■月の紋章―第二話―■ |
川岸満里亜 |
【3510】【フィリオ・ラフスハウシェ】【異界職】 |
●フェニックスの聖殿
聖殿正面の警備を担当している兵が、隊長であるグラン・ザテッドの元に駆け込む。
「結界内に侵入しようとした者がいるようです」
「何者だ? 人数は?」
「現在調査中ですが、じきに判明すると思われます」
グラン・ザテッドは腰を上げる。
「捕らえて連れて来い」
「はっ」
兵は慌しく飛び出していった。
近日中に、面白い人材が届くと聞いている。
この侵入者騒ぎは、その前座といったところだろうか。
「人材はいくらでも必要だ」
浅く笑い、剣を取る。
「さて、どの人物が鍵となるか――」
ドアの向うは騒然としている。
●林の中
「今は様々な罠が仕掛けられていそうですが……聖殿の周りは、大体このようになっています」
リミナが小枝を使って、地面に図を描く。
正面を避けるのなら、やはりキャビィが言うように、山を登り、聖殿の裏側に出る方法がよさそうだ。
「皆さんの目的は調査ですよね? 私は捕まってしまっても、彼等と交渉して中に入れてもらうつもりですが」
アセシナートの兵に捕まってしまったら、恐らく解放してはもらえないだろう。
リミナは考えが甘いのか、それともそれだけの覚悟があるのか……。
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『月の紋章―第ニ話<対面>―』
相談する間も与えられず、返答を迫られた。
エルザードに滞在する3人の若者が、ここを訪れた理由はそれぞれ違う。
故に、最終目的も決断も違った。
「俺はグラン・ザテッドに用がある。こいつらは必要らしいから手は出さねぇが、他なら協力しないでもないぜ? アンタらについたらキャトルにも会えるようになるんだろ?」
そう言ったのは、リルド・ラーケンだ。
「あら、ザデット隊長の名前を知っているの?」
ザリス・ディルダというアセシナート公国月の騎士団の女が言った。
「ああ、名はレザル・ガレアラっていう女魔術師が利用した騎士に聞いた。グラン・ザテッドとは剣を交えたことがある。俺を歓迎するって言ってたぜ?」
「うふふ、面白い人材を見つけたって言ってたことがあるけど、あなたのことかしら。いいわよ、あなたはザデット隊長のところに連れていってあげる。あの娘とは会う機会はあるかもしれないけれど、解放するつもりはないわ。でも……」
ザリスは笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「騎士見習いから、騎士に昇格する際、望みの褒美を受け取ることができるの。あなたがあの娘を選んだら、あなたにあげることになるかもね。尤も、昇格するには、早い人でも3年はかかるわ。大きな功績を挙げれば短期間で昇格する可能性もあるけれど」
「5年か……。まあいい、連れていけよ、その“ザデット隊長”のところに」
言った後、ザリスに背を向けて、共に乗り込んだ山本健一を見た。
「悪ぃな、面倒事抜きでキャトルに会えるなら俺は構わねぇし、こっちの方が下らねぇ御託抜きで楽しめそうだしな」
片目を軽く細める。
それだけで、健一はリルドの内心を察知した。
「で、あなた達はどうする? 異界人の“山本健一”さんと、聖都自警団の“フィリオ・ラフスハウシェ”さん」
名を名乗ってはいない。
ザリスは余裕の笑みを浮かべている。
こちらの情報は全て頭に入っているのだろう。
「協力するつもりはありません。……お好きなように」
健一が言った。
「私は……本部に伺います」
軽く吐息をついて、フィリオが言った。
「あら、意外と諦めがいいのね。そうね……健一君も本部に来てもらおうかしら。レザルが喜びそうだわ」
レザル・ガレアラ――。
あの女魔術師の姿が、健一の脳裏に浮かび上がる。
本部には、あのレベルの騎士が他にも存在するのだろうか。いや、いかにアセシナートとはいえ、一個旅団にあのクラスの騎士が5人を越えるほど存在するとは考えられない。
「じゃ、すぐに出発するわよ。みんなの気が変わらないうちに」
薄く笑いながら、ザリスはヒデル・ガゼットに指示を出す。
リルドとヒデルはグラン・ザテッドのいるフェニックスの聖殿へ、健一とフィリオはザリスとディラ・ビラジスに護送され、騎士団本部へと向うことになった。
**********
日が昇ると共に、一行はカンザエラの研究所を出発した。
フィリオと健一は黒塗りの馬車に乗せられ、本部へと向かっていた。
フィリオの隣には、ディラ。健一の隣には、ザリスが座っている。
ドアの側には兵士が二人。
ディラは両腕を組みながら、時折鋭い目を、フィリオに向けていた。
ザリスは健一の腕に腕を絡ませたまま、目を閉じている……眠っているようだ。
一見、無防備に見えるが――そうではない。
健一は彼女を策士と見ていた。下手な動きをすれば、腕を一本持っていかれる可能性もある。
しばらく様子を見ることに決め、健一も目を閉じた。
「本部までは、半日ほどかかるのですよね? アセシナートの中心部だとか?」
フィリオがディラに問う。
ディラは不機嫌そうに「そうだ」と答えた。
途端、車内の空気が変わった。
ディラが身構えるより早く、フィリオが起した爆風がドアと窓を吹き飛ばす。
「貴様ッ」
短剣を振りかざしたディラの顔は、喜びを表していた。フィリオを倒せる喜びを。
フィリオは帯剣していない。しかし――。
倒すのではない、振り切るだけなら!
狭い空間を踊り狂う風に、兵士達は翻弄される。
突き破るように、フィリオは体を外へ投げ出した。
御者が馬を止める。
フィリオは風刃で馬を繋ぐ綱を切り放すと、馬に飛び乗った。
誰も追ってはこない。
……健一が引き止めてくれているのだろう。
感謝をしながら、フィリオは馬を走らせた。
「追わないのですね」
健一は、ディラや兵士の足を魔法でもつれさせた後、自分の腕を掴み続けているザリスにそう言った。
「彼は本部に行くわ。だったら、無駄な労力は使わない方がいいもの。それに……」
切り込むような目を健一に向け、ザリスは浅く微笑んだ。
その微笑みがどういう意味だかはわからなかった。
しかし、ザリスは健一を逃すつもりはないようだ。
「近くの街で、馬を借りてきてちょうだい」
そう兵士に言った後、ザリスは再び目を閉じた。
**********
連なる黒い建物が見える。
フィリオは馬を近くの木に繋ぐと、荒い呼吸を繰り返しながら、流れる汗を拭った。
あの黒い建物が密集した場所が、アセシナートの中心部だろう。
カンザエラの研究所出発時に聞いた話によると、月の騎士団の本部は王城の近くに存在しているらしい。
ザリス以外の人物にもそれとなく聞いてみたが、全て同じ答えだった。ディラも。
(あの街にキャトルが……)
王城の近くともなると、警備も厳しく、多くの兵士が配置されているはずだ。
それでも、フィリオに迷いはなかった。
街は、聖都のように、人々で賑わっていた。
ただし、いたるところに兵士が立っており、物々しさを感じずにはいられない。
フィリオが最初に向った先は――衣料品店であった。
質素なフリーサイズの服を買う。幸い、手持ちの通貨が使えるようであった。
路地裏へと身を潜ませ、着替えを済ませると、白銀で作られた天使像型の聖獣装具を取り出す。
手に持ち、念じ、フィリオは姿を女天使へと変えた。
裏路地から大通りへ出ると、真直ぐに王城へ向い走り出す。
近くに見えるのだが、なかなかたどり着けない。
「急用です。月の騎士団本部はどこですか!?」
道行く兵士に話しかけては、場所を確認し、走る。
……目的の場所には、昼前に着いた。
建物はさほど大きくはない。規模の小さな騎士団なのだろうか。
しかし、連なる建物全て、軍関係の建物なのだろう。
一刻を争うため、躊躇している時間はない。
「大変です! ザリス様の、実験体が、狙われています!」
フィリオは本部の建物に入り込むなり、叫んだ。
すぐに、警備兵が現れ、フィリオに剣を向けながら、説明を求めてくる。
「カンザエラの研究所に、エルザードの手が伸びました。ザリス様ご自身は、側近と共に、こちらに向かっていますが、研究所の実験体は全て奪われてしまいました。こちらにも、兵士に紛れ既に潜入している模様とのことです。我等の戦力を殺ぐため、解放ではなく、抹殺を目論んでいるようです! 早く確認を!!」
フィリオの言葉を受け、数人の兵士が駆けていく。
「責任者はどちらですか、直接報告を!」
「来い」
警備兵に腕をつかまれ、フィリオは廊下を奥へと歩かされる。さすがに自由には歩き回れないか。
兵は右と左に一人ずつ――。
「あっ」
躓いて、フィリオが体制を崩す。
警備兵の姿勢が崩れた隙に、フィリオは風の刃を乱舞させた。
「ぐあっ」
警備兵を振り切り、実験体の確認に向った兵の元へと駆けた。
そこに、キャトルがいるはずだ――。
しかし、本部の警備は研究所より数倍厳しく、一人一人が通常時のフィリオと同程度の力を有していた。
風でスピードを上げ、翼で飛びながら、兵の間を潜り抜けてゆく。
目的の部屋の寸前、通路を塞ぐ兵士の多さに、フィリオは諦めざるを得なかった。
行き止まりの小窓に近付き、風で叩き割ると、身を躍らせる。
翼を広げて飛びながら、目的の一角へと近付く。
放たれる矢を避け、鉄格子のかけられた部屋を覗き込み――見つけた。
髪を解いた金髪の少女を。
解れた時とは違う服を着ている。
薄手の白い服だ。検査服のようだ。
パン
フィリオが風で窓を叩き割った。
その音に、少女――キャトルが振り向く。
「フィ、リオ?」
信じられないというように、目を見開き、次の瞬間に少女が駆けてきた。
フィリオは矢や魔法の攻撃を避けながら、部屋へと近付く。
鉄格子の中から、キャトルが手を伸ばした。
その手を掴み、互いの温もりを感じた時だった。
フィリオの体が突如、動かなくなる。
強大な圧力を感じ、フィリオは必死に首を曲げ、下を見た。
黒い髪、黒い瞳の魔術師が、自分を見上げている。
緋色の口紅――レザル・ガレアラだ。
認識した直後に、フィリオの翼は射抜かれていた。
激しい痛みと、襲い掛かる光の刃。
「フィリオ!」
そして、胸に刺さる少女の叫び。
いくつもの衝撃を受けて、フィリオの意識は暗転した。
**********
王都に入ってからも、ザリスは健一の腕を放さなかった。
馬車を降り、本部へと向う最中、本部よりやってきた使者から報告を受ける。
“侵入者を捕らえた”と。
健一が僅かに目を細める。
ザリスは「ありがと」と答えただけであった。
本部は黒く、細長い建物であった。
「とりあえず、あなたは魔法封印の結界が張られた部屋に入ってもらおうかしら」
体術の心得もあるが、健一が得意とするのは主に魔法である。封じられてしまっては、“あの仕掛け”も使えない。
ザリスに連れられて、建物の中に入る。前には二人の兵士。後ろには、ディラ。ザリスと離れさえすれば、振り切れない人数ではない。
側のドアが開き、女性が姿を現す。長い髪の華奢な女だ。
「早かったのね、ザリス」
兵士達が道を開け、その女性はザリスに近付いた。
健一のことは、一瞥しただけであった。
「ちょうどいいわ、体診てもらいたいと思ってたの。さっき、初めて動いたのよ」
言って、その女は自分の腹に触れた。どうやら妊娠しているらしい。
「うふふ、楽しみですわ。でも、少しお待ちください、アルメリア様」
その女、アルメリアが出てきた部屋から、もう一人女性が姿を現す。
姿を見ずとも、健一には流れてくる波動で分かっていた。
黒い髪、黒い瞳――緋色の口紅、レザル・ガレアラだった。
「あっ、レザル、お土産よ、お土産ー!!」
ザリスが健一の腕を引っ張りながら、手を振る。
レザルの鋭い目が、健一に向けられた。健一もまた、鋭い目をレザルに向ける。
「どうずる? 私がもらっていい? それとも、あなたもほしい?」
笑いながら言い、ザリスが健一の手を離した途端、健一は一つの腕を掴んでいた。
瞬きするほどの僅かな時間に、健一は予め準備を整えてあった魔法を発動する。
「瞬間移動か!」
レザルが叫んだ時には、健一とアルメリアの姿は消えていた。
「あ、はははは、やられちゃった。普通障害物を越えての移動は出来ないはずなのに。……建物内だから油断したわ」
軽く舌を出して笑うザリス。しかし、その目は笑ってはいなかった。
「天駆術ではない、おそらく空間移動だ」
レザルが舌打ちする。
「さて、どうしようかしら。アルメリア……を放置するわけにはいかないわよねぇ」
「魔力を辿り、追う」
考え込むザリスとは対照的に、レザルは瞬時に呪文を唱え始める。
「ちょっと!」
ザリスが止める間もなく、レザルの体が消えてゆく。
「聖殿はどうするの!? 魔法陣の制御と空間調整、同時に出来るのは、あなただけでしょう!?」
「お前とザデッドに任せる」
言い終えた時には、レザルの体は完全に消えていた。
「ああーっ」
ザリスが両手で顔を覆った。
数秒後、大きく吐息をつき、手を下ろした彼女は、普段と同じように笑みを浮かべていた。但し、目だけ鋭く光らせて。
「ディルダ様、先ほどあの少女が目を覚ましまして、酷く暴れています。恐らく、侵入者と接触した為と思われます」
兵士が頃合を見計らい、ザリスに報告をする。
「そう。それは好都合だわ」
ザリスはその場を離れ、キャトル・ヴァン・ディズヌフの元へ向った。
「初めてここに来た時に、お願いしたわよね。今度はいい返事を貰えるかしら?」
ザリス・ディルダは、手足を縛られベッドに座っているキャトルに、穏やかな口調で話しかけていた。
「協力はしない。フィリオはどこ?」
キャトルはザリスを睨みながら、そう答えた。
ザリスは、笑いながら、控えている兵士から箱を受け取り、中身を振りまいた。
白く、美しい羽が舞った。
「拾ってきてもらったの。綺麗でしょ?」
キャトルは唇をかみ締めながら、ザリスを睨み続けていた。
「そうね、あなたの代りに、彼女に行ってもらおうかしら。天使だもの、結界くらい破れそうよね。失敗したら、跡形も無く消滅してしまうでしょうけれど。それとも、あなたの家族を探し出し、やってもらおうかしら」
「あたし、が」
ザリスの言葉に、強い怒りを込めて、キャトルが言葉を発する。
「今、生きているのは、友達がいるから。あたしに生きていてほしいって言ってくれる人がいるからなんだ。そうじゃなきゃ、逃げる手段がないと知った時点で自害してる。あたしを使いたいんなら、あたしの友達に手を出すな。あたしは、いつでも死ぬ覚悟は出来ている」
キャトルが犬歯で舌を噛む。
流れ落ちた血が、唇から顎へと落ちてゆく。
「強情な子ね、可愛くないわ」
ため息をつきながら、ザリスがキャトルに近付く。
「だけれど、嫌いじゃない。強い子は好きよ。そういう子を思うがままに操るのってとても楽しいもの」
言って、ザリスはキャトルの頭に手を置いた。
「あなたの意思で、協力してくれなくてもいいわ。あなたを操ることにするから。私の力を受け入れなさい。あなたは私達の希望よ。こんなことで殺したくわないの。だから、受け入れなさい。受け入れてくれたら、あなたの“大切な人”には手を出さない。側にいさせてあげる。あなたの好きにしていいわ。約束よ。私が約束を破ったら、あなたは自害すればいい」
最初に、それも言われた。
キャトルの体は魔術を受け付けない。
だから、キャトルを操るには、体に直接魔力を注ぎ込む必要があるのだと。
その力は、拒絶すれば死に至る。自分の力として受け入れなければダメなのだと。
“いやだ!”
だけれど。
床に散らばった羽が、目に入る。
手を握り締めた。
一瞬だけ、触れ合った手を。
もっと、長く繋いでいたかった――。
手を握り締めたまま、キャトルはそっと、目を閉じた。
**********
不自然に黒く塗られた聖殿であった。
リルドは、聖殿を見上げながら、浅い笑みを浮かべていた。
「行くぞ」
「ああ」
ヒデルの後に従い、聖殿に向う。
完全に信用されていはいないのだろう。後ろから、剣を抜いた兵士が2名ついてくる。
名前を名乗り、カードを見せて、ヒデルが聖殿へと足を踏み入れる。
慌しく走り回る兵士の姿が目に付く。何かあったのだろうか。
そんな中、リルドが連れられていった先にいた男は、豪華な椅子にゆったりと腰かけていた。
リルドの体に緊張が走る。続いて、駆け巡る高揚感。飛びかかりたくなる感情を抑えるのに必死だった。
「ご無沙汰しております」
ヒデルが頭を下げる。
「ああ、無事に戻ったか。よくやった」
労いの言葉をかけた後、その男――隊長グラン・ザテッドは、リルドに目を移す。
「よう」
リルドはにやりと笑ってみせた。
「……ドラゴンの小僧か」
グランは口元に笑みを浮かべた。
ヒデルが入団希望者を連れて訪れると、既に報告を受けていたようである。
「あの時は些か驚いた。貴様の中に、竜が居るとはな。まだ成竜ではないようだが、貴様と共に成長するのか?」
「さあな」
「喰われはせんだろうな。まあ、その時は……俺が殺してやるが」
言葉と共に、流れてくる威圧感。
リルドは臆することなく、強い瞳で応じた。
力の差を感じる。しかし、この高揚は恐怖ではない。
流れてくる気迫に闘争心が掻き立てられる。
「貴様は、相変わらずいい目をしている。歓迎しよう。たが、少々立て込んでいてな。皆への紹介や、正式な配属は少し先になるが……それまでの間に、実力を見せてもらおうか」
グランは視線をヒデルに戻す。
「侵入を目論んでいる者がいるようだ。お前達は西側の警備に就け」
「はっ」
短く返事をすると、ヒデルはその場を後にする。
リルドは一瞬、鋭い目を隊長に向けた後、ヒデルの後を追った。
警備に就いたヒデルとリルドは、グランの側近から短刀を手渡された。
柄には紋章が刻まれている。
鮮やかな月の紋章が――。
* * * * *
●熟考―フィリオ・ラフスハウシェ―
硬く冷たい床の上にいた。
無機質な白い天井、白い壁。
突如、脳裏に自分に向い手を伸ばす少女の顔が浮かび、体を飛び起す。
鋭い痛みに顔を歪める。
主に、翼をやられた。寧ろ、咄嗟に翼で急所を庇ったのだろう。
体は女天使のままであった。
既に、ザリス・ディルタは戻っているはずだ。
ヒデル・ガゼットにより、自警団――自分の情報も全て流れていると思われる。
足枷が嵌められており、自由に歩くことができない。
魔法も封じられているようだ。武器もない。
あるものといえば……体に直接括りつけてあった、数々の薬。
傷薬を一つ取り出し、軽く手当てをする。
垣間見たキャトルは、また少し痩せては見えたが、五体満足な状態であった。
それだけが救いだ。
部屋に、ドアは一つ。
窓には、鉄格子がかけられている。
現状では脱出は不可能だ。
助けを待つか、隙をつくか、交渉をするか――。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【3544 / リルド・ラーケン / 男性 / 19歳 / 冒険者】
状態:軟禁
【0929 / 山本建一 / 男性 / 19歳 / アトランティス帰り(天界、芸能)】
状態:臨戦態勢
【3510 / フィリオ・ラフスハウシェ / 両性 / 22歳 / 異界職】
状態:監禁、拘束/負傷
【NPC】
ザリス・ディルダ
状態:普通
ヒデル・ガゼット
状態:普通
ディラ・ビラジス
状態:普通
キャトル・ヴァン・ディズヌフ
状態:衰弱
アルメリア・ザテッド
状態:拘束
レザル・ガレアラ
状態:臨戦態勢
グラン・ザテッド
状態:普通
※PCの年齢は外見年齢です。
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■ ライター通信 ■
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ライターの川岸です。
月の紋章―第二話―にご参加いただき、ありがとうございます。
皆かなり危険な状況下にあります。
副題の違うノベルや、他の方の個別もご確認いただければ幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
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