■【深淵の欠片】襲撃<前編>■
天瀬たつき |
【2334】【セフィア・アウルゲート】【古本屋】 |
ずっとずっと昔。
この世の中にはとても大きな、大きな化け物がいた。
大地をひと巻きするほどに巨大なそれは混沌とした意思を持ち、いかなるものも、自らの本能のままに飲み込んだ。
そんなある日、その化け物は勇気ある者たちによって倒された。
その身体は7つに分けられ、その際に生まれたごく小さな欠片は世界各地に飛び散った。
その化け物は欠片になってなおその邪悪を失わなかった。
大きな7つの欠片は7体の化け物へと変わり、小さな欠片は自らを手にした者に強大なる力を与えると共に自らの闇にその者を染めていった。
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「朔羅、緋桜はやはり入手出来そうにないのだね」
「今の状況では難しいと思います。桜華を保護している藤也が認めてくれない限り、緋桜を手に入れることもその力を最大限に扱うことも難しいと思います」
都内某所にあるダイニングバー、<Voice>。
その主人、藍科悠己は向かいに座った青年、篠原朔羅と一振りの日本刀の話をしていた。
その日本刀の名前は「緋桜」。
都内にある桜花神社に奉納されている御神刀の名である。
それは本来朔羅の家、篠原家の所有であり朔羅にも十分に所有の権利はある。しかし、ある問題がそれを阻んでいた。
桜花神社の神主、篠原藤也が朔羅に緋桜を引き渡すことを拒絶していた。
その日本刀は神社のご神体・緋玉桜、そしてその木霊・桜華の力の源となっており、それを取り出すことで彼女に多大な影響がある、というのが藤也の言い分だった。
「でも、緋桜はいずれ必要になってくると思うんです。今はまだ深淵の欠片も大人しく、回収も比較的順調に進んでいます。でも……」
― ガタッ!! ―
その時、店の隅で大きな音がした。
2人が振り返ると、そこには一人の少女がうずくまっていた。
「当主殿!!」
「…………桜華!?」
それは木霊・桜華であった。酷く疲労していることが傍から見てもわかった。
どうやら彼女は店の観葉植物を門として、この場所に現われたようだった。
「当主殿……藤也を、雷神を助けてくれ」
「何が……あったんだ?」
事情を尋ねようと彼女の手をとろうとして気付いた。彼女は大切そうに何かを抱いていた。
「それは……緋桜!?」
「そうじゃ。これを差し出すゆえ、どうか、どうか藤也を救ってくれ……」
そこで桜華は泣き崩れた。
一方、桜花神社―
「木霊を逃がしてそれで緋桜を守れた、と思っているのか?」
大きな桜の樹の下で2人の人影が対峙していた。
「……」
一方は挑発的な様子で対峙している男に問いかける。
その表情は明らかな狂気に満ちていた。
一方は人の姿とはやや異なるものだった。その頭には1対の鹿のような角を生やし、体の至る所に「ひび」が入っていた。
彼は全く言葉を返さない。ただ、じっと桜の樹を背に庇い、敵を見据えていた。
「なぁ、雷神よ? そこまでする価値がどこにある? お前は何のためにその桜を、緋桜を守る?」
「この桜と緋桜を守ること。それが初代、そして二代目の我が主に与えられた俺の使命だからだ」
「使命? そうかい。それじゃあその使命とやらを全うさせてやるかねぇ」
にやりと笑みを浮かべた男は、その両の手に水と、炎の弾を作り出した……。
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はじめまして、またはこんにちは。天瀬たつきと申します。
随分と間が空いてしまいました。申し訳ありません。
今回が深淵の欠片の最初のひと段落となります。
前後編となっていますが、参加者は途中入れ替わっても差し障りはありません。
今回の依頼主は桜華。桜花苑シナリオでちょこちょこトラブルを巻き起こしているご神体です。
詳しい状況説明は下記の設定をご覧ください。
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募集人数:1〜4人
想定ページ数:10P前後。ただし人数、内容により変動
仕様:モノクロ
※戦闘シナリオのため、キャラクターの負傷を好まない方は予め発注内容に明記ください。
直接戦闘以外にもできることは多々あるかと思います。
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