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■INNOCENCE / 属性変換■

藤森イズノ
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】
本部の地下ラボ。
今日も藤二は、ラボでゆったりと自由気侭に過ごしている。
花に水をやったり、読書をしたり、書類整理をしたり。
気侭に時を過ごし、何だかんだで時刻は十一時。
そろそろ、お腹が空いてきたらしく、
藤二は、んーっと伸びをして、アジトにある食堂へ赴こうとした。
そこへ、来客。
魔銃を手にして来訪したエージェントに、藤二はニコリと微笑んだ。
「いらっしゃい」
INNOCENCE 梨乃の手料理

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OPENING

フラリと立ち寄ったINNOCENCE本部。
とりあえず依頼板でも確認してみようかと、自室へ向かう。
その途中。
大きな紙袋を抱えて歩く梨乃を見かける。
紙袋には、野菜や肉、果実などあらゆる食材が入っているようだ。
梨乃の足取りは、フラフラしている。重いのだろう。
「っとと…」
バランスを崩す梨乃。
傾いた紙袋から、オレンジが一つ零れ落ちる。
コロコロと、足元へ転がってきたオレンジ。
それを拾い上げると、梨乃はパタパタと駆け寄って言った。
「すみません。ありがとうございます」
拾い上げたオレンジを渡すと、
梨乃はペコリと頭を下げ、ジッとこちらを見やった。
「…?」
何だろうと首を傾げると、
「お腹、空いてませんか?」
梨乃は、ニコリと微笑んで言った。

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(腹…は、そうだな…そう言われてみれば)
ニッコリと微笑む梨乃に、凍夜は少し間を置いて、
「空いてる…な。うん」
そう返した。
梨乃は、これから夕食を作るという。
食堂があるのに、わざわざ自分で作るのか?と尋ねると、
梨乃は「料理が好きなんです」と言って微笑んだ。
梨乃が料理を好むことは組織全員が知りえている事。
その腕前も確かなもので、エージェント達から高い評価を受けている。
海斗に至っては、何か作ってーと頻繁に強請っている始末だ。
けれど、根っからの料理好きである梨乃は、嫌な顔一つせずに応じている。
大して気にしていなかったが、
いざ お腹空いてますか?と聞かれて空腹だと言うことに気付いた凍夜。
梨乃の「ご馳走します?」に、凍夜はコクリと頷いた。

食堂の隣には、いつでも自由に使えるキッチンルームがある。
キッチンルームには巨大な冷蔵庫がいくつもあり、
中には各エージェントが買ってきた各々の好物が保管されている。
きちんと名前を書いておかないと海斗に食われてしまうので、
皆、きっちりと名前を記している。何だか微笑ましい光景だ。
だが、最近は名前を書いていても食われることがあるらしい。
被害を受けたエージェント達が冷蔵庫に鍵をつけろ、と要請している…とのこと。
キッチンルームには大きな黒いテーブルがある。
凍夜は椅子に座りテーブルに頬杖をついて、
キッチンで支度をしている梨乃を見やった。
何とも楽しそう、嬉しそうな表情。
(本当に好きなんだな)
梨乃の表情を見てそう思い、凍夜は僅かに微笑む。
「うーん…」
エプロンを着けたものの、梨乃は食材を前に腕を組んで悩んだ。
買ってきた食材は様々。冷蔵庫に入っているのと合わせれば、
とりあえず一通り…何でも作れそうだ。
けれど、何でも作れるという状態が逆に梨乃を悩ませる。
むむぅ…としばらく悩んだ末、梨乃は凍夜に委ねることを決意。
「凍夜さん」
「ん?」
「好きな料理っていうか、食べ物っていうか…何かありますか?」
好物は何か?と問う梨乃。問われて凍夜は考える。
だが、パッと何かが浮かんでくるわけでもない。
(そういえば、気にしたことなかったな…好物なんて。好物か…うーん)
考えても考えても、特にこれといったものが浮かんでこない。
凍夜は考えることを止めると、梨乃に「任せる」と告げた。
「パスタはお好きですか?」
「あぁ」
「わかりました。じゃあ早速…あ、苦手な食べ物とかないですか?」
「特に…ないな」
「わかりました。ちょっと待って下さいね」
手際良く調理を進めていく梨乃。
想像していたよりもずっと慣れた梨乃の手つきに、
凍夜は「へぇ…」と小さな声で呟いた。
キッチンルームは利用者が少ない。
現在、凍夜と梨乃は二人っきり。
静かな広い空間、キッチンから漂ってくる良い香り。
何だか、妙な感じだ。くすぐったいような…。

十八時。料理が完成。
満足いく出来なのだろう、梨乃は嬉しそうに笑みつつ、
凍夜の前にコトリと白い皿を置いた。
皿の上を鮮やかに彩っているパスタ。
ふんわりと漂う玉ねぎとニンニクの香りが食欲をそそる。
「お…。美味そうだな」
かなり完成度の高いパスタに凍夜は、ちょっとビックリ。
梨乃は白いフォークを差し出して言った。
「アマトリチャーナ、です」
「アマトリチャーナ…?」
「はい。ローマ北部にある小さな町の名前にちなんだ名前なんですよ」
「へぇ…何か、本格的だな」
「甘いんですけど、大丈夫ですか? 玉ねぎを多めに使っているので…」
「あぁ。…いただきます」
「ふふ。どうぞ」
(いい匂いだな、しかし)
香りを楽しみつつ、口に運ぶパスタ・アマトリチャーナ。
梨乃が言っていたとおり、口の中に甘みが広がる。
だが決して甘ったるいわけではない。ごく自然な甘みだ。
素朴で優しい味…かなり美味い。自然と食は進む。
言葉を発さずにモグモグとパスタを食べる凍夜を見て、
隣に座る梨乃はクスクスと笑い尋ねる。
「どうですか?」
「美味いよ」
「ふふ。良かったです」

食事をしつつ、談笑を交わす二人。
「凍夜さんは、お料理しないんですか?」
梨乃の問いに、凍夜は「最近はないな」と返した。
七年くらい前までは、しっかりと自炊していた。
そこそこ色々な料理に挑戦もしたし、腕は悪くないはず。
けれど仕事だ何だと忙しくなってからは自炊する暇がなく、もっぱら一人で外食。
たまにディテクターやレイレイと食事に出掛けることもあるが、
たいてい、というか殆どは凍夜の奢り。財布に痛い関係である。
パスタをペロリと平らげ「ごちそうさま」と両手を合わせる凍夜。
残さず、しかもこんなに早く食べてくれるなんて…と梨乃は微笑んだ。
食後、片付けを手伝う凍夜。
テキパキと動く凍夜を見て、
梨乃は「海斗とは大違いだ」と笑う。
「何だ…あいつ作らせるくせに片付け、手伝わないのか」
「そうなんですよ。ほんと…ジコチューですよね」
「言っても聞かないんじゃ言うだけ無駄だろうしな」
「ふふ。そうですね。諦めも肝心ですから」
食器を洗い終え、タオルで手を拭きつつ梨乃は冷蔵庫に貼られているカレンダーを見やった。
カレンダーには星やら月やらドクロやら、
毎週土曜日には、異なるマークが書かれている。
片付けを手伝いつつ、ずっとマークの意味を気にしていた凍夜は尋ねた。
「このマークは何なんだ?」
「あ、当番マークです」
「当番?」
「毎週土曜は食堂がお休みなので、自炊しないと駄目なんです」
「へぇ、そうなのか」
梨乃の話によると、食堂で料理を担当しているオバサンが、
毎週土曜日だけは…と休みを希望する為、土曜日は食堂が利用できず、
夕食は当番のエージェントが担当するという決まりになっているらしい。
当番は全員、平等に回ってくる。
料理が得意じゃないエージェントが当番のときは、
インスタント食品が振舞われる為、みんな夕食前からガッカリしているとのこと。
凍夜もINNOCENCEの一エージェントだから、
この当番は、当然いつか回ってくる。
自分の当番はいつなのかと尋ねると、
梨乃は、カレンダーに記されている、とある土曜日をピッと指差した。
そこには凍夜の似顔絵らしきものが描かれている。
この独特で繊細、且つ芸術的なタッチは、間違いない…海斗が描いたものだ。
「あいつには絵心ってものが全くないな」
クックッと笑いつつ言う凍夜。
梨乃は同感だとクスクス笑い、エプロンを外しつつ言った。
「楽しみです。凍夜さんの料理」
「大したもんは作れないけどな…」
そう返すものの、久しぶりの料理。
しかも、人に振舞うものとあって、凍夜は内心、気合が入っているようだ。
…当番の日、凍夜は何を作るのだろうか?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです!
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ!('-'*)ノ

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2008.03.09 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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