■かぼちゃパーティ開いてます■
笠城夢斗 |
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】 |
「せっかくのハロウィンだから……」
店長のエピオテレスが人差し指を立てた。「ハロウィンパーティ開きましょ」
「具体的に何をするのさ、テレス」
ウエイトレスのクルールがテーブルに座って気のなさそうな声で訊く。
「出すもの出すもの全部かぼちゃ料理」
エピオテレスはうふ、と笑って、「それから、お客様には仮装で来て頂こうかしら」
「それなら一応、突然この店に着た人でも仮装できるように、衣装置いておいたら」
クルールの提案に、それもいいわね、とエピオテレスは手を叩く。
「飴もいっぱい用意しておくわ。クッキーもね」
「……俺たちは知らねえぞ」
フェレ・アードニアスが面倒くさそうに言った。
フェレの向かいにいた、エピオテレスの兄ケニーは、
「厨房の手伝いをしてもいいが……お前は追い出すんだろうな」
「もちろんよ兄様」
ケニーの料理はエピオテレスに負けぬほど逸品である。
しかしエピオテレスは、ケニーがヘビースモーカーで、厨房でも煙草を手放さないため常々厨房からは追い出していた。
「ならケニー。いつも通りゲームだ」
「仕方ないな」
フェレのカードを受け取って、2人はカード賭博を始める。
「……男共、協力心がない」
クルールが呆れて言った。彼女自身、別に乗り気ではないのだが。
「ウエイトレスよろしくね、クルール」
「はーい」
エピオテレスの言いつけに、クルールは欠伸をしそうな声で返事をした。
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かぼちゃパーティ開いてます
「せっかくのハロウィンだから……」
店長のエピオテレスが人差し指を立てた。「ハロウィンパーティ開きましょ」
「具体的に何をするのさ、テレス」
ウエイトレスのクルールがテーブルに座って気のなさそうな声で訊く。
「出すもの出すもの全部かぼちゃ料理」
エピオテレスはうふ、と笑って、「それから、お客様には仮装で来て頂こうかしら」
「それなら一応、突然この店に着た人でも仮装できるように、衣装置いておいたら」
クルールの提案に、それもいいわね、とエピオテレスは手を叩く。
「飴もいっぱい用意しておくわ。クッキーもね」
「……俺たちは知らねえぞ」
フェレ・アードニアスが面倒くさそうに言った。
フェレの向かいにいた、エピオテレスの兄ケニーは、
「厨房の手伝いをしてもいいが……お前は追い出すんだろうな」
「もちろんよ兄様」
ケニーの料理はエピオテレスに負けぬほど逸品である。
しかしエピオテレスは、ケニーがヘビースモーカーで、厨房でも煙草を手放さないため常々厨房からは追い出していた。
「ならケニー。いつも通りゲームだ」
「仕方ないな」
フェレのカードを受け取って、2人はカード賭博を始める。
「……男共、協力心がない」
クルールが呆れて言った。彼女自身、別に乗り気ではないのだが。
「ウエイトレスよろしくね、クルール」
「はーい」
エピオテレスの言いつけに、クルールは欠伸をしそうな声で返事をした。
■■■ ■■■ ■■■
入り口外に「かぼちゃパーティ開いてます」の看板。
『ぜひ仮装でいらしてください』との添え書き。
「うーん?」
それを見た藤田あやこ[ふじた・―]は、少し首をかしげた。
彼女は元人間、現エルフである。耳の先が少しとんがっていて、それだけで「仮装!」と言い切れないこともないが、
「……これは腕が鳴るわよね」
あやこは腕まくりのしぐさをした。
彼女は裁縫が好きだった。
■■■ ■■■ ■■■
黒冥月[ヘイ・ミンユェ]と草間武彦の付き合いももうかなりになる。
2人で仕事帰りに適当な世間話をしながら歩いていると、2人共にお馴染みな喫茶店が見えてきた。
「なんだ? 『仮装でいらしてくださいね』……」
何やってんだあいつら、と冥月が呆れると、
「別に仮装じゃなくてもいいらしいぞ」
と草間が笑って、「ほら、テレスのかぼちゃ料理が食えるらしいから。入ってみるか」
「え? あ?」
冥月の腕を引いて、草間は喫茶「エピオテレス」のドアを開けた。
ちりんちりん……といつもの鈴の音がして。
「よく来たな」
と真っ先に迎えてくれたのは、首の下はスーツを着た……頭にどでかいハロウィンかぼちゃをかぶった青年。
沈黙。
眉間のしわに人差し指を当てて、草間は苦々しく言う。
「……ケニー。そんなでかいかぼちゃどこで手に入れてきた」
「作り物だ」
ずぼっと頭からかぼちゃだけを抜いて湧きに抱えるのはケニー。
冥月は、そのケニーの姿が妙に笑えてくっくっと腹を押さえて笑いをこらえていた。
と――
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませ」
両脇から、女性陣の声。
右腕を魔女服のクルールにつかまれ。
左腕をこちらも魔女服のエピオテレスにつかまれ。
「当店ただいま仮装をお勧めしております☆ 店にもご用意してございますのでぜひお着替えくださいませ☆☆☆」
いつも5割り増しくらい裏声のクルールが、ものすごくがっちりと冥月の腕を抱え込みながら言った。
「冥月さんもたまには違う服を着て気分転換なさいませんか?」
左からはエピオテレスの優しげな声。しかし――意外なことに、エピオテレスの力は強かった。
彼女たちに引きずられ、臨時に喫茶店内に作られたお着替えルームに引っ張られていく冥月を見て、草間がひらひらと手を振って、
「せいぜい似合うのにしてやれ」
「貴様、知ってて連れてきたな!」
わめくがすでに遅し。
……本当は逃げるのは簡単だった。だがムキになるのも……と冥月がお着替えルームで悩んでいる間、エピオテレスの優しい手がするすると彼女を着替えさせていく。
その間に――
「お前はこれをかぶっておけ」
ケニーがかぼちゃ頭を、草間の頭にずぼっとはめた。
「!!!」
草間は大慌てでかぼちゃを頭からはずそうとした。こんな姿を冥月に見られたらたまらない。しかし慌てれば慌てるほど、はずしかたが分からなくなる。
フェレが大爆笑していた。
幸いなことに、冥月のお着替えには時間がかかっている。草間がかぼちゃ頭相手に悪戦苦闘していると――
ちりんちりん
鈴が鳴って、娘が1人入ってきた。
クルールはエピオテレスの手伝いをしていて接客に出られない。仕方ないので、
「よく来たな」
とケニーがあまり接客になっていない接客に出たのだが。
……入ってきた娘は、かぼちゃ頭に悪戦苦闘している人物を見てぽかんとした。
フェレが、入ってきた娘を見てぽかんとした。
「ふむ」
ケニーはあごを撫でて、「エルフなのにそんな仮装か。面白い」
「わ、エルフだってことはモロバレですか?」
と、藤田あやこは言った。
「え、まじ? エルフ?」
フェレが興味津々で席から立ち上がる。
「その耳も仮装じゃないんだ? 目は?」
「目はちょっとしたマジックですよー!」
とあやこは笑った。
左眼が紫色。
これはエルフの特徴、とがった耳。
なぜかガチョウの羽と水掻きがあって、喉元両サイドに鮫のエラ。
それでいて――
白いフリルたっぷりの、しかし黒が基調のふりふりスカート、いわゆるゴスロリの服装だった。
ゴスロリの……半魚人。
「俺はこの店の副店長のケニー。あっちの野次馬は居候のフェレだ」
「藤田あやこです!――ところでそちらのかぼちゃさん、どなたですか?」
とあやこは言った。
ぐ、と草間の動きが止まった。このかぼちゃ頭は目のところが見にくいが、声で分かる。自分のことを問うているのは……知り合いだ。
果たしてかぼちゃをはずしていいものだろうか!?
そんな時に。
「はーい、冥月さんかわいいですよー☆☆☆」
クルールのひっくり返った声がした。
特別お着替えルームが開いた。
草間はそちらを見て――
噴き出した。
同時に冥月も噴き出した。
「あははははは! なんだそれは、草間!」
「お前こそなんだその妙にかわいい服装は! ぶははは、よく似合うじゃないか!」
ばんばんと近くのテーブルを叩いて大爆笑する草間。
冥月は笑いながら、渾身の力をこめて草間の鳩尾を殴った。
ぶほおっと、草間ノックダウン。
「いや……本当によく似合うものだな。意外だ」
ケニーが煙草を取り出しながら、冥月をしげしげ見た。
「こ、こ、こ、こんな服……!」
「特別変でもないだろう」
「―――」
冥月はおそるおそる、もう一度自分の服装を見下ろす。
丈がミニの、着物だった。ピンク色をしていて、柄は白と黄色の花びらが散っている。
いつも黒尽くめな冥月には落ち着かないことこの上ない。
元の服はエピオテレスがどこかに隠してしまった。にこにこ顔のこの店長、なかなかあなどれない。
ふと、冥月は店内を見て――
もう1人客がいることに気づいた。
「……半魚人のエルフゴスロリ?」
「そうですロリ〜!」
意味不明な語尾をつけて、あやこは返事をした。
「会ったことありますよね。ええと、冥月さんでしたっけロリ」
「ああ……お前は確か藤田……」
「あやこですロリ」
「とりあえずその変な語尾をやめろ」
冥月は片手で顔を覆った。「ああ……お前は元からエルフだったかな」
「そうですロリ」
「だからやめろその語尾」
冥月はむしゃくしゃしていた。フェレの前にカードが散らばっているのを見て、おそらくフェレとケニーは直前までカードゲームをしていたのだろうと推測し、
「おいケニー、フェレ。ゲームに私も混ぜろ」
「ああ? 何であんたも入んの」
「うるさい混ぜろ」
嫌そうな顔をしたフェレの斜め横に座り、ケニーが戻ってくるのを見る。
エピオテレスは嬉しそうに、
「さあさあかぼちゃ料理作ろうかしら」
と歌うように言っていた。
「あ、おねーさーん」
あやこが手を挙げる。
「はい、お客様?」
「私マシュマロ好きですー!」
「まあ。はいはい、マシュマロですね、かしこまりました」
にっこり笑ってエピオテレスは厨房に入っていく。
「おいケニー、早くこっちに戻って来い!」
冥月がいらいらと副店長を見ると、煙草をくわえているケニーはノックダウンしたままの草間の頭からかぼちゃをずぼっと抜いているところだった。
そして、カウンターの中へ行くとそこに並んでいる飲み物の中からブランデーを取り出し、草間の元へ戻ってばしゃっと顔にかけた。
「………っ!」
すぐに目が覚めて、草間はぶるぶるっと頭を振る。そしてめまいを起こしてばたっと倒れた。
「……アホかお前は。仮にも探偵事務所を持ってる人間か」
「あれー? わあ、草間さんだったんだ!」
半魚人あやこが草間の顔を覗き込む。「ねえねえ草間さん!」
あやこは気絶寸前の草間の腕を引っ張った。
「な……なんだ、藤田……」
ふらふらで返事をすると、
「私芸をするからさ、見ててよ!」
「芸……」
「ねえ、グラス貸してグラス! ええと、6つくらい」
あやこはケニーを見る。
ケニーは冥月の壮絶な視線を知らん顔しながら、グラス6つを用意して、冥月とフェレの席と近いテーブルに置いた。
そして草間をずるずる引っ張ってきて、椅子に座らせる。
るんるんとやってきた半魚人ゴスロリ娘は、そのグラスをタワーにする。
「ではいっきまーす、はいっ!」
しゅわっ
6つのグラスが、あっという間に赤い液体で満たされた。
さすがに冥月が、イライラをおさめて目を丸くした。
「その液体は……」
「飲めますよ〜。シャンパンです!」
まず一番上のグラスを、あやこは草間に渡した。
「……毒見?」
「わ、失礼なっ」
「わ、分かった羽で叩くな!」
草間は半ばやけでくいーっとグラスの中の赤い液体を飲み干す。
そして、興味津々の視線の中、
「……普通のシャンパンだな」
とつぶやいた。
「はい成功! はいはい皆さんもどーぞ!」
あやこはグラスを冥月、ケニー、フェレにも渡す。それから自分、近づいてきたクルールの分も。
「……シャンパンかよ……」
フェレがぶつくさ言った。「俺は酒がいいね。日本酒」
「はいっ、どうぞ!」
「は?」
あやこは裾の下から、ワンカップ大関を取り出した。
「ななな」
フェレが唖然とする。
あやこは片目をぱちんとつぶって、
「これぞあやこ半魚人バージョン、水芸でーす!」
とぺろっと舌を出した。
厨房からいい匂いがしてくる。かぼちゃの匂いだ。
「マシュマロ出てくるのかな」
「客の注文は文句なしのものを出す主義だ」
ケニーが煙草の煙を吐き出しながら言った。
「……ねえ」
さっきから蚊帳の外のクルールが、退屈そうに言ってくる。
「冥月と勝負するならしてよ。とりあえず見てるの楽しそうだし」
「……俺は彼女とだけは勝負したくないんだがな」
「何で?」
「……終わった時に分かる」
冥月はその会話を聞いていたが、知らんふりをした。
渋々と、煙草をくわえたままケニーが席に座る。
「レートは?」
冥月は2人の男性に聞いた。
「10」
「ならその100倍、1000だ」
フェレが目をむいた。冥月はにやりと笑って、
「私に勝ったらこの間のイカサマより高等なイカサマを教えてやる」
ぐっと青年はつまる。「いらねえ」と一言で切り捨てられない言葉だった。
冥月はケニーには、「煙草1年分やる」と言った。
「……せこいな」
「うるさいぞ。それで私が勝ったら……そうだな。2人とも1つずつ言うことを聞いてもらおうか」
「なんでそんなも――」
「男ならぐずぐず言うな!」
クルールとあやこが、興味津々で3人がカードを切るのを見ていた。
草間は我関せずと腕を組んで煙草を吸っている。
「あら」
料理皿を持ってきたエピオテレスが、微笑んだ。「また遊んでいるのね」
「遊んでるですむ? まあポーカーでレート1000ってのは大したことないけど……」
何げにセレブなあやこは平気な声でのたまう。
それからあやこは、エピオテレスの持っている皿の上のものを見て目を輝かせた。
「マッシュマロ〜!」
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
草間の座っているテーブルに腰かけて、あやこはテーブルに置かれた皿からマシュマロを2つほどまとめてぱくっと食べた。
「あ、おいしい! って、これかぼちゃ仕様!? こんな味になるんだ!」
「変な味にならないよう工夫しましたから」
草間が興味深そうに手を伸ばす。そしてマシュマロを1つ口に放り込んで、うなった。
「……テレス、お前の料理の腕には驚かされる」
「ありがとうございます、草間さん」
いつの間にかクルールもそのテーブルについて、マシュマロを食べ始めていた。
隣のテーブルではポーカーが白熱している。全員、一進一退。
エピオテレスはまた厨房に戻ると、今度は違う皿を持ってきた。
今度はちゃんとしたかぼちゃ料理だ。まずは定番、かぼちゃの煮物。
「おふくろの味ってやつだな……」
草間が感慨深そうに言って、「え、人間のお袋の味ってこんなんなのか?」とクルールにつっこまれる。
「聞き捨てならない! ねえウエイトレスさん人間じゃないの!?」
あやこがぱしんとガチョウの羽でクルールの腕を打った。――本当は腕をつかみたかったのだろう。
「あー。その辺無視して」
「無視できないって! 教えてよ!」
あやこがガーガー言っている間、エピオテレスは賭博中3人のテーブルの真ん中にもかぼちゃの煮物を置いた。
しかし3人はそれに気をやっている暇がなさそうだ。ケニーは軽く顔を上げて「今はいらん」とだけ言った。ちなみに冥月は余裕だがフェレは顔を上げる暇もない。
「もう。せっかく作ったんだから後で食べてよ?」
「分かった分かった」
エピオテレスは3人のテーブルからかぼちゃの煮物を取った。
あやこは隣のテーブルを見て、
「この3人ていつもこうなの?」
とクルールに訊いた。
「冥月がゲームに参加するのはこれが初めて」
「へえ。皆互角?」
「……冥月とケニーが手を抜いてんじゃない」
「うっせえぞクルール!」
悪口だけは聞こえるらしい、フェレが怒鳴った。
確かに、普通ならフェレが1人負けしてていい場面なのだ。だが状況は一進一退。全員互角。
冥月がテーブルの下でケニーの足を蹴飛ばした。
「お前も真面目にやれ!」
「俺が何を考えてやろうが勝手だろうが」
ケニーはくわえ煙草のすまし顔である。
「手加減するのも大変だろうがなあ……」
草間が煙草を灰皿に押し付けながらぼやいた。
エピオテレス1人が忙しく働いていた。次にあやこたちの席に届いた料理は、かぼちゃの鶏そぼろ煮。
「うっわ、見かけ地味だけど味はレストラン級だ!」
あやこが失礼なのか褒めているのか分からないことを言った。
次に来たのはかぼちゃの和風コロッケ。
さらに三色かきあげに、かぼちゃのポタージュを添えて。
はむはむはむはむとあやこは食べる。食べ盛りである。クルールも同様に。2人の少女の食欲に押されながらも、草間もたっぷり味わっていた。
隣のテーブルではお金が飛び交っている。
「あー……やべ、金がねえ」
ついぼやいたフェレに、
「あ、私あげようか?」
あやこが唇の傍にかぼちゃをつけたまま振り向いた。
「かっこ悪」
クルールが言うのをものすごい鋭い視線で刺し貫いて、フェレは遠慮なくあやこからお金を受け取った。
「……へたれだな、フェレ」
「ほっとけ! 畜生、まだ次がある!」
ポーカーは続いていた。ものすごいレートなだけに、金の動きが早い早い。
フェレも何とかぎりぎりで2人に追いついていた。ケニーが手を抜いているのは明らかだったが、冥月は一体何を考えているのか。
やがて――
「ふん」
和服姿がきつくなってきたのか、振袖がうっとおしくなってきたのか、冥月は眉間にしわを刻んだ。
そこから。
突然、ゲームが狂った。
「ああああ!?」
フェレが訳の分からないゲーム展開に声を上げる。ひたすら勝ちが冥月につく。どうしてか冥月のカードが一番強い。ケニーさえも勝てない。
そうして1時間後には冥月の1人勝ちにてケニーもフェレも降参。
……彼女の影の異能力を使えば、カードなどすりかえ放題なのだ。
「え? あれ、どうして?」
あやこが不思議そうにする。
「あー」
クルールが、ケニーの言った言葉を思い出して適当な声を上げた。
「冥月。フェレはともかくその手でケニーに屈辱を与えようと考えるのは無駄だぞ」
草間が煙草をくわえながら言った。
ケニーは元々、初めて会った人間怪魔問わず、相手の能力を感知する能力が異常に高い。もちろんその異能を応用すればどういうことができるかを考える思考能力も。
「だから最初ッから本気じゃなかったわけだ」
「気に食わん」
冥月はむすっとした顔をした。
「だがまあいい。……食べ物はないのか」
「テレス」
ケニーが煙草を灰皿に押し付けながら妹を呼ぶと、
「遅いわよー」
とエピオテレスが、新しくほかほかに作りたてのかぼちゃ料理を持ってきた。
冥月はそれを食べて満腹になった後、
「クルール、今ならこいつらに何でも1つ言う事聞かせられるぞ。その権利を譲ってやろう」
「ん?」
「金も返してやる。フェレ、ちゃんとそっちの客人に借りた金返せ」
「分ぁってるよ」
ぶつくさ言いながら、フェレは冥月から取り返したお金から、あやこに借りた分を返した。
「言うこと聞かせる……言うこと聞かせる、かあ」
クルールはあごに1本指を当てて、
「とりあえずフェレに。店出てけ」
「あア!?」
「……それはやめておけ。テレスが泣く」
「分かってるよ。冗談に決まってるだろ」
クルールは、うーんと後ろ首を撫でて、眉をしかめた。
「じゃあ……テレスの代弁。ケニー、煙草やめろ。フェレ、早朝からの修業でぼろぼろに怪我して帰ってくるのやめろ」
ケニーとフェレは声を揃えた。
「「無理だ」」
冥月は意外に思っていた。フェレが早朝から修業……
「何だお前、ちゃんと訓練してたのか」
「……しねえと落ちつかねえんだよ。性分だ」
「訓練訓練!? 何の訓練!?」
あやこが身を乗り出す……
喫茶「エピオテレス」、特別期間パーティ。
半魚人ゴスロリ娘に、ミニの和服娘、魔女が2人に私服の男が3人。それなりにわいわいと、楽しいおしゃべりを繰り広げた。
――店の隅では、ほっとかれたままのかぼちゃ頭が、ころりんと寂しく転がっていた。
―FIN―
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【2778/黒・冥月/女/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【7061/藤田・あやこ/女/24歳/女子高生セレブ】
【NPC/エピオテレス/女/21歳/喫茶「エピオテレス」店長】
【NPC/クルール/女/17歳/喫茶「エピオテレス」ウエイトレス】
【NPC/ケニー/男/25歳/喫茶「エピオテレス」副店長】
【NPC/フェレ/男/20歳/喫茶「エピオテレス」居候】
【NPC/草間・武彦/30歳/草間探偵事務所所長】
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■ ライター通信 ■
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藤田あやこ様
お久しぶりです、笠城夢斗です。
このたびはイベントノベルにご参加いただき、ありがとうございました。
絵つきで拝見できないのがとても残念ですw
水芸楽しかったです♪
よろしければまた喫茶店にいらしてくださいね。
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