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■ドキドキ肝試し■

志摩
【5566】【菊坂・静】【高校生、「気狂い屋」】
 現在扉を開けると白い砂浜、な銀屋。
 今日は肝試し大会が行われる。
 奈津ノ介はその準備に走り回っていた。
「はい、じゃあくじひいて一緒に行く人決めてくださいね」
 あたりは暗闇。ぼうっと灯りは狐の炎だった。
 聞こえるのは海の満ち干きの音だ。
「この裏山の道上がっていって、そこにある祠においてある貝殻持って帰ってきてくださいね」
「脅かすことに喜びを感じるものたちばかりだから気をつけるのだぞ」
 奈津ノ介の隣で藍ノ介が集まったものに一声かける。
 全員がくじを引き終わり、そして相手も決定。
「はい、じゃあ五分ごとに出発です。道筋はちゃんと書いてあるので迷うことはないと思います。じゃあ一組目どうぞ」
 町の明かりもなく真っ暗、さらに山の中は暗く、そこへはひとつ、小さな灯りだけをもって入っていくようだ。
 足元もよくわからない、険しくない、なだらかな山道がうっすら見えていた。
 何が起こるのかドキドキだ。



ドキドキ肝試し



 現在扉を開けると海の家、な銀屋。
 今日は日も暮れて、生暖かいある意味良い風が拭く中、肝試し大会が催される。
 ぼうっとした灯りの下、奈津ノ介はそれぞれにくじをと差し出している所だった。
「百合子さんも、どうぞ」
「うん、えいっ!」
 くじを引くとソコには二本の線が。
「二番目、ですね。まだ一緒に行く人は未定です」
「そうだんだ。肝試しは……うーん、実家近辺で見慣れちゃってるから恐くないかも……でもでも誰が出てくるのか楽しそうだよね!」
「見慣れ……そうですか。でも脅かすのやってる人たちが……何か勘違いしてるかもしれないので注意してくださいね」
「勘違い……それはそれで楽しみかもっ!」
「あ、静さんもどうぞ」
「うん、じゃあ……」
 と、近くにいた静にも奈津ノ介はくじを差し出す。
 引いたくじには二本線。
「あ」
「私と一緒だね!」
「うん、よろしく」
 静と百合子は一緒、と笑いあう。
「肝試しなんて中学の時以来かな……そうだ、虫刺されの薬とかお茶を持って行ってもいいかな? 結構蚊に刺されたり暑いと思うし……驚かし役の皆にも御裾分けする気だけど……駄目かな?」
「あ、それ良いとおもう! 虫に刺されたら辛いし……喉も渇くよね! あと懐中電灯と蝋燭とマッチも用意しておこう、うん」
 それを準備しよう、と二人は海の家へ。
 虫刺されの薬や水筒などはバッチリあった。
 準備して外に出ると肝試し開始前のちょっとした説明中。
「道は一本です、そのまま道なりに行くと、途中に祠があります。そこに貝殻を置いてあるので、とって戻ってきてください。途中には一応妖怪の人たちが脅かし役でいるんですけど……何か勘違いしているかもしれません、気をつけてください」
「準備もしっかり、忘れ物無し!」
「すっごくノリノリだね」
「楽しみだよ」
「次は……静さん、百合子さんですよー」
 こっちです、と呼ばれて、二人はスタート地点へ。
「はい、どうぞ」
「あ、提灯だね」
「夜道は暗いですから。足元気をつけてくださいね。じゃあどうぞ」
 奈津ノ介と藍ノ介に見送られ、二人は手を振り振り、出発。




 てくてく歩くことまだ数分。
「何も起こらないね」
「うん、脅かすとかも……全然ないし。でも、どんな脅かし方するのかな……楽しみだよ」
「こんにゃくでぴたっとか」
「こんにゃく……それにしても山道大丈夫? 歩き疲れない?」
 静の言葉に大丈夫、と百合子は頷く。
 下駄で着物、そんな姿でも百合子は普通の道と同じように山道を歩いていく。
「歩きなれてるからね」
「そっか」
 山道を歩いていると、風が吹いて木を揺らす。
 その音に交じって、他の音も、聞こえてきた。
「……何か聞こえるよね」
「うん……いちまーいにまーい……みたいな?」
 けれどもその聞こえてくる声は、とてもやる気がなく投げやりで。
 違和感を感じて、歩む速度も少しゆっくりに。
 と、ぼうっと淡く浮く光の中、誰かがいる。
「!!」
 木の根元しゃがみ込んでいる人物は着物姿、深く布を頭に被って、手の中の何かを数えているようで。
「一枚二枚といったら」
「お皿だねっ!」
 何もなさそうで、誰がしてるのかなと思いつつ二人は距離を詰める。
 相手の顔がわかる距離に踏み込んだ瞬間。
「わー!!!!」
「!!」
 二人同時に息を呑む。
 右斜め後方、大きな声とともに飛び出してきたのは小判だった。
「ああ、吃驚したー……」
「うん、恐いっていうよりびっくり……」
 一瞬びくっとしたが、百合子も静も何時もと同じように笑顔で。
「よし、我の仕事は終わりだ。あとは小判に任せた」
「えー、遙貴さんもっと頑張ってよー」
「そんなテンション、我には無い」
 ふいっとそっぽを向いてとても不本意そうな遙貴を見て、百合子と静は笑う。
 確かに遙貴が真面目にやるところは少し想像しづらい。
「まぁ、僕らのあとってまだ人いるし、頑張ってね。あ、お茶飲む?」
「そうそう、できるよ遙貴さんなら!」
「できるできないの問題じゃない。というかそろそろ行かないと追いつかれるぞ。でも茶は飲む」
「しっかり飲むんだ、はい」
 静は遙貴に茶をついで渡す。もちろん小判にも。
「これでまた、頑張って脅かせれる! おにーさんありがとっ」
「どういたしまして。頑張ってね」
「そっちもねー!」 
 小判に両手振り振り見送られ、二人はまた歩き出す。
 暫く何もなく、虫の鳴き声が時々聞こえる暗闇の中。
「あ」
「どうしたの?」
 静はへばって倒れこんでいる千両らしき人物を見つけた。
 その隣では南々夜が寝ているようで。
「ほら、やる気なさそうだよね」
「うわぁ……」
「だから、ね」
 静はこそこそっと百合子に耳打ちする。
 それに百合子はにっこり笑って頷いた。
 二人は静かに、近づいていく。
 そして。
 ぺたり。
 冷たい手を背後から首に絡ませたりし、耳元で思い切り悲痛そうな声を作り、囁く。
「……助け……て……」
「!!! な、何!?」
「ふぁー……あれー、おはよー」
「驚いたのは千両さんだけか……」
「え、あれ? お、脅かされ……!?」
「うん、だって寝てたし」
 吃驚して飛び起きた千両と、暢気に目を覚ました南々夜と。
「……ああそうか、南々夜にじゃれられて疲れて寝てたんだ……」
「えースキンシップだよー」
「やりすぎだ。起こし方はともかく……起こしてくれて有難うな」
 苦笑しながら千両は言って二人の頭をぽんぽんとなでる。
 そしてもうすぐ祠があると告げた。
「まーラストにも何かあるかもだからー、気をつけてねー」
「ラスト?」
「気にせずいくといい、ほらほら」
 いきなさいと背中を押されて百合子と静はなんだろうと思いつつまた歩み始める。
 そして暫く行くと、薄暗い夜闇の中にぼうっと蝋燭の灯りで浮く祠。
 近づくと、ちゃんと貝殻がおいてある。
「これだねっ、あとは……坂道下るだけ」
「うん、行こうか。なんだか最後にもあるみたいだしね」
 うきうきわくわく、何があるのかなと思いながら歩む坂道。
 でも何事もなく、もうすぐゴールらしい。
 ぼうっと明かりが見え、そこに誰かいる。
「藍ノ介さんだ、ということはゴールだね」
「そうだね、何もなかったなぁ……」
 背中を向けてしゃがみ込んでいる藍ノ介に近づく。
 と、振り返った藍ノ介には。
「わっ……」
「!」
「二人ともお疲れ様だな」
 顔がなく。
 一瞬静は驚き、そしてぱっと顔を伏せた。
「……藍……介さ……どうして……酷い……」
 ぽろっとこぼれる涙は、もちろん嘘泣きなのだがそれを見破れる藍ノ介ではない。
「! な、何故泣くのだ!?」
「藍ノ介さん酷いっ! 顔が無いからだよね? 大丈夫! 絵、下手だけど顔描いてあげる!」
「な、え、待て!!」
 どこからかマジックを取り出して百合子は、迫る。
「こ、これは仮面だ! ちゃんと顔はある! 静も落ち着け!」
「仮面でも描いてあげる!」
 にじりよじり、迫る百合子から、藍ノ介は逃げた。
 だがそれを許す百合子ではなく、やっぱり追いかけ始めるわけで。
 その様子を嘘泣きをやめて静はただ笑って眺めていた。
 もちろん助けるわけは無く。




 肝試しも終わって。
 花火をしようということに。
 事前にそれらはしっかりそろえられていた。
「スイカもあるんで、よかったらあとでどうぞ」
 海の家の前、花火は綺麗な火花を散らせて行く。
「小判君は、あそこでずっとわーってしてたの?」
「僕らが行った時は、小判君の脅かしと、遙貴さんの一枚二枚だったよ、ものすごくやる気のない……」
「小判に起こされて仕方なくやってたんだ」
「あ、ちょっ、人に向けちゃダメだよ花火!」
「そんなの知らない」
 遙貴は花火を静の方へ向けたりと地味にもう話すなととても押さない抗議行動。
「あっはー、遙貴ちゃん恥ずかしがってるー」
「あれ恥ずかしがってるの……?」
「うん、恥ずかしがってるよー」
「なるほど……あとでインプットしておこうっと」
 ひとつデータが増えたと風槻は笑う。
「な、そこ勝手に人のことを!!」
「わー逃げるー」
「待て、逃げるな南々夜!!」
 風槻を南々夜の話を耳にして、遙貴は花火振り回しつつ走る。
「……相変わらず子供だ……」
「でも楽しそうだねっ!」
「だねー、俺もあとで追いかけっこしよー!」
「私もするっ!」
「じゃ、じゃあ俺も……」
 小判と百合子がはしゃぐ中、自分もという千両を二人は見る。
「千パパはダメー」
「な、なんでだっ!?」
「だってー、すぐ捕まえられそうで、おもしろくないよね」
「そういわれると……そうかも! じゃあ二人でしようね!」
「そ、そんなっ……!」
 ショックを受ける千両をクロは笑ってみる。
「ちょっと小判と離れてみるのも勉強やで?」
「耐えられない、そんなの耐えられない……!!」
「……はいはい、わかったから千の字もそこは邪魔になるからあっちで藍の字とぐちぐちしとり」
 首根っこ掴んで、クロは千両を引きずる。
 そして、先ほどまで散々弄られ続けて凹み中の藍ノ介の隣へ置いた。
「ええ大人がホンマにしっかりしぃや」
「わしを散々傷つけた汝がそれを言うのか!?」
「親父殿がアホなだけですよ。クロさん、あっちでおっきな花火打ち上げますよ」
「あら、それは楽しみやわ」
 クロも砂浜をさくさくと、奈津ノ介と一緒にその場所へ。
 そんな後姿を、大人二人はじっと見る。
「わしら、邪険にされとるよな?」
「……俺は貴様と一緒じゃないぞ」
「……強がりだな」
 駄目大人はそこで、互いを罵り合うのだった。
「何か騒いどるようやで、あの二人」
「いいんですよ、ほっておけば。じゃあ行きますよー、ちょっと離れてくださいねー」
 打ちあがる花火に皆顔を上げて。
 夜空に浮かんで散るそれは、夏の締めくくりのひとつでも、あった。



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」】
【5686/高野・クロ/女性/681歳/黒猫】
【5884/小坂・佑紀/女性/15歳/高校一年生】
【5976/芳賀・百合子/女性/15歳/中学生兼神事の巫女】
【6235/法条・風槻/女性/25歳/情報請負人】
(整理番号順)


【NPC/藍ノ介/男性/897歳/雑貨屋居候】
【NPC/小判/男性/10歳/猫】
【NPC/南々夜/男性/799歳/なんでも屋】
【NPC/千両/無性別/789歳/流れ猫】
【NPC/遙貴/両性/888歳/観察者】
【NPC/奈津ノ介/男性/332歳/雑貨屋店主】

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■         ライター通信          ■
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 いつもお世話になっております、志摩です。
 もう夏も終わっちゃう…!!とってもピンチでした(何
 夏で肝試し、皆様が楽しんでいただけたなら、幸せでございます!
 ぼちぼち、それぞれ、リンクするところがありますのであわせて皆様のを呼んでいただけると、良いかもしれません!
 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております!