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■第四の扉■風の城■ |
陵かなめ |
【3425】【ケヴィン・フォレスト】【賞金稼ぎ】 |
扉扉扉。
あたり一面の扉。
その中で、また一つ扉が開いた。
それは、ラビ・ナ・トットの持つ鍵が、その扉の鍵だったから。
トットは、扉を覗き込み、ぱたりと扉を閉める。そのわずかな間に、髪が激しい風で乱されたようだ。
「そうなんです、この扉の向こうは、それはもう、凄い風が吹いているんですよ」
トットは、そう言って、扉の前から一歩引いた。突風で瞳が乾いたのか、何度か瞬き。
「でもね、風だけじゃない、この先は大きなお城です」
つまり、風の城、と言う事か。
さて、貴方はこの扉の向こうに何を見る。
■Q
●どの方向へ向かうのか?(東西南北)
●モンスターと出会った場合の対処は?
■モンスター情報
基本能力にプラスして、風を纏っているモンスターが多数生息している様子です。
城を徘徊するモンスターは、人型も確認されています。
■地域情報
風の城です。
トットは城の見取り図などは持っていません。そこにお城があると言う事しか知りません。
東西南北の先には、それぞれ何かがある気配がします。
■ライターより
現在位置は、Interstice of dimension……小島の真中に建つ小屋の中です。
小屋の中には異空間への扉がいくつも存在し、今回開かれた扉も、その一つ。
どうやら、風が吹きすさぶ城のようです。
人型のモンスターは、ある程度の知能もあるようですので、お気をつけてください。
冒険にトットを伴う事も可能ですが、その場合はその旨プレイングに明記をお願いします。
■その他
●基本的に個別ノベルです。
●お友達と一緒に参加される場合は、プレイングに相手のお名前を明記してください。
●初めて『Interstice of dimension』を利用される場合は、専用のコンパスをお渡し致します。これを持ってすれば、『Interstice of dimension』内異空間で道に迷う事は無いはずです。
●冒険の結果発見したものや場所は聖獣界冒険紀行『Interstice of dimension』内で随時紹介して行きます。
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風の城
―狂乱の地下室―
□Opening
扉・扉・扉。
ケヴィン・フォレストは、その部屋の光景をそんな風に感じた。と言うか、扉だらけ! その扉に囲まれた部屋の真中で、ウサギのような耳と尻尾を持った人物がちょこんと座っていた。
「こんにちは、はじめまして! もしかして、扉の先へ出発されますか?」
ケヴィンが部屋へ入ると、その人物はひょこひょこと近づいてきて、そんな風にケヴィンに問い掛けた。
「……」
勿論、こんな小屋へ来る理由などそれ以外に無い。
ケヴィンは、肯定の言葉を言うのも面倒だと、黙って頷いた。
「そ、そうですか。ボクはラビ・ナ・トット、トットとお呼びください。では、こちらへ、はじめての冒険ですね? このコンパスをどうぞ」
ケヴィンの無表情に少しだけ気後れしたような様子を見せながら、トットはコンパスを差し出した。さして特別な装飾が施されているわけでも無い。ケヴィンはちらりとそのコンパスを見てから無言でそれを受け取った。
「そのコンパスは、扉の向こうの世界で正確な方角を示してくれます、決して迷わないように……、それでは、この先は風の城です、どうかお気をつけて」
なるほど、そう言うコンパスか。
ケヴィンは、軽く頷いて扉の前に立った。かちりとドアノブが回される音。トットがケヴィンの隣で扉を開いた。
びゅうと、勢い良い風が吹き始める。
ケヴィンは手を振るトットを背に、風の城へと足を進めた。
▼ケヴィン・フォレストは【dimensionコンパス】を手に入れた!
□01
流石は風の城と言うだけの事はある。
背後で扉が閉まると、扉の向こう側も見渡せるようになった。しかし、ゆっくりと遠方を見続ける事がまず難しい。ごうごうと風が吹きつけてくるのだ。
しかも、風は一つの方から吹いてくるのでは無い。南から強い風が吹き込んできたかと思うと、次の瞬間北と東の風がぶつかる。
ケヴィンは、風に足をすくわれないよう壁を背に一旦立ち止まった。先ほど手渡されたコンパスを覗き込む。コンパスの針はぶれる事無く一定の方向を指し示していた。確かに、これならば迷う事は無さそうだ。
さて、取り敢えず西に向かうか。
ケヴィンは、城の通路を西へと向かった。
城の通路とは言うが、決して絢爛豪華と言うわけではない。確かに、広いのだけれど、それだけ風も激しく真っ直ぐに進むにも、力が必要だ。壁は所々ヒビが入り、植物の蔦が自由に伸び絡みついていた。薄暗く、視界は良く無い。
しかし、まだ何の気配も無い。
ただ、風が吹いているだけの廊下だった。
ケヴィンは、無言で進む。
□02
『るるる〜るるるるる〜』
何かの音が聞こえてくる。
ケヴィンは、遠くのその音を聞き、足を止めた。風は止む事が無く吹き続けている。その風に乗るように、その音……いや、何かの鳴き声か、は、近づいてきた。
獣の咆哮には、感じられなかった。
けれど、足を止め身構える。油断はできない。人気の無いこの通路で、のんびりとしたその声は、不釣合いだった。
『るる〜るるる〜』
吹きつける風が視界を奪う。ケヴィンは、片手で顔を庇いながら、それが近づいてくる様子を見ていた。
遠く通路の奥から現れたそれは、地面を移動していた。
丸い。
それだけの印象だった。
しかし、風に煽られるかのように、それは速度を増し近づいてきた。すると、段々に様子がわかる。まず、耳がある。そして、良く見てみると尻尾も確認できた。しかし、耳と尻尾が天地を逆さまになりながら入れ替わっている。
風の向きが変ると、そちらに流される。身体は、ふっさりとした体毛に覆われているようだ。
つまり、まとめると。
耳と尻尾を持った、ふわふわで丸い生き物が、風に翻弄されてくるくると回りながら近づいてくる、と言う事になるか。
ケヴィンは、その様子を見ながら、思わずしゃがんだ。
『るるる〜るる〜』
鳴き声や容姿から、それがモンスターであると言う事はわかる。
が、これは風を纏うと言うより、風に遊ばれていると言うのだ。
ついに、それはケヴィンの手元まで流されてきた。敵意も無さそうだ。いや、モンスターにとっては、それどころでは無い、と言うところか。
ふさり、と。
それが、ケヴィンの足にゆっくりとぶつかった。痛みは無い。ふわふわの体毛と、風に翻弄されるような軽い身体がそうさせたのだろう。
ケヴィンは、興味が無さそうに、人差し指でそれをつつき立ちあがった。
敵意が無いのなら、特に関わっても何も無いだろう。
『るる〜……』
その声を聞きながら、ケヴィンは一歩足を踏み出した。
そして、違和感に気が付く。
ごうと吹く風に、髪が乱される。風の音以外が、聞こえない。その髪を押さえて、振り向いた。
そこに、あの丸くてふさふさした生き物の姿は無かった。忽然と、それは姿を消していた。
□03
周囲に気を配りながら、辺りを見まわした。
何の気配も無い。
しかし、アレが忽然と消えたのは、少し不可思議な気がした。まだ、あのふさふさの体毛を触った感触が指先に残っている。周囲、とは言っても、ずっと西の方角へ進んできた。一本道だったので、振り向いても同じような通路が伸びているだけだ。風は、止む事が無い。
大きく、ため息を一つ吐き出した。
とにかく、一度落ち着いた方が良いだろう。ケヴィンは、最初この城へ入ってきた時と同じように、通路の端により、壁に寄りかかった。それは、丁度、あの丸くてふさふさした生き物が消えた場所。
何があった?
しばし、風に吹かれる。
が、それ以上、何も無い。
ケヴィンは、仕方なく、身を起こした。その時だ。
ガゴン、と、今までに無い音が廊下に響き渡った。背にしていた壁に手をやる。薄暗くて気が付かなかったのだが、良く見ると、壁に一つ材質の違う個所があった。それが、少しばかりくぼんでいた。ケヴィンが背を傾けた時には無かったくぼみ。力をかけ、戻す事によってそれが現れた感じがする。
ケヴィンは、そのくぼみに手のひらをあてがい、ぐっと力を込めた。
ガゴン、ガゴン、ガゴンと、同じような音が響く。
すると、今まで何も無かったはずの通路の真中に、大きな穴が開いた。どうやら、仕掛けのスイッチを探り当てたようだ。
『ぐおおおおおおおおおおお』
はっと身構える。
今までに無い、何者かの気配が漂い始めた。
ゆっくりと、開いた穴を覗く。すると、下方に伸びる緩やかな階段が続いていた。ケヴィンはやはり無表情だ。
しかし、このまま真っ直ぐ西へ進むよりも、楽しい事がありそうな予感。
階段の先は見えない、が、すぐ近くに殺気は感じられない。ケヴィンは、ゆっくりと、地下への階段へ進んだ。
□04
ざりざりと、自分の足音が耳につく。広い通路を歩いていたものとは、全く別の緊張感を感じているせいかもしれない。
『おおおおー』
地上で聞いた咆哮が、更に音を増す。びゅうびゅうと吹き荒れる風に乗り、地下へと続く階段を包んでいた。
どれくらい、降りただろうか。
一つ大きな風が吹きぬけた。先を見ると、階段が終わり広い空間がうかがえる。薄暗いので、先の方まで見通す事はできないが、何者かの気配は感じていた。一つでは無い。殺気を帯びた気配が二つ、ケヴィンを待ち構えているようだ。
腰の剣に手を添える。
いつでも応戦できるよう、慎重に足を進めた。
『びゅあああああああ!』
一瞬の出来事。
気合の乗った咆哮と共に、現れたのは振り下ろされた剣。紙一重で、その切っ先をかわし横に飛ぶ。後から襲ってくる風。通路に吹いていた風とは明らかに別物。それは、見えない刃となってケヴィンを襲う。
ぶん、と、ケヴィンは剣を振りぬいた。
剣の勢いと風圧で、襲い来る風を切り裂く。それで全てを相殺する事ができなかった。風に切り裂かれた髪がはらりと舞う。
『ダレダ』
『オマエハ』
片言の言葉が、吹き荒れる風の間から聞こえてきた。ケヴィンは、剣を構え、相手を見据えた。正面に一体、右に一体、それらは居た。
何をするのか?
それを確かめるために、ここに来た。
ケヴィンは、しかし、問答するのも面倒くさいと、地面を蹴った。何より、止まってしまっては、二方から狙い撃ちにされてしまう。暗い視界に見えたそれらは、朽ち果てた人の骨の塊のようだった。ただ、両足で立ち両手で剣を握っている所を見ると、意志を持ったモンスターと言うところだろう。突然の来訪者であるケヴィンに、全く歓迎の意を示さず、むしろ殺気を帯びて威嚇してくる。
ごうごうと風が吹き荒れる地下の空洞で、だん、と地面を蹴る音が響いた。
右に飛んだケヴィンは、迷い無く剣を振り下ろす。
瞬間、骸骨の剣士は、周囲の風を吸い込んだ。すると、風が剣士を守るように躍り狂う。ケヴィンの剣は、その風に跳ね返された。
なるほど、風を纏うモンスターと言うわけだ。
態勢を立て直し、柱を背に再び剣を構える。二体相手に、背後を取られるのは嫌だった。ごうと、また一度、大きな風が舞う。ここに吹く風を相手が纏うと言うのなら、それは無限の鎧に思えた。
かすかに、しかし、ほんのかすかにケヴィンの口の端が上がる。
風を纏うモンスター。こんな特殊な奴等と、そうそう闘えるものでは無い。胸が高鳴るのを押さえ、じりじりと間合いを詰める。
『カエレ』
『オマエハ、ココ、ニ、ヨウハナイ』
だから、それを決めるのは自分自身だ。
ケヴィンは、それでも無駄な口を叩かず、踏み込む準備をする。無限の風を纏う二体の魔物。さて、どうする? 考える前に、ケヴィンは理解していたのかもしれない。
もう一度、モンスターめがけて飛んだ。
一体のモンスターが、風を集めケヴィンの剣を受け払う。瞬間、ケヴィンはバランスを崩しその場にうずくまった。背後から、もう一体のモンスターの剣が唸りを上げる。
ぶん、と、振り下ろされる剣。
「……っ」
寸での所で、ケヴィンは低く横に身体をスライドさせた。
ごおうんごおうんと、ぶつかり合う魔物の風と風。その激しい音が周囲に響き渡る。ケヴィンは素早くその場から身を引き、消耗した風の鎧を確認して、モンスターの背後から剣の柄で思いきり殴った。
がらんがらんと、崩れ落ちるモンスター。
『ア、レ?』
そう、無限の鎧を持つもの同士、お互いの風をぶつかり合わせ、蒙昧させてしまえば良いのだ。
『オマエ、セイジャク、ミダスモノカ』
これで、残るは一体のみ。その骸骨剣士が、ケヴィンに語りかけた。
「いや、殺気立って静寂を乱しているのは、むしろお前等だな」
ケヴィンは小さく肩をすくめた。切り捨てるのではなく、ただ組み合わさっている骨を解体した事で、残りの一体は戸惑っているようだった。殺気が薄れて行く。
彼等は、一体何を守っていたのだろうか?
骸骨剣士との睨み合いが膠着状態にさしかかったその時、
『るる〜るるるるる〜』
『るる〜るるる〜るる』
『るるるる〜るるる〜』
『るる〜る〜るるるる』
『るるるるる〜るる〜』
全く緊張感の欠片も無い、あの鳴き声がわさわさと聞こえてきた。
□Ending
丸くてふさふさとしたモノ達が、いくつも集まり楽しげに踊る。
風に遊ばれ、風に乗り、そして楽しく歌い躍る。
ケヴィンは、剣を鞘に戻し、その光景を見上げていた。
薄暗い広間で、ふわふわと集まるそれらは、何だか心休まる光景だった。見ているこちらまで、楽しい気分にさせてくれる。
『オマエ、フワリ、クウカ?』
ケヴィンの隣でその光景を見上げる骸骨が、少しだけ小さな声で問いかける。
フワリ……、と言うのが、あの丸い生き物の名前なのだろう。
しかし、食うとは心外な。ケヴィンは、呆れたように首を振り、答えた。
「そんな趣味はねぇ」
『ナラ、イイ』
もう片方で、自分の骨を必死に組み上げながら、崩れ落ちたはずの剣士が頷いた。骨を集めただけのモンスターは、風の力で身体を保っているようだった。つまり、骨と風があればここでは再生が可能なのだろう。
もう一度、フワリ達の踊りを見上げる。
確かに、面白い光景だ。
――ただ、骸骨に囲まれて見るもんじゃねぇな
と、ケヴィンは一人、苦笑いを漏らした。
▼ケヴィン・フォレストはフワリの地下室を発見した!
<End>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【3425 / ケヴィン・フォレスト / 男 / 23歳 / 賞金稼ぎ】
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■ ライター通信
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□ケヴィン・フォレスト様
はじめまして、初めてのご参加ありがとうございます。
風の城での冒険お疲れ様でした。無口で無表情で……そんなケヴィン様の様子を、想像を膨らませながら本当に楽しく書かせて頂きました。
発見した物につきましては、後日Interstice of dimension内にも追加致しますので、ご確認下さい。
少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
では、また機会がありましたらよろしくお願いします。
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