■不夜城奇談〜始動〜■
月原みなみ |
【6589】【伊葉・勇輔】【東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫】 |
――こんばんは。今夜も『ミッドナイト・トーキング』が始まります。担当は僕、アキです。六十分間、最後までお付き合い下さい――………
日中の蒸し暑さが残る夜。
少年は十二階建てビルの屋上から足元の遥か下方を見つめていた。
深夜に近い時間帯だというのに人工の光りは星よりも多く、これほど無駄に明るい世界に生きながら、どうして自分の周りだけが暗いままだったのか不思議でならない。
今も、光りは遠い。
ここには闇しかない。
あの明るい場所に飛び込みたいなら、あと一歩、宙に進まなければならないのだ。
「……」
少年は息を吸った。
閉じたままの瞳で空を仰ぎ、自分の闇を思い知る。
ここから逃げ出すには、一歩、踏み出せばいいだけだ。
――さて…今日の最初のお手紙はこれにしようかな? 東京都在住の十七歳の男の子…『僕はいま、死んでしまいたいと思っています』――
「っ!」
不意の言葉に、少年の足は止まった。
慌てて辺りを見渡すが、その声の出所と思われるものはない。
「ぇ…?」
だが確かに聞こえてくる声は、ラジオ番組のものだろうか。
――『学校に行くとクラスの奴らに暴力を振るわれて金を取られるし…』――
――…うーん…随分、辛い思いをしているんだな…誰にも話を聞いてもらえないってのは、すごく辛いよな…――
「…っ…」
ラジオの声が、少年の進行方向を変えさせる。
もっと近くでこの声を聞きたいと思った少年は、屋上にあるはずの機器を捜し歩いた。
この声の主が読んでいた手紙が誰の投書かなど知らないが、語られた身の上は、まるで自分のことのようだった。
「どこ…」
少年は探した。
誰が置いていったのか、小さなラジオがフェンスの傍に落ちていた。
***
「いいかげんにしてくれ! もううんざりだ!」
「なによ! 自分ばっかり我慢しているような顔しないで!」
狭い室内に男女の怒声が行き来する。
時には雑誌が宙を飛び、グラスが割れては絨毯の上に乱れ散る。
市営住宅の四階。
二人の幼い子供達は、逃げ場所もなく、泣き喚くことも出来ず、ただ二人抱き合って両親の怒りが過ぎるのを待つしかなかった。
その瞳に大粒の涙を溜めながら。
「さっさと出て行け!」
「――! えぇ出て行くわ! もうアンタなんかと一緒にやっていけない!」
聞こえてくる二人の声に、子供達は顔を上げた。
お母さんがいなくなってしまうと、青ざめた顔を。
――さて…今日の最初のお手紙はこれにしようかな? 埼玉県在住の五歳と七歳の女の子達から…『助けてください。大好きなパパとママがケンカをしています』――
「!」
「え…?」
突然、居間に置いてあるオーディオの電源が入り、大音量で流れ出したラジオ放送に夫婦は驚いて言葉を途切れさせた。
廊下にいた子供達も顔を見合わせて立ち上がる。
――『おばあちゃんのことで、パパとママはいつもケンカになっちゃうんです。おばあちゃんのことは好きだけど、でも、私達はパパとママの方がもっと好きなのに…』――
――…そっかぁ…五歳と七歳じゃ、ケンカ止めたくても止めれないよな。…もしかしたら、今もご両親のケンカで泣いたりしているのかな? ――
「ぁ…」
「あの子達……」
夫婦はハッとして子供部屋に向かった。
だが居間の扉を開けると、二人の娘がそこにいた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔で両親を見上げていた。
「…っ……」
母親は娘達を抱き締めた。
父親は抱き合う彼女達を見つめ、そのうち、妻の腕についた傷に気付いた。
割れたグラスの欠片で切ったのだろうか。
「…済まなかった…痛くないか…?」
触れた腕。
彼女の瞳からも涙が毀れる。
***
――誰かに殺意を抱く、…って、実は誰にも有り得ることだと思う。――
――…ただ、本当に誰かを傷つけてしまったら、その後で幸せな恋愛をするのは、とても難しいことだよ……――
「…っふ…ぅっ…うぅっ…」
彼女は自分の部屋で泣き崩れていた。
先ほどまで右手に握っていた包丁を、いまは地面に手放し、その手で口元を覆いながら涙を流し続けた。
突然、鳴り出したオーディオが流したラジオ番組。
読まれた手紙は、自分のまったく知らないものだったが、語られる内容は正しく自分の現状だった。
このラジオを聴かなければ、彼女は包丁を手にして隣の部屋に住む女子大生を襲いに行っていた。
自分の恋人を奪った憎い女を。
――…人を愛することが出来る綺麗な心を、一時の怒りで、駄目にしてしまうのは勿体無いよ。浮気をした男は、その程度の男だったんだと思って新しい世界に目を向けてみない? 俺は、君に本当に幸せになって欲しいと思うんだ。――
「…ぅっ…ありがと…、ありがとう……っ!」
涙しながら、この誰とも判らないラジオ番組のDJに何度も「ありがとう」を繰り返す彼女の心に、もう殺意は欠片も存在していなかった。
その後、行方不明者が続出する。
とある学園の暴力的な少年が。
ある家の老婦人が。
そして、若い女性が。
消えていく、怨まれし人々が――。
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■ 不夜城奇談〜始動〜 ■
■
その日、組織からの連絡で受けた知らせに伊葉勇輔は眉根を寄せる。
「失踪者? ラジオ番組が原因でか」
聞き返せば、相手からは重々しい肯定の応えがあった。
何でも、最近になって主に若者の間で騒がれているラジオ番組があるらしいのだが、放送局、時間、更に番組名やDJの名前も曖昧なため、聞こうと思って聞けるものではないらしい。
だが、ネット掲示板などに寄せられる、ラジオを聴いたという人々の話を聞く限り、そのDJが読み上げる文章というのは心を病んだリスナーを救うのだそうだ。
いじめを苦に自殺しようとしていた少年。
恋人を奪われ、相手の女を殺そうとしていた女子大生。
いずれも自分に似た境遇の葉書が読まれ、それに対するDJの心優しい言葉によって凶行に出る前に踏み止まれた、と。
「それで何だって失踪者が出るんだ」
理解に苦しむと言いたげに更に問いを重ねれば、電話の相手も困惑気味に続ける。
確かに凶行に出ようとしていた彼らは踏み止まり、罪を犯すことはなかった。
だが、一方で少年を虐めていた同級生。
恋人を盗った女性。
そういった、リスナーが心を病む原因となった側の人々が次々と失踪しているのだという。
「へぇ」
勇輔は軽く返し、紫煙を吐き出す。
それに眉を寄せるのは傍に控えている秘書、九原竜也だ。
「そりゃあ裏に回って来そうな案件だな」
まるで他人事のように言ってやれば、通話相手は興奮気味に非難して来る。
「あぁ判った判った。気が向いたらな」
それを最後に携帯を折り畳む。
回線の向こうからはまだ声がしていたが、もちろん強制的に断絶だ。
「ったく」
苦い顔で残り僅かな煙草に最後の熱を灯し、諦め気味の吐息を漏らす。
同時に大気を色づける紫煙に見送らせるよう、灰皿へ擦り潰した。
「やれやれ、奴さん等の仕業かね」
「病んだ心の失踪者、……条件的には闇狩の彼らが追っている敵に重なりそうだけど」
「十二宮、か」
とある縁から関わることになった闇狩一族の青年達。
彼らの追う闇の魔物と、それらを操っていると考えられる十二宮の存在情報を、彼らが所属している裏の組織――いま勇輔が電話で話していた相手がそうだが、IO2と呼ばれる超国家組織の一員として上層部に伝えたのが、つい数日前の話だ。
そのたった数日で、闇狩の彼らに関連しそうな失踪事件の情報が入ってくる。
何とも意図的な展開だ。
「とりあえず、そのラジオ番組とやらの放送記録を調べてみるか」
「それは私が」
竜也が言う。
同時に軽めのノックがあり、顔を見せたのはこの都で二番目に力を持つ人物。
「知事、急ぎのご相談があるのですが…」
勇輔に探るような視線を向けてくる男に、竜也の表情は全くと言っていいほど動かない。
「知事は公務に専念なさって下さい」
言い置いて一礼すると、そのまま退室する彼に、勇輔は「へぇへぇ」と胸中に呟く。
組織の一員としてラジオ番組による失踪事件は非常に気になるところだが、少なくとも陽の高い間は表の顔――東京都知事としての職務を全うせざるを得なかった。
■
数時間後、知事室に戻った竜也は難しい顔で調査報告を行った。
曰く、そのようなラジオ番組は存在しないというのが現実での答えだ。
「存在しないラジオ番組を、どうやったら心病んだ人間が聞けるんだ?」
「心を病んでいるから聞けるのでは」
「とすれば、それが答えだな」
敵の正体という名の答え。
闇の魔物の欲するものが負の感情であれば、傷つけられた者、傷つけた者、共に生じる感情は負に通じる。
そして連中の利用したものがラジオなら、媒体としたのは電波である可能性が高い。
「…とりあえず電話してみるか」
そうして呼び出すのは、件の狩人。
緑光の携帯電話だ。
反応は早かった。
コール一回で声が届く。
『伊葉さん? 急にどうなさったんですか』
二度も説明する手間を省くため、竜也にも聞こえるよう設定した携帯電話をデスクに置く。
「よぉ。いま忙しいかい」
『そうですね…、暇とは言えませんが』
「ラジオの失踪者か」
直球で投げれば、一瞬の沈黙。
『さすがに情報が早いですね』
苦笑交じりに光が言う。
『そこまでご存知でしたら、河夕さんから伝言が』
「伝言?」
『今夜は外に出ないように、と。いま一族の者達が東京に集まっています。今夜は少々手荒な手段に出ますから、外にいらっしゃると魔物の攻撃を受ける危険があります』
「へぇ?」
言いながら、勇輔は竜也と視線を合わせる。
「――で、俺らがそれを素直に聞くって?」
薄く笑って言い返してやれば、光からも笑い声が漏れ聞こえる。
『いいえ。ただ僕も一介の狩人に過ぎませんからね。主人の命令には逆らえないのですよ』
つまり、勇輔のように闇の魔物と十二宮の関連を知る者から連絡が有った場合には、関わらないよう言い聞かせるのが、狩人の王・影見河夕からの命令だったのだろう。
勇輔は失笑する。
戦うのは自分達だけの役目だと思っているのか。
魔物との戦に巻き込むまいと決めているのか。
『東京は、良い街ですね』
唐突な言葉に目を瞠る。
だが、続く相手の言葉には無意識に口元が綻んだ。
『伊葉さんのように、例のラジオが魔物の仕業だと察した方々が協力を申し出て下さいました…、河夕さんは複雑な心境のようですが、自分の土地を守ろうとなさる能力者の数の多さには驚きましたよ』
言われながら思い出すのは、異種族が混在する東京に「魔都だ」と辟易していた一番最初の河夕の姿だ。
あれから過ぎた時間など、ごく僅かだと言うのに、その変化や如何。
「都会も捨てたモンじゃないだろ?」
『ええ』
笑う彼は、立ち上がる。
「決戦の場所は」
『それをお教えしてしまうと僕の立場が危ういのですが』
「東京タワーだな」
『――やはり地元の方は違いますね』
聞けば、地球外生命体の彼らには総合電波塔という存在自体が知識にないため、電波に魔物が憑いているということも、協力を申し出た都民から知らされたそうだ。
狩人の知識の穴を突いて来る十二宮の策略。
なればこそ、この戦は狩人だけのものではない。
彼らの作戦決行は夜十時。
それさえ知れれば充分だった。
「判った。こっちはこっちで動かせてもらうが、落ち着いたらまた一緒に寿司でも食おう」
『…あのお寿司屋さんですか?』
返る声の固さに、それぞれに笑い。
狩人との電話を切った後、勇輔の意を汲んだ竜也は素早く部屋を出た。
そして彼もまた新たに電話を取る。
「――あぁ、俺だ。突然だが今夜九時半頃から東京タワー付近の道路封鎖と、ついでに十時きっかりで全電波塔の稼動を止めてくれ」
一瞬の沈黙の後、相手からは無茶だという混乱を極めた声が返ってくる。
だが勇輔は意に介さない。
「無茶で結構、何かあれば腹切るよ」
責任は自分のもの。
だからこその、この地位だ。
■
その夜、都の四方八方に散った能力者達は、それぞれにすれ違う。
ある者はIO2の能力者。
ある者は魔都に暮らす一般の民でありながら異能の力を持つ人々。
そしてある者は、闇狩一族の。
「おぉ、いるいる」
九時半を過ぎた東京タワー内から下方を見下ろした勇輔は悪戯好きの子供のような笑みを浮かべてみせた。
視線の先には、狩人の王、影見河夕がいる。
その周囲には年若い男女の姿が複数。
おそらくは光が話していた、協力を申し出た能力者達なのだろう。
この都も捨てたものではない、そう思わせてくれる証だ。
「決戦は間近、ってか」
呟き、階段を上がる。
手に持った携帯電話は竜也と繋がっていた。
地上一五〇メートルにある展望台に、失踪していたと思われる三〇余名の人々がいること、そこに十二宮と思しき能力者が控えている事を、秘書の持つ能力、魔眼は見抜いた。
だが、その更に上、二五〇メートルの高さにある特別展望台に不審な影が一つあることも彼には知れたのだ。
失踪者に付いている能力者が、彼らを人質に狩人達と対峙するつもりならば、その上で高みの見物――もしくは戦況によって不意を突こうとしている可能性もある不審人物にも相手は必要だろう。
九時五七分。
ゆっくりと時間を掛け、足音を立てないよう、気配を消しながら特別展望台へと上がった勇輔は竜也との連絡手段を絶つ。
もう間もなく近隣全体の電波が遮断され、放っておいても携帯電話は使えなくなるが、その前に自らそれを切った。
『幸運を』
「そっちもな」
互いに掛ける言葉に、気負いはない。
勇輔は胸ポケットにそれをしまい、奥へ進む。
五十八分。
聴こえて来るのは男の声。
感じられるのは不穏な闇の気配。
――…こんばんは、DJのアキです……
彼は語る。
黒い靄状の魔物をその手に抱きながら、眼下に広がる都を見つめて。
――……それでは今夜は、まずこのお手紙からいこうかな……
声は増える。
二種、三種。
同じ声が、違う言葉を発し、虚空に混ざる。
(なるほど…声が能力…、それを電波に乗せて、聞く人間に都合の良い言葉を聞かせるってわけか…)
それは例えるならば、暗示に近い。
実際に発する言葉など何でも構わないのだ。
言葉に力、力は魔物に、魔物が電波に流れ、心に負を持つ人々を標的と定める。
標的とされた人々は、その心に相応しい言葉を、欲する言葉を、魔物に求める。
負の感情は魔物に喰われる事で昇華され、対象人物を失踪させることで新たな感情を生じさせる。
その繰り返しは、人間の感情破壊。
結末は混沌の闇。
(賢いっつーか…悪知恵が働くっつーか…)
何にせよ、これを止める以外の選択など彼には無い。
十時、ちょうど。
「……これは…?」
電波が途絶えたのを十二宮も知ったのだろう。
心なしか塔外の明かりが増したように見えたその場所に、勇輔は進み出た。
「さて、お手紙です」
「! 何者だ!」
慌てて振り返る男に、笑う。
「人類滅亡なんて計画している十二宮って連中がいますが、どうしたらよいですか?」
「…っ…」
男は唇を噛み締めた。
彼にとって、DJを真似た勇輔の言葉ほど強烈な侮辱は無かっただろう。
「貴様…っ…」
「質問に答えてくれんかね、DJのアキさん。そうやって何人も救って来たんだろうが?」
「ウオォォォォッ……!」
男が突進して来る。
魔物を制御している己の力を過信してか、それとも捨て身か。
「我等の計画は何人にも邪魔させん!!」
怒号。
昂ぶる気に、勇輔は一歩引き、円陣を発動した。
「なっ…!!」
「残念」
男の手から生じた凶器は確実に勇輔の頭を狙っていた。
だが、届かない。
射程距離に入るより早く、それを阻んだのは強烈な風の壁。
瞬時に編まれた見えない縄は男を容赦なく捕縛した。
「質問を変えよう」
その鼻先に、勇輔は改めて問う。
「おまえも魔物の変化だろう?」
「くっ…」
男は顔色を変える。
それが答えであり、勇輔はそれを、既に竜也の魔眼によって聞き知っていた。
この男には過去がない。
つい数日前に造られた器――それはあの日に彼を追跡していたものと同じ存在だった。
ならば中身も、あの日と同じ、黒い球体に凝縮された魔物であるはず。
滅せるのは闇狩の狩人だけ。
しかし彼にも可能なことはある。
「消える前に一つだけ良い事をするつもりはないか?」
言う彼を見据える魔物。
「ふざけるな! 愚かな人間の分際で我等の優位に立ったつもりか!」
罵倒は、それで充分。
「了解だ」
「ふごっ」
直後の圧力。
重し。
風船のような弾力を持つ身体すら容易く破砕する風の刃。
「ゲガッ…っ…」
割れて、魔物が散る。
周囲に群がるのは――。
……憎ラシイ……
……アァ…憎ラシイ……
……我等ノ糧ニナル他ナイ命ノ分際デ……
……感情ナドト愚カナモノニ縋ル人間ノ分際デ……
……十二宮様ノ未来ヲ妨ゲルカ……!
混沌から響く闇の声に、しかし勇輔は笑う。
「おまえさん達には判らんだろうよ」
彼は下方を見つめた。
狩人と共に戦うこの土地の人々、その勇姿。
「十二宮の支配を受ける気なんぞ、さらさらないね」
言い切る。
そうして、それが来た。
魔物が叫ぶ。
……グワアワアワアアアァァァァ………!!
タワー周辺だけではない。
遥か彼方、この都すべてを包み込むような白銀の輝きの中で勇輔は微笑った。
終わりを告げるには上々の合図だな、と。
■
十時十分。
地上二五〇メートルの特別展望室に、ただ一人きりで佇む勇輔の携帯電話が鳴る。
相手はもちろん、竜也だ。
電波を遮断するのは十分が限度だと言われていた。
そのリミットが来ただけである。
「おう、こっちは終わったぞ」
言えば、竜也の確認可能な範囲でも争いは終わったらしい。
話を聞けば長くなりそうだと察した彼は、これから地上に下りると返す。
件のラジオ番組によって失踪していた人々は、狩人の彼らの方で保護されたというし、その番組を作っていた魔物は彼自身が粉砕した。
もう二度と今回のような真似はしないだろう。
「まぁ、別の手段に出てくる可能性は大いにあるがな」
とは言え、それはそれ。
一先ずは一件落着だと電話を切った。
歩き出しながら、改めて見遣る硝子の向こうに広がるのは不夜城の夜。
決して眠らぬ魔都、東京の姿。
「……来るなら来い」
誰にともなく告げて、咥えた煙草に火を灯す。
くゆる紫煙は、決して振り返ることのない背後に幕を下ろした――。
―了―
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■ 登場人物 ■
・6589/伊葉勇輔様/男性/36歳/東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫/
・7063/九原竜也様/男性/36歳/東京都知事の秘書/
■ライター通信■
今回は「始動」へのご参加、ありがとうございました。
伊葉さんと九原さんのおかげで、ようやくDJに扮していた魔物の最期も形にすることが出来ました。
プレイングを拝見した時のライターの驚きをお伝え出来ないのが残念です!(笑)
不夜城奇談は今後、月一のペースで続いていく予定です。
またご縁がありましたら是非ともご参加ください。
再び狩人達とお逢い出来る事を祈って――。
月原みなみ拝
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