■魔女の系譜■
水貴透子 |
【5973】【阿佐人・悠輔】【高校生】 |
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河川敷で発見された男性の遺体。
その遺体に添えられるようにして置かれていた一枚のカードがあった。
『断罪されるべき咎人よ、残るはあと一人』
警察はこれを『殺人予告』と見なして捜査を続けている。
だが、手がかりは一向に見つかることはなかった。
そんな中、殺人現場で一人の少女を見かけた。
黒く、長い髪が特徴の彼女は近くの高校の制服を身に纏っている。
「馬鹿な男」
ポツリと暗く沈むような声で笑みを浮かべながら呟いた。
そして、こちらの視線に気がついたのか、ニィと笑ってみせる。
その笑みは、全身を突き抜けるような寒さにも感じ、体中の穴という穴から汗が噴出してくる。
それは、恐怖なのかは定かではない。
「…ねぇ、私に関わらないほうがいいわよ。私、魔女なの」
ライターより
相変わらずの個人受注製を取らせていただいておりますので
募集人数に制限はありません。
複数での参加をご希望の場合はプレイングにご一緒されるPCの名前を書いておいてください。
ただし、複数での参加の場合はプレイングを全ての反映することが難しくなります。
個人でのご参加でしたら、書かれたプレイング全てを反映できます。
それでは、ご参加をお待ちしております。
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魔女の系譜
オープニング
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河川敷で発見された男性の遺体。
その遺体に添えられるようにして置かれていた一枚のカードがあった。
『断罪されるべき咎人よ、残るはあと一人』
警察はこれを『殺人予告』と見なして捜査を続けている。
だが、手がかりは一向に見つかることはなかった。
そんな中、殺人現場で一人の少女を見かけた。
黒く、長い髪が特徴の彼女は近くの高校の制服を身に纏っている。
「馬鹿な男」
ポツリと暗く沈むような声で笑みを浮かべながら呟いた。
そして、こちらの視線に気がついたのか、ニィと笑ってみせる。
その笑みは、全身を突き抜けるような寒さにも感じ、体中の穴という穴から汗が噴出してくる。
それは、恐怖なのかは定かではない。
「…ねぇ、私に関わらないほうがいいわよ。私、魔女なの」
視点→阿佐人悠輔&広瀬・ファイリア
まだ、夢に見る。あの悪夢の日々を――。
「‥きゃあっ!」
まだ夜も明けぬ時刻にファイリアはベッドから飛び起きる。それと同時に起きた悠輔が「大丈夫か‥?」と問いかける。
「‥お兄ちゃん‥うん、大丈夫よ」
悠輔に心配を掛けないようにファイリアは笑顔で答えるが、無理をして笑っているのが一目瞭然だった。
「‥もう寝ろ、何も心配する事はないんだから」
そう言って悠輔はファイリアの頭をポンと撫でてやる。すると安心したように「‥ん」と短い言葉が返ってきた。
その次の日、夢見が悪かったせいかファイリアは朝から重く沈んだ表情をしていた。そんなファイリアを元気付ける為に悠輔は、街へ出てみようと提案する。
「街に?何しに行くの?」
「別に?いつもみたいに散歩すればいいだろ?」
そうだね、そう答えてファイリアは準備を始める。街へ出る事で多少元気になったのか、表情が少しだけ明るくなっている。
「そういえば、新しい洋服みたい‥な‥」
街へ出て、何処に行こうかと考えているときにファイリアが呟き、言葉をとめた。それを不審に思ったのか悠輔が「ファイリア?」と呼ぶと、彼女は一人の少女をジッと見たまま止まっている。
「おい――、どうし――」
「カンナちゃん!」
悠輔がファイリアの肩に手を置こうとした時にファイリアが叫び、その少女の所へと走っていく。
「おい!何がどうしたって言うんだ!」
悠輔も意味が分からないままにファイリアを追いかける。
カンナと呼ばれた少女は「‥ファイリア‥ファイリアなの!?」と瞳に涙を溜めながら抱きついてきた。
「おい、説明しろよ。全然意味が分からない」
「あ、ゴメンっ!あのね、この子はカンナちゃん。ファイリアと同じ研究所にいた子なの」
研究所、その言葉に悠輔は何も言葉を返すことができずに黙ったままカンナを見ている。
「カンナちゃんも最近研究所から逃げてきたんだって」
カンナはぺこりと丁寧に頭を下げて「初めまして‥」と呟く。
「でもどうしてここに?」
「この辺にファイリアが住んでる所があるって聞いたから‥ファイリアを探してたの」
カンナの言葉にファイリアは「そっか」と答え「三人で遊ぼうよ!」とカンナと悠輔の腕を引っ張りながら笑顔で叫ぶ。知り合いに会えた事で悪夢の事なんて忘れたのかファイリアは楽しそうに笑っている。
「‥そうだな、何処に行く?」
とりあえずファイリアが笑っている事に悠輔はホッと胸を撫で下ろしながら呟いた。
「何処だろう、何処に行きたい?カンナちゃん」
ファイリアがカンナに問いかけると「ファイリアと一緒なら何処でもいいよ」と笑って答える。
結局、いつまで経っても何処に行くか決まらなかった為、決めたのは悠輔だった。
「あぁ、もう‥とりあえずゲームセンターでも行けばいいだろ」
ため息混じりに呟く悠輔に「ナイスアイデアだね!」とファイリアが叫ぶ。
「ふふ、本当に仲がいいのね。うらやましいなぁ‥」
悠輔とファイリアのやり取りを見てカンナがぽつりと寂しそうに呟く。カンナには、ファイリアが心を許せる悠輔のような存在が居ないのだろう。研究所から逃げ出してきたばかりだと言うから無理もないのだけれど。
「何言ってんだよ、これから俺らと仲良くなりゃいいだろ?」
「そうだよ、カンナちゃんはファイリアにとって大事な友達なんだから!」
そう言う二人にカンナは泣きそうに笑い「ありがとう」と答えた。
「あのね――――‥」
カンナが何か言いかけた所で、突然表情を険しくする。
「‥おい、アンタ‥どうしたんだ?」
何かおかしいカンナの様子に悠輔が声を掛けると、はっと我に返ったように「な、何でもない」と答えた。
「‥あたし、今日はもう帰らなきゃ‥」
「えぇー、もう?さっき会ったばかりなのにー‥」
頬を膨らませながらファイリアが不満そうに呟く。それに苦笑しながら「また明日遊ぼう、明日はずっと遊べるよ」とカンナが言うと、ファイリアは表情を軽くしながら「ホントに!?」と問う。そして自分の仕事(家事)の事を思い出し「‥明日、大丈夫かな‥」と悠輔を見ながら呟く。
「別に家事なんて時間かかるモンでもないだろ、遊ぶ時間くらいはあるさ」
悠輔がファイリアに話すと「そっかな?そっか、じゃあ明日遊ぶね!」と元気よく答えた。
「うん。また、明日ね――」
カンナの様子がおかしいと悠輔は思っていたが、深く追求する事もないだろうと放ってそのまま別れた。
「いるんでしょ?」
悠輔とファイリアの姿が見えなくなった頃、カンナは人気のない場所へと歩き出し一人呟く。
しかし人が出てくる気配はない。
「‥出てきなさいよ、他の奴らみたいに燃やされたいの?」
カンナが低く、冷たい言葉で言うと一人の男が怯えながら出てきた。
「‥やっぱりお前が‥」
男は震える声でカンナに責めるように話し始める。
「何で―?それはあたしの台詞よ。何であたしにファイリアを殺させようとしたの?」
そう、確かにカンナは研究所から逃げた。それは自分の意思で決めて行ったことだったのだが、研究所から逃げ出したファイリアを抹殺する為に仕組まれた事だったのだ。
「何で、ファイリアを、あたしに、殺させようとしたの?」
一言ずつ強調しながらカンナが問いかけ、一歩、また一歩近づく。その度に男は一歩、また一歩と下がっていく。
「け、研究所から逃げ出したヤツは研究所にとって脅威となる、だからだ!それに―‥ファイリアはお前と仲が良かったし、使いやすいと思ったんだよ!」
男は自棄になったように叫ぶ。
「そう――、二度とファイリアを殺そうなんて思わないでね。じゃないと‥殺すわ」
そう言ってカンナは男の前から姿を消した。いくら自分に酷い扱いをしてきた研究所の人間でも簡単にヒトゴロシをしたくはなかった。
「‥ふふ、もう何人も殺してるのにね‥」
自嘲気味に笑うカンナの言葉を聞くものは誰もいなかった――。
「今日はカンナに会えて嬉しかったな♪」
るん、と楽しそうにファイリアが「ね?」と悠輔に問いかける。
「あぁ、明日は家に呼んでもいいんじゃないか?」
悠輔の言葉に「そういう手もあるかぁ♪」とファイリアは楽しそうに明日の事を楽しげに計画している。
「一緒にお菓子作りをするのもいいなぁ、何をしようかなぁー‥って‥」
家の前までやってきた所でファイリアの足がピタリと止まり、悠輔の腕に自分の腕を絡めてきた。
「‥ファイリア‥?」
どうした、と言いかけた所で家の前に誰か立っている事に気がつく。
「ファイリア、お前にやってもらいたい事が出来た、ついてくるんだ」
その男は研究所に監禁されていた時にファイリアにつらく当たっていた男だった。
「嫌だ‥来ないで‥近寄らないで‥」
悠輔がファイリアの前に手を伸ばし「ファイリアに近づくな」と低い声で呟く。
「どけ、あの女を殺すにはファイリアの力しか出来ん、ファイリアを渡せ!」
「‥ファイリアに近づくなと‥言ってるだろう!」
悠輔は能力を使い、持っていたハンカチを丸めて硬くする。硬質化されたハンカチで殴られた男は「ぐぇ」と情けない悲鳴をあげて地面に倒れる。
「どういう事だ。あの女って―――」
「やっぱり、約束を守ってもらえなかったのね」
悠輔が男に問いかけると同時にカンナの声が響く。男はカンナの声が聞こえると「た、助けてくれ!」と情けない声と姿で悠輔とファイリアに助けを求めてくる。
「ファイリアを使って、あたしを殺そうとしたの?やっぱり信用ならないね、死んでもらうわ」
そう言ってカンナは掌に焔を繰り出し、男に向ける。そして放とうとした時に「だめぇ!」とファイリアが男の前に立つ。
「ファイリア‥退いて、その男を生かしてはおけない。ファイリアを殺そうとするもの、あたしの大事な友達を‥」
「駄目だよ、カンナちゃん!ヒトゴロシなんて駄目!」
「どの道、あたしはもう何人も殺している。一人増えても変わらないわ」
カンナはそう言うが、明らかに躊躇っている。男を殺さねばという気持ちとファイリアに見られたくないという気持ちがぶつかり合っているのだろう。
「っ‥避けろ!!」
悠輔が叫ぶ。カンナの気が逸れたときに男が拳銃を取り出してカンナに発砲した。
「カンナちゃん!」
「貴様!」
ファイリアはカンナに、悠輔は男に向かって走り出す。
「ひっ」
「とりあえず寝てろ!」
多少乱暴かとは思ったが、悠輔は男が何も出来ないようにハンカチ(硬質化)で殴ってやり気絶させる。
「ファイリア‥は‥ぶ、じ‥?」
撃たれているのは自分なのに、カンナはファイリアの心配をしていた。
「大丈夫、大丈夫だよ‥酷い傷なのはカンナちゃんじゃない‥」
ファイリアは泣きながらカンナに縋る。
「ファイリア、救急車を呼んだ。すぐに来るだろう」
「うん‥」
ぐす、と涙を服の袖で拭いながら答えた。
あれから数日が過ぎ、二人はカンナの入院している病院へと見舞いに来ていた。カンナの犯した罪は到底許されるものではなかった。
だが、研究所の件もあって人を助ける仕事をして罪を償って行くという事で落ち着いた。
「退院したら、頑張らなくちゃ‥」
「カンナちゃん、ファイリアも何か手伝えることがあったら言ってね、あたしも何だって手伝うから」
そう微笑んだファイリアの笑顔は、とても晴れやかなものだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
5973 /阿佐人 悠輔 /男性 /17歳 /高校生
6029 /広瀬・ファイリア /女性 /17歳 /家事手伝い(トラブルメーカー)
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■ ライター通信 ■
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阿佐人 悠輔サマ>
お久しぶりです。
今回は「魔女の系譜」に発注をかけてくださり、ありがとうございました。
設定などを拝見して、私好みなので意気揚々で書かせていただきました♪
広瀬・ファイリアサマ>
初めまして、
今回「魔女の系譜」に発注をかけてくださり、ありがとうございました。
話の内容はいかがだったでしょうか?
お二方に気に入ってもらえるような内容に仕上がっている事を祈っています♪
それでは、またお会いできる機会がありますようにと祈りながら失礼します。
―瀬皇緋澄
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