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■ダイスde退治■ |
大木あいす |
【2447】【ティナ】【無職】 |
この空中都市には【多目的広場】と名づけられた広場がある。
過去に訓練として晴々なんでも屋のメンバーが戦っていたその訓練を、この広場で行なおうとし作ったのである。
しかし、生身の人間相手に敵意もなしに戦うのは、どうかと晴々なる子は思っていた。そんな矢先――
「早く、早く来てください!! 大変なんです、ココさんが創ったペットが暴走しちゃって、今やっと広場に誘導できたのですが人手が! とにかく早く!」
ココの部下である鈴山翼が小回りのきく少年に変化し、なる子を家から引っ張り出した。
「なんだアレ」
なる子の家と、多目的広場は近い。木や家などの障害物もなく、すぐに見えたが、
「ココって、あんなものが好きなの……?」
「あいつ見た目どおり奇怪な技を使ってくるので、大変なんです。とにかく僕はもっと人を集めてくるのでそれまで、なんとかもって下さいね!」
翼は走り出した。聖都エルザードに向かって。
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ダイスde退治
この空中都市には【多目的広場】と名づけられた広場がある。
過去に訓練として晴々なんでも屋のメンバーが戦っていたその訓練を、この広場で行なおうとし作ったのである。
しかし、生身の人間相手に敵意もなしに戦うのは、どうかと晴々なる子は思っていた。そんな矢先――
「早く、早く来てください!! 大変なんです、ココさんが創ったペットが暴走しちゃって、今やっと広場に誘導できたのですが人手が! とにかく早く!」
ココの部下である鈴山翼が小回りのきく少年に変化し、なる子を家から引っ張り出した。
「なんだ、アレ」
なる子の家と、多目的広場は近い。木や家などの障害物もなく、すぐに見えたが、
「ココって、あんなものが好きなの……?」
「あいつ、見た目どおり奇怪な技を使ってくるので、大変なんです。とにかく僕はもっと人を集めてくるのでそれまで、なんとかもって下さいね!」
翼は走り出した。聖都エルザードに向かって。
頭はプリン。でも、身体は人間。4メートル半はあろう巨体をのっそのっそと動かして多目的広場を動き回る、『パンプキンパイ・ジュース』通称『パンジュ』は得意技、パンプキンジュース祭りを開催していた。というより向かってくるものにただ、パンプキンジュースを発射させているだけなのだが、おかげであたりはパンプキンジュースまみれで、匂いもパンプキンジュースしかしない。
「これは掃除しないと後日大変なことになりますね……」
「おや、戻ってきたのですか翼」
「あー、もお! ジュースが邪魔して近づけやしないわって、うわ!」
術をかけようとしていたララに向かって素早くジュースがかけられ、そして掴み上げられた。素早くミーダが助け出そうとするが、動き出す前に翼が連れてきた来訪者がパンジュの足元に来ていた。
「あら、まあ!」
最近、犬や狐などの動物に興味を持っていたララはおもわず喜びの声を上げた。
「なんだ、おまえ?」
巨体は来訪者を凝視した。そして、鼻をひくひくさせて、少しだけ表情を和ませた。
来訪者、ティナは遥か頭上にあるプリンを見つめた。そこから声がするが、どう見ても人間には見えない。鼻いっぱいにプリンの甘い匂いを感じて思わず顔がほころぶ。
「……おまえはあいつの匂いがしねえな」
「あいつ?」
「あぁ。オレを創った奴なんだが、あの鬼婆……それに今まで四六時中一緒にいるなんて息がつまることしてたから、こうして遊んでんだ。嬢ちゃんも遊ぶか?」
一見、ただの質問に聞こえ、口調も穏やかだったが、プリン頭にある目は笑っていなかった。
ティナは頷き、何が起こるかワクワクしながらパンジュの足元に立っていた。
パンジュはティナの身体を掴み、持ち上げた。すぐに高く高く上がり、同時に掴まれていたララも高く高く上がった。
片方の手の中で叫び続けるララと違ってティナは掴まれていることを窮屈に感じた。思ったほど力は入れられておらず、体を曲げるとスルリとすり抜けパンジュの手に乗った。
全身からパンプキンパイの匂いがする。手が痒くて擦ったり、かいたり、舐めたりした。微かにパンプキンジュースの味がする。
パンジュは口から舌を伸ばして垂れたカラメルを舐めた。それでも垂れ続けてララの頭に落ちた。
ふと、甘い香りを乗せた風が吹いた。後ろを振り返る。白い靄がすぐそこにあった。
「……雲?」
切れ目から草原が見えた。
カラメルを拭いながらララは叫ぶ。
「ちょ、ちょっと……高度が高すぎるわ。お姉ちゃんはなにをやっているの」
「お姉ちゃん……?」
「ここを管理していてね。高度や温度の調節もしているんだけど……最近、なんかおかしいのよ」
思案に沈むララは気づかなかった。
パンジュの顔が迫ってきていた事を。パンジュの――を――。
一瞬、ティナの足元がぐらついた。パンジュがララのほうを向いていた。よくは見えないが、1つ、疑問に思う。
ララの声が聞こえない――
「――ぐぷぅ。まっずいなあ! あいつ、老けてんぞ」
視界にティナを入れ、笑った。美味しそうな匂いに惑わされてはならぬ、危険な香りが漂っていた。
片方の手でプリン頭に乗せたカボチャを触った。目と口があるハロウィンで見かけるランタンだ。
そのランタンの口から一瞬、足が飛び出し引っ込んだ。
「くそッ。威勢よすぎて、喉痛え」
「あの人、食べた? 人は……食べ物じゃない」
「俺にとっちゃあ、おまえは美味そうな食いもんにしか見えねえんだよなあ~」
そういうとパンジュは歩き始めた。地面がグラグラ揺れる。
ティナの耳に悲鳴が聞こえた。下を見ると、この空中都市のシンボルである、中央のケーキにパンジュが突っ込み、壊していた。
ティナの毛が逆立った。
「お? なんだなんだあ? なんのつもりだ」
パンジュは歩きながらティナの方を見ていたが、歩くたびにケーキはぐちゃぐちゃにされていった。
小さな白い牙が光った。
ティナはパンジュの手を噛んだのだ。
「このやろッ!」
すぐにティナを掴もうと手が襲い掛かってきたが、爪が少し当たっただけで交わしきり、舐めてもあまりしみなかった。
「アー! もお!!」
甲高い声でパンジュは叫んだ。
おもわずティナは耳を塞いだ。やがておさまると傷を舐めた。
「早く俺に食われろ!!!」
覆い被さってきたパンジュの顔を、ティナは素早くひっかいた。血の代わりに出たパンプキンジュースをあび、パンジュは傷口を押さえた。
パンジュは高々に片手を上げ、そしてティナの頭上にかざした瞬間、威嚇したティナの上からプリンが落ちてきた。何個も何個も落ちてくるプリンに鼻や口を塞がれる。やっと終わった頃には体中がプリンでベトベトして匂いも甘ったるい。
「おうおう、美味さ倍増ってな♪」
そう言って笑うパンジュの声が耳に響きながら、ティナは手を舐めた。甘くて美味しいはずのプリンが、なぜだか、あまり美味しくない。
「さあ、またパンプキンジュースに溺れるがいい!」
そういうとパンジュは口を大きく開いた。キットパンジュを睨みつけ、ティナは後ろに翻った。4メートル半の高さからの着地もティナにとっては朝飯前の芸当だ。
驚く周りをよそに、ティナはパンジュを睨んだ。人を飲み、食べ物を粗末に扱う――。
「なめたマネしやがってええ!!」
パンジュは拳を振り上げ、さらにプリンを構え、飛ばした。が――、その動きはティナにとって見え透いたものだった。素早く避けると、地を蹴り、顔目掛けて何度も何度も爪でひっかいた。ようやく動きを止めた時、ティナはなんだかふっと気が抜けた――。
ここは4メートル半、地から離れた空中。
ティナの耳に微かに聞こえる声。なんだか、複数いるようで、戦っているとかそういう雰囲気ではない。
「……まったく、あんたにはあきれ……ララ」
「……!!! だって……!! お姉ちゃんが!!!」
「まあまあ。あんまりうるさくすると、この子が起きちゃいますよ。せっかく、手伝ってくれた御礼にこうしてカボチャ料理を……」
「もう当分見たくないってときに……」
うっすら目を開けようにも開けられないほど眠たい。なぜだろう。とてもふわふわしたベッドで寝ていて、ふんわり毛布がかけられている。とても、とても美味しそうな香りもしているのにねむ……。
ティナは再び眠りについた。
今度、目が覚めるときには食べきれないほど、たくさんのごちそうに囲まれているでしょう――。
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登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【2447/ティナ/女性/16歳/無職】
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ライター通信
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納品が大変遅れてしまい、申し訳御座いませんでした。
かかった日にち分のクオリティーでお届けできているかも不安ですが、いかにサイの目に忠実にできるか否か、悪戦苦闘でした。やたら、パンジュが食べたり歩いたり、ティナ様が傷口を舐めたり、ひっかいたりしているのはそのせいです。
ご参加有難う御座いました。
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