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■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■

藤森イズノ
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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異界で有名な組織 IO2。
そこに所属し、オカルティックサイエンティストとして活躍する女性。
白い翼を持つ、彼女の名は "藤田・あやこ"
これは、あやこがIO2に所属する前、過去の物語である。


「も、もう駄目…」
ズシャッ―
フラフラとよろめいた末、その場に崩れる あやこ。
ゲッソリとした彼女の表情は、見るに耐えないほど、不憫なものだ。
美しい純白の翼も、ヘタリと背中に張り付いて、
まるで、干し忘れて、しわくちゃになってしまったタオルのよう。
ぐぅ〜〜〜…―
静寂の中、響き渡る腹虫の声。
あやこは、ヨロヨロとしながらも立ち上がり、再び歩き出す。
(っていうか…ここ、どこよ)
行けども行けども、不気味な廃墟が続き、抜け出せない。
嫌な雰囲気と空腹に、溜息ばかりが零れてしまう。
何故、こんな所を彼女が空腹で歩いているのかというと、
行くあてなく彷徨っているがゆえ。…そう、簡単に言えば迷子だ。
当初は順調に街に向かって飛んでいたのだが、
空腹の所為で、彼女はシュルシュルと落下。
その落下地点が、異界で最も物騒な地域だった、という運のなさ。
(ほんと、気持ち悪い場所…どこまで続くのかしら)
行けども行けども変わらない景色に、不安を覚える あやこ。
淀んだ空気と乾ききった風。
魔物が生息するのに、十分な条件が揃っている。
いつ襲われても、おかしくない状況だ。
それゆえに、不安も募る。
今、襲われたらマズイ。
こんな脱力状態で戦闘なんて、できっこない。
周囲を警戒しつつ歩く あやこの耳が、ガサリと何かが動く音を捉える。
「!」
咄嗟に身構え、呼吸を抑えつつ気配を探ると、
廃墟から、ヒョッコリと少年が姿を現した。
(何だ…子供か…)
そう あやこに思わせるほど、少年は幼い顔をしている。
けれど、背丈から察すると、子供というわけでもなさそうだ。
そもそも、こんなところに一人でいるなんて、怪しいものだ。
あやこは警戒を解くことなく、少年に尋ねた。
「何してるの、あなた。こんな所で」
あやこの言葉に少年はケラッと笑うと、あやこを指差して言った。
「キミを追っかけて来たんだよ」
「は?」
キョトンとする あやこに、少年は続ける。
「ビックリしたよ。急に落下すんだもん」
笑いながら、少年は、ごく自然に懐から銃を抜いた。
(ちょっ…?)
危険を察知した、その時。
ボッ―
少年は、あやこに向け発砲した。
「きゃあ!?」
バサッ―
奇襲に思わず悲鳴を上げつつも、空へ高く舞い上がり少年の攻撃を避けた あやこ。
(ど、どうなってるの。今の…火じゃ…。火炎放射器…じゃないわよね。銃よね、あれ、どう見ても)
フワフワと頼りなく空に浮かびながら、目の当たりにした事実を確認する あやこ。
そう、あやこが疑問を抱くのも無理はない。
少年が発砲したのは、弾ではなく炎。
まぎれもなく、赤々と燃える炎だ。
あやこではなく、木葉にヒットした それがゴォと火柱を上げる様に、
あやこは呆けつつ、少年に尋ねる。
「あの〜。何ですか。これ、TVのロケか何かで…?」
あやこの、その言葉と呆気の表情に、少年はハハハと笑って、返す。
「んなわけないじゃん?本気だよ。俺」
「本気って…」
「キミを、殺すつもりでいくよ」
ニコリと無邪気な笑顔で、物騒なことを口にする少年。
"冗談" ではないことを悟った あやこは、空中で臨戦体勢を整えた。


その矢先のこと。
あやこの翼が、再びヘタリと勝手に畳まれてしまう。
「あっ…」
ギョッとする あやこ。
空腹と奇襲、宣戦布告に殺気立つ心とは裏腹に、あやこの体は悲鳴を上げる。
シュルシュルと落下していく あやこ。
「あぁぁぁぁ…」
こんな予定じゃ…といった表情のあやこを見て、
少年は、楽しそうに笑い、
「疲れてんだね。お疲れさん」
そう労いの言葉をかけつつ、不思議な銃から炎を乱射した。
手加減ナシの、少年の攻撃。
あやこは、それをギリギリで避けつつ眉間に皺を寄せる。
(ひどいわ。何てサディスティック…)
少年の放つ炎は赤々と燃え、端から見る分には、それはそれは美しいものだ。
銃口から真っ直ぐに伸びる炎の美しさには、思わず見惚れてしまいそう。
彼は、一体何者なのか。どうして、自分が襲われねばならないのか。
その銃は、何なのか。疑問は、数え切れないほどある。
けれど、問いている余裕なんて、ありゃしない。
休みなく飛んでくる炎を避けつつ、あやこは反撃に出る。
「我の声に応えよ。ウィンド・エルファっ…!」
あやこが そう叫ぶと、ブワリと辺りに蜃気楼が出現し、
少年の狙撃を、効率よく阻んだ。
「〜〜♪」
あやこの能力に、口笛をピュゥと吹いて感心する少年。
けれど、蜃気楼の効果は続かない。ゆっくりと消えていく蜃気楼に、
あやこはムゥとした表情を浮かべた。
(思いのほか疲弊が酷いわ。早いとこ、何とかしないと…)
間を空けることなく、あやこは呪文を詠唱。
「ラギ・ヴァラ・ディラート…」
目を伏せて空(くう)に円を描く。
すると、今度はブワリと砂煙が舞い上がった。
「うわっぷ…!!」
砂煙に目潰しを食らった少年は、一旦 炎放を停止し、目をゴシゴシ擦る。
今だ!そう思った あやこは。
逃亡を図る。
けれど、もはや疲労困憊。
飛ぶことができずに、その場にズシャッと倒れこんでしまう。
砂煙が消えて、少年の目が元に戻ったら…やばい。
あやこは困憊しながらも、地を這い、逃亡しようと試みる。
絶体絶命な状況の中、虚ろな目で這う あやこ。
困惑と疲弊の中、みるみる困難になっていく呼吸。
ハァハァと息を切らす内、あやこは自身の中に"精霊の蠢き"を感じる。
次第に砂煙は晴れ、少年が反撃を開始。
地を這い、逃亡しようとするあやこの姿に、
少年はニッと笑い、今までとは比にならないほどの真紅の巨大な炎を銃に灯らせた。
チラリと見やり、少年が "とどめ" を差そうとしていることを理解した あやこは、
クッと唇を噛み、喉から声を絞り出した。
"もう、勘弁して"
声にならなかった、その言葉は空気の塊と化して、あやこを護する。
巨大な炎は、あやこにヒットすることなく、
全て、グンッと見当違いの方向へ飛んでいく。
何度放っても、その結果は変わらない。
「何それっ。すげぇ…!」
まるで超能力か何かで、自分の炎が操られているかのような状況に、
少年は、感心しつつも楽しそうに笑う。
少年の、余裕の構え。
それに苛立ちながら、あやこは声にならない声を幾つも放つ。
"一体、何なの"
"どうして、こんな目に遭うのよ"
"もう、嫌"
放たれる言葉は全て、空気の塊と化して少年を襲う。
巨大な何かに、押しつぶされるような感覚。それは まるで、突風。
「う…」
少年は踏ん張り、吹き飛ばされぬように堪えるので精一杯だ。
「ちょ…ちょっと待って…おーいっ…!」
力を一瞬でも抜けば、吹き飛ばされてしまう。
身動きが取れない状況に追い込まれ、少年は攻撃することができず、
あやこに、休戦を求めようと声をかけるが。
あやこは、ズリズリと地を這い逃亡することに必死で、聞こえていない。
"助けて"
空を見上げ、枯れた喉で そう渇望した時。
空が淀み、ポツリ、ポツリと雨が堕ちてくる。
「あっ、雨ぇ?何で急に…」
飛んでくる空気の塊に堪えつつ、空を見上げる少年。
すると、少年の銃口に絶えず灯っていた炎が、シュゥと消えた。
「げ。何でっ?」
驚きを隠せない少年。
どうやら、灯した炎は、少年の意志でのみ消すことができるようだ。
消そうだなんて、少年は微塵も思っていなかった。
それなのに、どうして消えたのか。
(もしかして、この雨の所為か…?)
雨粒を頬に受けつつ、不思議そうな表情を浮かべる少年。
(だとしたら…凄いぞ)
ワクワクする心に、自然と笑みが浮かぶ少年。
それと同時に止む空気の塊。ふと見やると、あやこはバッタリと倒れ伏せてしまっている。
「ありゃ。やりすぎたかな…」
少年はポリポリと頬を掻きつつ、苦笑して あやこに駆け寄った。



「やりすぎよ。手加減くらいしなさい。こんなに衰弱してるのに…」
「ん〜。反省してるよ」
「…凄い熱だわ」
「え。風邪ひいてたの?」
「ちょっと違うみたいだけど…何かしら。不思議な体ね。この人」
耳に届く会話。ひとつは、聞き覚えのある…そう、少年の声だ。
けれど、もうひとつの声は…誰だろう。
どうやら、少年と親しい間柄のようだが。
フッと目を開くと、あやこの目に少年と、少女の姿が映る。
「…え?何…」
事態を把握できず、困惑する あやこ。
あやこは、とりあえず見知らぬ少女に声をかけた。
「あなたは…?」
すると少女は、あやこの服についた土埃を払いつつ、申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい。手荒な真似をして」
「…?」
「私達は、イノセンスという組織のエージェント。あなたをスカウトに来たんです」
「スカウト…?」
「こいつの勝手な行動で、危険にさらしてしまって…本当、ごめんなさい」
ポカリと少年の頭を叩いて言う少女。
少年は頭を掻きつつ、ふてくされて言った。
「テストだよ、テスト。大切なことだろ〜」
「疲弊しきってる相手に、することじゃないわ」
「そういう時こそ、真の力を発揮したりするじゃん。実際、そーだったしさ」
「うるさい。ちょっと黙ってなさい」
「………ちぇ」
少年と少女の遣り取りに、二人の関係を理解する あやこ。
おそらく、この少女は、少年の仕事上のパートナーか何かで、
毎度、無鉄砲な少年の尻拭いをしているのだろう。
二人の関係を理解することができても、
肝心なところは、理解できないままだ。
(スカウトって…私を、その組織に加入させる…って事かしら)
「あの…。聞いてもいい?」
起き上がり、あやこが問うと、
「はい」
少女はコクリと頷いた。
「どうして、私を?」
「えーと…こう言っては何ですけど、直感…ですね」
「直感?」
「はい。偶々あなたを見かけて、良いと思ったんです」
「どこで?」
「この辺りの空を飛んでいたのを見かけまして」
「あぁ…」
「途中で落下したときは驚きましたけど…」
苦笑する少女。あやこが、はにかんで笑うと、少年が偉そうな口調で言った。
「俺が見つけなきゃ、どうなってたことか」
「…襲いかかったくせに」
すかさずツッコミを入れる少女。
話によると、落下した あやこを介抱しようと二人で向かっていたのだが、
少年が、近道すると言って、勝手に別の道へ行ってしまい、
少女は、その後を追っていたそうだ。
介抱する予定だったのに、攻撃をしかけた少年に少女は呆れ、
それを、あやこに詫びている。ということらしい。
「とりあえずさ。疲れてるみたいだし、アジトに連れてこーぜ」
立ち上がり言う少年。少女は、少し考えて。
「そうね」
少年の提案に賛同した。
「歩けますか?」
「あ…うん…まぁ…」
自分の意見を聞かれることなく進む話に、あやこは少し戸惑うが。
疲弊しきっているのは事実だし、
スカウトの話は断れそうもないし…ということで、二人に着いていくことにした。
少女に肩をかりて、ゆっくりと歩いていく様は、
一見、通りすがりの人に助けてもらったという感動的なものだが、
事実的には、困憊状態で襲われてテストされ、
目を覚ますと同時に一気に説明されて、
挙句、彼等のアジトに連れていかれる…という、強引連行に近いものだった。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / ♀ / 24歳 / 現:IO2オカルティックサイエンティスト

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / Innocence:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / Innocence:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、どうもです^^
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEには、まだまだ続編・関連シナリオがありますので、
是非。また御参加下さいませ^^ お待ちしております。

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2007.12.08 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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