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■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■

藤森イズノ
【7266】【鈴城・亮吾】【半分人間半分精霊の中学生】
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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異界の辺境、廃墟が立ち並ぶ不気味な地域。
そこに不釣合いな、少年が二人。
小麦色の肌の少年の名は、和田・京太郎 (わだ・きょうたろう)
京太郎にペタリとくっついている少年の名は、鈴城・亮吾 (すずしろ・りょうご)
二人は、とある人物からの依頼で、
この辺りに出現する魔犬の討伐任務にあたっていた。
二人のチームワークと身体能力は見事で、
魔犬の討伐は迅速に行われ、つい先程、任務は完了した。
「さて、戻るか」
「そうだね」
京太郎と亮吾は依頼人に任務完了の報告をする為、
依頼人がいる街に戻ろうと歩き出す。
完璧な遂行だったのにもかかわらず、反省会をする二人。
そんな二人を、INNOCENCEエージェントである少年と少女は尾行けていた。
「すげーな。俺達より年下だろ、多分」
「そうね。二人とも、是非加入して欲しいところ…」
「にしてもよ…右の奴、すげーチビだな」
「それ、本人の前で言わないでよ」
京太郎と亮吾を見ながら言葉を交わす少年と少女。
どうやら、二人をスカウトするつもりのようだ。


「お二人さーん。ちょっとイイ?」
京太郎と亮吾の行く手を遮って言う少年。
少年の手には、不思議な形の銃。
「…いいけど」
銃を持つ少年を警戒しつつ、応じる京太郎。
亮吾は、キョトンとしている。
「話の前にさ、お手並み拝見したいんだけど、イイかなー?」
スッと銃口を二人に向けて言う少年。
無邪気な笑みを浮かべているが、本気っぽい。
お手並み拝見される意味はわからないが、
本気っぽいからには、相手せざるを得ないだろう。
そう思う京太郎だが、真っ向から相手をするわけにはいかない。
戦闘が苦手な亮吾が一緒なのだから。
「イイけど、真っ向勝負は無理っ!!」
そう言い残して、京太郎は亮吾の手を引き、ダダッと駆け出す。
逃げながら、好都合な条件を揃え、相手をしようという考えだ。
「…何で逃げるの?」
京太郎に手を引かれつつ、ポヤッと尋ねる亮吾。
状況把握が出来ていないようだ。
「わかりやすーく説明すっから、ちゃんと聞けよ!」
京太郎は、走りながら亮吾に説明を始めた。

「…逃げられちった」
ケラッと笑う少年。
少女は、パコンと少年の頭を叩き、ムッとした表情で言う。
「いきなり銃を向けるなんて、何考えてんのよ。あんたは」
「どういう反応するかなーと思って。まぁ、逃げられたけど」
「馬鹿っ」
「うるさいなー。追っかけりゃーイイだけだろ。行くぞっ!」
「…はぁ〜〜〜」



少年と少女から逃げ、街へやってきた京太郎と亮吾。
追いかけてくるのは間違いない。
この街は頻繁に来るから、どこに何があるか、ほぼ完璧に把握している。
京太郎は、人混みを掻き分けながら、早足で歩く。
京太郎のわかりやすい説明で、亮吾も状況を把握済みだ。
人混みに紛れて姿を眩ませつつ、
京太郎と亮吾は、とある廃ビルへ忍び込む。
他人を巻き添えにするわけにはいかない。ここなら、安心だろう。
「来るかなぁ」
ヒビの入った窓ガラスに手を置き、外を見ながらポツリと亮吾が言った。
京太郎は腕まくりをしつつ言う。
「おい、隠れてろって」
廃ビルの中、息を潜めて待つ二人。
少年と少女は、いとも簡単に二人を見つけ、ビルの中へ入ってくる。
(だよな。撒けるワケねぇや)
苦笑しつつ、亮吾を背中に庇い、向かってくる少年と少女に備える京太郎。
「見ーーーっけ!」
ビシッと指差しながら言う少年。
京太郎は不敵な笑みを浮かべる。
「行くぞ、亮吾」
「うん」
小声で言葉を交わした次の瞬間。
ガシャァァンッ―
二人は窓ガラスを割って、外へと逃亡。
それだけではなく、別々の方向へ駆け出した。
「あららら。また逃げられた」
アッハッハと笑う少年。
「何笑ってんのよ。追うわよ」
「へいへい。んじゃ、俺はチビの方を追うねー」
「失礼なことしちゃ駄目だからね!」
「わーかったって」


二手に分かれて逃亡した京太郎と亮吾。

京太郎サイド―――
追いかけてきたのは少女の方。
京太郎は、サイレンサー付きのオートマチック銃で少女を威嚇していたが、
「めんどくさ。もういいや」
そう言って突如ピタリと足を止め、少女を見据えて言った。
「INNOCENCEのエージェントだよな、あんたら」
「…ご存知でしたか」
「おぅ。最近、いろんなとこで評判だからな、あんたらは」
「すみません。手荒な真似をして。私達の目的は…」
「あ、待った。あいつ…亮吾が来てからにして。説明すんの面倒だから」
尾行し、声をかけた理由を述べようとする少女にストップをかけた京太郎。
京太郎は、不敵な笑みを浮かべ、続けて言った。
「すぐ来るから。多分」

亮吾サイド―――
追いかけてきたのは、少年の方。
亮吾は、うっかり袋小路に逃げ込んでしまった。
携帯は、ずっと京太郎と通話状態だったのだが、
少年との鬼ごっこに夢中になってしまい、
京太郎の声は亮吾に届いていなかった。
『おい、亮吾!』
立ち止まって、ようやく亮吾はハッとし、携帯を耳に宛がう。
「ごめん。楽しんじゃってた」
『お前なぁ…』
京太郎は呆れて大きな溜息を落とす。
自ら進んで行き止まりに足を運んだ亮吾を追い詰め、
少年はケラケラ笑って言う。
「鬼ごっこは、おしまいだよー。チビ助」
”チビ助”という言葉にピクリと眉を動かし、
亮吾は、ムッとした表情で、携帯の受話口へ、少し大きな声で言った。
「ちょっと待ってて。今、そっち行くから」
亮吾の言葉に肩を竦める少年。
この状態で、どうしようというのか。
少年は笑いながら亮吾に言う。
「なぁ、ちょっとさ話を聞いて欲しいだけなんだよ。俺達はさ」
「…銃口を向けた人が、よく言うよね」
淡い笑みを浮かべて返す亮吾。
そして、次の瞬間。
亮吾の体は、携帯電話の中へ…。
携帯と共に、姿を消した亮吾に、驚くばかりの少年。
「ぐはっ!?何それっ!?どゆことー!?」



小さな公園にて、少年を待つ今京太郎と少女と…亮吾。
亮吾は、電波を介して移動出来る能力を備えているのだ。
「あー何だろ、この敗北感…」
暫くして公園にやってきた少年は、
頬を掻きつつ そう言って何ともいえぬ表情を浮かべた。
「お疲れさま」
目を伏せ、口元に淡い笑みを浮かべて言う少女。
京太郎から、全てを聞いて理解していたようで、
二人と共に、少年が来るのを待っていた。
おそらく、悔しそうな顔をして戻ってくるだろうと思っていた少女。
その予想は、見事に的中した。
そして、もう一つ。台本で、少年は、悔しい思いをすることになっている。
テクテクと歩きながら三人に歩み寄る少年。
そこに。
バチィッ―
「うぉわぁっ!?」
突然の電光。驚いた少年は、その場に尻餅をついた。
おしおきというか何というか。
電光は、京太郎と亮吾が仕掛けていたトラップだ。
目を丸くしている少年を見て、三人はプププと笑う。
「…梨乃。何でお前まで、そっちサイドなんだよ」
頬を膨らませて、不満そうに少女に言う少年。
少女は目を伏せ、フイと顔を背けて言ってのけた。
「二人に失礼なことした罰よ」


さて、色々あったが、ここからが本題だ。
少年と少女、二人の目的は、京太郎と亮吾にイタズラすることではなく、
組織、INNOCENCEのエージェントにならないかとスカウトすることだ。
細かい説明を交えながら、じわりじわりとスカウトに入る少女だが、
少年は、少女のその行為に猛反発。
まどろっこしい!と叫んで、単刀直入に、
二人へ「エージェントになんない?っつか、なって」と笑顔で告げた。
少年と少女の性格が真逆であることに、
よくやっていけるなぁと感心しつつも、
京太郎は、ただ一言。
「断る」
エージェントスカウトを拒んだ。
「えぇー。何でー」
ブーブーと文句を言う少年。
京太郎は、空を見上げて少年の問いに答える。
「組織ってもんに良い思い出がないから」
京太郎の表情は、何というか…切なげで、それでいて疲れきったもの。
その表情から、何か深い事情があるのだろうなと悟り、
少年と少女は、思わず口を噤んでしまう。
で、亮吾は…というと。
「俺も所属はしない」
京太郎と同じく、スカウトを拒んだ。
亮吾がスカウトを拒むのは、京太郎につられているからなのでは…と思った少年は、
しつこくスカウトを続けた。
マシンガンのように次々と勧誘の言葉を放たれ、うっ…とたじろぐ亮吾。
亮吾は京太郎の袖を掴み、泣き付いて勧誘から逃げる。
「京太郎〜…しつこいよーこいつ。どうすればいいのー…?」
「知るかっ!何でも俺に聞くなっ」

スカウトは失敗。
少年は、なかなか諦めようとせずに、しつこく勧誘を繰り返したが、
少女に怒られ、三十分後、ふてくされつつも引くことにした。
少年が突然、銃を向けたことや、ロクな説明もなしに二人を追い詰めたこと、
一連の無礼を、少女は謝罪する。
「本当に、ごめんなさい」
深々と頭を下げる少女に、
京太郎と亮吾は「いいよ、別に」と声を揃えて返す。
「もし…興味が湧いたらの話ですけれど。その時は、ここへ」
スッと名刺を差し出す少女。
名刺には、少女の名前と組織INNOCENCEのロゴ、
そして、組織本部付近の地図が記されていた。
とりあえず、と名刺を受け取る京太郎と亮吾。
「それでは」
少女はペコリと頭を下げ、
ふてくされている少年を半ば強引に引っ張って帰っていく。
二人の背中を見つつ、亮吾はポツリと呟いた。
「何ていうか…女の子の方も諦めてないよね、実際」
「だな」
ハハ、と笑い、名刺をポケットにしまう京太郎。
亮吾も同じく、ポケットに名刺をしまう。
「さて。依頼人とこ行かないとな」
「あ。そうだね」
京太郎と亮吾は、やらねばならぬ依頼人への報告の為、
街の北にある、依頼人の屋敷に向けて歩き出す。

二人が、ポケットから名刺を取り出す日は…来るのだろうか。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

1837 / 和田・京太郎 (わだ・きょうたろう) / ♂ / 15歳 / 高校生

7266 / 鈴城・亮吾 (すずしろ・りょうご) / ♂ / 14歳 / 半分人間半分精霊の中学生

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは!  納品が遅れてしまい、大変申し訳御座いません。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ^^

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2008.02.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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