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■某月某日 明日は晴れると良い■

ピコかめ
【2778】【黒・冥月】【元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
 興信所の片隅の机に置かれてある簡素なノート。
 それは近くの文房具屋で小太郎が買ってきた、興信所の行動記録ノート……だったはずなのだが、今では彼の日記帳になっている。

 ある日の事、机の上に置かれていたそのノートは、あるページが開かれていた。
 某月某日。その日の出来事は何でもない普通の日常のようで、飛び切り大きな依頼でも舞い込んだかのような、てんてこまいな日の様でもあった。
 締めの言葉『明日は晴れると良い』と言う文句に少し興味を持ったので、その日の日記を読んで見る事にした。
某月某日 明日は晴れると良い

海へ行くよ!

「ただいまー」「……お邪魔します」
 所用から戻った小太郎とユリが興信所に入る。
 中には武彦と零、そして電話で話している冥月がいた。
「ああ、ああ……じゃあ今度は沖縄か。面倒だな」
 電話をかけながらも冥月は二人に目をやる。
 どうやら仕事の話のようで、沖縄と聞こえたが遠出でもするのだろうか?
 首を傾げる二人を見て、冥月は何か思いついたように小さく笑みを浮かべる。
「あ、いや、受けよう。わかった……ああ、詳細は後でな」
 電話をしまった冥月を見て、小太郎が首を傾げて尋ねる。
「師匠、沖縄に行くのか?」
「ああ、仕事でな。内容は教えられんが……お前たちもついて来るか?」
「俺たちは師匠の仕事なんか手伝えないと思うぜ」
 一応、冥月の以前の職業を知っている小太郎は、微妙に顔をしかめながらも答える。
 仕事内容を暗殺か何かだと思ったのだろうか?
「私はもう、裏の仕事からは足を洗ったつもりだぞ? お前らでも出来る仕事だろうが……まぁ、手伝わせる目的じゃないよ」
「……じゃあ、なんですか?」
「ただのバカンスさ。小太郎も夏休みだし、ユリも休みは取れるだろ?」
「……ええ、それは大丈夫だと思いますけど」
 ユリがチラリと小太郎を窺う。
 冥月も彼の方を見ると、小太郎は嫌そうな顔をしていた。
「何だ小僧、不満か?」
「不満っつーか、今の状態で旅行に行ってもなぁ」
 そう言って小太郎は右手をフラフラさせる。そういえば、この右手は折れてるんだったか。
 治るのを待っていると夏がすぎるし、それほど仕事を遅らせるのも出来ない。
「よし、じゃあ小太郎の代わりに俺が行ってやろうか」
 そこに割り込んで武彦が言った。
「泣いて土下座するならそれを考えてやっても良い」
「っけ、根性曲がりが。そこまでして行くかよ」
「まぁそうだろうな。……で、小太郎、どうするんだ?」
 冥月に尋ねられて小太郎はムゥと唸る。
 行きたくないわけではなさそうだが、迷いはあるようだ。
 そんな小太郎を見て、冥月はユリの背中をポンと押す。
「私は邪魔かもしれんが、小僧と一緒に旅行できるチャンスだぞ。ここで引き下がるな」
「……は、はい」
 小さく気合いを入れたユリは、小太郎の服の裾を引っ張る。
「……小太郎くん」
「ん? なんだ?」
「……一緒に行きませんか? きっと楽しいですよ」
「うーん、そうだなぁ……。まぁ、良いか。考えて見りゃそうそう無い機会だしな」
 小太郎の笑顔に、ユリも小さく微笑みを見せた。
 二人が行く気になったのを見て、冥月は二人の肩を叩く。
「よし、そうと決まれば早速準備だ。買出しに行くぞ」
 というわけで三人で買い物に行く事になった。

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「おい小太郎。お泊りセットは買ったか?」
「なんだ、その微妙な子供扱いは」
「……小太郎くん、歯磨き粉忘れてますよ」
「っう……」
「子供扱いせざるを得まい」

 そんなこんなで、旅行気分でほとんど準備を整えた後、三人は最後に水着売り場にやってくる。
「そういや、水着なんてないなぁ」
 小太郎が今気付いたかのように呟く。
「南の島に行くのに水着を忘れかけるなんて、俺としたことが……」
「……小太郎くんは泳ぐの好きなんですか?」
「おぅよ。小学生の頃は水泳の時間が楽しみで楽しみで仕方なかったぜ!」
 運動神経だけなら人並み以上の小太郎なら、まぁ泳げても不思議は無いが、心配なのはユリの方だ。
「ユリはどうなんだ? 泳げるのか?」
「……一応、人並みには。でも泳ぐよりは浮き輪でプカプカ浮いてる方が好きです」
 確かに、スイスイ泳いでるよりは海に浮いてる方がユリっぽい気はしないでもない。
「師匠はどうなんだよ? 実はそんなカッコつけてて実は泳げないとか!?」
「なんだ、小僧はそういう方が好みか? 『俺が手取り足取り教えてやるよ』とか言いたいのか?」
「べ、別にそういうわけじゃ……っ!」
「下らん事を聞くな。泳げないわけが無いだろ」
 小太郎の拙いからかいにカウンターをかまし、冥月はさっさと水着売り場へ入っていった。
 小太郎も慌ててそれに続くが、ユリだけは少しその場に留まり、小太郎に泳ぎを教えてもらう自分を想像して
「……そ、その手があったか」
 と、一人呟くのだった。

「おー、これなんか良いんじゃないか、小太郎」
「いや、もうちょっとセンスのあるガラがだね……」
「はい、決定」
 と、そんな感じで野郎の水着は決まり、すぐに女性用の水着売り場へ。
 その売り場の前で小太郎が立ち止まる。
「俺は向こうで適当に待ってるわ」
 小太郎のような男が女物売り場に入るのは本当に度胸がいるのだ。
 ただ通り抜けるだけならまだしも、そこでウロウロしたり、何もせずに売り場の端っこに立ってたりするだけで、もう居た堪れないのだ。
 だが、そんな風に立ち去ろうとする小太郎を、冥月は笑顔で捕まえる。
「何処へ行くんだ?」
「いや、適当に暇潰してるから、師匠とユリは仲良く買い物しててくれよ」
「ここにいれば良いだろ? 別に不都合はあるまい?」
「もの凄いある。かなりある」
 小太郎の腕を掴む冥月の手にギリギリと力が込められていく。
 逃げられ無さそうな雰囲気を悟りながらも、それでも小太郎は何とかこの場から離れようとする。
「その不都合とはなんだ? 簡単に言ってみろ」
「え、ええと……そりゃほら、なんつーか場違いって言うか……」
「別にそんな事は無いだろ、なぁ、ユリ?」
「……え、あ、はい」
 冥月の問いかけを簡単に肯定するユリ。
 最早水着選びに入っていて、話半分しか聞いていないような答えだったが、冥月にとってはそれで十分だ。
「何かいう事があるか、小僧?」
「……色々言いたい事はあるが、全て握りつぶされる気がする」
 ついでに小太郎の腕も握りつぶされそうな勢いだった。

 オドオドしながら入店する小太郎を連れ、冥月は品定めに移っているユリに近づく。
「気に入ったものはあったか?」
「……気に入ったものといわれても……どれが良いやら全然わかりません」
 色々水着を取り出してみては首を傾げるユリ。
「好みの色とかで決めれば良いだろ。何をそんなに悩むんだ?」
「……実の所、水着って買うの初めてで」
「あぁ、なるほど」
 考えてみればユリはつい去年まで拉致られてたのだ。外に出る機会もなかったろうし、当然海にもいけなかっただろう。
 もしかしたら水着を着る機会も無かったかもしれない。
「……って言うか、なんですかこの布切れは……。最近偶にテレビとかで見ますけど、こんなの着てよく往来を歩けますよね」
「ビキニ全否定か。でもそう言うのも試してみれば案外しっくり来るかも知れんぞ」
「……そうですかぁ?」
 嫌そうな顔で手に持つ水着を眺めるユリ。どうやらこれを着た自分の姿が想像し難いらしい。
「まぁ、とりあえず試着してみよう。話はそれからだ」
「……これ着るんですか……?」
「物は試しってな」
 冥月はユリの背中を押して試着室へ向かった。

「あ、あの、俺はどうすれば……」
 小さい身体を更に縮めて、小太郎は店の隅で震えているのでした。

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「ほら、まずはこれだ」
 そう言って冥月がユリに手渡したのは数着のビキニ。
「……え、ホントに?」
「嘘をついてどうする。良いから着てみろって」
「……わかりましたよ。一応着てみますけど……」
 ユリは冥月から水着を受け取り試着室へ引っ込んでいった。
 しばらくすると、カーテンのスキマからユリの顔が現れる。
「……無理です」
「無理じゃない。一度着るって言ったなら着てみろ」
「……一応着ては見たんですけど、無理です。見せられる代物じゃありません」
「なんだ、着てるのか。だったら良いな」
 そう言って笑った冥月は強引にカーテンを開く。
「……っや! ちょ、ま……っ!」
「おお、なかなか似合ってるんじゃないか?」
 ユリが着ていたのはトップにフリルが付いた水着。ボトムにも同じようにフリルが。
 色も明るく、若い感じが出ていて、かつフリルで可愛さアピールか。これはこれでありな気がする。
「……いや、絶対無理ですって。これは無いですって」
「いやいや、アリアリ。アリだと思うぞ」
 必死にカーテンを閉めようとしているユリの手を抑えながら、冥月がしげしげとユリを見つめる。
「……そ、そんなに見ないで下さい!」
「良いだろ、減るモンじゃなし」
「……減ります! 減りますから、ちょっとその手を放してください!」
 ユリの必死さに負けて、冥月は渋々ながら手を放す。
 カーテンはすぐに閉められ、奥でまたゴソゴソと動いている気配が。
 着替え終わって出てきたユリは服を着ていた。
「おい、まだ試着は終わってないぞ」
「……別のにしてください。正直、このタイプは着てて疲れます」
「いやいや、慣れれば大丈夫だって。他のも試してみろ」
 試着室から出て来ようとするユリをグイグイ押しやり、また試着室に閉じ込めた。
「……むぅ、これで最後ですよ」
「まだ何着もあっただろ。全部着てみろよ」
「……嫌です。断固拒否します」
 なんとも反抗的な態度を見せるユリ。
 それにちょっと嗜虐心を駆られた冥月は、ちょっと影を操ってユリの服を奪ってみた。
 全く気付かないユリはそのまま着替えて、カーテンを開けた。
「……これもさっきのと変わりませんよ」
「いやいや、紐パンになっただけで随分変わってるじゃないか」
「……逆に恥ずかしさが加速するんですが。もう良いですよね」
 ユリはカーテンを閉めてまた試着室に潜っていく。
 ……しばらくして、慌てたような物音と『……あれ? 無い』という不思議そうな声が。
「どうかしたのか、ユリ」
「……ふ、服が! 服が無いです!」
「返して欲しかったら、全部着てみてくれ」
「……み、冥月さんがやったんですか!? すぐに返してください!!」
「返して欲しかったら、全部着ろ、と今言ったばかりだが」
「……嫌ですって! お願いですから返してください!」
「着てみるだけで良いって。ホラホラ、早くしないと日が暮れるぞ」
「……うぅ、約束ですからね」
 涙声になったユリの声が聞こえた後、愚直にもまた着替え始めているらしい。

 そんな事をしている内に、最後の水着になったようで、
「……こ、これは完全に変態装備です」
 と、困ったような声が聞こえてきた。
「なんだ、どうした?」
 気になって冥月がカーテンの奥に首を突っ込むと、やたら面積の少ない布を纏ったユリがいた。
 ユリが『変態装備』という意味も、見れば全てわかる。
「……な、何覗いてるんですか! 出てってください!」
「おお、こりゃなかなか度胸のあるのを選んだな」
「……選んだのは冥月さんでしょ! 良いから、早く出てってください!」
「おーい、小僧。良いもの見れるぞー」
「ぎゃああああ!! 何呼んでるんですか!!」
「ん? 何が見れるんだー?」
「小太郎くんも素直にこっち来ないで下さい! 来たら殴りますよ!!」
 キャラに似合わず、かなりバイオレンスな事を言い始める程にテンパっているようなので、冥月はこれ以上ユリをからかうのをやめる事にした。

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 服を返してもらったユリは、とりあえずそれに着替えて試着室から出てくる。
「……なんでこんな事で疲れなきゃなんないんですか」
「お前が勝手に騒ぐからだろ。私は悪くないぞ」
「……何も言う気になれません」
 この数十分でかなりやつれたユリを無視して、冥月は適当に水着を取る。
 ユリがビキニを嫌っている事はよくわかったので、これから選ぶならばワンピースタイプだろうか。
「あ、そうだ。小太郎はどんな水着が好みなんだ?」
「は? 女物の水着なんて知るかよ」
「知らないって事は無いだろ? 泳ぎに行って、どんな水着にグッと来るんだ?」
「そう言われても、学校の水泳以外ではプールとかにも行かないしなぁ」
「……もしかして、スクール水着バンザイな人種じゃないだろうな?」
「何でそうなる!?」
「……それは幻滅しちゃうかもです」
「ユリも真に受けんな!!」
 と、小太郎をからかうのもそこそこに、冥月は同じ水着をサイズ違いで二つ手に取る。
「これを着てみよう。こっちはユリな」
「……そっちは?」
「私のだ。お揃いで着てみようじゃないか」
「……私の方がかなり見劣りするオチが、脳裏にハッキリと浮かぶんですが」
「そんな事は無い。さぁ、着てみろ着てみろ」
 またもグイグイ押しやり、ユリを試着室へ突っ込む。
 その後、冥月も試着室に引っ込んだ。
 待たされた小太郎は、何となく居た堪れないまま、その場に立ち尽くしていた。

 着替えた二人が出てくる。
 着ていたのはなんとも無難なワンピース。落ち着いた色でガラもそれほど派手でなく、むしろ飾り気が無さすぎるぐらいだ。
「……私はこれぐらいで十分です」
「いや、物足りんな。小僧もそう思うだろ?」
「俺に同意を求めるな」
 多少赤い顔をしてぶっきらぼうに答える小太郎。どうやら一丁前に恥ずかしがってるらしい。
 いや、それとも水着姿が眩しすぎて直視できないのか? 誰の、とは明言すまい。
「……冥月さんが物足りないなら、別のにすれば良いじゃないですか」
「私が言ってるのはお前の話だよ。ユリが物足りない」
「……それは私の体型の話ですか?」
「そう卑屈になるなよ。水着の話だ。……やはりワンピースでは露出が足りない」
 肌が露出しているのは頭、腕、足、辛うじて背中といった所か。
 夏に似つかわしくない防御体勢だ。もっと大胆に! もっと露出を!
 かといってビキニを選べば、ユリは断固拒否を示すだろうし……。
「ああ、そうだ。間を取ってタンキニにしよう」
「……たん、きに?」
 その単語にピンと来ないのか、ユリは首を傾げる。ついでに小太郎も。
 百聞は一見にしかず、という事で冥月はその店にあったタンキニを何点か手に取る。
「ほら、こういう風に上がタンクトップ、下がビキニになってるんだ。だからタンキニ」
「……へぇー、そういうのもあるんですね」
「無知にも程があるだろ。もっと色々勉強するんだな」
「……き、気をつけます」
 冥月にビシリと言われて、ユリは少し身を小さくした。

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「……超アリ」
 お披露目をしたユリと冥月を見て、小太郎が小さく呟く。
 どうやら彼的にジャストミートだったらしい。
「可愛いじゃん、ユリ! 超似合ってる!」
「……そ、そうですか?」
 ユリも意中の彼に褒められ、まんざらでもないようだ。
 少しはにかんだ笑顔を見せ、それでもビキニを着ていたときのように身体を隠す事はない。
「おい、小僧、ユリだけか?」
「ししょーもきれーだぜー」
「……ふん、まあ良いけどな。小僧に褒められても何にもならん」
 某読みの褒め台詞だったが、それを聞き流し、とりあえずユリの分はこれで決まりか、と心中で頷く。
 早々に着替えさせて値札を確認した。
「……あ、冥月さん。私、自分で買いますよ」
「いいさ。沖縄に誘ったのは私だ。これぐらい奢らせて貰うさ」
「……だって、旅費だって持ってくれるんでしょう? そこまでしてもらうのは悪いです」
「良いから。ホラ小僧に持たせておけ。後でまとめて払うんだからな」
 冥月はユリから水着を奪って小太郎に放って渡した。
 次は冥月の分の水着選びだ。着ていたタンキニを戻し、品定めに戻る。
「師匠はその……タンキニ? じゃないのか?」
「小僧を喜ばせるために水着を着るんじゃないからな」
「だ、誰が喜ぶか!」
「喜んでるだろ、さっきから。いつもより落ち着かないぞ、お前」
 言われて小太郎は口篭る。少しでも自覚はあったのだろうか。
 その言葉をなくした小太郎に、ユリは冷ややかな視線を送っていた。
「……ふーん、やっぱり師匠さんの水着姿は格別ですか?」
「な、なんだよ。別にそういうわけじゃ……」
「……良いですよ、別に。冥月さんの方がスタイル良いですしね」
「だから! 違うって言ってるだろ!」
「……まぁ、そこまで言うなら信じますけど」
 そんな事を言いつつ、ユリの視線から懐疑の色が消えない。
「……だったら、何でそんなにそわそわしてるんですか?」
「い、言えるかよ」
「……なんでですか? やましい事があるからじゃないですか?」
「……その……ユリが、可愛かったから」
 ボソリと呟かれた言葉。言った小太郎は途端に顔を真っ赤にする。
 時間差でユリも言葉の意味を理解し、これでもかと言うほど頬を染めた。
「はいはい、ごちそうさま」
 離れたところで冥月が零した。

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「うん、これなんかどうだ?」
 試着室のカーテンを開け、出てきた冥月はボトムがかなりハイレグがかってる水着だった。
「あとはこれにパレオを買おう。……お、どうした小僧?」
「な、なんでもねぇよ!」
「さては見惚れたな? どうやらさっきのは舌先三寸だったみたいだな?」
「……ほぉ〜ぅ?」
「だ、騙されるな、ユリ! 師匠はでたらめを言っている!」
 大慌ての小太郎にユリが詰め寄るのを見て、小さく笑いながら冥月は手早く着替え、花柄のパレオも手に取る。
 ついでに目に入った麦藁帽子も手に取り、ユリに被せてやった。
「それはおまけだ。夏の日差しは大敵ってな」
「……はい、ありがとうございます」
 ちょっと困ったような顔をしながらも、それなりに気に入ったようで、つばの端を掴んで深く被りなおした。
「……あ、冥月さん! 白いワンピースも買いましょう! 麦藁帽子に白ワンピースですよ!」
 どうやらユリの中で何か拘りがあるらしく、つばの広い帽子には白いワンピースなのだそうだ。
 結局そのワンピースも買い、意外と大きな荷物になった今日の買い物。
 当然、荷物持ちは小太郎の役目だった。
「なぁ、師匠の能力でどうにかできるよな? なんで俺に持たせる?」
「筋トレの一環だと思えば辛くないだろ? 今日の特訓はそれだ」
「っく、そう言えば俺が納得すると思ってるだろ」
「しないのか? ならこれから特別メニューを組んでやるぞ?」
「……これで我慢します」


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / 女性 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】

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■         ライター通信          ■
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 黒・冥月様、毎度ありがとうございます! 『家族の視線が気になりながらも女物の水着をググる』ピコかめです。
 ……いいモン、気にしないモン。

 沖縄と申したか! 全くイメージが沸きません!
 誰か取材のためとかって、連れてってくれないかなぁ。
 まぁ、そんな夢を見つつ、続き物という事で次回も頑張らせてもらいます!
 ではでは、またよろしくお願いします!