コミュニティトップへ




■INNOCENCE / 初任務■

藤森イズノ
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】
「うへぇ。ガルカスの討伐かぁ…キツいんじゃねぇか?」
渡された依頼書を見つつ、頭を掻いて笑う海斗。
梨乃も依頼書を覗き込み、神妙な面持ちだ。
不安がる二人を見つつ、マスターはファッファと笑い言う。
「何の。このくらい余裕じゃろうて」
「そーかなぁ」
「寧ろ、余裕じゃないと困るわい」
「んー。まぁ、そーだけどな」
笑いながら依頼書を懐にしまうと、海斗は時計を確認。
そして梨乃と顔を見合わせ頷き、マスタールームを後にする。
INNOCENCE 属性変換

------------------------------------------------------

OPENING

本部の地下ラボ。
今日も藤二は、ラボでゆったりと自由気侭に過ごしている。
花に水をやったり、読書をしたり、書類整理をしたり。
気侭に時を過ごし、何だかんだで時刻は十一時。
そろそろ、お腹が空いてきたらしく、
藤二は、んーっと伸びをして、本部一階にある食堂へ赴こうとした。
そこへ、来客。
ラボへ来訪したエージェントに、藤二はニコリと微笑む。
「いらっしゃい」

------------------------------------------------------

スタスタとラボへ入ってくる凍夜。
食事に行こうかと席を立っていた藤二は、再びソファに腰を下ろし、
向かいのソファにどうぞ、と凍夜を促した。
ばふっ、と少し勢い良くソファに腰をしフゥ…と息を吐く凍夜。
藤二は、そんな凍夜を見てクスクス笑うと、
不思議な形のコーヒーメーカーでコポコポとコーヒーを湧かす。
「何か、あった?」
テーブルに頬杖をつき、ニコリと微笑んで問う藤二。
凍夜は、メーカー内で揺れるコーヒーを見つつ呟くように言った。
「あいつが…うるさくてな」
あいつ。凍夜の言う”あいつ”とは、海斗のことである。
人懐っこい海斗は、凍夜を見かけると必ず駆け寄ってくる。
勢いも凄まじいので、ほとんどタックルだ。
その度にウルサイ、と叱っているのだが一向に改善されない。
まぁ、そういう性格だから難しいだろうけれど…。
藤二はカップにコーヒーを注ぎ、それを凍夜の前に置いて言う。
「まぁ、確かに元気過ぎるかもね、ちょっと」
「元気なのは…いいんだ。いいことだと思う」
「オレもね、時々うっとおしくてさ…」
「そうなのか?」
「はは。嘘。可愛いな〜と思ってるよ」
「………」
「けどまぁ、凍夜とは…相性悪いかもしれないね」
クスクス笑う藤二。凍夜はクールな男だ。
気を許した人物の前では、砕けた感じになり よく笑うが、
そうでない人物の前では、至ってクール。
仲良くなるまで、というか相手を理解するまでに、凍夜は時間をかけるタイプだ。
そういうタイプにとって、海斗のような猪突猛進タイプは苦手な類。
嫌いなわけではないが、苦手。
相手をするのに、やたらと気疲れしてしまう。
凍夜はコーヒーを一口飲み、ついでに…と相談を持ちかける。
「これなんだが」
スッと腰元から魔銃を抜く凍夜。
「うん?魔銃…が、どうかしたの?」
「俺の宿した属性を、あいつがやたら気に入ってるんだ」
「あぁ、オートで宿したんだよね?闇属だっけ?」
「らしいな。…で、あいつが使え使えとウルサイ」
「ははははっ」
初任務の際、凍夜が『オート』と呼ばれる手段で魔銃に宿した属性。
それは殺傷能力に長ける『闇』属性だった。
闇属性は、属性の中でも特異で、
宿したいと思っても、そう易々と宿すことが出来ない属性。
生まれ持った才能や血筋などが関与しているらしいが、詳しいことは不明。
組織内でも闇属のエージェントは、数えるほどしかいない。
それゆえに海斗は大喜びというか大興奮で、
初任務の後も、凍夜に「撃って見せてー」と執拗にオネダリしてくる。
この先、様々な任務に関わる度に使ってーと言ってくるのは明らかだ。
凍夜は飛び道具はダガーだけで十分だと思っており、
銃は扱いが面倒なのと、根本的に自分に合っていないという点もあって、
この先も使うつもりは、あまりないという。
「説得してくれないか。俺には無理だ」
執拗にオネダリしてくる海斗を何とかしてくれ、と頼む凍夜。
藤二はコクコクとコーヒーを飲み「わかった、言っておくよ」と返した。
だが説得に海斗が応じるかは、わからない。…寧ろ、望みは薄いかもしれない。

コーヒーを飲みつつ様々な話で盛り上がる凍夜と藤二。
つい最近知り合ったばかりとは思えぬほど、二人の会話は弾む。
「で、どうだ?」
煙草に火をつけて尋ねる藤二。凍夜は首を傾げる。
「どうって…何がだ?」
「イノセンス」
「あぁ…そうだな…面白い組織だと思う」
「はは。まぁ、退屈はしないだろうね」
「あぁ。仕事にも事欠かないしな」
INNOCENCEに所属して、それなりの時間が経った。
この先を見据えれば、まだまだ…ほんの序盤といったところなのだろうが、
そんな中で、凍夜は組織に良い印象を抱いている。
尋ねられて即座に口にしたとおり、面白いと思う。
まだまだ不明確な部分は多く、謎が多い組織ではあるが、そこも、また魅力。
エージェント達も個性的な者ばかりで飽きない。
時々、気疲れはするが、組織というものに所属する以上、
人、仲間との接触は不可欠なものだ。その辺は割り切って考える。
組織には次々と依頼が入ってくる為、金や仕事に困ることもない。
必要なものは一通り揃っているし、
新たに必要だと思うものが出てきたら、要請すれば即座に用意してくれる。
これに不満を感じるなんてことは、ないだろう。
「魔銃は苦手、かぁ」
凍夜の魔銃を手に取り微笑む藤二。
「そうだな。…仕組みは面白いと思う」
「まぁ、人には向き不向きってのがあるからなぁ」
「あの方法…何て言ったっけかな、えーと…」
「オート?」
「それだ。それを用いれば、適正判断の材料にもなるしな」
「あ〜なるほど。そういう考え方も出来るね」
魔銃に関して、凍夜は食いつく素振りを見せない。
組織と同様に面白いものだとは思うが、多用する気はない。
ごく稀に、どうしても使わねばならないときくらいにしか、
凍夜は魔銃を抜かないだろう。この先も、ずっと。
藤二はコーヒーを一気に飲み干し、
魔銃を凍夜に返しつつニコリと満面の笑みを浮かべる。
「…何だ?」
屈託のない藤二の笑顔に顔をしかめる凍夜。
すると藤二は、ズイッと身を乗り出して尋ねた。
「凍夜、好きなコは…いるのか?」
「…ん。……まぁ……な」
目を逸らし、躊躇いがちに返す凍夜を見て、
藤二は更に身を乗り出して突っ込む。
「へぇ。どんなコ?可愛いのか?」
「…いや、まぁ。…お前も知ってるよ」
「マジで?マジで?」
「………(あぁ、失敗した)」
凍夜がポロリと漏らした言葉に藤二は大反応。
こうなってしまっては、言い逃れは不可能なわけで。
凍夜は溜息混じりに「梨乃が少し…気になるような感じ」だと告げた。
それを聞いて藤二は、ふふふ…と含み笑い。
「何だよ。気持ち悪ぃな…」
フィッと顔を逸らす凍夜。
藤二は「そうか、そうか。なるほどねぇ〜〜」と茶化すように何度も言う。
言わなきゃ良かった、と凍夜は心から悔やむ。
「何つぅか…ほんと、少し気になるだけだからな」
コーヒーを飲み干してポツリと言う凍夜。
余計な真似はしてくれるな、という意思表示なのだが、藤二はニヤリと笑う。
「いいねぇ、若いねぇ。梨乃も、こないだ…っと」
何かを言いかけて、アッと気付き口を押さえる藤二。
ワザとらしくも見える、その藤二の一連の行動に凍夜は僅かに首を傾げた。
(…何だよ)
そりゃあ、気になる。当然だ。

盛り上がり続けた会話が ようやく落ち着き、
藤二は、ん〜〜っと伸びをして微笑み、凍夜を食事に誘う。
本部一階にある食堂。凍夜は初めて利用する。
食券の買い方や、調理担当のオバさんに「可愛いね」と言うとオマケしてもらえることなど、
様々なことを藤二から教わり、凍夜は すんなりと仕組みを理解。
藤二おすすめのメニュー『カポナータ』を口に運ぶ凍夜。
何故だろう。それは、どこか懐かしい味がした。
賑やかな食堂で向かい合い食事する二人。
藤二が『恋愛』について、あれこれ詮索したことは、言うまでもない。

------------------------------------------------------


■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです (^ー^* )
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

-----------------------------------------------------
2008.03.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------