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■始まりの伯爵〜Cardinal Cross T〜■

【6589】【伊葉・勇輔】【東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫】
 「この世の次の世界を見てみたいと思わないかい?」


 真っ白な姿がまず目に留まる。
 白いロングコートを羽織った風変わりな男。
 モノクルをかけ、前髪を上げ、長い髪を括って後ろに流している。
「次の世界だと?」
「顕界と幽界、この世の次の世界は死の世界、つまりはあの世のこと」
 あの世を見たいかと聞かれてイエスという馬鹿が何処にいるというのだ。
 たたでさえ満足に動けぬ状態で、『食事』も僅かにしか摂れない中、目の前に現れた男がまっとうな人ではないことは推して知れる。

「今の俺に関わってそちらにメリットがあるとは思えないのだが?」
「いいや、あるよ。Count Death…ルシアス=ガンダルヴァ」
 それを聞いた途端、表情が変わった。
 身を起こし、男と向き合って見据える。
「何処で聞いた」
 その名を知っているのはこの世界に来る前の旧知と、エストリエと化した魔術師しかいない。
 そしてそのどちらも時空を超える術を知っている。
「誰かこっちに来ているのか?」
 帰れない世界。
 任意で出入りしたのでなければ、自らの力では出るのことの叶わぬ異界。
 異界に迎え入れられたこの世界の来訪者だけが、異界と世界を自由に出入りできる。
 本人達はその出入りを全く認識しないうちに。
「その問いにはYesかNoか、返事を聞いてからにしましょう」
 勿論、Yesと言わなければ答える気などサラサラないだろう。

「―――わかった。詳しい話を聞こう」


【某所―教会―】

 リージェスがIO2に所属して数ヶ月が経った。
「お変わりありませんか?」
「ミハエル神父様、御機嫌よう。ええ、これと言って何もありません」
 すっかり大人の女性体で固定されたリージェスの体は、前のような不安定さはなく、生活面でも何ら人と変わりない日常を送っている。
 今はIO2の管轄の下、教会側の口利きもあり、郊外の教会で表向きシスター見習いとして日々を過ごしていた。
「『上』からのお手紙が来てますよ」
 手渡されたのは素っ気無い便箋が一通。そして、箔押しされた立派な便箋が一通。
それぞれIO2と教会からの手紙だ。
「分かりました、有難う御座います」
 席を外してくれた神父に頭を下げ、リージェスは二通の便箋を開封する。
「――…とうとう……」
 あの夜の悪夢が現実となり始めている。
 肥大化した魔力は全て奪われ、それ以前の状態よりも更に人に近い構造になったこの体。
 あの魔力を使って、奴が再び肉体を手に入れた。
 そして、あの時共に消滅したと思われる吸血鬼も。
「…急がなきゃ…」
 リージェスは手紙を握り締め、どこかへ向かった。



 今、再び戦いが始まろうとしている



================================================================
*手紙の内容*
<IO2>
街中で再び吸血事件それに伴う婦女暴行事件が発生している。
目撃証言からエストリエもしくは吸血鬼による犯行の可能性が高い。
更に、吸血鬼と思しき者の傍に白い姿の男がついているとのこと。
この者の情報を洗い出し、報告されたし。

<教会>
都内郊外関わらず吸血事件が発生している模様。
エストリエもしくは吸血鬼の可能性がある為、これを調査し、殲滅せよ。
なお、この件に関してサポートが必要な場合ミハエル神父に助力を求めること。

始まりの伯爵〜Cardinal Cross T〜



 「この世の次の世界を見てみたいと思わないかい?」


 真っ白な姿がまず目に留まる。
 白いロングコートを羽織った風変わりな男。
 モノクルをかけ、前髪を上げ、長い髪を括って後ろに流している。
「次の世界だと?」
「顕界と幽界、この世の次の世界は死の世界、つまりはあの世のこと」
 あの世を見たいかと聞かれてイエスという馬鹿が何処にいるというのだ。
 たたでさえ満足に動けぬ状態で、『食事』も僅かにしか摂れない中、目の前に現れた男がまっとうな人ではないことは推して知れる。

「今の俺に関わってそちらにメリットがあるとは思えないのだが?」
「いいや、あるよ。Count Death…ルシアス=ガンダルヴァ」
 それを聞いた途端、表情が変わった。
 身を起こし、男と向き合って見据える。
「何処で聞いた」
 その名を知っているのはこの世界に来る前の旧知と、エストリエと化した魔術師しかいない。
 そしてそのどちらも時空を超える術を知っている。
「誰かこっちに来ているのか?」
 帰れない世界。
 任意で出入りしたのでなければ、自らの力では出るのことの叶わぬ異界。
 異界に迎え入れられたこの世界の来訪者だけが、異界と世界を自由に出入りできる。
 本人達はその出入りを全く認識しないうちに。
「その問いにはYesかNoか、返事を聞いてからにしましょう」
 勿論、Yesと言わなければ答える気などサラサラないだろう。

「―――わかった。詳しい話を聞こう」


【某所―教会―】

 リージェスがIO2に所属して数ヶ月が経った。
「お変わりありませんか?」
「ミハエル神父様、御機嫌よう。ええ、これと言って何もありません」
 すっかり大人の女性体で固定されたリージェスの体は、前のような不安定さはなく、生活面でも何ら人と変わりない日常を送っている。
 今はIO2の管轄の下、教会側の口利きもあり、郊外の教会で表向きシスター見習いとして日々を過ごしていた。
「『上』からのお手紙が来てますよ」
 手渡されたのは素っ気無い便箋が一通。そして、箔押しされた立派な便箋が一通。
それぞれIO2と教会からの手紙だ。
「分かりました、有難う御座います」
 席を外してくれた神父に頭を下げ、リージェスは二通の便箋を開封する。
「――…とうとう……」
 あの夜の悪夢が現実となり始めている。
 肥大化した魔力は全て奪われ、それ以前の状態よりも更に人に近い構造になったこの体。
 あの魔力を使って、奴が再び肉体を手に入れた。
 そして、あの時共に消滅したと思われる吸血鬼も。
「…急がなきゃ…」
 リージェスは手紙を握り締め、どこかへ向かった。



 今、再び戦いが始まろうとしている


================================================================
*手紙の内容*
<IO2>
街中で再び吸血事件それに伴う婦女暴行事件が発生している。
目撃証言からエストリエもしくは吸血鬼による犯行の可能性が高い。
更に、吸血鬼と思しき者の傍に白い姿の男がついているとのこと。
この者の情報を洗い出し、報告されたし。

<教会>
都内郊外関わらず吸血事件が発生している模様。
エストリエもしくは吸血鬼の可能性がある為、これを調査し、殲滅せよ。
なお、この件に関してサポートが必要な場合ミハエル神父に助力を求めること。

===============================================================



  どさりと、人が倒れこむ音。
 乱れた髪。
 肌蹴た胸元。
 首を流れる、血。
「―――ッ…」
 樋口真帆(ひぐち・まほ)はその光景に釘付けで、目を逸らす事が出来ない。
「おや…見られてしまったか…」
 甘く響くテノール。

 逃げなきゃ、何の準備も無い。

「見た顔だな」

 逃げなきゃ。

「ああ、そうか」

 逃げ――

「あの時はどうも」

 すれ違い様耳元で嘲笑混じりに響いた声。
 褐色の肌に白髪の青い瞳。
 振り返ることも出来ず、ただ、かろうじて救急車の手配だけができた。

 彼だ。
 ナイトメアの悪夢に囚われていた。


 吸血鬼―――




 「…遅かったか」
 サングラス越しに、後手に回ってしまった現場を怪訝そうに見つめる。
 救急車とパトカーと人だかり、その中心で第一発見者である真帆が事情聴取を受けている所を横目に、夜神潤(やがみ・じゅん)は現場を後にした。
 この界隈で連続して起こる通り魔事件。
 状況から判断して同族、いや、厳密に言えば違うが…
「こんな往来で――何故?」
 街中で騒ぎを起こして何のメリットがあるのか。
 吸血鬼狩りをする者はいつの時代にも必ずいる。
 異形の力を持って、長い間狩りを続けているものさえいる中で、わざわざ目に留まるような事をするその必要性は?
 思索を廻らせていていたが、それも着信音で中断される。
 仕事だ。
 ひそひそと話しながらこちらに気づく者も出てきた。
 集まられる前に退散しよう。
 足早に移動する潤とすれ違いに、まだ暑さも残る秋だというのに黒ずくめで人目を引く源睦月(みなもと・むつき)が潤を振り返る。
「―――近いけど、アレは違う」
 現場で立ち止まれば職質をかけられるであろうこの成りでは、じっくり現場を見ることも出来ない。
 最近妙な気配がうろついていると気付いていたものの、現場に駆けつけてもいつも事が終わった後。
 どうにも後手に回ってしまいがちだ。
 起こる場所が解れば先回りもできるけれど、勿論それを知る由もない。
 動くにも明確なそれがあるわけでもない為、ただ睦月は歩いた。
 このまま自分が囮として事件を起こす張本人を招くのも良いかもしれない、そう考えていたから。
 かかるかどうかはわからない。
 だが、これがもし…先の折に関わった『アイツ』ならば?
 自分の存在理由に、行動理念に妙に食って掛かってきた。
 何がそんなに気にくわなかったかなど如何でもいい。自分の芯を他者に理解してもらおうとは思わない。
 そんな些細なことだが、自分が再びこの界隈をうろつくことによって、あちらが反応するのではないかと。
「…雨…」
 ぽつりぽつりと降り始めた雨に、鑑識が慌てている声が後方から聞こえてくる。
 ただの警察が掴める証拠など、何一つ無いというのに。




 「―――雨が降りそうですね」
 孤児院の方の洗濯物を取り込まねば。
 そう思ってパタパタと廊下を駆けていくリージェス。
 時折こちらを見ている、事情を知っている修道士たちの視線は異形のくせにと語っている。
 だが、ここにいるのも組織に定められたがゆえ。
 勝手な行動は許されない。
 人と共に生きる事を選んだ以上、籠の鳥は覚悟していたことだから。
「洗濯物でしたら取り込んでおきましたよ」
「! ミハエル神父様」
 廊下の壁にもたれ、自分が通りかかるのを知っていたかのように、ミハエル・アンク神父は微笑む。
「有難う御座いました!」
 深々と頭を下げるも、気にしないでと笑顔で返される。
「それより、今夜の集会ですが」
「あ、はい。夕刻には聖堂まで来て頂いて。人払いもお願いしてあります」
 彼女を快く思っていない輩が多いのは知っているが、それでもこの件に関しての実働部隊を率いるのは彼女だ。
 一般人に流れてはいけない話だということぐらいは皆わかっている。
 向ける視線は軽蔑でも、協力しなければ自らの身のふりも危うくなる自覚はある筈。
 そんな一部の連中に、ミハエルは氷の刃のような視線を向ける。
「何人?」
 向き直ったその瞳は春の日差しのように穏やかで、その差はリージェスには気づかれていない。
 質問の意図に気づいたリージェスは彼が求める答えを返す。
「七人です」
 うち三名は、今回の事件の元凶と何らかの接点があるようで、それに関しても集まってから詳しく聞くことになっている。
「リストを拝見しても宜しいですか?」
 ミハエルの申し出を快諾したリージェスは会議室に持っていくと行ってその場を離れた。
「―――…何ら、人と変わらないのにね」
 その外見も、食する物も、感情も。
 人が人として持っているモノを全て彼女は持っている。
 いや、それ以上にその心は純粋で、人間の方が時折穢れて見える。
 この場にいる、裏の事情を知る他の修道士たちの方がよっぽど。
「…こんな事を言うと、異端扱いされそうですがね」
 苦笑交じりにポツリと呟き、ミハエルは指示通りに会議室へ向かった。




 「今日は〜、………。ふふ…、風が青いねぇ。あ〜、きっと雨だね、雨だよ。うふふ…。ぶつぶつ、ぶつぶつ…」
 端から見ればその言動と風貌にギョッとする者は多い。
 痩せこけて、だがねっとりと油ギッシュ。
 虚ろな目に黒縁眼鏡、無精鬚にバーコードハゲな頭の即頭部の毛は縮れており、アフロのようになっている中年が一人、空を見上げている。
 そして彼が呟いたとおりに雨がパラパラと。
 通り雨だろう。そう長くは降らない。
 ・・フラシスはゆっくりと空を見上げ、そしていつもの足取りで歩き始める。
 行き交う人々は、風呂に入っていないそのすっぱ臭さ漂う彼をそろりそろりと避けながら歩いていく。




 「は?薄着が何ですって?」
 商談中に客が藤田あやこ(ふじた・あやこ)の薄着について指摘する。
 秋とはいえ長袖を常に着込むのは暑すぎる。
 注意されるほど過度の露出はしていないと思うのだが。
「そうじゃなくて――」
「え?」
 周囲の目を気にしつつも、小声であやこに注意するその理由を話す。
 この所婦女暴行事件が多発していて、ヘタな格好はしない方が狙われにくくなるだろうと、そんな安直な発想の話だった。
 狙われる時はスーツだろうが着物だろうが狙われる者は狙われる。
 その隙を与えてしまっているからだ。
「…だけど、その話…ちょっと気になるわね」
 商いを一段落させた後、あやこは一人旅を装い、無知な一人旅を装い、警察署までこの所の危険地域とやらを聞きに向かった。




  IO2から要請を受け、集合場所へ足を運ぶ天薙撫子(あまなぎ・なでしこ)は、いつにも増して険しい表情で歩いている。
 だが奇しくも祖父を通して教会側からの要請も入った此度の吸血事件。
 女性を標的にする時点で撫子の心中には怒りが渦巻いている。
「っと、天薙さんじゃん?」
「あら、氷室様?」
 そんな怖い顔して何処へ、と問われ、顔に出ていたかと己の未熟を恥じる撫子。
 仕事です、と答えると氷室浩介(ひむろ・こうすけ)も自分もそうだと答える。
「―――もしかして、この先の教会へ?」
「あ、やっぱそっちも?」
「やっぱり…」
 こういう場で仕事仲間と出くわす場合は大抵同じ仕事場である。
 草間が、IO2が間に入っているなら当然のことだろうが。
「お受けになった理由が?」
 撫子に問われ、何故?と失礼にも質問で返してしまう。
「ここが」
 撫子が自らの眉間を押さえる。
 すると浩介は自分の表情が強張っている事に気づいた。
「――吸血鬼に白い姿の男…やな予感がするんだよ…」
「予感…この次発生する事件とかの、でしょうか」
 それもあるが自分の場合は少々異なる。
 吸血鬼、あれからそんなに長い間日数が経過したわけでも無い。
 忘れられない悪夢。
 その悪夢に囚われていた、独りの記憶喪失の吸血鬼の事を。
「確かめねェといけないんだよ…」
 あれが、自分たちのせいで現実世界に出てきたなんて思いたくも無いが、そういう可能性もあるだけに否定しきれない。
 目撃者が居るというならその証言も頂戴しなくては。
「ここか」
 浩介達より僅かに早く、教会の前に佇む男が一人。
 IO2の要請を受けた伊葉勇輔(いは・ゆうすけ)こと通称『白トラ』
 指定された時間より少しばかり早いが、雨の中外で待っている趣味は無い。
 先に聖堂の中で待たせてもらおう。勇輔は重い扉を押し開けた。




 「――如何です?」
 前触れも無く現れるアルカイックスマイルに、流石のルシアスも顔をしかめる。
「大分マシになったが、まだ足りないな…生まれた土地の土があればすぐにでも回復するが」
 そんな物はとうの昔に消え失せている。
 あるのはそこで作られた己の棺だけ。
 その棺も、今は何処にあるのか分からない。
「棺でしたら今捜索中です。今しばらくお待ちを」
「…何故ここまでする。いいかげん誰の使いなのか言ったら如何だ?『ライカン』」
 それまでとは違う、不気味な笑みで見下ろす白衣の男は、ルシアスに告げる。
「―――そこまでわかっていらっしゃるなら、あえて答える必要もありますまい」
 こんな奇妙な輩を飼いならす者など、知れている。そう言いたいのだろう。
「……カサンドラか…」
 溜息混じりに呟くと、正解と言わんばかりに目を細める。
「伯は貴方様の身を案じておられます―――どうか、伯の為にも無様な姿は晒しませんように」
 何故あの女の為に何かをしなくてはならないのか。
 だがしかし、絶対に作るまいとしていた借りをこうして作ってしまったのだからしょうがない。
 あれの望むゲームの駒になってやろうではないか。
「で?次の場所はどこだ」




  フラシスが到着したのは夕暮れ時だった。
 通り雨も過ぎ、空が真っ赤に染まる。
 まるで、あたり一面を染め上げる鮮血のような、鮮やかな赤。
 人払いを済ませているがゆえに、聖堂周辺は不気味なほど静かで、風邪のざわめきが耳につく。
 ぶつぶつと何かを呟きながら、フラシスは聖堂に入っていった。
「ようこそ」
 出迎えたのはリージェスだ。
 こんな歳若い娘が?
「IO2所属のリージェスと申します。宜しくお願い致します」
 深々と頭を下げ、今回の事件の資料を貸し出される。
 婦女暴行事件の犠牲者やリージェスを見ているうちに自分の娘とかさなり、少しばかり正気に戻ったフラシス。
 娘を守るためにも、この事件を解決しなければ。
「?」
 雰囲気の変わった彼を見て、リージェスは首を傾げるも、その意識は後続の人々にすぐ逸れた。
「七人…これで全員揃われましたね?私はミハエル・アンク神父…此度の一件に関するIO2と教会の橋渡し役を担っております」
「お手元の資料コード:『エストリエ』ですが、一連の事件と過去の事件が繋がりを持っていることから、このような形で作成いたしました。なお、この資料はご返却頂きますので、くれぐれもお持ち帰りにならないようお願いします」
 ミハエル神父に続き、きびきびと話す姿に昔のおどおどした様子は微塵も無い。
 リージェスがこの場の責任者であり、唯一全ての流れを知っている者だから。
「えと、いいですか?」
 真帆が手を上げる。
「―――先日起こった事件、私が第一発見者なんです」
「え、マジで!?」
 隣に居た浩介は驚きを隠せない。
「…犯人も見ました」
「よく無事だったな…」
 女性のいる前で何とも言いにくい話だが、婦女暴行の現場を目の当たりにしたというなら、当然、そういう現場な訳で。
「―――表向き、婦女暴行ってなってますけど…暴行といっても、その、ここだけなんです…よ」
 真帆は自らの首筋を押さえた。
 そう。吸血根があっただけで、着衣の乱れはあったにせよ、それ以外の外傷は何一つ無いのだ。
 しかもその吸血根も、大量に出血していても翌日には跡形も無く消えてしまう上に被害者も記憶が無い為、警察も捜査が進展しないという。
「便宜上、そうつけたのかもしれませんけど…それだと…女性にとってとても不名誉な話にしかならないし…」
「傷害事件…とすべきだな。そこはこちらでフォローしよう」
 勇輔が溜息混じりに告げる。
 なっとらん。そう言ってかぶりを振った。
 そんな彼を、複数のものは何処かで見た顔だなと首をかしげる。
「っと、犯人を見たって言ったよな?」
 浩介は自分の考えが当たらない事を祈った。
 しかし、その願いは奇しくも同じ夢を体験した真帆の言葉で破られた。
「あの男です…氷室さん。あの夢のヴァンパイア…間違いありません」
 長椅子に凭れ、天をあおぐ浩介。
 想定していた事態が本当になってしまった。
「あの夢とは?」
 ミハエルの問いに、真帆と浩介は自分たちともう一人の三人が遭遇した、ある迷宮の夢の事を皆に話した。
 ナイトメアに囚われ、無意識に迷宮を作り、自分の記憶を呼び覚ます為能力者を呼び込んだと思われる、あの大迷宮のことを。
「ナイトメアは逃げました…そして、同じ様に夢に囚われていたはずのあの男は、私たちと同じ空間には存在していませんでした」
「別次元の存在と夢の中で繋がった…なんてB級C級もいいとこのSFじゃあるまいし…ただ、俺達がナイトメアから解放したことによって、こちらに出てこれるようになったとしたら…」
 そのことに責任を感じている二人に、ミハエルは優しく微笑む。
「でも、そうするしかあなた方が戻ってくる術はなかったのですから、不可抗力というものです。悔やんでも仕方ありませんよ」
「そうだな、なっちまったモンは仕方ない…組織もそいつを追っているわけだし、出てきたというなら好都合だ。とッ捕まえてやるさ」
 ニッと笑う勇輔。
「写真だけじゃ何ともいえない。現場を見てみないことには…現場に行ってみます」
 先程の挙動不審っぷりが嘘のように、丁寧な言葉遣いのフラシス。
 そして情報を集め次第、次なる犯行現場を予測して皆に伝えるといって先に聖堂を出て行った。
 フラシスが出て行った後、それまで無言だった睦月が真帆と浩介に尋ねる。
「―――その、吸血鬼の外見的特長は?」
「襟足が長めの短髪で、白髪…褐色の肌に青い目、でした」
 その条件で吸血鬼ということは、自分が遭遇した者と見てまず間違いないだろう。
 睦月は僅かに目を細める。
「それなら多分、知っているわ。囮になってみましょ」
「え?あ、ちょっ…危険ですよ!」
 止めようとする真帆。しかし睦月はきびすを返し、扉を開ける。
「大丈夫。私も―――不死者だから」
 扉が閉まるとほぼ同時に呟いた言葉。
 不死の狩人。
 愛しい者の魂を追い続け、延々と彷徨い続ける女。
「まず、その吸血鬼とご対面しなけりゃ、事の真相がわからん」
 そういって勇輔も東京の街を見回ろうと言った。
「そうですわね。では私は被害者の方を当たりましょう。『龍晶眼』で状況を確かめます」
 犯人が知れているのなら、現場に既に向かっているものが居るならまずは被害者の状態を確かめることにしよう。
 女性として、そういった被害にあっていないにせよ、彼女達を襲った相手は吸血鬼。
 その後適切な処置を警察や普通の病院がしているはずがないからだ。
「…下僕化してしまっては事ですものね」
 被害者の状態を確かめた後、合流する為に連絡を入れると言って撫子も聖堂を出た。
「私の方も先に進めておいた網があるから、そっちで回ってみるわね。面通しはできたし、狩場でかち合ったら共闘しましょ」
 そういって自ら囮役に志願するあやこは、颯爽と教会を後にする。
 残ったのは残ったのは真帆に浩介、そしてリージェスの三人。
「撫子さんが病院の方に向かわれましたけど、被害者全員が同じ病院に入院されているわけではありませんから、彼女とは別の病院から洗っていきましょう」
「そうですね、私も…直接調べたい事があるし」
 リージェスの言葉に沿い、真帆も今己が出来る事をしようと気合を入れなおす。
 一方、外れてよかったのやどうなのやら、複雑な面持ちの浩介は、ミハエルに助言をあおぎ、吸血鬼対策として柊の杭などの作成をする事にした。
「ああ、あと俺の方は教会関連でもちっと調べたい事があるんで、こっから別行動になる。あんたも気をつけてな、樋口」
「はい、氷室さんも」
 こうして、それぞれが一連の事件の捜査に向かった。




  「教会のデータバングに?」
 浩介の申し出にミハエルは首を傾げる。
 たしかに、吸血鬼や悪魔に関するデータはなくはない。
 しかし、吸血鬼の殲滅と白い男の正体を探る事が今回の目的である為、浩介は一つ仮説を立てていた。
 夢に現れたのがルシアスという吸血鬼なら、報告書によればその肉体は一度完全に失われているはず。
 首一つでも自らの棺に戻って地霊を吸い上げれば復活できるほどの再生力を誇る吸血鬼だが、何もない状態からの復活が可能だとするならば…
「教会のデータに死霊使いがいないかどうか、それが知りたいんだ」




 「…ネット上の噂ではこの程度、か…」
 仕事の合間に事件を調べる潤。
 ネットの掲示板等で目撃情報や現場がどこか、被害者について等調べ、行動範囲を絞る事で居場所を特定し易くできないかと探るが、尾ひれのついた微妙な情報ばかりでなかなか目星がつけられない。
「――このサイクルからしても『食事』にしては随分過剰摂取じゃないか?」
 別段食わずとも死にはしない。
 動けなくなるだけだ。
 眠ることも無く、指先まで感覚は全て残りつつ、ただ微動だに出来ないだけ。
 それは死ではない。
「わざと見つかりやすいように行動しているのか…食い散らかすだけの雑魚ではなさそうだが…妙だな」
 血を必要としているならば一人二人喰らい尽くせば事足りるだろうに。
 下僕化している様子も無いとなると、殺さないように少量ずつ摂取しているということだろうか。
 ならば何故目立つ真似を?
「―――コイツと面識のある奴を探さないと」




  先もって繁華街をよくうろついている若者達に声をかけ、お近づきになっていたあやこは、自らの計画通りに囮を決行する。
 一緒に遊び歩き、途中、一人道を外れてみようと。
 襲われた時間はいずれも午前一時過ぎ。
 終電も終わって歩いて帰るか泊まるかタクシーをひろうか、そんな時間帯だ。
 不自然にならない程度に露出した格好をして、人通りの少ない場所を歩く。
 勿論、吸血鬼を待つ間に何度も変質者やら盛りのついたガキ共に絡まれるのだが。


■ 

 「この辺りでいいか」
 四神白虎の力で、風と大地の声を聞き、邪な気を探ろうとする勇輔。
 この雑多な土地で、光も闇も同時に存在するまさに混沌の都、東京。
 だが目当ての邪気を探るぐらいは不可能ではない。
 報告書にあった魔術師と吸血鬼。
 異界崩壊というあの一件から、高峰研究所の動きも以前よりも気を配るようになった。
 何だかんだと組織同士相容れないもの。
 あそこの所長があの一件についてその全容を予め知っていたとされる記述があったことも、勇輔の頭の片隅にあった。
 そして、後日リージェスによる奇妙な『夢』と、突如失われた魔力。
 彼女にとって魔力の大部分を失うということはよかったことなのかもしれない。
 人から遠のけば遠のくほど、大事な者の傍にはいられなくなるのだから。
「何を考えていやがる…?」
 都知事という顔もある手前、公の場でどれほど動けるかはわからない。
 まぁ、他都道府県知事に比べれば、かなり自由に動いている方ではあるが。
「―――…妙な気配が…一つ、二つ…………三つ、四つぅ…?」
 なりを潜めている小物はともかく、同質の気配が四つとはどういうことか。
 少なくとも二つは今回の事件に関連した者だろう。
「…そう簡単には、終わらないってことかね?」
 風が集う丘の上で、勇輔は何とも言えない表情で街を見下ろしていた。




  事件に関連した情報を虱潰しに集めたフラシスは、街が一望できる見晴らしのいい場所で街全体を眺めた後、一見関係なさそうな数日分の気象データや地図を確認する。
 最後に犯行現場で無数の散らばった情報をまとめ五感に変換、犯人の行動をシュミレートし、現在の滞在場所もしくは次の犯行の予測を試みる。
 情報の抽象化・具現化、それがフラシスの能力の一部。
 数多の情報が集結し、彼の視覚下において犯行現場とその前後の流れが完全に出来上がった。




 「あと三人ですか、この短期間でこんなに…?」
 各病院で被害者の容態を見た後、下僕化の心配は無い事を確認しては次へと向かう撫子。
 被害者は八人。よくもまぁ1〜2ヶ月の間にこれだけ近い感覚で襲ったものだ。
 そしてその間目撃こそされていても、けして捕まることも追い詰められることもなかった。
 吸血鬼と白い男。
 ただの吸血鬼ならば吸血鬼狩りの連中がすぐに片をつけているだろう。
 しかし『龍晶眼』で見たその光景は、実に妙なものだった。
 悲鳴を上げるでもなく、彼女達から近づいていっている。
 そして意識を手放す直前、男と、その後方に白い姿がチラリと映る。
「魅了、でしょうか…」
 そういう能力がある事は知っている。
 あとは恐らく、吸血鬼自体の外装もあるのだろう。
 昔の女性に比べれば、今の女性の方が積極的に罠にかかってくるということか。
「―――…」




  撫子が当たっている順番とは逆に、遠い所から回っていくリージェスと真帆。
「リージェスさんの話からすると、相手は高等な吸血鬼なんですよね?」
「…そう、ですね」
 マスタークラスのヴァンパイア。
 白い男はともかく、ルシアスはそうだ。
「マスタークラスなら、何故こんな下等な吸血鬼がするような吸血行為をするんでしょうか」
 血から精気を摂取するやり方は下等であればあるほど。
「もしかすると…弱体化しているのかもしれない」
 精気だけを奪う事が出来ないほどに。
 グールや下僕を作ることは意図して避けている。というか、そちらの方に力を割いているのだろうか。
「…彼に直接会うしか、なさそうですね」
 真帆の言葉に、リージェスも浅く頷く。




  夜が来る。
 夜の闇に紛れてアイツが来る。
「―――弱ってるのね」
 以前感じたほどのざわめきが無い。
 それでも、少しずつそれが強まっているのは分かる。
 力を取り戻す前に。
「楽にしてあげるわ」
 揺れ動く力の波の方向へ睦月が鋭い視線を向けた。




 『理解できませんね』
『何が』
 夜の街中を歩きながら、そこかしこの鏡や水溜りに映りこむ白い男の姿。
 それに視線を向けることなく頭の中で会話が続く。
『指示通りに行動していただいているとはいえ、貴方は今弱体化しているにも拘らず対象を下僕にもグールにもしないように力を割いている』
 何故でしょう、と問われれば愚問だと返す。
『これだけ人の密集している中で感染力を持たせれば、倍倍ゲームですぐに壊滅寸前になる。そんな事をして何になる?自分の食料を減らしてどうする』
 勿論、それだけではない。
 自分と血の接点を持つ者を作りたくないのだ。
 たとえグールであっても下僕であっても。
 何かに縛られるのは御免被る。
『力の蓄えが遅いのはそのためですか…ならばもっと良質の者をお選びなさい』
『寄って来た中から選べばいいだけのこと』
『非効率的ですな』
『言ってろ』
 そうこうしている内に、ルシアスの前に女が現れる。
「何だ?」
 ルシアスは蠱惑的な笑みで女の迎え入れた。




  路地裏で女に甘い言葉を囁く。
 うっとりした様子で女はその身を預け、目を閉じる。
 次の瞬間、その首筋に牙が突き立てられるとも知らずに。
「お待ちなさい!」
「?」
 声のした方へ視線を向けると、和装姿の撫子が佇んでいる。
 あまりにもこの場に不釣合いな姿。
 だが、それもすぐに分かった。
「――ようやっとお出ましか…」
 食い損ねた獲物は騒がれる前に魅了で操り、一人どこかへ行かせる。
「教会の差し金にしちゃ、随分古風な所が来たな?」
「彼女だけじゃないさ」
 今度は頭上、雑居ビルの上から、男が一人、こちらを見下ろしている。
「前の事件の時に報告された魔術師と吸血鬼とは違う者がいるが…何処のどなた様で?」
 ルシアスのすぐ傍に潜む気配に向かって、勇輔は問いかける。
「ルシアス!」
「逃がしませんよ!」
 上を見たかと思えば、今度は背後からまた別の声。
 見知った顔ぶれ。
 先の戦いで、夢の中で。
「ったく、次から次へと…」
 どうなっているのかと問いかける。
『―――どうやら、行動を予測されたようですね。しかしどうやって…」
「フラシスが見たんだよ…皆に見せた。次はここだって。吸血鬼ちゃんあ〜そぼ〜♪ふふふ…」
「!またかっ」
 可愛い喋りをする妙な中年の姿に、怪訝そうに眉を寄せる。
『フラシス…妖霊フラシスか。まずいですね、あれは情報を具象化し、他者にそれを見せる事が出来る』
 ゆえに犯行現場や周辺で採取した微細な情報を元に、その特性を見出し視覚化して、同じ波形が現れる場所を予測したのだろう。
 まずい。
 多勢に無勢。
「仕方ありませんね!」
「!?」
 ルシアスの影から白い男が姿を現す。
 瞬間、皆身構える。
「お初にお目にかかります。私はライカン。我が主の望みのままに従い、それを実行する者…以後お見知りおきを」
「ライカン?死霊使いじゃなかったのか!?」
 浩介の言葉に、いいえ?と笑う。
「それは通り名。職業は」
 死霊使いですよ、と答え、周囲に死霊が溢れる。
「我が主の命により、この方の復活を仰せつかった。全ては伯の為に――――」
 死霊が周囲を取り巻く。
「納得出来る理由が有れば協力する事も厭わないつもりだったけど、話をする余地もないようね!」
 溢れかえる死霊を前に、周辺はパニックを起こしている。
 騒ぎを聞きつけ駆けつけたあやこは、古今東西の宗派に対応した液晶携帯経典を詠唱。死霊の調伏を図った。
 次々と死霊が消えていく中、ルシアスとライカンの姿は既に消えていた。
「くっ…遅かったか……」
 死霊の渦に突っ込んでいき、斬った、と思った瞬間、睦月の刃にその手ごたえはなく、地面にひびを刻むだけ。
 その様子を勇輔同様に、別の雑居ビルの屋上から見ていた潤。
「伯……つまり、伯爵クラスが関与してるってことか…」
 一連の事件の真相を知った潤は、何か思うところがあったのだろう。
 そのままその場に居た者に悟られること無く姿を消した。


 厄介なことになりそうだ―――




  結局、待ち伏せしたものの取り逃がしてしまったことに一同落胆の色を隠せない。
「IO2が指示したミッションは完了しました。まずは情報が大事。お疲れ様です」
 聖堂に集まった全員に、ミハエルはその労を労う。
「だけど…」
 落ち込む真帆。
「だよな…」
 教会の下した命令は遂行できていない。
 むしろ、自分たちがまたもや奴を逃がしてしまったことに、真帆と浩介は己の無力を痛感する。
 何が甘かったのか。
「―――いや、何が甘かった、何をミスしたかではなく、今回の任務の主な所は情報収拾。そして、上手く行けば、退治…必要な仕事は果たした。あの白い男が何者なのかも分かった。IO2としては今はそれで十分だ」
 組織内でもかなりの自由が約束されている勇輔の言葉だけに、リージェスも少しホッとした様子だった。
「だけど、アイツは伯の為に、ルシアスを復活させると言っていたわね」
 睦月の言葉に、ふと、ライカンの言葉を思い出す一同。
 全ては伯の為に。
「…次に会うときは、完全復活した彼…でしょうかね」
 ならばマスタークラスとやり合うだけの下準備をしておかなくては。
 撫子は、次は負けませんよ、とにこやかに微笑み、本日は失礼しますと席を立つ。
「ふふふ……」
 新たな犠牲者が、若い娘が出なくてよかった。
 フラシスはただそれだけで、少しばかり娘を護れたような気がして何か呟いている。
「んー…でもなんかしてやられたって感じで、かなり悔しいわね。理由は分かったけれど、子供達を襲わない方法はなかったのかしら?」
 納得行かない様子で呟くあやこ。
 血から精気を吸い取れるのはその体外に出たその瞬間だけ。
 精気はすぐに失われてしまうから、ただの血だけを補給しても気休めにしかならない。
 彼にとっての『生きた血』が必要だったのだから。
「でも、これで…ルシアスが生きている…いえ、復活したことは分かりました。そして、協力者がいるということも」
 リージェスの言葉に、勇輔は昼間感じた四つの存在について明かそうと思ったが、今は混乱を招くだけだと思い、自分の胸にだけ収めた。
「―――吸血鬼が生きている以上、君の魔力を持ち去った魔術師も…いずれは」
 やってくる。
 あの男も、いずれは。
 そして新たな敵まで。


「この件に関しては、もう暫く様子を見る必要がありますね…」
 ミハエルの言葉に、一同浅く頷いた。


―了―
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0328 / 天薙・撫子 / 女性 / 18歳 / 大学生(巫女):天位覚醒者】
【4698 / 源・睦月 / 女性 / 999歳 / 狩人】
【6458 / 樋口・真帆 / 女性 / 17歳 / 高校生/見習い魔女】
【6589 / 伊葉・勇輔 / 男性 / 36歳 / 東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫】
【6725 / 氷室・浩介 / 男性 / 20歳 / 何でも屋】
【7038 / 夜神・潤 / 男性 / 200歳 / 禁忌の子】
【7061 / 藤田・あやこ / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】
【7227 / ・・フラシス / 男性 / 52歳 / 無職(ホームレス)】

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■         ライター通信          ■
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