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■INNOCENCE / ラボに住まうエージェント■

藤森イズノ
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】
INNOCENCEのアジト、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける。

今日も藤二はラボで一人。
読書をしながら、ゆったりと過ごしている。
優雅な空間へ、突然の来客。
「藤二〜〜〜〜〜!」
騒々しい来訪者。それは、無論…海斗だ。
藤二は読んでいた本をパタンと閉じて、優しい笑顔を浮かべた。
INNOCENCE 初任務

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OPENING

「うへぇ。ガルカスの討伐かぁ…キツいんじゃねぇか?」
渡された依頼書を見つつ、頭を掻いて笑う海斗。
梨乃も依頼書を覗き込み、神妙な面持ちだ。
不安がる二人を見つつ、マスターはファッファと笑い言う。
「何の。このくらい余裕じゃろうて」
「そーかなぁ」
「寧ろ、余裕じゃないと困るわい」
「んー。まぁ、そーだけどな」
笑いながら依頼書を懐にしまうと、海斗は時計を確認。
そして梨乃と顔を見合わせ頷き、マスタールームを後にする。

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INNOCENCEに所属して、初任務となる今日。
その内容は、ガルカスという魔物の討伐。
時刻は二十三時四十分。
ガルカスは夜行性で、深夜零時にならないと洞窟から出てこない。
零時前に洞窟内へ進入し、中で討伐することも可能だが、
せっかく向こうから出てきてくれるのだから、と、
一行は深夜零時まで、洞窟前で待機している。
あと二十分。短いようで長い時間。退屈凌ぎにと、
凍夜は、支給された武器、魔銃を腰元から抜いた。
「お。撃つの?なになに、何宿したの?属性」
魔銃を構える凍夜を見て、海斗は楽しそうに尋ねた。
すると凍夜は、無表情のまま。何も言わずに発砲。
ブゥン…―
銃口から出現したのは…黒に少し紫が混じった球体。
球体はフワリフワリと、その場に浮かんでいる。
「お、すげー。かっこいいじゃん」
ケラケラと笑いつつ球体に近づき、
ツンと指で突いてみる海斗。すると。
パァンッ―
「痛ぇっっっ!!!!??」
球体は物凄い音と共に、弾け飛んだ。
海斗の指からは、ドクドクと血が出ている。
かなり深く抉られたようだ。
けれど海斗は怒ったり焦ったりすることなく、
ポッと炎を出現させると、その炎で傷んだ指を覆った。
瞬時に塞がる傷口。単純一途で無鉄砲、
前線で活躍する海斗には縁がなさそうなものだが、
ある程度なら傷を癒す回復魔法も扱えるようだ。
「その殺傷力は、間違いなく闇属性ですね」
海斗の指に魔包帯を巻きながら言う梨乃。
凍夜は「へぇ、そうなのか」と他人事のように返した。
宿す属性を決めるのが面倒だったようで、
自然に属性を登録できないかと試しに撃ってみたらしい。
凍夜が行った方法は「オート」と呼ばれるもので、
きちんと存在する、属性を宿す一つの手段だ。
凍夜のように面倒がる者や、宿したい属性を決められない者が、
最終手段として選択することが多い方法で、
その時自分に最も適している属性が自動的に魔銃に宿る。
「オート…知ってたのかな」
「ううん。知らないと思うわ。話してないもの」
「マジかー。やっぱセンスいいな、あいつ」
オートは魔法の才能に加え、仕組みを理解した上でないと成功しない。
海斗と梨乃は、凍夜のセンスの良さを改めて実感せざるをえなかった。
「使い難いな…やっぱり」
魔獣を腰元に戻して呟く凍夜。
「えー!使おうぜー。絶対役にたつじゃん、それ」
凍夜の宿した闇属性の性質が気に入ったのか、
海斗は執拗に使おう使おうと勧めた。けれど凍夜は拒む。
どうにも、自分に銃は向いていないような気がして。


時計の針が深夜零時を示すと同時に、地響き。
ズーン、ズーンと洞窟から響いてくるのは、間違いなくガルカスの足音だ。
刻一刻と、足音は次第に大きくなっていく。
「………」
凍夜は目を伏せ、体内から血液を放出。
「うわぁ!何それっ!」
凍夜の体から放出される血液は生き物のように蠢き、
やがて、片手剣の形となって凍夜の手に収まる。
血液を武器へと変換させる、とても変わった能力だ。
「ブラッディソードじゃん!すっげー!かっけー!」
凍夜の能力を目の当たりにした海斗は大興奮。
ブラッディソード、というのは海斗が好きなRPG(ゲーム)に出てくる武器の名前で、
実際、凍夜の持っている血剣には、名前なんて存在しない。
海斗の騒々しさに溜息を落としつつ、洞窟入口を見やったとき。
凍夜とガルカスの視線がバチリと交わる。
「………」
フッと口元に笑みを浮かべ、ダンッと地を蹴り駆け出す凍夜。
ガルカスは向かってくる凍夜のみを見据えている。
互いに視線が交わった瞬間に、戦闘は開始されていたのだ。
「単独ぅ!?」
一人でガルカスに向かって行った凍夜に驚きを隠せない海斗。
海斗はすぐに加勢しようと駆け出すが、
梨乃は、海斗のパーカーの裾を掴んで、それを止めた。
「っとと…何だよ!加勢しねーとヤベェだろ!」
「大丈夫よ。見て」
梨乃は淡く微笑み、目で示して促した。
促されて見やると、そこには…。
軽い身のこなしで、踊るように。
優雅且つ残忍に、ザクザクとガルカスを斬り刻む凍夜がいた。
ドドドドッ―
バラバラになったガルカスの四肢が地に落ちる。
それと同時に凍夜は苦笑を浮かべ、ピッと剣を振って、
刃を染めていた魔物の汚らわしい血を払った。
少し間を置いて…ズズン、とガルカスの胴体部分が地に伏せる。
バラバラになりつつもガルカスの四肢は不気味に動いていたが、
暫くするとピクリとも動かなくなった。それはガルカスの、絶命を意味する。
あっさりと一人でガルカスを討伐してしまった凍夜。
張り合いと面白味に欠けるのか、凍夜は、いささか不満そうだ。
「すげー!さすがー!」
凍夜に駆け寄り、凄い凄いと褒め称える海斗と梨乃。
いつもなら、このまま、何事もなかったかのように自宅へ戻って終わりだが、
今日は違う。二人が一緒だから。いつもと違う任務後の雰囲気に、
まぁ、たまには…こんなのも悪くないかもしれないなどと思いつつ、
凍夜は血剣を解き、体内に戻そうとした。だが、その時。
グルルルルルォォォォーン……―
不気味な唸り声が、洞窟の奥から響いてきた。
「…まだいるのか」
チャッと再び血剣を構えて言う凍夜。
「みたいだな。どーする?」
ニヤリと笑って海斗が言うと、
凍夜は肩を竦めて「仕事だろ?」と小さく呟き、洞窟へと駆け出した。


洞窟に入るや否や、奥から続々とガルカスが湧いてくる。
最奥に巣窟があると考えて間違いない。
一行は襲い掛かってくるガルカスを倒しながら、ひたすら奥へと進んで行く。
海斗と梨乃が加勢しなくても、凍夜は一人で十分そうだ。
次々とガルカスを斬り裂いていく。
このまま何の問題もなく、最奥の巣窟を叩いて終わりだろう。
そう海斗と梨乃は確信していた。だがしかし、ハプニング発生。
凍夜が斬り裂いたはずのガルカスが一匹、
執念で這い上がって、追いかけてきたのだ。
「…!」
それに一番最初に気付いたのは最後尾にいた梨乃。
梨乃はザッと立ち止まって振り返り、銃を構える。
グォォォォーン―
背後から聞こえてくるガルカスの唸り声に、
先を行っていた凍夜と海斗がハッと後ろを振り返る。
視界に飛び込むのは、梨乃を喰らおうとしているガルカスの姿。
「やっべ…!!」
海斗は慌てて引き返し、梨乃を救おうとした。
だが、それよりも早く凍夜が駆け出す。
「…っ」
下唇を噛み締め、咄嗟に梨乃が片目を伏せた瞬間。
ガルカスの巨体が、スパンッと真っ二つに裂かれる。
目の前の光景に呆気に取られる梨乃の手を引き、
凍夜は再び、最奥を目指して駆け出す。
「あ、ありがとうございます」
「いや。仕留め損ねた俺が悪い」
感謝を述べる梨乃と、自分を戒める凍夜。
海斗は指笛を鳴らしながら大声で叫ぶ。
「か〜〜〜〜っこい〜〜〜〜〜!ヒュ〜〜!」
「…うるさい」
凍夜は眉を寄せた。

洞窟最奥は、やはりガルカスの巣窟と化しており、
数え切れぬほどのガルカスが揃って不気味な唸り声を上げていた。
だが、いくら束になろうとも、三人に敵うことはない。
凍夜と海斗と梨乃は、目にも留まらぬ速さで次々とガルカスを倒していく。
「…キリがないな」
そう言って凍夜は辺りを見回す。
そこらじゅうに散布されているガルカスの血。
洞窟内は、汚らわしい魔物の血の香りで満ちている。
(十分だな)
凍夜は一人頷き、海斗と梨乃に引き返すぞと告げた。
二人は首を傾げたが、自信に満ちた凍夜の表情に反するべきではないと悟り、
凍夜に従って、洞窟からの脱出を試みる。
洞窟は至ってシンプルだ。真っ直ぐ進むだけで入口へと戻れる。
だが、入口に戻ろうとする三人をガルカスが放っておくはずもない。
ガルカスの群れは、唸り声をあげながら三人を追ってくる。
巨体な為スピードはないが、後ろからの威圧感は凄まじいものだ。
凍夜は不愉快そうに舌打った。


洞窟から出てすぐ、凍夜は海斗と梨乃に下がっていろと告げ、
スッと右腕を洞窟入口に向けて伸ばした。
何をするつもりなのか、と梨乃は不安そうな表情。
海斗はワクワクしているのだろう、満面の笑みを浮かべている。
唸り声が次第に大きくなり、ガルカスの群れの先頭が一歩洞窟外へ出た時。
凍夜はパチンと指を弾いた。
ドォンッ―
「きゃあ!!」
「うぉっ」
轟音と大爆発。洞窟とガルカスは、木っ端微塵に砕け散った。
あたりにブワッと熱風と、焦げた血の匂いが漂う。
血液起爆。それも、凍夜の能力の一つだ。
凍夜は血剣を解き、体内に戻して一言呟いた。
「完了」
熱風の中、乱れる髪を押さえつつ、梨乃はクスクスと笑った。
「お見事ぉぉぉー!!」
海斗はピョンピョンと飛び跳ねながら、大喜びだ。

初任務、ガルカスの討伐を見事に果たした凍夜。
予想を遥かに上回る結果を叩き出した彼の存在が、
INNOCENCEで瞬時に噂になったことは、言うまでもない。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■


こんにちは! 毎度さまです。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです!

INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ!^^

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2008.03.09 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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