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■命運■ |
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川岸満里亜 |
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【3368】【ウィノナ・ライプニッツ】【郵便屋】 |
変な事件に巻き込まれちゃったので、聖都の偉い人に保護してもらうよ。しばらくそっちに行けないけど、心配しないでね。ちゃんと毎日身嗜み整えるんだぞー。部屋の掃除も週に１度はやってよね！
――愛娘キャトル・ヴァン・ディズヌフより――
ある日、そんな手紙がファムル・ディートの元に届いた。
「まったく、何をやってるんだ。戻ったらきつく言ってきかせんとな」
手紙を畳んで机に置くと、ファムルはいつものように研究室に向う。
途中、ふと思いつき足を止める。
「そういえば、アイツはどうしてるか……」
ファムルが魔女の屋敷を出た頃に、一緒に屋敷を出た魔女の少女がいた。
数週間前に魔女の屋敷に行った際には見かけなかったのだが……彼女の呼び名はディセット（１７）。まだ生きていてもいいはずだ。
棚の奥から箱を取り出し、開く。
古い書類や手紙を掻き分け、ファムルは一通の封書を探し出した。
彼女は人間と共に、山奥の小さな村で暮し始めたはずだ。
住所は記されていないが、封書の中には地図が入っていた。
「シスのことがあって以来、連絡をとっていなかったが」
手紙を手に、ファムルは思案した。
まだこの場所に住んでいるのかはわからない。
力になってくれるかもわからない。
しかし、ディセットはシスがとても可愛がっていた魔女である。
ダラン・ローデスを行かせてみる価値はあるかもしれない。
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『命運〜熟考〜』
街から魔女の屋敷までは、かなりの距離がある。
辛い山道と幻術の打破にも、随分と慣れ、体力もついたように思える。
得られたものは、本当に大きい。
汗を拭いながら、ウィノナ・ライプニッツは自室へと向う。
荷物を置くと、ノートを開き、道中考えていたことを纏めてみる。
書き出した案の中から、実現できそうなものに丸印をつけると、直ぐ様立ち上りクラリスがいると思われる書斎に向った。
――数時間後、ウィノナは、掃除をしていた２０代前半の魔女を捕まえて、図書室に連れてきていた。
最初に、自分の案についてクラリスの意見を聞こうと思い、彼女の元を訪ねたのだが、ダランの治療に関しては一切助言しないとあしらわれてしまった。
そのため、ウィノナはまず魔女達の意見を聞くことにしたのだ。自分の専攻に絡める形に案を仕上げれば、クラリスからも意見を引き出せるだろう。
「それって凄く我が侭だと思う。なんで、ウィノナが真剣になってるのかわからない」
ウィノナの説明に、魔女は不快感を露にした。
「ん、でもさ、彼にとって母親は特別だから。別にただ自己中なだけじゃないんだよ、多分。というか、キミもダランのこと嫌いなの？」
彼女達の“姉”の子供だというのに、魔女達は誰もがダランに対して良いイメージを持っていないように見える。
「そりゃね……。例えるのならウィノナ、あなたの姉が、下種で野蛮な下等種族の異性に連れ去られ、蛮族の子供を産んで死んだとしたら……その子供を好きになれる？」
「い、いやその例えは大袈裟すぎるんじゃ……」
「私にしてみれば、ダランの存在ってそんなカンジなんだなー。私はシス姉のこと覚えてるし。ああ、あなたのことは、下種な蛮族とは思っていないわよ。下等種族なだけで」
なんだかカチンとくる言葉だが、ウィノナは苦笑するに留めた。
「……で、何だっけ？」
「あ、うん」
魔女の言葉に、ウィノナはノートを開きながら、自分の案について説明をする。
「ええっと、ダランの体内はこんな風に、胴の辺りに、魔女の魔力が封じられている状態なんだ」
体内図を指差す。
「で、この魔力を起点にして、そこの魔力で押し流すようにしてコントロールってできないかな？ もしくは、胴回りの魔力と通常の魔力を別々の魔力として捉えて、胴回りの魔力を通常の流れに吸収して取り込もうとするように意識してコントロールするとか」
「うーん、起点にして押し流す能力が彼にあればね。ないから、上手くコントロールできないんじゃない？ 吸収するのは無理よ。私達、魔女の力は人間の力に吸収されたりはしない」
魔女としてのプライドが込められた台詞だった。
「そうだね。じゃ、もう一つ別の方法として……」
ウィノナはダランの体内図の回りに波線を書いてゆく。
「外部から、魔力の流れを操作するっていうのはどうかな？ 魔力の流れに影響を及ぼす術とかで、流れを一つにすれば、制御できるんじゃないかと思うだけれど」
「外部からって手段も、考えられなくはないと思うんだけれど、流れを一つにするっていうのは難しいかもねー。魔女の魔力と、人間の魔力は元々別のものだから。イメージ的には、合わない型の血液を、一緒の血管で流したら命に係わるっていうのと似たカンジ？」
「そっかー。じゃ、一番可能性があるのは、魔女の力の方を起点とするって方法かな。ダランに能力がないのなら、『何か』で補うという形で」
未知のアイテムか、魔法具か、薬か……体質改善か。
「そうね〜。じゃ、掃除に戻ってもいい？」
「あっ、待ってもう一つ！」
「も〜。早く終わらせないと、食事に遅れちゃう」
通常の勉強ではないので、魔女としはウィノナの話に付き合う義務は無かった。しかし、ウィノナが訪れて数ヶ月。彼女に友達としての親しみを感じており、無下にはできないようだ。
魔女が浮かせかけた腰を、再び下ろす。
「ごめんごめん、手伝うから！」
手を合わせて謝りながら、ウィノナは質問を続けた。
「キミ達は、どうやて魔力を制御してるの？ ダランはその制御方法を知らないだけだったり……」
「私達の中には、数種類の魔力が存在してるの。それをバランスよく循環させることで、制御してるのよ。ダランの中にある魔女の魔力が１種類なら、人間の魔力とじゃバランスが取れないから、制御は無理なんじゃない？ ２種類以上あるのなら、上手くバランスを取ることが可能かもしれないけれど……その技術を会得できるかどうか。そして、人間の魔力は邪魔になるでしょうね」
「なるほど。ありがと！」
これ以上引き止めるわけにもいかず、ウィノナは礼を言って、魔女を解放した。
魔女の力に、人間の力――これまで、大きく二つに分けて考えてきたけれど、ダランの中の封じられた力については、もう少し調べる必要があるのかもしれない。
しかし、魔女の力を制御するための魔法具作成に、クラリスが協力してくれるかどうかといえば、それは絶対無理だろう。クラリスとしては興味はあるかもしれないが、ダランやウィノナに魔女の力の制御法……つまり、魔女の弱点をも暴き出してしまいかねない技術を知られることは、決して望ましくないはずだ。
「……ん？ でも、ダランの中に魔女の力があるってことは」
もしかして、ダランの中の魔女の力で、クラリスのような特殊能力での魔法具作成も可能なのだろうか？
それならば、ダランの魔力で、ダランの魔力を制御する魔法具を作り出して……いやでも、そのためには、ダランの魔力を制御する方法を見つけないと、ダランの魔女の魔力は正常に使えないではないか。
「だめだ……っ」
相当疲れているようだ。混乱して、考えが纏まらない。
学ぶという行為は自分自身の為になってはいるが、ダランの身体を治すことが目的なだけに、適切な助言を受けられないのはどうにももどかしい。
「それもこれも、ダランが嫌われてるからなんだろうけど」
ダランが魔女達に愛されるか、自分が有能となり、魔女の片腕として認められるか――そんな時がくれば、飛躍的に研究は進展し、新たな展開が望めそうだ。
つまり、今自分にできることは。
「努力するしかないね」
魔法具の素材に関する本を探し出す。
人間の魔力を封じ込める手段なら、多分存在する。錬金術師のファムルであっても、ダランを側に置き、治験を繰り返しつつ、研究を進めれば人間の魔力だけ封じる薬を作ることが出来るだろう。
寧ろ、恐らく魔女達はその手段により、人間の魔力を持たないのではないか？ 彼女達は人間をベースに作られているのだろうから、本来人間の魔力も持っていていいはず。
魔女の魔力を制御する手段――。
ふと、ウィノナは思い出す。
ダランがこの屋敷にいた頃のこと。
魔力の制御ができず、訓練場で痛みを感じていたウィノナの手をとり、ダランがウィノナの魔力を調整したことを。
同じように、外部から調整する手段があるかもしれない。だけれど、それにはやはり魔女の力が必要なのだろうか……。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【3368 ／ ウィノナ・ライプニッツ ／ 女性 ／ 14歳 ／ 郵便屋】
【NPC ／ 魔女 ／ 女性 ／ 345歳 ／ 魔術師】
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■ ライター通信 ■
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ライターの川岸です。
いつもありがとうございます。
今後の展開によっては、しばらくダランとは接触できなくなるかもしれません（共に行動しない限り）。
ダラン絡みで、何かやっておきたいことがありましたら、次のご参加の際に、行動しておくといい……かもしれません。
曖昧で申し訳ありませんが、今後とも皆様と物語を作っていければと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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