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■特攻姫〜特技見せ合いっこパーティ〜■

笠城夢斗
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】
 広い広い西洋風の邸宅。
 いかにも金持ちそうな雰囲気をかもしだすその屋敷の庭園で、ひとりの少女がため息をついていた。
 白と赤の入り混じった、流れるような長い髪。両の瞳はそれぞれにアクアマリンとエメラルドをはめこんだようなフェアリーアイズ。
 歳の頃十三歳ほどの、それはそれは美しい少女は――
 ほう、と何度目か分からないため息をついた。
「……退屈だ」
 そして――ひらりとその場で回転するように、舞う。
 シャン
 彼女の手首につけられた鈴の音も軽やかに。
 少女の両手に握られていた細い剣が、音も立てずに庭園に何本もつきたてられていた木の棒を切り飛ばした。
 少女は舞う。ひらひらと舞う。
 そのたびに両の剣も舞い、だんだん細かくなっていく木の破片が、あたりに散らばっていく。
 シャン シャン シャン
 やがて一通り切ってしまってから――
「……退屈だ」
 両の剣を下ろし、少女はため息をついた。
 彼女の名は葛織紫鶴[くずおり・しづる]。この大邸宅――実は別荘――の主で、要するにお金持ちのご令嬢だ。
 そして一方で、一族に伝わる舞踏――『剣舞』の後継者。
 まだ十三歳の若さでその名を背負った彼女は、しかしその立場の重要さゆえになかなか別荘から外に出してもらえない。
「退屈だ、竜矢[りゅうし]」
 若すぎるというのにどこか凛々しさのある声で、紫鶴は自分の世話役の名を呼んだ。
 世話役・如月[きさらぎ]竜矢は――少し離れたところにあるチェアで、のんきに本を読んでいた。
「竜矢!」
「……いちいち応えなきゃならんのですか、姫」
 竜矢は顔をあげ、疲れたようにため息をつく。「大体その『退屈』という言葉、今日だけでももう三十五回つぶやいてますよ」
「相変わらずのお前の細かさにも感心するが、それよりも退屈だ!」
 どうにかしろ! と美しき幼い少女は剣を両手にわめいた。
「危ないですよ。振り回さないでください。あなたのは真剣なんですから」
 冷静に応える竜矢は、やがて肩をすくめて、傍らのテーブルに本を置いた。
「では、パーティでも開きましょう」
「パーティなど飽いた。肩が凝るだけだ!」
「そうではなくて、特別に一般の人々を呼ぶんですよ。それで――そうですね、姫の剣舞のように、他の方々の特技も披露して頂いたらいかがです?」
 私がどうにかしますから――と、のんびりと竜矢は言う。
 紫鶴の顔が輝いた。「それでいくぞ!」と彼女は即断した。
特攻姫〜皆で行こう修学旅行〜

 修学旅行。
 修学、と名がついているが、実際には生徒たちが遊びに行くチャンスだ。

 修学旅行を、この世の全員が経験したことがあるわけではない。
 ――例えば、生まれてこの方自分の家から出たことがないお嬢様などは。

     +++ +++++ +++

 ある日突然やってきて、
「久しぶり」
 と言った藤田あやこの姿に、葛織紫鶴【くずおり・しづる】はきょとんとした。
「ひ、久しぶりだ……でもその、あやこ殿。その服は……」
「うわあ」
 あやこは天を仰いで嘆いた。「本当に気の毒だわこの子……セーラー服も知らないのね……」
「せーらー服?」
「そう。これはね、ほら、丁度紫鶴くらいの年齢になると学校に行くじゃない?」
「――うん。そう聞いてる」
 紫鶴は少し悲しそうな目をしてうなずく。
 その肩をぽんぽん叩きながら、
「その『学校』の、制服なのよ。セーラー服は。ま、どこの学校も、ではないけど」
「そ、そうなのか……」
 そちらについては納得したらしい紫鶴は、今度はあやこが抱えている風呂敷に目をやる。
「では、そちらの大きいものも学校に関係があるものなのか?」
 あやこは笑った。
「これは私の私物。ずばり『万能幻灯機』!」
「……なんだろう、それは?」
「一部の映像を実体化するのよ……さてさて」
 あやこは満面の笑顔を見せて、
「今日は、修学旅行へ行こうね、紫鶴!」
 と言った。

 ――庭が空港に早変わり――

 あやこが言う通りに、緑豊かだった庭が、無機質な色の空港に変わる。
 突然の出来事に、紫鶴はぎょっとしたようだった。
「わ、ど、どこだここ!?」
「紫鶴は知らないわよね。ここは飛行機が飛ぶための滑走路がある、空港っていうところ」
「あ、ひ、飛行機なら知ってる……そ、そうだな、確か飛行機が飛ぶには滑走路とか空港とか……あ、そうか……」
 だんだん落ち着いてきたらしい、紫鶴はやがて、
「どうして庭が空港になってしまったんだ?」
 という疑問の方に思考が移ったようだった。
 あやこはウインクして、
「はい! 次は紫鶴がへんしーん!」
「え?」
 あやこの方を見上げ、不思議に思って首をかしげると、
「ほら、自分の服装見てごらん」
「………。………!」
 徐々に視線を下に下ろしていった紫鶴は、飛び跳ねた。
 紫鶴は今、セーラー服姿だった。
 他にも、紫鶴の別荘にわずかにいるメイドたちもセーラー服姿になって近くにいる。きょとんとしている。
「紫鶴の家には年頃の男性がいないから、クラスメイトの男子は映像で作っちゃうわ」
 あやこはパンと手を打ち鳴らし、学ランを着た男子生徒たちを生み出した。
「……で、私はひょっとして引率の教師ですか……?」
 傍らからようやく聞こえてきた声に、紫鶴がはっと振り返る。
 額に手を当てて嘆息している、普段見たことのない背広を着た如月竜矢【きさらぎ・りゅうし】がそこにいた。
 あやこは竜矢を見やり、
「だってその歳で学ランは嫌でしょう?」
「……まあキツいものはありますね……」
「竜矢……」
 紫鶴が呆然と竜矢を見つめる。
「何ですか? 姫」
 竜矢が少し首をかしげて微笑む。
 紫鶴はかあっと頬を赤らめて、
「りゅ、りゅうし、その格好、似合っているぞ!」
 と両の人差し指をつんつん合わせながらうつむいて言った。
「なに、竜矢さん紫鶴の前で背広姿になったことないの?」
 あやこにつつかれ、竜矢は少し考えて、
「そう言えばないですねえ……」
 とつぶやいた。
「じゃあこれがいい思い出のひとつ目!」
 あやこはぱたぱたと竜矢の背広を叩き、「じゃ、ふたつ目を作りに行きましょ。次は機内へ〜」
 と紫鶴と竜矢を促した。

 機内食はパンに紅茶だった。
「紅茶は好きなんだ」
 紫鶴は顔をほころばせた。「友達と色々飲んだ。ダージリン、アッサム、アールグレイ、ライチ……」
「紅茶と言えばインド!」
 あやこが紫鶴の隣の席で、一本指を立てた。
「というわけで、これからインドへ行くよ!」
「え、え、え……え?」
 しゅんっ――と耳の奥で音がした気がして、紫鶴は気持ち悪くなって目を閉じた。
 しかし次に目を開けた時には――
「あ……?」
 そこは摩訶不思議な世界だった。
 主に肌が黒い人々が歩いている。とても暑い。女性は色鮮やかな布を体に巻き、男性はターバン。
 紫鶴も本での知識で知っていた。こういう場所もあるということを。
 あやこに言われて竜矢は英語で近くの人々としゃべり、少ない人数の生徒たちにカレーを作ってくれる家を探した。
 ほどなくしてそんな親切な家が見つかった。
 インドは大家族が多いのか、そのついでにおいでと言ってくれたのだ。
「姫、行きましょう」
「う、うん……お前、日本語以外出来たんだな」
「姫のおつきになるために、訓練させられましたから」
 ほけっと竜矢を見上げる紫鶴の手を、あやこが取った。
「ほらほら、好きな先生に見とれてないで。友達と手をつないであるくのも、思い出!」
 つないだ手を紫鶴の前に出し、振る。
 紫鶴は赤くなってから――笑った。

 インドと言えばカレーです。
「カレー。おいしいでしょう」
 紫鶴に、あやこが話しかける。
 紫鶴はインド式の食べ方に慣れず四苦八苦していて、しばらくあやこに返事をしなかった。
 が、ようやく気がついて、
「え? あ、うん。おいしい! 色んなスパイスがあって――」
 あやこはふふんと意味ありげな笑みを見せる。
 そしておもむろに、「さあクイズです」と人差し指を立てた。
「本場インドと英国。美味いのはどっち?」
「え? そりゃあ……インド……?」
「じゃ、答えを確かめにいきましょ」
 ひとしきりその家のカレーを堪能し、お礼をたっぷり言ってから、彼女らは家を出る。
 と――再び耳の奥の悪音。
 目を閉じ、再び開けると、今度はひどく――明るい世界に出た。
 歩く人々の肌は白い。抜けるような色だ。金髪の人物が多い。もちろんそれ以外の人々もいるけれど。
「ま、まさかイギリスか――?」
 紫鶴が呆然と立つと、「YES!」とあやこが腰に手を当てて自慢げに言う。
 そしてインドの時と同じように竜矢に何かを促す。
 竜矢は苦笑しながら、彼らをレストランに連れて行き、英語でメニューを頼んだ。
 やがて生徒たちの前に現れたのは、カレー……
「ま、またカレーなのか」
 紫鶴が目をぱちくりさせる。
「だってこっちのカレーを食べなきゃ、さっきのクイズの答えは出ないでしょ?」
 あやこはさっそく一口口に運んでいた。
 その頬が緩んでいた。
 紫鶴はつられて一口食べる。そして、
「……ん……?」
 もう一口食べ、「……んん……?」
「どうしたの、紫鶴」
「何か……」
 紫鶴は言いにくそうに、
「……インドより、こっちの方が美味しい気が……する……」
 あやこはにっこり笑って、
「ピンポーン!」
 と言った。
 紫鶴が「何で?」と言いたげな複雑な顔をする。
「理由は、ロンドンで――ロンドン分かる?」
「うん、イギリスの首都」
「そう、ロンドンで一旗挙げようと、職人たちが試行錯誤するからで・し・た!」
「……そういうものなのか……?」
「そうだよ。実際に食べてみたでしょ?」
「………」
 紫鶴は少し悲しい思いでイギリス風カレーを見下ろす。
「……やっぱり、本場が一番って、思いたいな……私は……」
 そんなことをつぶやいた少女の横顔を、あやこは微笑んで見つめていた。

 ――こんな経験も立派な思い出――

 船を借りてテムズ川を下り、カレーパンを食べながら、どこからか聞こえてくる渋い男性の合唱を聴く。
「そう言えばインドで音楽を聴いてくるのを忘れた……!」
 紫鶴が口惜しそうにあやこを見た。
「あ、そうね。ごめんね急がせちゃって」
「あ――いや、あやこ殿のせいじゃない――というか、何なんだろうこの旅行は」
 紫鶴はいつの間にか馴染んでしまっていた自分に心底驚いているようだった。

 船を大型のものに乗り換えて、お次は――
「大西洋横断ですか」
 竜矢が呆れたように、デッキに出て苦笑する。
「わあ……! 不思議な香りだ……!」
 潮騒を感じて、紫鶴は風を受けようと全身を広げる。
 ばたばたとスカートがひらめいている。彼女の赤と白が入り混じった不思議な色合いの長い髪が、風に吹かれてまるで女神の髪のように広がった。

 船がついたのは、アメリカ――
 アメリカの街を歩いていると、漂ってくるのは紅茶の香りではなく、ほろ苦いコーヒーの香りだった。
「アメリカでは紅茶よりもコーヒーなのよ」
 人種のるつぼアメリカ。肌は黒も白も色々いる。髪の色に至っては千差万別。
「すごい……すごい!」
 紫鶴ははしゃいであやこの腕に抱きついた。
 友達とはしゃぐこと。修学旅行の醍醐味。
 最も、日本にも色を染めてたくさんの髪色があることを紫鶴はまだ知らない。

 お次は客船にも乗せてもらえるという豪華さで。
 客船ティファニー号に乗り、少しゆったりした後、客船の中にあった文具店ではアメリカンコーヒーを飲みつつお土産を物色。
「ええと、ええと……」
「ほらほら早く決めないと、帰りになっちゃうよ〜?」
「う〜ん! ええとええと!」
 これだ! と紫鶴が手に取ったのは万年筆だった。
「へえ、紫鶴って万年筆使うんだ?」
「うん、友達と文通してる」
「へええ〜!」
 いいなあ、とコーヒーを飲みながらあやこは微笑む。
 ところがその万年筆を紫鶴が3本買おうとしたから、あやこは目を丸くした。
「何で3本?――あ、そっか、文通相手複数いるんだ」
 言われて、紫鶴はぎくっと肩を震わせた。
 あやこは見逃さなかった。
「うん? さては文通相手用じゃないな……?」
 うん? うん? とにやにやしながらつついてみると、紫鶴は頬をピンク色にした。
「誰だれ、誰にあげるの?」
 紫鶴はしっと唇に指を立て、
「……家に着くまで、渡さないから……」
 真っ赤になったまま3本目を胸に抱いた。
 家に着くまで。ということは、それは家人。
 ――彼女の家人。メイドか世話役。
 そして話の流れからすれば……
 あやこはうふふと不敵な笑みを浮かべる。
「好きな人とのことを語り合う。好きな人と旅行。それも修学旅行の醍醐味っ」
 ねーせんせー、とあやこはいたずらに店の外にいる竜矢を呼ぶ。
 竜矢は店の中をのぞいて、
「何か?」
「わわわ、い、言わないでくれっ」
 紫鶴は真っ赤になったままわたわたする。
「うん、何でもないよーせんせー」
 あやこはぺろっと舌を出して竜矢に手を振った。
 竜矢は首をかしげながら、また店の外での見張りに戻った。

 マンハッタンでの宿。
 あやこと紫鶴は同じ部屋。
 部屋に備え付けのパジャマに着替え、ベッドに腹ばいになって夜遅くまでおしゃべりをする。
 話はやっぱり恋話。
「じゃあやっぱり紫鶴の初恋は竜矢さんなんだね」
「うわわわわ違、違……」
「早く大人にならなきゃねー。竜矢さんを他の女の人に取られちゃう」
「………」
 紫鶴はうつむいた。
 あやこがその横顔をのぞきこむと、
「りゅ、竜矢は、いずれ他の女性と結婚する身だから……」
「なんで?」
「……と、歳が違いすぎるし、私はあくまで“姫”だし、いつまでも子供でしかないし……」
「………」
 あやこはむぎゅーっと紫鶴の頬をつねる。
「痛ひ痛ひ痛ひ」
「あなたと竜矢さんはお似合いよ。頑張るべし!」
「――……」
 あやこはおもむろにベッドから降り、前方向にある窓を見下ろした。
「ほら……紫鶴」
「………?」
 頬を押さえながら紫鶴もベッドを降りて窓のところまで来て――
「………!」
 そのまま目を見開き、窓に張り付いた。

 海辺が見える。
 夜の海辺が。
 そして見える。
 青い光が。
 きらきらと光る青い光が。

「あ――あれは、なんだ?」
「夜光虫よ」
 あやこは腰に手を当てた。「好条件が重ならなきゃ見られないのよ。運がいいわね」
「すごい……すごい……」

 夜の海辺が光る。
 きらきらと光る。
 そして青い光が。
 青い光が、胸に染みこんで――

 マンハッタンでの夜。
 ――青い光を胸に、おやすみなさい。


 さてさて最後に向かいますは、皆の憧れハワイでございます。
「ハワイ……? 確か、海の綺麗なところだな!」
「ハワイでは特別に、セーラー服じゃなくアロハシャツを着て外に出ていいから――」
「待ってよ先生。違うでしょ」
「は?」
「ハワイに来たからには〜!」
 やっぱこれでしょ!
「みっずぎ〜! 先生、ビーチへ行ってくるね!」
「あ、こら!」
 竜矢が慌てるのもよそに、あやこは貸し水着を手に紫鶴を引っ張っていく。
 そして着替えの場所で水着に着替えると、
「さあ! 夏だ! ハワイだ! 海だ〜〜〜!」
 と2人でビーチに飛び出した。
「わ、砂が熱い!」
「そりゃあ、夏だからね!」
 あやこはビーチパラソルを立てると、ほいほいと紫鶴を手招きした。
「海の中に入ってしとどに濡れて、先生が鼻血噴いちゃうといけないからっ。砂浜に寝転がるだけにしよ?」
「は、鼻血……? あ、ああ」
 あやこはうつぶせになって甲羅干し。
 紫鶴は上を向いたり下を向いたり落ち着かない。
「紫鶴。砂だらけになっちゃうよ?」
「もうなってる……」
 やがて砂を吸い込んで、ぺっぺっとなってしまった紫鶴のところへ、
「姫……!」
 とすばやく竜矢がやってきた。「もう、駄目でしょう砂の上で動き回っては! はい、砂を吐き出し――」
「わああああああ!」
 どばしゃあ。
 パニックになった紫鶴に砂をかけられ、アロハシャツ姿だった竜矢は砂まみれになった。
「あ! わ! すまない!」
「……姫」
「すまない……!」
 世話役に迫られてわちゃわちゃになっている紫鶴を見て、あやこはふふ〜んとにやついた。
「助けてくれ、あやこ殿……!」
「あら、な〜にを〜?」
 知らんぷりで恋のお手伝い。
 かわいい姫君のためのお手伝い……

 やがて旅行のおしまい。
 本当のおしまい……

 空港に戻ってきて、無機質な色を見て、
「ああ……これが帰ってくる、って感じなんだな」
 紫鶴が笑顔でつぶやいた。
 それはちょっぴり寂しくて、
 ちょっぴり懐かしくて、
 ちょっぴり物足りなくて、
 たくさんの満足で。
 やがてあやこは、空港の機内もたたんで、紫鶴の家の庭に戻した。
 紫鶴のセーラー服が消える。
「いかがでしたか、駆け足修学旅行」
 あやこはいたずらっぽくウインクする。「お土産、ちゃんと忘れずに」
 紫鶴は真っ赤になる。こくこくとうなずく少女はどこまでも素直で。
「それにしても……疲れた……」
 特別な術にかけられていたのだ。紫鶴は疲労していた。
「あ、寝てもいいよ? あとのことは竜矢さんにしてもらうから」
「お客様に……そんなことをしてもらっては……」
「いいの私は客じゃなくて友達だから。さ、眠って眠って」
「そんな……わ……け……」
 やがてぽさっと少女の体が竜矢の腕の中におさまった。
 すうすう眠ってしまった紫鶴の髪をさらっと撫でて、
「将来大人になって……」
 あやこはとても優しい顔で微笑んだ。
「他の人と話しても悔しい寂しい思いをしなくてもいいように……」
「……ありがとうございます」
 竜矢は深く感謝の気持ちをこめて礼を言う。
 あやこは竜矢を上目遣いで見て、
「……あとは先生が問題なのよねえ……」
 視線をそらしてぽつりと言った。
「何がですか?」
「何でもないですよ」
 あやこはぼすっと竜矢の腕に拳を当てた。
「先生もっ。大切な子は大切に!」
 言いながら、彼の腕の中の少女を見つめた。

 女の子の成長は早いんだから! そうでしょ紫鶴、ね?


 ―FIN―


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061/藤田・あやこ/女/24歳/女子大生】

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■         ライター通信          ■
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藤田あやこ様
こんにちは。お久しぶりです、笠城夢斗です。
今回は素敵なプレイングをありがとうございました!
なのに納品を遅らせてしまい、大変申し訳ございません;
WR自身行ったことのないところばかりで、心の小旅行でしたv再現するのが難しかったのですが……いかがでしたでしょうか?
よろしければ、またお会いできますよう……