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■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■

藤森イズノ
【1564】【五降臨・時雨】【殺し屋(?)/もはやフリーター】
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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異界の辺境を彷徨う、青年が一人。
紅色の長髪を揺らしながら、フラフラと歩く。
青年の名は、五降臨・時雨。
彼がフラつきながら歩いているのには、二つ理由がある。
一つは、ただ単に、道に迷っているから。
そして、もう一つは、空腹故に。
「うーん…どうしよう…全っ然わかんないやぁ…」
クゥ〜と鳴る御腹を押さえながら、時雨はフラフラ歩く。
道に迷ったら、そこから動かない、とか、
携帯を持っているんだから、知り合いに連絡する、とか。
色々と迷子の解決策はあるのだが…時雨は、そこまで頭が回らない。
テンパって焦って、冷静な判断力が欠けているというわけではない。
単に”抜けて”いるだけなのだ。そう、時雨は誰もが認める超天然体質。
「ワンワンッ」
フラつく時雨の元に、一匹の犬が駆け寄ってきた。
柴犬…首輪はしていない。泥だらけなことから、おそらく野良犬だろう。
時雨は、ちょこんと、その場にしゃがみ、
野良犬の頭を撫でつつ話しかける。
「キミも迷子?」
「ワンワンッ」
「そっかぁ…困ったねぇ…あ、ボク、時雨。よろしくねぇ」
「ワンワンッ」
「そだね…お腹…空いたねぇ…」
言っておくが、野良犬は人語を喋らない。
会話が成立するはずがないのだ。要するに、時雨の独り言。
けれど、時雨本人は、野良犬と会話しているつもりだ。真面目に。

野良犬と向かい合い、ブツブツと独り言を言う時雨。
傍から見れば、近寄りがたい…いや、寧ろ近寄りたくない光景だ。
そんな光景と時雨を、少し離れた場所から観察している者がいる。
少年と少女。おそらく二人とも、まだ二十歳そこらだろう。
「…あいつ、変じゃね?」
時雨を見つつ少年が言う。
「そうね。ちょっと変わってるかも」
目を伏せて、少女が返す。
少年は、うーんと首を傾げながらポツリと呟いた。
「けど、戦闘能力は…すげー高いよな」
「そうね」
二人は、対象人物を見ただけで、その人物が持ち秘める能力を、ある程度把握できる。
その結果、時雨は二人の”目に留まった”のだが…。
少年は、腰元から不思議な形の銃を抜くと、
不適に笑って、こう言った。
「試してみよ」
「………」
少女は溜息。
やめておいた方が無難だ、という意思表示だ。
けれど、少年は考え直すことはしない。
銃に左手をかざすと、銃口にポッと紅い炎が灯る。
少年の持つ、この銃は…どうやら”魔力”が深く関わる代物のようだ。
言い出したら聞かない。そんな少年の性格を理解しているのだろう。
少女は、肩を竦めて腕を組み、傍観体勢に入る。
「よっしゃ…いくぜっ」
少年は、嬉しそうに引き金を引いた。

ボッ―
少年の銃から放たれる、銃弾を模した炎。
炎は、時雨の背中目掛けて、真っ直ぐに飛んでいく。
チリッと背中に走る妙な感覚。
時雨は、咄嗟に野良犬を抱きかかえ、
炎に背を向けたままの状態で、それを避けた。
「お。いいね」
時雨の軽い身のこなしに、満足そうに述べる少年。
隣で見ていた少女も、コクリと頷く。
「びっくりしたね」
野良犬を抱きかかえたまま言う時雨。
時雨は、炎が飛んできた方向をチラリと見やる。
茂みに隠れてはいるが、少年と少女の姿は確認できる。
(子供が火遊び…ダメだよね)
時雨は、そんなことを思いつつ二人に近寄る。
「もっかい、試してみよーぜ」
「…もう十分だと思うけど」
「いやいや、もっかい。もっかいだけ」
「………」
もう一度、時雨に炎を飛ばしてみたいと言う少年。
少女は呆れつつも、勝手にすればと目を伏せた。
満面の笑みで、再度時雨に炎を飛ばそうと銃を構える少年。
ところが…。
「あれ?いねぇ」
先程までの位置に、時雨がいない。野良犬もいない。
少年と少女は、何処に行った?と辺りを見回した。
その時、背後から声が掛かる。
「こら、キミ達」
「!!」
ビクッと肩を揺らす少年と少女。
パッと振り返ると、そこには汚れた野良犬を抱きかかえる時雨が立っていた。
(いつの間に…)
少年と少女は、同じことを思い顔を見合わせる。
神妙な面持ちの少年と少女。
時雨は、二人の頭をパフパフしながら言った。
「ダメですよ。子供が火遊びしちゃぁ〜」
「「………」」
少年と少女は、気の抜けた炭酸のような時雨の言葉に、すっかり毒気を抜かれてしまう。


少年と少女。
二人の正体は、組織”INNOCENCE”のエージェント。
イノセンスは異界で有名な組織ゆえに、時雨も名前は知っている。
そんな有名組織のエージェントが、
火遊び…もとい、時雨を試していた理由。
それは、スカウト活動にあった。
「ふぅん、スカウトか。キミ達の組織って…そんなに人員不足だっけ?」
事情を聞いた上で、疑問を述べる時雨。
「まーね。最近、辞めてく奴が多くてさ」
ケラッと笑いながら言う少年。
時雨は、野良犬を撫でながら、もう一つ疑問を口にした。
「IO2と仲が悪いっていうのは、本当なの?」
これも、異界では有名な話だ。
活動内容が似ているが故に、IO2とイノセンスは商売敵。
誰が言い出したわけでもなく、自然と異界内で広まった噂だ。
時雨の疑問に、少年は少し不愉快そうな表情。
その表情からは、仲が悪いというのが本当なのだと読み取ることが出来るが、
少女が少年を押しのけて「そんなことないです」と言ったことで、
何か、深い事情がありそうだ、という読み取りに変わる。
時雨は野良犬の喉を撫でてやりながら呟くように言った。
「IO2ね、あそこは…面白いとこだよね。色んな意味でね〜」
時雨の言葉に過剰に反応する少年。
少年は時雨にズイッと顔を近づけて尋ねる。
「あんた、IO2と関わってんのか?」
少年は眉を寄せている。不機嫌そのものだ。
時雨は困り笑顔を浮かべつつも、嘘はつけないと判断し、ありのままを話す。
「雇い主になることもあれば、敵になることもあるよ。うーん…まぁ、微妙な関係、かなぁ?」
「…ふーん」
時雨を見据えたまま言う少年。
困り笑顔のままの時雨に、少年はフゥと溜息を吐いて、
「ま、いーや。過去のことだしな」
そう言いながら、ワシワシと頭を掻いた。
(ん?過去?)
少年の意味深な発言に、口にはせずとも首を傾げる時雨。
そんな時雨の腕をガッと掴んで、少年は言う。
「あんたは、今日からウチの一員。その辺、しっかりしてな」
「へ?」
「あいつらに協力するとか、極力避けてくれ。ウチが最優先」
「え?」
「じゃあ、本部に案内すっから。ほら、立てよ」
「え?いや、あの…」
スカウトに応じる、とは一言も言っていない。
それなのに、この強引な対応。
時雨は困惑しつつ、オドオドした表情を浮かべる。
そんな時雨に、少女が助言する。
「嫌なら嫌、って言ったほうがいいですよ」
嫌か嫌じゃないか。
そう問われると、嫌じゃない…に傾く。
(嫌ではないよね、うん)
時雨は自身に問いかけながら、ゆっくりと立ち上がる。
曖昧な頭の中で判断して、とりあえず立ち上がったのだが、
それが、彼の運命を大きく変えてしまう。
「よっしゃ、行くぞー」
少年は時雨の腕を引きながら、タッと駆け出す。
この時点で、スカウト拒否が不可能になったということに、時雨は気付いていない。
一連の言動から、時雨の人間性・性格を理解した少女は、
不安混じりの溜息を落としつつ、先を行く二人について行く。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

1564 / 五降臨・時雨 (ごこうりん・しぐれ) / ♂ / 25歳 / 殺し屋(?)

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。 はじめまして。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ。

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2008.02.22 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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