものたちばかりだから気をつけるのだぞ」
 奈津ノ介の隣で藍ノ介が集まったものに一声かける。
 全員がくじを引き終わり、そして相手も決定。
「はい、じゃあ五分ごとに出発です。道筋はちゃんと書いてあるので迷うことはないと思います。じゃあ一組目どうぞ」
 町の明かりもなく真っ暗、さらに山の中は暗く、そこへはひとつ、小さな灯りだけをもって入っていくようだ。
 足元もよくわからない、険しくない、なだらかな山道がうっすら見えていた。
 何が起こるのかドキドキだ。



ドキドキ肝試し



 現在扉を開けると海の家、な銀屋。
 今日は日も暮れて、生暖かいある意味良い風が拭く中、肝試し大会が催される。
 ぼうっとした灯りの下、奈津ノ介はそれぞれにくじをと差し出している所だった。
「夏ですし、肝試しはつきものよね。山道歩くの久しぶりだなぁ。どれくらいぶりだろう」
「そんなにきつい山道じゃないから安心してください。あ、風槻さんは最後の出発ですね」
「最後? それは楽しみよ」
「ほなうちも引かしてもらおうかな」
 すっと一つ、どこからともなく現れたクロも一本くじを。
 引いたくじには何も印は無く、そして風槻が引いたものと一緒だった。
「あたしと一緒、みたいね」
「ふふ、よろしゅうな」
「あ、もうすぐ説明して出発ですからね」
 奈津ノ介は一言残して、そしてまだくじをひいていない面々をめぐる。
「おまえさんは怖がり?」
「そんなこともないわ」
「よしよし、ほんならお経の一つでも教えながら進もうか」
「お経……それも勉強ね」
 そんな事を話していると肝試し開始前のちょっとした説明中。
「道は一本です、そのまま道なりに行くと、途中に祠があります。そこに貝殻を置いてあるので、とって戻ってきてください。途中には一応妖怪の人たちが脅かし役でいるんですけど……何か勘違いしているかもしれません、気をつけてください」
「脅かし組というと……やっぱりいつもの面々なんやろね」
「きっとそうね」
 雑談交え、時間つぶしをしていると声がかかる。
「灯りに提灯です」
「足元気をつけるのだぞ」
「藍の字に言われなくとも」
「そうね」
「なっ……!」
「さぁ出発!」
 奈津ノ介と何か言いたいのを飲み込んだ藍ノ介に見送られ、二人は出発した。




 てくてく歩くことまだ数分。
 山道の中には朗々とクロの読経の声が響いていた。
 おかげで臨場感はばっちり。
 そして風槻もまた、その読経を少しずつ吸収していた。
「なかなか筋がええわ、おまえさん」
「そうかしら、ありがとう」
 夜道に響く二人の声は、きっと脅かし役にも聞こえているはず。
「怖がったりしてないかしら」
「どうやろな……」
 と、苦笑しつつ歩む中、がさっと繁みが動く。
 その音に二人は反応した。
 けれどもその繁みではなく、後ろから。
「わーーー!!!!!」
「わー」
「!!」
 不意打ちにクロと風槻はびくっとする。
 びくっとして、そしていつもの用に。
「変装も何もなしなのね、ちょっとびっくりしたわ」
「……驚かす場所が悪い、30点や。小判の坊はよう頑張ったな、まだ甘いけど80点や」
「え、脅かした場所一緒なんだけど……」
 クロの点数に遙貴は苦笑しながら言うが、何を言っても無駄なのはわかっている。
 一方小判は褒められて、嬉しそうににこにこ、尻尾もゆらゆらとしていた。
「まぁ、散々脅かしてやる気もなくなってるところなんだ」
「え、俺はまだやれるよ!」
「やる気満々なのね、小判君。でも……あたしたちで最後なのよね」
「終わった……!」
「えー」
 解放された、と笑顔の遙貴とまだ脅かしたりない小判。
 それなら、と風槻は提案する。
「一緒に進んで、この先にいる脅かし役を脅かせばいいのよ、ね?」
「なるほど、そうする!」
 ということで。
 残りの山道、遙貴と小判も加わって、四人になって歩き始める。
「この先は千パパたちがいるんだよねー」
「そうだったな……途中でものすごい笑いが響いてきたりしたが……何してたんだろう」
「笑い?」
「笑いと、苦悶の声、かな?」
 そうして歩いていくと、普通に脅かそうとする様子もなく、千両と南々夜は木の下で遊んでいた。
 遊んでいるのは、南々夜だけなのだが。
「あれー、皆どーしたのー?」
「そっちこそ何してるの……?」
「あっは、四の字固めー」
「ギブ、ギブだっと言ってるだろうが南々夜!!」
「えー」
「ぎゃー!!!」
 何がどうしてこの状況なのか、そのツッコミは後にして、とりあえず千両の救出が先だった。
「おまえさんたち、何であんなんしとったん?」
「千ちゃんとー、プロレスとかの話してて、技の話になってたからかけてただけー」
「うわー」
「千パパ、よく生きてたね」
「ふふ、三途の川が時々みえたよ……」
 ちょっと泣きそうで遠い目の千両と全く悪気のない南々夜。
 と、気がついたように遙貴が問う。
「ずっとああいうことしてたわけか?」
「うん」
「ちょっと休憩はあったがな……」
「ということは、高笑いは南々夜で、苦悶の声は千両か……すっきりした」
 疑問も解決され、貝殻のある祠はもうすぐ先、と進む。
「あれだねー」
 暫く行くと、薄暗い夜闇の中にぼうっと蝋燭の灯りで浮く祠。
 近づくと、ちゃんと貝殻がおいてある。
「ちゃんととったわ」
「俺がもちたい!」
 風槻は貝殻を持ちたいという小判に渡す。
 小判は嬉しそうにありがとうと言った。
 そしてここからは、下り道。
 わいわい騒ぎつつ、歩いていくとぼんやり、灯りが見える。
「あ、ゴールだね!」
「山道も終わりね」
「そうやね。あら、あそこにおるんは藍ノ介?」
「だねー、藍ちゃーん」
 南々夜に呼ばれて振り向く藍ノ介。
 けれども、顔が、ない。
「……顔があってもなくても、スーツとかは似合わないわね……」
「藍の字……何やその気の抜けた驚かし方は! ちょっとそこに座り! 説教したるわっ!」
「な、驚きもせずにいきなり……!」
「驚くに値しないのよね」
「はいすわりっ!」
「うっ!」
 逆らえるはずなく、藍ノ介はその場に正座。
 そしてクロからしっかりお説教を食らう。
「うう……なんでわしが……」
「……こら藍の字!真面目に聞かんとしばくで?!」
「だっ!」
 スパーンと良い音、ハリセンでクロは藍ノ介の頭をはたく。
「ハリセンなどどこからっ……!」
「我からだな、十分絞られておけ」
 クロのお説教は暫く続く。そしてそれもひと段落。
 そろそろ海の家へ戻らないとなということに。
「説教などもう、いやなのだ……! ……ん」
 と、藍ノ介は何かに気がついて、風槻の前にしゃがむ。
「な、何?」
「まめができておろうが! ほれ、背中貸してやる」
「え、そんな……」
「ほら早く」
 風槻は、渋々と藍ノ介の背を借りる。ちょっとだけ嬉しいものの、それは表には出さず。
 肝試し最後の組も、無事に海の家へ戻るのだった。




 肝試しも終わって。
 花火をしようということに。
 事前にそれらはしっかりそろえられていた。
「スイカもあるんで、よかったらあとでどうぞ」
 海の家の前、花火は綺麗な火花を散らせて行く。
「小判君は、あそこでずっとわーってしてたの?」
「僕らが行った時は、小判君の脅かしと、遙貴さんの一枚二枚だったよ、ものすごくやる気のない……」
「小判に起こされて仕方なくやってたんだ」
「あ、ちょっ、人に向けちゃダメだよ花火!」
「そんなの知らない」
 遙貴は花火を静の方へ向けたりと地味にもう話すなととても押さない抗議行動。
「あっはー、遙貴ちゃん恥ずかしがってるー」
「あれ恥ずかしがってるの……?」
「うん、恥ずかしがってるよー」
「なるほど……あとでインプットしておこうっと」
 ひとつデータが増えたと風槻は笑う。
「な、そこ勝手に人のことを!!」
「わー逃げるー」
「待て、逃げるな南々夜!!」
 風槻を南々夜の話を耳にして、遙貴は花火振り回しつつ走る。
「……相変わらず子供だ……」
「でも楽しそうだねっ!」
「だねー、俺もあとで追いかけっこしよー!」
「私もするっ!」
「じゃ、じゃあ俺も……」
 小判と百合子がはしゃぐ中、自分もという千両を二人は見る。
「千パパはダメー」
「な、なんでだっ!?」
「だってー、すぐ捕まえられそうで、おもしろくないよね」
「そういわれると……そうかも! じゃあ二人でしようね!」
「そ、そんなっ……!」
 ショックを受ける千両をクロは笑ってみる。
「ちょっと小判と離れてみるのも勉強やで?」
「耐えられない、そんなの耐えられない……!!」
「……はいはい、わかったから千の字もそこは邪魔になるからあっちで藍の字とぐちぐちしとり」
 首根っこ掴んで、クロは千両を引きずる。
 そして、先ほどまで散々弄られ続けて凹み中の藍ノ介の隣へ置いた。
「ええ大人がホンマにしっかりしぃや」
「わしを散々傷つけた汝がそれを言うのか!?」
「親父殿がアホなだけですよ。クロさん、あっちでおっきな花火打ち上げますよ」
「あら、それは楽しみやわ」
 クロも砂浜をさくさくと、奈津ノ介と一緒にその場所へ。
 そんな後姿を、大人二人はじっと見る。
「わしら、邪険にされとるよな?」
「……俺は貴様と一緒じゃないぞ」
「……強がりだな」
 駄目大人はそこで、互いを罵り合うのだった。
「何か騒いどるようやで、あの二人」
「いいんですよ、ほっておけば。じゃあ行きますよー、ちょっと離れてくださいねー」
 打ちあがる花火に皆顔を上げて。
 夜空に浮かんで散るそれは、夏の締めくくりのひとつでも、あった。



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」】
【5686/高野・クロ/女性/681歳/黒猫】
【5884/小坂・佑紀/女性/15歳/高校一年生】
【5976/芳賀・百合子/女性/15歳/中学生兼神事の巫女】
【6235/法条・風槻/女性/25歳/情報請負人】
(整理番号順)


【NPC/藍ノ介/男性/897歳/雑貨屋居候】
【NPC/小判/男性/10歳/猫】
【NPC/南々夜/男性/799歳/なんでも屋】
【NPC/千両/無性別/789歳/流れ猫】
【NPC/遙貴/両性/888歳/観察者】
【NPC/奈津ノ介/男性/332歳/雑貨屋店主】

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■         ライター通信          ■
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 いつもお世話になっております、志摩です。
 もう夏も終わっちゃう…!!とってもピンチでした(何
 夏で肝試し、皆様が楽しんでいただけたなら、幸せでございます!
 ぼちぼち、それぞれ、リンクするところがありますのであわせて皆様のを呼んでいただけると、良いかもしれません!
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております!