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■INNOCENCE / 白亜の館■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。

海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。

廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。

彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。
INNOCENCE 02 白亜の館

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OPENING

何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。

海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。

廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。

彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。

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少年に手を引かれ、廃墟が並ぶ不気味な地を歩くシュライン。
シュラインが、何度”ちょっと待って”と言っても、
少年は聞く耳持たずで、彼女をグイグイと引っ張っていく。
(参ったなぁ。どうしよう…)
組織…イノセンスにスカウトされ、
その足で、ここまで連れて来られたわけだが、
シュラインには、イノセンスに所属する気は、毛頭ない。
他所に所属し、積極的に仕事をしているのだから、当然だ。
(話を聞くだけなら、いっか…。その上で、きちんとお断りしなきゃね…)
現状から、すぐにどうこうできる問題ではないと判断したシュラインは、
とりあえず、少年(と少女)に大人しくついていき、
きちんと話を聞いた上で、きちんと断ろうと決意した。


「着いた」
少し息を切らしながら言う少年。
「そんなに急がなくても良かったのに…」
少女は呆れつつ、自身の手からタプンと綺麗な水を放つと、
鞄から取り出したカップに、それを注いで少年とシュラインに渡す。
「あ。ありがとう」
カップを受け取り、ジッと注がれた水を見やるシュライン。
それは、とても綺麗な水。飲んでも、何の問題もなさそうだ。
(すごい能力よねぇ。今更だけど)
ゴクゴクと水を頂き、喉を潤して、シュラインは顔を上げる。
目の前には、白亜の館。
廃墟から少し離れた森の中に在るそれは、とても神秘的なものだ。
白い館の周りを、黒いコウモリがバサバサと飛んでいる。
何だか違和感のある光景だが、シュラインは至って普通。
(生物がいるっていいわね〜。ホッとするっていうか)
淡い微笑みを湛えるシュラインに、少女は少し驚いているようだ。
今まで、何人かスカウトして ここに連れてきたけれど、
皆、はじめは、ひどく不気味がっていたものだから。
「とりあえず、マスターに会ってもらうから」
空になったカップを少女に返しつつ、扉を見やって言う少年。
扉には、取っ手が無いが…少年が扉に手をかざすと、ゆっくりと開いていった。
どうやら、扉も魔法仕掛けのようだ。
スタスタと館内へ入っていく少年。
少女はシュラインにペコリと頭を下げて言う。
「ごめんなさい。強引で」
「え?あ、ううん。いいのよ。そういうコ、嫌いじゃないわ」
クスリと笑って返すシュライン。
少女は、再びペコリと頭を下げ、小走りで少年の後を追う。
(マスター…か。うん、よし…)
一呼吸置いて、シュラインも それに続いた。

館は、内部も真っ白で、気を抜くと眩暈を覚えてしまいそう。
壁も、床も、ライトも、何もかもが真っ白。
長い通路を歩きながら、シュラインは思う。
(人間一人を白い部屋に篭らせて、どれだけ精神がもつか…って実験、あったわねぇ)
眩暈を訴えることなくテクテクと歩くシュラインに、少女が聞いた。
「具合…悪くないですか?」
「ん?大丈夫よ。楽しいわ」
「え?」
「ほら、こんな状況だとね、耳が凄く冴えるの」
「耳が…ですか?」
「そうよ。ちょっとした足音の違いとか、ね」
「…はぁ」
シュラインの余裕を目の当たりにし、少女は呆気。
と同時に、落ち着いた女性だなぁ…と感心していたり。
コンコン―
「マスター、入るぞー」
暫く進み、突き当たりの巨大な扉の前。
中の人物へ、軽く挨拶する少年。
ブォンッ―
少年が触れた途端、半透明と化す扉。
少年はスタスタと歩き、扉をすり抜けていく。
(わぁ…不思議…)
同じように扉をすり抜け、感動を覚えるシュライン。
「マスター。期待の新人を連れて来たぜ」
ふふん、と自慢気に言う少年。
扉の中は、これまた真っ白な空間で、中央に銀色のソファだけが置かれている。
そのソファに座る老人こそが、少年の言う”マスター”だ。
老人の膝上には、紫色の猫が気持ちよさそうに眠っている。
その猫の背中を撫でながら、老人は少し顔を上げて言った。
「ごくろうじゃったな」
低い、落ち着いた声を放つ老人。
老人が言葉を発した途端、場の雰囲気が厳粛なものに変わったような感覚。
シュラインは、自然にスッと姿勢を正した。
そんなシュラインをジッと見やる老人。
「ふむ…どれどれ…」
老人はフードを深く被っていて、表情がいまいち理解らないものの、
あらゆる意味で、実力者だということが伝わってくる。
シュラインは息を飲んで、ただジッと老人を見つめ返した。
「うむ。合格じゃ。何の問題もないな」
口元に笑みを浮かべて言う老人。
途端に、フッと力が抜けて、シュラインはフゥと息を吐く。
「お主のような者が加わるとなると心強い。期待しているよ」
嬉しそうに言う老人に、シュラインはハッと我に返って告げた。
「あっ。いえ。ごめんなさい。私、こちらに所属する気はなくて…」
「むん?そうなのか?」
「はい。もう、他所に身を置いておりますので」
「何と。そうじゃったか。ということは…」
ジッと少年を見やる老人。
少年はパッと顔を背け、そ知らぬフリで頭を掻いている。
「海斗が強引に連れて来たんです」
一歩前に出て、老人に報告する少女。
「…梨乃、てめぇ」
小声で文句を言う少年。
少女はツンとして返した。
「事実だもの」
少年と少女の遣り取りから、全てを悟った老人はフゥと溜息を吐いて、
シュラインに、心から詫びる。
「すまんかったのぅ。こやつはどうにも自分勝手なところがあってのぅ…」
「あっ、いえいえ」
首を振り、逆に申し訳なさそうに言うシュライン。
頬を膨らませて不満そうな表情を浮かべる少年をチラリと見やり、
シュラインは、老人にとある提案をした。
「あの…こちらへの所属はできませんが、お手伝いという形なら構いませんので」
「何と?」
「私が所属している場所への依頼…という形を取って頂ければ。何かあれば、その都度 協力しますよ」
「おぉ…それは有り難い」
「それでも構いませんか?」
「あぁ。構わんよ。お主が良いと言うのなら、是非にでも」
「わかりました」
ニコリと微笑むシュライン。
老人とシュラインの間で交わされる契約に、少年は不満をあらわにした。
「ちょっと待てよ。所属っていう形じゃねーと困るだろ」
「お主以外は、誰も困らんよ。協力してくれるだけで十分じゃ」
「………」
老人に即答され、何も言い返せなくなる少年。
少女は少年の肩をポンと叩いて慰めの言葉をかけた。
「あきらめなさいよ。みっともないから」
少年はしばらく膨れっ面を浮かべたが、やがて諦めて言った。
「…わーったよ。もういいよ。ふんだ」
子供そのものの少年の態度に、クスクスと笑うシュライン。
老人は背もたれに身を預けて、少年と少女に告げる。
「ところでお前たち、その者に挨拶はしたのか?」
老人の言葉にハッとする少年と少女。
そう、彼等はシュラインに、まだ自分の名前すら言っていなかった。
スカウトに夢中になりすぎて…。
「ご、ごめんなさい。申し遅れました。私、梨乃…白尾・梨乃と申します」
ペコリと頭を下げて言う少女。
少女に小突かれ、少年も続けて名乗る。
「あー…えと…俺は、海斗。黒崎・海斗だ」
「はい。梨乃ちゃんと…海斗くんね。私はシュライン。シュライン・エマです。よろしくね」
微笑みながらシュラインが言うと、老人は溜息を吐いて言った。
「まったく…まず名前を名乗らんといかんじゃろうが」
「すみません」
「忘れてたんだよ」
深くお辞儀をして詫びる梨乃と、開き直る海斗。
どうやら、この二人には老人も手を焼いているようだ。
そう思ったシュラインは、三人を見やりながらクスクスと笑った。


老人…マスターとの面会を終え、
また、イノセンスに所属ではなく協力する、という形の契約を済ませた後。
シュラインは、海斗と梨乃に館内を案内された。
イノセンスのアジトであるここは、エージェントたちの”家”でもあるということ、
所属しているエージェントは、現在十二名であること、などなど…。
ひととおりの説明を聞き終えて、シュラインは、ふと気になったことを尋ねてみた。
「ねぇ。IO2の…探偵さんやレイレイちゃんのことは知ってるのよね?」
「はい」
コクリと頷く梨乃。
「さっきライバル組織…って言ってたけど、仲悪いの?聞いたことないんだけど…」
シュラインの言葉にムッと眉を寄せる海斗。
海斗は耳をほじりながら肩を竦めて言った。
「あいつらは、俺達のこと見下してやがるからな」
「え…?」
海斗の言葉にキョトンとするシュライン。
探偵(ディテクター 兼 武彦)とレイレイ(零)のことを誰よりも知っているシュラインは、
彼等は誰かを見下すなんてことしないわ…と思った。
おかしいなぁと思っているシュラインに、梨乃が小声で補足する。
「…あいつが一方的にライバル視してるだけなんです。ディテクターさんを」
「え。そうなの?」
「はい。実際、IO2とイノセンスは親交深いですから」
(どうしてライバル視なんか…)
むぅ、と考えるシュライン。
タイプや、扱う銃は違えど、同じスナイパーだからかしら…などと思うも、
どうやら、そんな安易なものではなさそうだ。
ディテクターの話をすると、途端に少年の機嫌は悪くなる。
何か、過去にあったのかもしれない…自分の知らない何かが…。
そこに行き着いたシュラインだったが、
これは今、ここで聞くべきことではないなと判断し、深く尋ねることはしなかった。
この先、どんな付き合いになるかは理解らないけれど。
少しずつ…わかっていければいいな。そう、心に留めて。
「まぁ、何にせよ。これから、よろしくな。ガンガン手伝わせるから」
偉そうな口調で言う海斗。
シュラインはクスクス笑いながら返す。
「お手柔らかに、よろしくお願いね」
「ん」
「ふふ。あっ、そうだ。一つ良いかしら」
ハッと気付き、二人に申し出るシュライン。
「ん?」
「はい?」
海斗と梨乃は首を傾げて返した。
「タシとエクにも…お水貰えるかしら。喉渇いてると思うから」
「え。あいつら…生きてんの?」
「…魔法だと思ってました」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
少し納品が遅れてしまいました。申し訳ございません。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

INNOCENCE には、まだまだ続編・関連シナリオがありますので、
是非。また御参加下さいませ。 お待ちしております。

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2007.12.19 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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