■【桜蘭】月見名物を考えろっ!■
橘真斗
【2470】【サクリファイス】【狂騎士】
 ガッシャーン。
 ちゃぶ台ならぬ、まな板が宙を舞い、調理道具が鳴り響いた。
「メニューが浮かばないアルー! 名月祭まで一週間もないというのに~!!」
 床でじたばたと転がる焼・煌(チャオ・ファン)。
 今年で二十うん(げふんげふん)歳である。
「あのー、チャオさん。そんなに暴れても新作メニューはできないわけで……」
 鍋を盾にしつつ、声をかけるのはトム・ヤンクンだ。
「うー、他の店には負けたくない……やはり、また他所の知恵をかりるアル!」
「呼び込みすればいいんですね。毎度のことながら」
「そのとーり! ウェイトレス、ウェイターもついでに募集ヨ!」
 いきなり立ち上がりびしぃと指をさすチャオ。
「はいはい、もう毎度のこと過ぎて人集まるか微妙ですけど……」
「ホアチャー! つべこべ言わずにいく!」
 ズべしッとチョップを受けたヤンクンはしぶしぶと呼び込みに出かけるのであった。
 
【桜蘭】月見名物を考えろっ!

滿月的夜晩(満月の夜)
吃什麼好吃地也覺得(何を食べても美味しく感じる。)
可是,儘管如此欲一號(しかし、それでも一番を欲するのは)
人的性馬(人の性か)

~起~

「チャオさーん、助っ人連れてきました……ひゃっ!?」
 ヤンクンが裏口から入ってくると共に飛んできたのは包丁。
 それがヤンクンの顔の横にささり、髪の毛がはらりと落ちた。
「ひぃ!」
「ああ、ちょっと手が滑ったアル」
「ちょっとでころされちゃ たまりませんよぉ」
 少しなみだ目になったヤンクンが訴えた。
「相変わらずのようだな」
 顔をだしたのはサクリファイスだった。
「サクリファイスさんアルかー。前もありがとうアルね」
「いや、こちらこそ。私はこちらの料理には詳しくないので、役に立たないかもしれないが」
 とヤンクンの裏にいる青のストレートロングにした髪をした甲冑女性は答えた。
「そんなことないアルよ。異国人大歓迎! ささ、特別衣装に着替えるアル~」
 先ほどまでの荒れはどこへいったのかチャオはにんまりと笑みを浮かべるとサクリファイスを更衣室へと背中を押して連れ込んだ。

数十分後

「い、いや、確かに料理運びとかを手伝うという話もしたが、この格好は……」
 更衣室の扉から顔を出したサクリファイスの頬は赤い。
 しかも頭にはウサミミカチューシャがついている。
「ほらほら、出るアル出るアル」
 更衣室の奥からチャオがサクリファイスを押し出す。
 出てきたサクリファイスは黒地に赤で龍の刺繍をしてあるチャイナドレス。
 スリットが入っていて白い綺麗な足が出ていた。
 調理場のときが一瞬止まる。
「こら! さぼってないで仕事するある!」
 後ろから同じようにウサミミカチューシャをつけぴょこと出て来たのはいつもの中華衣装のチャオだった。
 ぷんぷんと怒ると共にウサミミがぴょこぴょこ動いた。
「そ、それで……メニューの相談だが……」
 いまだ着慣れない格好に問い惑いつつも本題を切り出すサクリファイス。
「そうあるそうある。まぁ、基本的な月見麺類は用意することにはしたアルが~」
 と厨房の様子をみせる。
「でも、それだけなら他のところもやるアルし、『大熊猫飯店ならでは!』なものを作りたいアルよ」
「なるほど、では月見団子というのはどうだろう? こちらでは月餅がメインだからちょっと変わった感じになるとおもう」
 顎に手をあてて思案したあと、サクリファイスは話をきりだした。
「団子あるか、月に見立てて黄色い色のがいいあるね~。あ、栗なんかをつかってみればデザートにいいアル」
 チャオはサクリファイスの意見に何度も頷き、メニューの材料の調整を考え始めた。
 日は沈み、夜の開店はもうすぐだ。
 
~承~

 夜の桜蘭は昼以上に活気に満ちていた。
 今夜は満月、そして名月祭。
 人々が盛り上がるのも無理はない。
「はいはーい、大熊猫飯店では今年も賞月麺をやってま~す」
 看板を掲げて、若いウサミミをつけた売り娘や、ヤンクンが宣伝を行っていた。
 厨房ではチャオの妙技が唸り、サクリファイスがウェイトレスをやっている。
「賞月麺2つ、炒飯も注文はいっている」
 メモを一生懸命とっては厨房へいく。
 そのたびにウサミミがピコピコ動くのが客に大人気だった。
(自分で言い出したこととはいえ、こういう格好でしなければならないとは)
「そういえば、何でウサミミなんだ?」
 注文を厨房へ伝えつつ、サクリファイスはチャオへ聞く。
「こちらでは月はかにがいるっていわれているあるが、他から来た人にウサギにみえるっていわれたアルよ」
「なるほど、月の模様も時と場所によって見え方が違うのだな」
「そういうことある。ウサミミのほうが可愛いアルしね、はいこれ3番テーブルにはこんでっ」
 出来上がった料理をサクリファイスに渡す。
 その量は両手で抱えきれないほど多い。
「う……、いやこのくらい大丈夫だ!」
 自分で言い聞かせるように声をはりあげた。
 チャイナを翻してサクリファイスは戦場ともいえるテーブル席へとすんでいった。
 
 
~転~

 食事も終え、客が帰りだそうとしたとき。
 すっと差し出されるデザートがあった。
 月に見立てた丸い団子。
 色も黄色で食べればほのかに栗の甘みの広がるもの。
「これは、注文してないが美味しい!」
「当店のサービス品。月見団子でございます」
 営業スマイルと丁寧な言葉でサクリファイスが目を見開いて感動した客へ説明をする。
「食後にちょうどいい。今日はここに来て良かったな」
 満足そうに笑みを浮かべ帰る客。
 そして、「こちらも! こちらも!」と食後で落ち着いていた店内が再び騒がしくなった。
「好評なのは嬉しいが、さすがに大変なことになった」
 微笑みながらつぶやくとサクリファイスは厨房へ足を戻した。

~結~

 夜も更けて、月も山の陰に隠れだす。
 祭りの後は嵐の後に等しい。
「お疲れ様アルね」
 いつもの衣装に着替えたサクリファイスに、ウサミミをつけたままのチャオが冷えたウーロン茶を差し出した。
「いや、私自身楽しめた……」
 差し出されたものがウーロン茶だけだったことにサクリファイスは少し目じりを下げた。
 それを悟ったのか、チャオはにししと笑い月見団子を差し出した。
「サクリファイスさんのおかげでできたメニューあるからね。見えている間に一緒に食べるアル」
 手近な石に腰掛けて二人そろって団子をつまみ、ウーロン茶を飲む。
 秋のさわやかな風がふいて、サクリファイスの青い髪を撫でた。
「うん、この団子は」

『好吃(ハオチー)』


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┗━┛     ★PCゲームノベル★      ┗━┛
【PC名(ID)  /性別/年齢      /種族・職業】
サクリファイス(2470 /女/22歳/堕とされた戦乙女・狂騎士)
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■         ライター通信          ■
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どうも、橘です。
チャオシリーズを今回もバリバリですよー

>サクリファイスさん
二度目の参加感謝です。
イロイロと着させて見たい衝動にかられ、こんな結果となりましたがいかがでしたか?


このたびは参加本当にありがとうございました。
それでは、運命の交わるときまでごきげんよう。

2007/10/10 橘 真斗

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