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■INNOCENCE / スベテの始まり -スカウト-■

藤森イズノ
【7405】【雨霧・ジン】【暗殺者/退魔師】
異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。
INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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スカウト活動真っ最中の少年と少女。
逸材を捕まえる為、今日も一生懸命。
というのも、スカウト活動開始から、もうすぐ一週間が経過する。
そろそろ見つけて連れて帰らないと、
彼等の上司である組織のトップ、マスターに叱られてしまう。
というわけで、彼等は微妙に焦っていた。
結構な人数に声をかけたものの、大半がシカトされたり、
即効で断られたりで、どうにもうまくいかない。
今日も一人、逸材を見つけたようだが、果たして成功するのか…。

実に五十人目にあたるスカウト対象となる人物。
その人物の名は、雨霧・ジン。
優れた戦闘能力を持つ、異界でも有名な人物だ。
ジンの仕事、魔物の討伐を観察していた少年と少女は、
彼の戦闘能力に惚れ込み、スカウトを決行することにした。
また断られてはヘコむし、いい加減に捕まえて帰りたい。
ここは慎重になるべき…だが、少年には慎重に、という概念がない。
思い立ったら吉日、即効で行動へ。わかりやすい直感型なのだ。
「じゃ、行ってくる!」
ジンに向かって、タッと駆け出す少年。
少女はフゥと溜息を落とす。嫌な予感がしているのだろう。
「おーい、おにーさんっ!」
ブンブンと手を振りながら大声で声をかける少年。
背後からの大声に、ジンはチラリと振り返るが、すぐに前を向き直した。
「ねぇねぇ、おにーさん。いい話があるんだけど、聞いてみない?」
ジンの隣に並び、顔を覗き込みながら言う少年。
ジンは”うるさいガキ”が大嫌いだ。
少年の言葉に耳を貸すことはない。
徹底的なシカト。
自分の存在に不安を覚えるほどのシカトっぷりに、
少々ヘコむ少年だが、このくらいでは諦めない。
少年は(聞いていない)ジンに、自身の組織の長所ばかりをペラペラと喋る。
マシンガンのように、耳に衝撃を与えてくる少年の言葉。
ジンはハァと溜息を落とすと、ピタリと足を止める。
「あっ!聞いてくれる?やったー!ウチはねー」
ジンが、ゆっくり話を聞いてくれると思った少年は、
嬉しそうに笑い、少し丁寧な説明を始めようとした。しかし…。
ジンが、フゥーッと煙草の煙を少年の顔面に吹き付けると、
少年は、ゴホッと一つ咳き込んだ後、パタリと倒れこんでしまった。
どうやら、ジンは煙草の煙を強力な催眠ガスに性質変換していたようだ。
無言のまま、スタスタと歩き帰路を急ぐジン。
スヤスヤと心地よさそうに眠る少年。
そんな少年に駆け寄りしゃがんで見やり、少女はハァ…と溜息を落とした。

翌日。
少年と少女は、懲りずにジンのスカウトに再チャレンジ。
とはいえ、ヤル気満々なのは少年だけで、
少女は、呆れ返っているのみ。
やめておいた方がいい、と何度言っても聞きやしない。
どうやら、昨日あっさりと返り討ちにされたことが、よっぽど悔しいようだ。
「見っけ」
ニッと笑う少年。
少年の視線の先は、定食屋。
異界で有名な定食屋で、今日も大繁盛している。
ジンは、そこで昼食をとっていた。
彼が今日食したのは、秋刀魚定食。
まぁ、そんなことは、どうでもいいか。
「ふぅ」
定食屋から出て、満足そうに息を漏らすジン。
外はシトシトと雨が降っていた。
生憎、傘は持っていない。
少々濡れるが、走って帰れば、自宅までは、ほんの数分。
ジンはタッと駆け出した。と、その時。
ボッ―
ジンの目の前を炎が横切る。
「………」
炎の飛んできた方向を見やると、そこには昨日の少年。
ジンは大きな溜息を落としつつ、ツカツカと少年に歩み寄った。
「ぅ、待った待った待った!話!話を聞いて欲しいんだよー!」
近づいてくるジンに少しワタワタしつつ言う少年。
「話を聞いてもらうために、貴様は攻撃するのか」
ジンの、ごもっともな意見。
話を聞いてもらいたいのなら、丁重にいくべきだ。
それなのに、不意打ち。ジンが怒るのも無理はない。
確かに、と少女も腕を組んでウンウンと頷いている。
ジリジリと近づいてくるジンに焦り、
少年は何度も引き金を引いて炎を飛ばす。
少年の持つ銃は、少し変わっていて、魔力が深く関わる代物のようだ。
飛んでくる炎に、ジンはフッと息を吹きかける。
すると、炎は鎮火してしまい、跡形もなく消える。
己の息に、鎮火の性質を持たせたようだ。
「クソガキが…いい加減にしろよ…」
ボソリと呟きつつ、ジンは大きな水溜りをパシャリと踏み、
一気に少年へと接近。
「や、やべっ…」
慌てて逃げようとする少年だったが、ジンがそれを許すわけがない。
ヒュッと放つ蹴り。少年は、それを腕で受け止めると、
痺れるような痛みに顔を歪めた。
ジンの怒りが、これで治まるわけもなく、
以降、目で追うのが困難なほどの接近戦が繰り広げられる。
流れるようなジンの一連の動き。
(うん。すごい)
傍観しているだけの少女は、ジンの身体能力に感心している。
次々と繰り出される攻撃を受け止めるのに必死な少年。
「ち、ちょっと待った。ねぇ、ちょっ…」
休戦を願う少年だったが、
ジンは少年の首根っこを掴み、ブンッと投げ飛ばす。
バシャッ―
水溜りにズシャッと尻餅をつく少年。
「あー!もー!」
イラつきながら立ち上がろうとするが。
「…あれ?」
立ち上がれない。お尻が、ピッタリと水溜りにくっついているのだ。
「ちょ、何これ。えぇぇー?」
両手足をパタパタさせて、もがく少年。
その姿は、何というか…あの有名な害虫駆除の某アイテムを思わせる。
もがく少年に歩み寄り、ジンは少年を見下ろして訪ねる。
「さて。何のつもりか、聞かせてもらおうか」




「ふぅん…。何だ。仕事の話だったのか」
少年と少女(主に少女)から事情を聞いたジンは、呆れて肩を竦めた。
話によると、彼等はINNOCENCEという組織のエージェントで、
新エージェントを探してスカウト活動をしているそうだ。
INNOCENCEは、近頃やたらと あちこちで名前を聞く組織。
あのIO2のライバル組織だという噂もある。
詳しくは理解らないが、おそらく、それなりに儲かるだろう。
「仕事を回してくれるってんなら、歓迎だ」
目を伏せつつ言うジン。少年は嬉しそうに返す。
「だろ!よっしゃ!そんじゃー…」
「ただし」
「ん?」
「他の仕事も今までどおりやる。それを禁じるのなら、お断りだ」
「あぁ、それは大丈夫。みんな、そーだしね」
「そうか。なら問題ない」
パチンと指を弾くジン。
すると、水溜りに張り付いていた少年の お尻がようやく解き放たれる。
立ち上がりパンパンとお尻を叩いて、少年はジンの腕を掴み言った。
「じゃ!俺達のアジトっつか本部へ御案内〜!」
ジンはムッと眉を寄せて少年の手をパシンと払うと、
溜息混じりに「さっさと連れて行け」と呟くように言った。
INNOCENCEのアジト・本部。
そこへ向かう最中、少年はジンに色々なことを尋ねた。
名前は勿論、年齢や、今の職業、果てには好みの女性のタイプまで。
一人で騒々しい少年に、ジンは終始ゲンナリ。
そんな二人の様子を見つつ、少女は不安を抱いた。
(大丈夫かな…)

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7405 / 雨霧・ジン (あまぎり・じん) / ♂ / 25歳 / 暗殺者・退魔師

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。 はじめまして。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ。

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2008.02.23 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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