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■D・A・N 〜ミッドナイト・ティータイム〜■

遊月
【7192】【白樺・雪穂】【学生・専門魔術師】
 草木も眠る丑三つ時。とは言え皆が皆眠るわけでもない。
 眠れずふと外に出てみれば、見覚えのある姿。
 振り向いたその人は、「お茶でもどうか」と尋ねてきた。
【D・A・N 〜ミッドナイト・ティータイム〜】



 それは、静かな夜だった。
 庭の一角に立った白樺雪穂は、自らの作った魔道具を手に口を開いた。
「白雪」
 名を呼ぶ。
 それは雪穂の使役する白梟のもの。
 声に応えて現れた白雪に魔道具を持たせ、作成を依頼した人物へ届けるように伝える。
 こういうことは初めてではないので、白雪はすぐさま飛び去っていく。
 そしてくるりと踵を返し家の中へ入ろうとした瞬間、視界に銀色が映った。
 反射的にそちらを見ると――。
「あれ、白樺さん。こんばんは。奇遇ですね」
 穏やかな笑顔を浮かべた少年が、………木の上に、いた。
「そんな所にいながら奇遇も何もないと思うけれど」
 至極真っ当な雪穂の言葉に、少年――セツは納得したように頷いた。
「それはそうですね。…ここは白樺さんのお家ですか?」
「そうよ」
「随分とご立派なお屋敷に住んでらっしゃるんですね。少し驚いてしまいました」
 感心したように言うセツ。雪穂は特に何の感慨も覚えず「そう?」と返した。
「ここから見る月が綺麗だろうと思って、少々お庭にお邪魔させていただいたのですが……どうせなら少しお話でもしませんか?」
 ふわり、と地面に着地したセツの言葉に、雪穂は一瞬逡巡し――。
「折角だから、紅茶くらい淹れるわ」
 そう、ぶっきらぼうに告げた。

  ◆

「ところで、以前に会った時と随分と印象が違いますね、白樺さん」
 砂糖もミルクも入れない、素材そのままの味を楽しめるストレートティーを口に運びながら、雪穂の向かいに座っているセツは言った。
 その言ももっともだ。以前セツと会ったとき、雪穂は薄ピンクのロリータファッションだったが今はそれとは正反対の印象とも言える真っ黒な服であるし、三つ編みにしていた髪も完璧に下ろしている。
 そして何より、人格が違う。
 今の雪穂は『魔術師人格』なのだ。
 自己防衛のための好奇心旺盛な『子供人格』のときとは大分印象が違うだろう。
 それを伝えれば、セツはなるほど、と頷いた。
「人格が違ってらっしゃったのですね。それは『視て』いなかったので、少々驚きました」
 そう言って笑い、再び紅茶を口にするセツ。
 雪穂は彼を見ながら、気になっていたことを訊ねることにした。
「僕の――『子供人格』の方が何か失礼なことをしていない?」
「いえ? どうしてですか?」
 心底不思議そうに雪穂に問いかけるセツに、雪穂は淡々と言葉を連ねる。
「『子供人格』の方が出てこないから、何かあるのかと思ったのだけど」
「何も失礼なことなどされていませんよ。…むしろ私のほうが失礼なことをしてしまったのではないかと思っているんですが。似た感じを受けたからと言って、初対面の白樺さんを『視て』しまいましたし…嫌な気分にさせてしまったのではないかと。――どうにも、私は自分で思っているより焦っているようで。何か手がかりになるかと、つい」
「手がかり?」
 よく話がつかめずに疑問符を浮かべれば、セツは――自嘲するような、そして苦しげな、笑みを浮かべた。
「ええ、私の――そしてゴウの、目的を達成するための手がかりです。ずっと方法を探しているのですが、なかなか見つからなくて。そろそろ本格的にまずいことになりそうなので、少々焦っているんです」
 肝心な内容に触れない、ということは、あまり口にしたくはないのだろう。
 そう判断した雪穂は、それ以上追求せずにいることにした。
 少しの間、沈黙が降りる。
「そういえば、」
 何かを不意に思い出したように、セツが声を発した。
 そして雪穂を見て少し悩むような素振りを見せたが、結局そのまま続けることにしたようだった。
「先程……声をおかけする前に、白梟に何かを託していらっしゃいましたよね。あれは何ですか? 何か、不思議な感じがしたのですが」
「あれは魔道具。召喚術と魔道具の作成を専門にしているから、たまに魔道具作成の依頼を受けることがあるの。守秘義務があるから、どんな物かについては言えないけれど」
 そう言えば、セツは困ったように苦笑した。
「いえ、そこまで訊くほど傍若無人でも常識知らずでもありませんから。――魔道具、ですか……私はあまりその方面に詳しくないのですが、折角ですし少し調べてみてもいいかもしれませんね。何か手がかりも見つかるかもしれませんし…。魔道具にも色々なものがあるのでしょう?」
「そうね。古くから存在する物もあるし、新しく作り出される物もあるから」
「古くから存在する物というのは、やはりそれだけの力を持っていたりするのですか?」
 そんな風に、しばらくの間、雪穂はセツの魔道具に関しての質問に答えることとなったのだった。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【7192/白樺・雪穂(しらかば・ゆきほ)/女性/12歳/学生・専門魔術師】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、白樺さま。ライターの遊月です。
 「D・A・N 〜ミッドナイト・ティータイム〜」にご参加くださりありがとうございました。

 セツとのお茶の時間、如何だったでしょうか。
 自分から聞くことはしない、ということで、うっすら『謎』について匂わせる程度にしてみました。
 内容的にも結構あっさりめ、でしょうか。
 白樺さまの話し方に関しては、プレイングの台詞を元にちょっと古風でクール系の女性、という感じにしましたが、大丈夫だったでしょうか。
 少しでも楽しんでいただけることを願って。

 ご満足いただける作品に仕上がっているとよいのですが…。
 リテイクその他はご遠慮なく。
 それでは、本当にありがとうございました。