■INNOCENCE / 白亜の館■
藤森イズノ |
【7420】【猫目・アリス】【クラッカー+何でも屋+学生】 |
何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。
海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。
廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。
彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。
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INNOCENCE 白亜の館
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OPENING
何とも満足そうな笑みを浮かべる海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、本部へと連れて行く。
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少年に担がれたまま、器用にノートパソコンを操作するアリス。
カタカタとキーボードを打つ様は、随分と手馴れている。
「機械に強いんだな。あいつとウマが合いそーだ」
ケラケラと笑って言う少年。
”あいつ”とは誰のことなのか。
多少気になったが、アリスは敢えてツッこまずに操作を続ける。
ニュッとモニターから出現する猫。
ブブッブブッと揺れるそれは、パソコン内にあるデータだ。
(わ。可愛い…)
アリスを担いで勝手に走り出した少年を追いかける少女は、
出現した猫形データに、心の中で素直な感想を漏らす。
「一応連絡しとかねぇとな。居候だし」
少年の背中でブツブツと呟くアリス。
彼女はとある友人(本人いわく、ダチ)宅に居候しており、
何の連絡もなく帰りが遅くなると心配させてしまう為、
パソコンを介して友人に事情と状況を伝えた。
「これで良し…っと」
タンッとエンターキーを叩くアリス。
すると猫形のデータは煙と化し、シュゥッとパソコン内へ戻っていった。
と、丁度そのとき、少年がピタリと立ち止まる。
「とーーちゃくーーー」
アリスをトンと降ろして言う少年。
どうやら本部とやらに到着したらしい。
見上げれば、そこには白亜の館。
暗い森の中に建つ館は、美しいが何とも妖しい雰囲気だ。
館を見上げて、でっけぇなぁ…などと思うアリス。
ふと、少年はアリスの左腕を見やる。
包帯が巻かれたアリスの左腕が、ピクピクと蠢いているのだ。
震えているようにも見えるが、それよりも動いている、という表現がしっくりくる。
「…動いてる」
ポツリと少年が呟くと、アリスは自身の左腕を見やり思う。
(あぁ…じゃじゃ馬が好物を嗅ぎつけたか)
やたらと腕を気にする少年に、アリスは何も言わず、笑って誤魔化した。
「んで、一階奥がマスタールームなんだけど…」
館内を案内しつつアリスを、マスタールームへ連れて行く少年。
少女はことあるごとに少年を叱ったが、少年はまったく気にしていない様子で、
ニコニコ笑顔で館内案内を続けていた。その途中、少年は尋ねる。
「っていうかさ、キミ…名前なんて言うの?」
「…こっちが先に名乗るべきでしょ。こういう時は」
「あ。そっか。俺は海斗。こっちは梨乃な。はい、キミの名前は?」
ニコリと微笑みを向けて”名前”を尋ねてくる少年。
アリスはフードを更に深く被り、
「野良猫」
ただ一言、そう言ってマスタールームの扉に手をかけた。
名前を名乗ること。それは、アリスが嫌う行為の一つ。
もう一つ、アリスが嫌がるのはフードを取る事。
マスタールームへ入る際、失礼だからフードを取れと海斗に言われたが、頑なに拒んだ。
頑固なアリスの態度にムカムカした海斗は、むりくりフードを取ろうとしたが、
ギロリと物凄い目で睨まれた為、仕方ないな…と諦める。
アリスの”名前”と”顔”を知っている人物は、ごく僅かだ。
その二つを見聞きしたいのなら、アリスと親しい仲になるしかない。
その道のりは…長く険しいものになるだろうけれど。
館内と同様に、マスタールームもまた、真っ白な空間。
どこまでも続く白は、気を抜くと眩暈を覚えてしまう。
「マスター!連れてきたー。期待の新人っ」
アリスの背中をポンと押して言う海斗。
海斗の言葉に、空間中心でソファに座っている老人らしき人物が顔を上げた。
(何だ。何か…不気味なじぃさんだな)
老人と目が合った瞬間、何ともいえぬ感覚を覚えるアリス。
老人はジッとアリスを見つめると、杖でコツンと床を叩いて告げた。
「合格じゃ。見事な能力を持っておる」
満足そうに言う老人。この老人こそが、組織のトップ、マスターだ。
アリスは、くぁーっと欠伸をしてマスターに言う。
「あのさぁ、うち、ココに入る気ないんだよね」
「むぅ?そうなのか?心は躍っとるようじゃが?」
「………」
アリスは内心、館内を案内されるうちに、
所属してみるのも、ちょっと面白いかもしれないな…と思っていた。
お金に困ることはなくなるだろうし、
そうなれば、宅に居候させてくれている友人に少し恩返しも出来る。
所属している面々は個性的な奴ばかりのようだし、退屈しなさそうだ。
海斗のように、ちょっとウザい奴もいるだろうけれど…。
そんなアリスの心を即座に読んだマスター。アリスは口篭ってしまう。
「いーじゃん、いーじゃん。せっかくここまで来たんだしさー」
ペンペンとアリスの背中を叩いて執拗に加入を促す海斗。
「あんたが勝手に連れてきたんでしょ…」
梨乃がボソリと呟く。マスターは梨乃の言葉に溜息を落とした。
「おぬし…まぁた、勝手なことしとるのか」
「だってさ!このコ、絶対すげー戦力になるじゃん」
「…そうかもしれないけど」
「まぁ、おぬしの人選にミスがあったことはないがのぅ」
会話する三人を見やりつつ、アリスはムゥと眉を寄せる。
どうするべきか。ここで加入を了承したら、おそらく取り消すことは出来ないだろう。
何より海斗が、許してくれそうにない。
かといって、ここで了承することを拒むのも、どうだろう。
条件は良い。必要とすれば個室も与えてもらえるそうだし、
次々と仕事が入るらしいから、働くことに困ることもない。
そして何より、楽しそうだ。
色々と慣れるまでは大変かもしれないけれど、
左腕に寄生している”相棒”も、先程からワクワクしているようだし。
「さぁて、どうする?おぬし次第じゃが」
マスターが尋ねた。その表情は、何やら自信に満ちているように見える。
じぃさんの思うとおりに事を運ばせるのは、
何だかシャクだなぁ…と思うも、欲望というか好奇心には敵わない。
アリスは一言「いいよ」そうポツリと呟いた。
「よっしゃー!」
ガッツポーズをして喜ぶ海斗。
梨乃は申し訳なさそうな表情で不安そうにも見えるが、
それでも何だかんだで、やはり嬉しそうだ。
「うむ…では、改めて歓迎させてもらおうかの」
ニコリと優しく微笑み、マスターは海斗と梨乃に目配せで合図。
三人は互いを見やって頷くと、口を揃えてアリスに歓迎の言葉を放った。
「ようこそ、イノセンスへ!!」
三人は各々が得意とする魔法で花を作りアリスへ差し出す。
海斗からは紅い、炎の花を両手いっぱいに、どっさりと。
梨乃からは青い、水の花の首飾りを。
マスターからは七色に輝く、虹の花を一輪。
自分を包む花々にアリスは何だか、くすぐったくて…俯き密かに微笑んだ。
INNOCENCEエージェントとなったアリス。
この先、楽しいことは勿論、キツい経験もするだろう。
けれど彼女は悪戯猫・トリッカーキャット。
どんな苦難も、相棒とのコンビネーションと持ち前のテンションで、
軽々と、まさに猫のように…華麗に乗り越えていくに違いない。
INNOCENCEで過ごす時間が、一員として動く時間が、
彼女に、大いなる成長をもたらしますように。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
7420 / 猫目・アリス (ねこめ・ー) / ♀ / 13歳 / クラッカー+何でも屋+学生
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは!
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
アイテム・魔銃を贈呈しました。けれど、使わなくてもOKですので。
仕様する際に宿す魔法属性などは、以降のプレイングなどで教えて下さいませ^^
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2008.03.13 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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