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■サイコバトル■

麻衣
【7061】【藤田・あやこ】【エルフの公爵】
「大変だ!また人が一人殺されたぞ!」

捜査一課二部はこのことで頭がいっぱいだった。
やれ犯人探すぞと言ってはいるが、いつまでも犯人の目星も
死因の謎も解けやしない。

主に任意の事情聴取や事務的な仕事を重ねているエル・レイニーズは
金髪に青い目を欧米人らしいいでたちである。しかし、こだわりが
あるのか、髪型は常におかっぱ系ボブカットだ。

淡々と事務の仕事をこなすだけだ。しかしここでされている事務は
一般で行われている事務より機密性が高く、事務をしているだけで、
事件のことは、ある程度わかる。

今、刑事たちは外に出ばらって、エルは一人で事務をしていた。

死体の様子。これがまた変わっていた。普通、人を殺す時、
身体を刺すか切り刻む。しかしこの死体の鑑定書を見ると、
頭がい骨から腰まで直線的に斬られている。

まず頭がい骨を切るのは普通の道具ではできない。
その部分からどうやって腰まで切り付けたのだろうか?
頭がい骨を切れるといえばチェーンソー。

しかし、この死体に関する書類にはこう書かれていた。

「この遺体は頭から腰まで刀で斬ったように美しい刻み方だった」

……おかしい。

「エル・レイニーズさん。任意同行してくれた人に取り調べお願いします」

取り調べ室に入ってきた人は斬られた男の彼女で、犯行者疑いリストに載っている。
エルの性格上、和やかな雰囲気が作れなくて、

「まず、午前0時はどこにいましたか?」
「自宅です」
「それを証明できる人は?」
「いません。家族が全部寝静まってたので」

この子を犯人に仕立て上げるのに、証拠がない。可能性もなくはないが。

その後何人か事情聴取を行った結果、アリバイがないのは
さっきの朝月・さらら、男友達の猪熊・洋輔くらいだった。

果たしてこの中に犯人がいるのだろうか?

でも何か納得いかないのだ。
刑事はこの二人のどちらか(もしくは両方)を逮捕するようだが、
エルは納得いかない。

そこでエルの元に電話がかかってきた。

サイコバトル
デスクにある受話器を取るとなじみのある声が聞こえてきた。

「はーい。私ですっ! あなたの方はどう? 元気にやってる?
 てか私のこと忘れたんじゃないよね」
「表は大会社の社長。でも裏の顔はIO2オカルティックサイエンティスト『藤田あやこ』」
「よく言えましたー。三十路を過ぎて独身でいるエル・レイニーズさん」
「別に仕事に集中していたら三十路を過ぎてしまっただけよ」

エルは側にあったボールペンをカチカチと鳴らした。
エルがイラついている時にする動作だ。

「せっかくきれいな顔立ちしてるのに、あー残念だねぇ」
「あなたも仕事ばかりしてると私のようになるわよ」
「ならないもん。私は出会いがいっぱいあるから」

ボールペンはいつまで鳴らせる気だと、声にならない声で言っている。

「で、何の用? 用がなければ切るわよ」
「いやいや。超常現象があったという報告がIO2に来ててさ。そっちも何かないかなって」
「あったわよ。頭がい骨からぶった斬った遺体が」
「それ、研究にまわせる?」
「一応警察で調べた後だけどね。それでよければ」

エルは上手に鑑識や他の刑事ともやりとりして、
遺体をIO2に回してもらえるようになった。

エルはある程度霊能力はあるが、中級といったところで、
実際は何より組織と組織とのつなぎ役が上手いのであろう。
だから警察の間でも優秀な刑事として、IO2とも繋がりが深く、
子供たちばっかりの超常組織スピリッターズのリーダーにもなれるのだ。

一方、IO2には無事遺体が送られてきた。
あやこは慎重に遺体の傷口を見て、うっすらとカットし、顕微鏡で見てみる。
熱で溶かしたり、何かの道具で切りぬいた様子はない。となると超能力か……
あ、メスという手もある。でもメスで頭がい骨は切れない。

警察では朝月さららと猪俣洋輔の携帯の位置情報の記録を電話会社から押収して
犯行当時の居場所を特定にかかっていた。しかし、二人とも言っていた自宅や
飲み屋となっていて、遺体のあった場所ではなかった。

「あーあ。迷宮入りか」
刑事の一人がそう言ったが、

「まだわからないわよ。遺体は調査中ですし」
「ま、レイニーズさんは名探偵だからね」
「いえ、人脈に恵まれてるだけです」

エルは容疑者候補のデータをじっと見ていた。
まだあの二人の可能性はあるのか、それともないのか。

エルは朝月さららと猪俣洋輔を任意同行し、取り調べした。

「今日はこの方に来てもらってるわ」

すると出てきたのはあやこであった。

「このカードをしばらく触っててくれる?」

このカードは超能力の有無を調べるものだ。
緑、青の順で超能力がないことになる。
そして黄色は注意信号で、赤、紫になると超能力があることになる。

余談だが、エルは朱色である。能力が中級であるため、真っ赤にはならないのだ。

検査の結果、二人とも色は青であった。ますます迷宮入りである。

あくまで目安なので、完全に白になったわけではない。
エルは朝月さららと猪俣洋輔の通っている大学に聞き取り調査をした。

朝月さららは被害者との関係はノロケ話をするほどだったそうで、
猪俣洋輔は別で彼女がいる。しかし浮気関係があるかどうかは
はっきりしなかった。最近の男女の恋愛は複雑化してて、
不倫、浮気、セフレ、何でもありだ。

「あーあこれだから今の若者は」

そこで携帯に着信があった。あの女か。

「もっしもーし。推理は進んでる?」
「全然。調べれば調べるほど迷宮入りなのよ」
「若い人と話をして、『これだから近頃の若者は』とか言ってなかった?」

図星。なんであやこはこうも余計なことまでしゃべるのかと、エルは髪を触った。

「まー真面目な話をすると、現場の血痕とか調べた?」
「やったわよ。あたりに血がびっしり。そこで血しぶきをあびたパーカーなども
 探したけど、今のところみつかってないわ」
「遠隔操作で殺したなら顔見知りの犯行になるんじゃない?」
「そうね。その可能性も否定できないわ。でも動機がない」
「見知らぬ人を憎める程、念の強い人なら
 能力を活かして医者とかまっとうな職についてるよね?
 病的な人の仕業ならもっと無差別に被害が出るしね。困ったな」

そこでふと思った。

「ウチ(スピリッターズ)のあずさちゃんならできるわね」
「それもあるけど、私、霊の仕業じゃないかなーって思うんだ」
「霊がどうして肉体的な斬りつけするのよ。基本的に実体がないのが霊よ」
「なんでさ。霊の仕業なら取り殺すにしては殺し方がフェチっぽい……」

ダメだ。あやこが妄想に入り込んでしまった。

「一刀両断かぁ、うーん。そうだ!これは昔の医者の霊の犯行だ!
 夜中に歩いてる茶髪女とかピアスとかきっと妖怪に見えたんだ。
 で、ウダツの上がらない侍の霊を丸め込んで退治させて、
 自分は解剖してみたかったんだ! と解剖フェチの医者の霊は喜んだ!
 ねぇ、これで決まりと思わない?数珠持って現場行こ!」

エルは、

「そうかもしれないわね。迷ったら現場っていうからね」

殺人現場。ある大学のキャンパスだった。被害者が学生ということで、
大きな木がキャンパスの隅にあり、その裏で犯行が行われた。

「エル。そういえば遺体を見て何か感じなかった?ほら、霊的な空気があるとか」
「……」
「はいはい無視ですか。じゃあ数珠もしたことだし、徐霊のお教を読むよ」

そうしてあやこはお教を読み始めた。

そこでガサガサと音が鳴った。
かと思ったら、茂みから義手をもった男が飛びあがって、
エルに義手から変形した剣で真っ二つにした。

「エルーーーーー!」

あやこはあまりの悲惨な出来事にショックを隠せなかった。

「なんだ?この人透けてんじゃん」
「え? これエルじゃないの?」

「大丈夫よ。死んでないわよ」

やがて茂みからエルが現れた。それと一緒にIO2のエージェントたちが出てきて、
それにまぎれてスノーというダークハンターの女の子が出てきた。
彼女は確かIO2の人間ではない。

「この子は能力を買われてIO2に力を貸してくれてるのよ」

「貴方ね。ギルフォードという凶悪犯罪者は」
「さあね。そういうことにしとけば?」
「貴方の人の命を軽々しく考えて殺りくを繰り返すは許しません」

そうしてスノーは大きな鎌を持って構えた。
相手は何が出てくるかわからない義手。

まずギルフォードから飛びついてきた。義手は変形し、ナイフがいくつも飛び出ている。
スノーは大鎌でそれらを受けとめた。かと思ったら、ギルフォードは飛びだしてきた。
相手の義手は剣になってた。大鎌は急な対応ができず、その剣を防ぐことができなかった。
そして剣は彼女の肩に刺さってしまった。

「こんなのどうってことないわ」

そう言うだけあって、傷口がみるみる回復していく。

やがてスノーは風に乗って空を飛び、ギルフォードのところへ降りてきた。

「このまま切り刻んでやるぜ!」

と言ってギルフォードは飛びあがり、剣を上に向けて今にも刺さりそうだ。
しかし、スノーは極低温の水雪を吹雪のようにちらつかせて、
ギルフォードの視界を狭めた。

「うわっ。寒い!前が見えねぇ」

そしてその中からスノーがやってきて、ギルフォードの首を大鎌で飛ばしてしまった。
辺りは血だらけである。

「これでよかったのかしら?どうせ死刑になる人でしょ」

するとエージェントの人たちが何かの研究に使うのか、ギルフォードの遺体を
全て持ち去ると同時にスノーもいなくなった。

あやこは茫然と見てるしかできなかった。

「さ、お教の続きでも読みましょうよ」

そこであやこは、

「さっきのイカれた兄ちゃんが犯人だったんでしょ?」
「まぁいいから」

あやことエルはお教を読み始めた。
この行為に何の意味があるんだろう? とわけのわからない気持ちであやこは読んでいた。

すると一つの人魂が空へ舞い上がって行った。

「きっとね、被害者はあまりの殺され方で、あの世にも行けなかったのよ」

エルはそう言った。あやこはなんだか恥ずかしくなった。
事件解決ばかり考えて、成仏できなかった学生の霊がいたことを。

雲から隠れていた三日月がそっと顔を出した。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 / 藤田・あやこ  / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】

【NPC / エル・レイニーズ  / 女性 / 32歳 / 女刑事】
【NPC / スノー  / 女性 / 不明 / ダークハンター】
【NPC / ギルフォード  / 男性 / 28歳 / 快楽犯罪者】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。いつもご依頼ありがとうございます。
あやこちゃんの目の付けどころ(遺体の切り口など)がかなり良く、
特にESPカードをアイテムに加えさせていただきました。

最後は別な方向へ暴走してたような気がしたので(そこがあやこちゃんらしいので好きなのですが、
私の世界では人魂で攻撃はできても、物理的な物に変化することはないとしているので)
異界の方々に解決させていただきました。ごめんなさい!