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■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■

藤森イズノ
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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闇の中、日傘を差す少女。
肩に蒼い九尾の子を乗せた彼女が歩くは、異界の辺境。
廃墟が並ぶ、不気味な地域。
とても可憐な彼女には、ひどく不釣合いな場所だ。
彼女の名は、白樺・夏穂。
愛読雑誌 『異界ウォーカー』の占いコーナーに記されていた、
"ラッキー・スポットは、辺境の廃墟"という記事に応じて、彼女は、ここへやって来た。
どうやら、占いが御好きなようで…。
(静かで、いいところね)
瓦礫の上にストンと腰を下ろし、並ぶ廃墟を眺める夏穂。
異界に住まうものでも、滅多なことでは足を運ばない、この地は、
それゆえに魔物の発生率も高く、物騒な地域だ。
そこを、静かでいいところだと言えてしまうのだから、
一風変わった感覚の持ち主である。
九尾の子を撫でながら、静かな時を満喫する夏穂。
(うん。充実…)
占いに記されていたとおりの結果に満足する夏穂だったが、
『異界ウォーカー』は、ほとんどがデタラメな記事で成り立つ、遊び心満載の雑誌だ。
また、妙な曰く付きの雑誌でもある。
何でも "占いコーナーに良いことが記されていると、必ず不運に見舞われる" とか…。
それも信憑性のない、ただの噂であることに変わりはないが、
残念ながら、今日の夏穂には 当てはまってしまうようだ。

(…!)
背後に、誰かが立っている。
今まで気配なんて、まるで感じなかったのに。
どんな人かは、まだ理解らないけれど、
ここまで気配を消すのが上手いのだ。
腕の立つ人物であることは、間違いないだろう。
そう思った夏穂は、背後に立つ何者かへ、静かに尋ねた。
「何の御用?」
夏穂の問いかけに、低くも高くもない声が答える。
「ん〜…ちょっとした、テスト?」
(意味がわからないわ)
そう思いつつ、夏穂は ゆっくりと振り返った。
夏穂の背後に立っていたのは、ニット帽を被った少年。
パーカーにカーゴパンツという、至ってラフな服装の彼は、
一見、何の害もなさそうに見える。しかし。
少年は、満面の笑みを浮かべつつ、スッと懐から銃を抜いた。
夏穂は咄嗟に立ち上がり、少年から少し距離を置くと、フゥと息を吐いて言った。
「物騒ね」
少年はクルリと銃を回し、ニコリと微笑む。
「まぁ、そう言わずにさ。付き合ってよ」
そう言うと同時に、少年は銃をコツンと叩く。
すると、ポッと銃口に紅い炎が灯った。
(魔法の銃…ってところかしら)
炎を灯す不思議な銃を見ても、驚く様子を見せず冷静に推測する夏穂。
落ち着いた夏穂の態度に、少年は満足気にウンウンと頷くと、
夏穂の額にヒットするよう、銃を構えた。
九尾の子を手放し、離れているようにと命じて、夏穂は日傘を閉じる。
夏穂の準備が整ったと判断した少年は、すぐに発砲を開始。
ボッ ボボッ―
銃口から放たれる、幾つもの炎。
夏穂は日傘を九尾の子の近くへと投げやり、
軽い身のこなしで、それらを全て見事に避けていく。
「すばしっこいんだ。意外だなぁ」
発砲を続けつつ、微笑みながら言う少年。
そんな少年の態度に、少しムッとした夏穂は、
懐から魔扇子を取り出し、それをバッと広げてみせる。
「へぇ。それがキミの武器?渋いね〜」
依然、楽しそうな少年。
夏穂は魔扇子でバサリと空を仰ぐ。
ブワッと少年に吹き付ける突風。
「うぉっ」
突風に吹き飛ばされそうになり、踏ん張る少年。
放つ炎の威力も、突風に弱されてしまう。
一気に形勢逆転か、そう思われされたが。
ビュン―
突然、少年の前に、一人の少女が現れ、
飛んでくる突風に、回し蹴りを放った。
突風は、少女の回し蹴りに断たれ、掻き消されてしまう。
「遅ぇよ。梨乃」
ボサボサになった髪を戻しつつ、少女に言う少年。
少女はハァと溜息を落として、少年に言った。
「あんたが勝手に先行くからでしょ」
二人の遣り取りを見つつ、魔扇子を閉じる夏穂。
(もう一人いたのね)
魔扇子から放たれた突風を、回し蹴り一つで掻き消してしまう。
そんな少女が加勢するとなると、少し厄介だ。
(っていうか…もう、飽きたわ)
夏穂はフゥと息を吐くと、
言い争いをする二人の間に入り、銃の形にした両手を二人の額へピッとあてがうと、
ニコリと可愛らしく笑って言った。
「隙あり。チェックメイトね」
「………」
「………」
少年と少女は身動きが取れない。
本物の銃口を額にあてがわれているような感覚と、
さっきまでは見せなかった、夏穂の無邪気な笑み。
ふたつが重なり、二人の背筋にはゾッと寒気が走る。



「…とまぁ、こういうわけでさ。スカウトが目的なんだ」
夏穂に突然襲い掛かった理由を述べた少年。
話によると、少年と少女はイノセンスという組織のエージェントで、
スカウトに出発した直後、とある老人から夏穂のことを聞き、
スカウトするべく、夏穂を捜していたらしい。
探索を続けながら、夏穂に関して色々と調べる内、
夏穂が、異界ウォーカーの愛読者で、
背表紙に掲載されている占いを好んでいるということを知った二人は、
すぐに異界ウォーカーの最新号をチェックし、
この廃墟が並ぶ地域で、待ち伏せをしていたそうだ。
少女より先に少年が到着してしまったことで、
予定よりも手荒なスカウトになってしまったが…。
「イノセンスのことは、ご存知ですか?」
礼儀正しく夏穂に問う少女。
夏穂は九尾の子の背中を撫でつつ、返す。
「まぁ…深くは知らないけど、ある程度は」
夏穂のその言葉を聞き、少年はニカッと笑う。
「とりあえずさ、俺たちのアジトに連れてくよ」
夏穂の手を掴み、スタスタと歩きだす少年。
(アジトって…)
少年に手を引かれながら、首を傾げる夏穂。
「ちょ、あんたは何でそう、強引なの」
少女は、呆れつつも後をついてくる。
「どーせ連れてくんだからさ、早い方がいいだろ〜」
「それは…そうかもしれないけど」
半ば強引に、連行されていく夏穂。
一体、どうなることやら…?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。はじめまして^^
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCE には、まだまだ続編・関連シナリオがありますので、
是非。また御参加下さいませ^^ お待ちしております。

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2007.12.08 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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