■D・A・N 〜First〜■
遊月 |
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】 |
自然と惹きつけられる、そんな存在だった。些か整いすぎとも言えるその顔もだけれど、雰囲気が。
出会って、そして別れて。再び出会ったそのとき、目の前で姿が変わった。
そんなことあるのか、と思うけれど、実際に起こったのだから仕方ない。
そんな、初接触。
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【D・A・N 〜First〜】
「お嬢さん、暇ー?」
金髪碧眼の男が声をかけてきたのは、藤田あやこの下校途中だった。
昼は神聖都学園、夜は大学の夜間部に所属するあやこは忙しい。
そんな忙しい最中に声をかけてくるなど迷惑以外の何者でもない。
「暇じゃないわ」
そう言って立ち去ろうとするも、男は同じ歩調でついてくる。
「まぁそう言わずに。いい絵があるんだよー。君、絵画とか興味ない?」
セールスか。
…冷めた目であやこは男を見遣る。
見た目はいい。すらっとしたスーツの良く似合う長身も、モデルに引けをとらない整った顔も女性受けしそうだ。
しかしあやこはその胡散臭い笑顔が気に食わなかった。全く他人に自分を見せようとしない、仮面の笑顔。
す、と視線を外し、あやこはすたすたと早足で歩く。
「興味ないか、残念」
言って、男は笑う。何もかもどうでもよさそうな笑みだった。
その後すぐ男はいなくなったけれど――なぜかその笑みが、頭から離れなかった。
◆ ◇ ◆
駅のロッカールームで、あやこはコギャルから女子大生へと変身していた。
服と化粧で女は化けると言うが、その通り。見事に変身したあやこは、自分の姿を鏡で確認して満足げに笑う。
と、鏡にちらりと映った人影に、あやこは反射的に振り向いた。
「なんであなたがここにいるのよっ!」
「うわ酷い言い草。別にいいだろ俺がどこに居ようとさ。君には関係ないだろー?」
金髪碧眼、造作の整った顔。――それはまさしく、ここに来る途中に会ったセールスマンだった。
「もう仕事は終わったし、絵を売りつけたりはしないよ。…って話してる場合じゃなかった」
男は周りを見る。
「あー、どうするかな。見られて困るわけじゃないけど、好んで見られたくもないし。でもまぁ仕方ないか、時間もないしね」
独り言なのか何なのか、とにかくあやこにはわけのわからない台詞を呟く男。
怪訝そうにあやこが男を見る。
瞬間。
男の輪郭が、揺らいだ。
色彩が褪せて、薄れる。空気に溶ける。
そして極限まで薄れたそれは、フィルムを逆回しするように再構築される。
揺らいだ輪郭は、先ほどよりも丸みを帯びたフォルムで、しかしはっきりと。
褪せて薄れた色彩は、色を変え、鮮やかに。
そして先ほどまで男が立っていたそこには――…1人の少女。
雪のように白い肌、腰まで届く流れる白銀の髪。
穏やかに細められた瞳は、紅玉の赤。
どこか儚げなその少女は、あやこに目を留めると口端を吊り上げて笑う。
「……こんばんは?」
「こ、こんばんは」
つい釣られて挨拶を返すあやこ。
ついさっき、なんだか摩訶不思議な光景を目にした気がするが、頭がまだついていかない。
そんなあやこに向かって、少女はおっとりと言った。
「興味本位で悪いのですけど、あなたはどうして年齢詐称していらっしゃるのかしら」
年齢詐称。
間違っていはいない。間違ってはいないが、なんとも微妙な気持ちになる単語だ。
というか。
「…どうしてそれを知ってるのよ」
とりあえず諸々の疑問を放り投げてそれを訊けば、少女は鈴が転がるような声で笑った。
「だって、あなたエイルと会ったでしょう。ここに来る前に」
だから知っているのだと。少女は言う。
あやこは考える。エイルというのは恐らく先ほどの男だろう。あの男が自分と会ったから、少女は自分の年齢に関しての疑問を持った。…ならば。
「つまり、あなたとさっきのセールスは記憶を共有してるってこと?」
「そうね。それで間違ってはいないわ。エイルがあなたと会ったのは下校途中でしょう? どうやら高校生の格好だったようだけれど、あなたの実年齢は高校生からは外れているようだし。エイルも仕事中じゃなかったらつっこみたかったようなの。だから代わりに」
楚々として笑む少女を前に、あやこは思案する。
さっきの男はともかく、この少女は警戒せずともよさそうな気がする。
………よし。
「年齢詐称って言うか、ある事件のときに神聖都学園に転入したから、そのまま通ってるのよ。本当は大学生。……で、あなたは何なの? どう考えても普通の人間じゃなさそうだけど」
当たり障りのないところを暴露すれば、少女は興味深げに目を細める。
「ええ、確かに世間一般の括りには入らないと自負しているわ。…人間かどうかも怪しいところなのだけど」
意味深な言葉を吐く少女。それに内心眉根を寄せつつ、別の話題を振る。
「ところで、ちょっと意見を聞いてみたいんだけど」
「何かしら?」
「高学歴で美人でおまけに胸のおっきな女もいれば、学歴も職歴もなくて性的魅力に乏しい女もいるわよね。明らかに格差があるし、階層によって得られる利益は全く違うはずなのに、何故女は団結してられると思う?」
あやこの唐突な質問に、少女は数瞬考えるような素振りをし――。
「『女』だから、じゃないかしら」
答えた。
「『女』は連帯意識が強いわ。それが遺伝子レベルのものなのかは、流石に専門じゃないからわからないけれど。性格――…後天的な、外的要因によって多少の差は出るでしょうけれど、それでも『女』だという事の影響はとても強いはず」
「ふーん…」
なるほど、そういう考え方もあるか。
少女の告げた論を自身の中で咀嚼する。わかるような、わからないような。納得できるような、できないような。
「さて、と」
少女は唐突に踵を返す。反射的にあやこは声をかけた。
「どこに行くの?」
「秘密、よ」
ちらりと振り向いたその瞳に、謎めいた光。
「ああ、一応名前を教えておくわ。これから先使うかどうかは天に任せるしかないでしょうけど。…わたしの名前はルーア。あなたは?」
「藤田あやこ」
「藤田さん、ね。機会があれば呼ばせてもらうわ。――では、失礼」
すっ、と。少女――ルーアの姿が消える。
後にはあやこだけが残された。
明らかに、普通の事象ではない。一体あの男といい少女といい、何だというのか。
「まぁ、次があればそのときに聞けばいっか」
結論付けて、あやこは大学に行くべく行動を開始したのだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【7061/藤田・あやこ(ふじた・あやこ)/女性/24歳/女子大生】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、藤田様。ライターの遊月です。
「D・A・N 〜First〜」へのご参加ありがとうございました。
専用NPCエイルとルーア、如何でしたでしょうか。
指定NPCの基本設定からあまりに外れていたので、プレイングを一部反映できませんでしたが…。
ご満足いただける作品に仕上がっているとよいのですが…。
リテイクその他はご遠慮なく。
それでは、本当にありがとうございました。
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