■INNOCENCE / 白亜の館■
藤森イズノ |
【7416】【柳・宗真】【退魔師・ドールマスター・人形師】 |
何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。
海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。
廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。
彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。
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INNOCENCE 白亜の館
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OPENING
何とも満足そうな笑みを浮かべる海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、本部へと連れて行く。
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「あちらが、本部になります」
少女が示す方向を見やると、そこには白亜の館。
暗い森の中で、より一層白く見える…美しい館だ。
館の周りをコウモリが飛び交っているが、
それさえも美しいと思わせる。不思議な館。
「一つ、聞き忘れてたことがあるんですが」
館を見やりつつ、ポツリと呟く宗真。
少女は首を傾げて返した。
「何でしょうか?」
「あなた達の名前…」
宗真の言葉にハッとし、少女は慌てて名乗る。
「す、すみません。梨乃です。それから…」
チラリと後ろを見やる少女。
ロボットダンスをしながら、遅れて少年がやって来た。遅い。
「………」
息を切らしながら、目で訴える少年。
宗真はクックッと肩を揺らして笑い、パチンと指を弾いて魔糸を解いた。
解放されると同時に、少年はクタリとその場にしゃがみ込む。
「こっちが…海斗です」
クタクタの少年を見てクスクス笑いながら言う少女。
「梨乃さんに、海斗…さんですね。僕は、宗真です。よろしく…。じゃあ、中へ急ぎましょうか」
スタスタと扉へ向かう宗真。少女も、後を追う。
「ち、ちょっと…休ませて…」
館は内装も真っ白だ。壁も、床も何もかもが真っ白。
同じところを歩いているかのような感覚に、軽く眩暈を覚える。
海斗と梨乃は、館内をグルリと回って宗真に案内をしていく。
「一階は…食堂と書庫、それとマスタールームがあります」
「へぇ。食堂っていうのは、有料ですか?」
「そうですね。でも自分でキッチンを使って料理することもできますよ」
「なるほど。それは便利ですね」
ふむふむと頷く宗真。そこへ、海斗がズイッと身を乗り出して言う。
「冷蔵庫には鍵がついてるんだぞ」
「…鍵?」
「そーそー。何でかわかるか?」
「…キミが摘み食いするからでしょうね」
「なっ。何でわかったっ?」
「…梨乃さん、二階へ行きましょう」
「あ、はい」
宗真はカンで言ったのだが…それは当たっていた。
本部一階、食堂にある巨大冷蔵庫には鍵がついている。
海斗が摘み食いを繰り返す為、最近、鍵がつけられたのだ。
鍵をつけてくれとマスターに御願いしたのは、梨乃らしい。
彼女は料理が得意で、手が空いた時は暇つぶしがてらキッチンに立つことが多い。
海斗は、鍵をつけるなんて酷いと思わないか?と宗真に言いたかったのだろうが、
ビシッと言い当てられては、返す言葉がない。
同意を求めても無駄なことは、明らかだ。
「二階は…お風呂とジム、それと購買なんかがあります」
「お風呂は個室ですか?」
「いえ。共有です。大きな浴場ですよ」
「へぇ。それは良いですね」
ふむふむと頷く宗真。そこへ、またも海斗がズイッと身を乗り出して言う。
「裸の付き合いが出来るってイイよな!」
「…まぁ、そうですね」
「今晩一緒に入ろうぜ。背中流してやるぞー」
「遠慮します。梨乃さん、三階へ行きましょう」
「あ、はい」
サラリと断られた。それはもう自然に、サラリと。
人懐っこく誰にでも気さくに話しかけて、
すぐに友達になってしまう海斗だが、今回ばかりは苦戦しそうだ。
ちょっとはヘコんでいるかと思いきや…。
「宗真ぁー!三階からは、俺が案内するっ!」
ダダダダッと駆け寄る海斗。元気いっぱいだ。
ところが宗真は、クルリと振り返って、
「あ、もう聞きましたよ。三階から五階は個室だそうですね」
そう言って、ニコリと海斗へ微笑みかける。
「………」
む〜っと頬を膨らませる海斗。何をそんなにムキになっているのやら。
宗真に構ってもらえないことが、よっぽど悔しいのか。
けれど何度適当にあしらわれても、海斗はめげない。
「こっち!宗真の部屋は、こっちだぞー」
自ら先導し、宗真に用意された個室へと案内していく。
何というか、雑草みたいな奴だ。踏んでも踏んでも…。
宗真と梨乃は顔を見合わせてクスクスと笑い、海斗の後をついて行く。
三階から五階までは、エージェント達の個室。
不要な者は、そう伝えることで個室登録リストから抹消されるが、
与えられた個室を不要だと言うのは、勿体無い為、
そのようなエージェントは、あまり存在していない。
外にきちんとした自宅がある者でも、個室は登録したままというケースがほとんどだ。
住まいとして利用しなくても、倉庫として使ったり、
任務の際に仮宿として使ったり…それぞれ上手く利用している。
持っていて邪魔になるということは、一切ないのだ。
さて。宗真に与えられた部屋は…五階の隅。
まだ一度も使われたことがない個室らしく、とても綺麗。
部屋には、生活に必要なものが一通り揃っている。不便はなさそうだ。
「いいですね」
グルリと部屋を見回し、満足そうな表情を浮かべる宗真。
隅にある緊急任務用の固定電話や、
ワンタッチで任務がズラリと表示されるリクエストボードなど、
部屋にある重要な設備について、細かく正確に伝えていく梨乃。
説明の途中で海斗が余計な補足をしたが、
どうでもいいことばかりで、宗真は何度も溜息を落とした。
一通り、館内の説明を受けた宗真は、マスタールームへ。
マスターとの面会で、所属に関する手続きは終了となる。
「んじゃ、いってらー。失礼なことするなよ」
ふふふと笑いつつ言う海斗。梨乃は海斗を小突きつつ言った。
「あんたじゃないんだから」
確かに…そう思いつつ苦笑し、宗真はマスタールームの中へ。
マスタールームは、とてもシンプルな部屋で、
中央部に紋章のようなものが刻まれており、ソファが一つ。
それ以外には、何もない…真っ白な空間だった。
ソファには灰色のローブを纏った老人が座っている。
扉が閉まる音と同時に老人はゆっくりと顔を上げ、じっと宗真を見やる。
離れた位置にいるというのに、何という威圧感か。
宗真は苦笑しつつペコリと頭を下げて、挨拶をした。
「どうも。はじめまして。柳・宗真と申します」
ハッキリと聞きやすく、それでいて柔らかい口調で言う宗真。
礼儀正しい宗真に、老人は好印象を抱いたようだ。
「おぬし…立派な能力を持っているのぅ。まだ若いのに、完成されとる」
宗真を見ながら、嬉しそうに微笑んで言う老人。
離れた位置から見られているのに、すぐ近くにいるような不思議な感覚に、
違和感を覚えつつも宗真は老人に尋ねる。
「あなたが、マスター…ですか?」
「あぁ、そうじゃよ。一応な」
「一応…ですか」
「マスターなんてものはな、ただの飾りじゃ。主役はおぬしらじゃよ」
「はぁ…。あの、一つ 聞いても良いですか?」
「何じゃ?」
「あなたが、この組織を立ち上げた理由について…」
「ふぁっふぁっふぁっ。忘れたのぅ、そんな昔のことは」
「昔…?」
「はて?何じゃろぅなぁ?」
「………」
組織の核に触れる質問には、断じて答えない。
老人の態度から、それが伺える。
会って聞いて、すぐに理解できるとは思っていなかったが、
やはりというか何というか、この組織は深そうだ。色んな意味で。
思い通りの展開に思わず嬉しくなり、クスクスと笑う宗真。
宗真につられて微笑みつつ、老人…マスターは、
左手をスッと上げ、人差し指でクルリと円を描く。
すると、老人の膝にポトリと不思議な形の銃が落ちた。
海斗が持っていた銃と、同じものだ。
マスターは、銃を宗真へと投げやり、こう告げる。
「魔銃じゃ。支給品じゃから、大切に扱うようにな」
「えぇと…使い方は」
銃を見やりながら宗真が尋ねると、
マスターは目を伏せて、ゆっくりと返す。
「まずは、宿らせたい力をイメージするんじゃ」
「力…というのは、属性的なものですか」
「そうじゃな。始めは、好きなものを宿すと良いじゃろう」
「好きなもの…うーん」
「まぁ、ゆっくり考えなさい。詳しい使い方は、海斗や梨乃に聞いとくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
支給品である魔銃を受け取り、マスターとの面会は終了。
マスタールームを出るまで、宗真は幾つも深い質問を飛ばしたが、
その全てが、見事にはぐらかされた。実に興味深い。
一礼し、マスタールームを出る時、宗真は口元に淡い笑みを浮かべていた。
「おっ。おかえりー。どーだった?」
「魔銃、受け取ったんですね」
マスタールームから出てきた宗真に駆け寄ってくる海斗と梨乃。
これから宗真は、INNOCENCEエージェントとして、
あらゆる経験をし、それと同時に成長していくことだろう。
困難な任務に就くこともあるだろうし、逆に退屈な日もある。
海斗の相手は疲れそうだが、弄って遊ぶには申し分ない。
梨乃は気が合いそうだし、マスターも奥が深い。
他にも、所属しているエージェントは数え切れないほどいる。
彼等と接触し、共に任務に就くこともあるだろう。
決して楽しいことばかりではないが、
ここで過ごし重ねる時間は、かけがえのない貴重な経験となるはず。
彼の口元に浮かぶ笑みは、先々への期待の表れだ。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度さまです^^
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
※アイテム「魔銃」を贈呈しました。
魔銃に宿らせる属性については、以降のプレイングで教えて下さいませ。
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2008.03.05 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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