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■サヴァ・ダール■

藤森イズノ
【2778】【黒・冥月】【元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
黒石造りの その館は、異界の隅に、ひっそりと。
怪しい…怪しすぎる…そうは思うも、好奇心に勝てず。
まるで、吸い込まれるように。
私は、館の扉を開けた。

ギィィィ―……
響く、古びた扉の音。
館の中へ一歩踏み入った瞬間。
クランベリーの香りが、私の身を包む。
…良い香り。
私は、思わず目を閉じた。
だが、その心地良い香りに酔いしれる事は叶わず。
「あっれぇ?お客さん?めっずらしー」
一階のホールでボーッとしていた私に、降り落ちる声。
声は、上から。
パッと顔を上げて見やれば、
階段の手すりに肘を付いて、ニコニコと微笑む男と、
その隣で憮然としている男が目に映る。
「………」
言葉を発さず、ただ二人を見やっていると。
「二人とも…挨拶はしたの?」
二人の男の後ろから、黒装束に身を包んだ女が姿を現した。
女の言葉に、二人の男はピッと姿勢を正して。
揃って私を見やり言う。
「悪ィ。遅れたっ。いらっしゃいませ〜!」
「…いらっしゃいませ」
私は呆気に取られ、ペコリと頭を下げる。
ここは、一体…。
サヴァ・ダール

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0.オープニング

黒石造りの その館は、異界の隅に、ひっそりと。
怪しい…怪しすぎる…そうは思うも、好奇心に勝てず。
まるで、吸い込まれるように。
私は、館の扉を開けた。

ギィィィ―……
響く、古びた扉の音。
館の中へ一歩踏み入った瞬間。
クランベリーの香りが、私の身を包む。
…良い香り。
私は、思わず目を閉じた。
だが、その心地良い香りに酔いしれる事は叶わず。
「あっれぇ?お客さん?めっずらしー」
一階のホールでボーッとしていた私に、降り落ちる声。
声は、上から。
パッと顔を上げて見やれば、
階段の手すりに肘を付いて、ニコニコと微笑む男と、
その隣で憮然としている男が目に映る。
「………」
言葉を発さず、ただ二人を見やっていると。
「二人とも…挨拶はしたの?」
二人の男の後ろから、黒装束に身を包んだ女が姿を現した。
女の言葉に、二人の男はピッと姿勢を正して。
揃って私を見やり言う。
「悪ィ。遅れたっ。いらっしゃいませ〜!」
「…いらっしゃいませ」
私は呆気に取られ、ペコリと頭を下げる。
ここは、一体…。

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1.

いらっしゃいませ…か。
そう言うからには、何らかの店、なのだろうな。
だが…まったくもって、わからん。
どういう店なのか。
大体、こんな古びた屋敷に人が住んでいるのかと驚いているんだ。
まぁ…外観に比べて内装は立派だがな。
辺りを再度見回す私。
そんな私に黒装束の女は静かに歩み寄って言った。
「紅茶は、お好きかしら?」
「嫌いじゃない」
素っ気なく返すと、女は淡く微笑んで。
「どうぞ。御馳走しますわ」
そう言って、私を館の奥へと誘う。
危険な感じはしないが…何だろう。
何故だか、私は動けない。
何だ、これは。まるで、何かを拒んでいるかのような…?
ポンッ―
「ウチの紅茶は美味いぜ〜」
動けぬ私の肩に手を乗せ言う、褐色肌の男。
馴れ馴れしい奴め…と眉を寄せつつも。
私は男に背を押され、館の奥へ踏み入った。




振舞われた紅茶は確かに美味で。懐かしい香りと味だった。
その効果か、不信感は解け。私は自ら問う。
「ここは、何の店だ?」
私の問いかけに、黒装束の女はニコリと微笑み、返す。
「占い、ですわ」
占い…なるほどな。そう言われてみれば、お前はそんな雰囲気だ。
女を見やりつつ、妙に納得する私。
女はクスクス笑い、
「私の名はサヴァ。この館の主で、占い師ですわ。こちらの二人は私の側近、カインとロキ」
そう言って左右に座る男たちを手で示した。
占い師に側近…とは。おかしな話だ。
まぁ、深く探る気は更々ないが。
それにしても、妙な組み合わせだな。
一目見たときから思っていたが、真逆じゃないか。この二人。
一方は無表情で寡黙、もう一方は満面の笑みで、しきりに私を見やる。
こんな二人が側近だと、気苦労が絶えぬだろうに。
苦笑する私に女…サヴァは言う。
「否定はしませんわ。けれど肯定もしません。彼等は優秀ですから」
ピクリと動く私の眉。
…ほぅ。何を思っているか理解るとは。読心術か。
厄介といえば厄介だが、占い師としてはデキる類の証かもしれんな。
紅茶を飲みつつ微笑み小さく頷く私を見て、

サヴァは側近二人に命じる。
「カイン、ロキ。彼女に自己紹介を」
二人の男は素直にコクリと頷き、一人ずつ自己紹介を始めた。

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2.

先に自らを晒したのは無表情な男の方で。
「カインだ。歳は二十二」
そう言って少し考えるも、次の言葉が浮かばなかったのだろう。
「…よろしく頼む」
苦し紛れにそう言い軽く頭を下げて席についた。
無愛想というか、不器用な男なんだな、きっと。
そう思った私はクスクスと笑う。
すると、もう一方の男がガタンと騒々しく席を立ち、
「ごっめんなぁ。こいつ、面白味に欠ける奴でさぁ」
カインを指差しつつ笑って言った。
指差されムッとした表情を浮かべるカインを無視して、男は自らを晒す。
「オレはロキ。歳は、こいつと一緒で二十二っ。趣味は香水集めと、ナンパっ」
目を伏せ紅茶を口に運ぶ私。
まぁ、見た目どおりだな。
私からすれば、お前こそ面白味に欠けるよ。




ロキの自己紹介は、それからしばらく続き。
聞きたくもない、どうでもいい情報を次々と耳に叩き込まれて私はゲンナリ。
出会って一時間半。私は、既にお前が疎ましくて仕方ない。
何度も溜息を落とす私に、自らを晒し尽くしたロキは問う。
「で、キミの名前は?」
今更それか、と思いつつも、まだ名乗っていないのは事実ゆえ。
私は素直に答える。
「冥月だ」
「へぇー。可愛い名前だね。何歳?」
「…一般常識では、女の歳は気安く聞くものではないな」
苦笑しつつ私が言うと、ロキはケラッと笑って言う。
「いやいや。まず歳を聞かないとさ。ほら、一応オレにもストライクゾーンとかあるから」
…腐ってるな。私は呆れつつ返す。
「何歳に見える?」
「うーん。大人っぽいけどオレと大して変わんないと見た。二十…一、とかっ?」
「惜しいな。二十歳だ」
「あら〜…残念っっ」
大袈裟に肩を落とし悔しがるロキ。
馬鹿だな…と実感する私に、サヴァが問う。
「冥月さん、お仕事は何を?」
「今は特に何もしていない。時々知人の手伝いをしているだけだ」
淡々と返すと、サヴァは淡く微笑み更に問う。
「そう。では、以前は…どのような仕事を?」
「…占ってみたらどうだ?」
「ふふ。貴女の口から直接聞ければ、それが一番ですわ」
目を伏せ言うサヴァ。
なるほど。むやみやたらと人の内を探ったりはせぬと。
まぁ、当然といえば当然だが。なかなか話せる奴だな。
少し感心する私に、ズイッとロキが近寄る。
「…何だ」
目を逸らし、素っ気なく言う私。
ロキは強引に私の視界に入り、少し早口で言う。
「ねぇ、オレさぁ、その”知人”って言い方が気になるんだけど。ホントに、ただの知人?」
女好きの勘繰りは、本当にうっとおしいなと思いつつ、私は返す。
「詮索は嫌われるぞ」
言ったものの、この言葉は真の女好きには通用しない。
「気になるなぁ」
ロキは私の肩に手を回し、しつこく詮索を続ける。
…うっとおしい。心から。
バコッ―
「ぶっ…!!」
ドサッ―
ロキの顔面にヒットした、神速の裏拳。
「いってぇぇぇーー!!」
痛みにのた打ち回るロキを見て、サヴァとカインは感心して言う。
「あらぁ…ロキが避けられないなんて凄いわね」
「…大したものだ」

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3.

その後、しばらく他愛もない談笑が続き。
ふと窓の外を見やれば、すっかり夜が更けていて。
そろそろ帰って休まねば、肌に悪いな…そう思った私は、
帰る事を三人に告げ、席を立ち微笑んで言う。
「せっかく占い屋に来たんだ。戻る前に一つ、占ってもらおうか」
私の言葉にサヴァはクスッと笑い、少し首を傾げて言う。
「どうぞ」
「私が手伝っている知人の会社は貧乏でな」
「ふふ。はい」
「どうすれば順調に仕事が入り、ある程度良い生活が出来るようになる?」
私の占頼事を聞き、サヴァはスッと目を閉じて。
呟くように言った。
「貴女次第…ですわね」
「…どういう事だ、それは」
「貴女が導いてあげる事で、良き方向へ向かいます」
「………」
「けれど、肝心の彼は…現状に大きな不満は抱いていないようですわね」
「…満足している、と?」
「楽しんでいる…という印象を受けますわ」
楽しんでる…か。まぁ、確かに。
よく言えば逆境に屈さず、悪く言えば楽観的過ぎるな、あいつは。
あいつの性格なんぞ一言も口にしていないのに、そこまで読み通すか。
ふむ…サヴァ、か。
聞いた事のない占い師だと、少し甘く見ていたようだ。
サヴァと顔を見合わせ微笑む私。
不思議な空気の漂う中、ロキが叫ぶ。
「ちょ〜っと待った!待った待った!今さぁ、”彼”って言ったよな?な?」
…そういえば、そうだな。
あまりにも自然で気にも留めなかったが。
「やっぱ男なんだな、その知人って。怪しいなぁ〜…」
「うるさい。お前には関係ないだろう」
そう返すも、ロキはしつこく。
”知人”の正体を探ろうと必死になる。
そのしつこさに、帰るタイミングを逃し…私は再びゲンナリと。




「はぁ…」
大きな溜息の後、扉に手をかけて。
「じゃあな」私は言い放つ。
私の言葉にカインは軽く頭を下げて。
「すまなかったな。こいつ…品がなくて」
そう言いロキの頭を小突く。
「んにすんだ、てめっ」
カインを睨み付けて言うロキ。
私はクッと笑い、告げる。
「お前も大変だな」
肩を竦め、目を伏せるカイン。
その馬鹿のせいで、あまり関われなかったが。
お前とは、気が合いそうだ。
まぁ、お前は遠慮するだろうが、な。
「冥月さん」
扉を少し開けたところで、声をかけるサヴァ。
振り返るとサヴァは淡く微笑んで。
「また、いつでもいらして下さいね」
そう言い、指輪を差し出す。
「………」
指輪を見やり首を傾げる私。
サヴァは私の手を取り、指輪を掌に乗せると、
目を伏せ優しい声で言った。
「受け取って下さい。出会えた奇跡に」
「………」
「貴女は、ここに…通う運命。我々はそれを喜んで受け入れましょう」
諭すようなサヴァの言葉に私はクッと笑い。
「そんな運命、出来うる事なら遠慮したいな」
そう言い指輪を適当に懐に放り、扉を開けた。
ギィィィィ―……

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / サヴァ・ダール / ♀ / 29歳 / 占い師

NPC / カイン・ヴェノーカ / ♂ / 21歳 / 剣士・サヴァの側近

NPC / ロキ・オグリー / ♂ / 21歳 / 魔士・サヴァの側近


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

アイテム「ラピスラズリの指輪」を贈呈しました。ご確認下さい。

2007/07/05 椎葉 あずま