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■D・A・N 〜本屋にて〜■

遊月
【7416】【柳・宗真】【退魔師・ドールマスター・人形師】
 ふと、目に入った本屋に立ち寄ってみる。
 店内をうろうろと歩いていると、視界の端に見覚えのある姿が。
 一体どんな本を読むのだろう、と思って、そちらに足を向けた。
【D・A・N 〜本屋にて〜】



 柳宗真は、とある本屋に居た。
 特に目的があって入ったわけではないが、とりあえず一通り見て回ろうかと歩を進め――見覚えのある人物が居ることに気付いた。
(あれは確か……セイラさん、でしたか)
 一度だけ顔を合わせた少女。とはいえある意味で忘れられない出会いではあった。
 彼女が男に絡まれている現場に居合わせ、いきなり知り合いのように接され――つまりナンパから逃れるために利用され――その後彼女が全くの別人に変わる瞬間を目にしたのだ。忘れるほうがむしろ難しいだろう。
(しかし、意外な場所で意外な人を見つけてしまいましたね)
 彼女の外見や関わった印象からすると、あまり本とは縁がなさそうなのだが。ファッション雑誌などならともかく。
 などと考えているうちに、ふと思いついた。
(意趣返しくらいは、しても構いませんよね…?)
 何といっても、自分は体よく利用されたのだ。この機会に恨みを晴らすのもいいだろう。
(そんなたいそうな恨みじゃありませんけど。ごく僅かです、ほんの少ーーし根に持ってるだけです)
 誰にともなく言い訳して、宗真は真剣な表情で本を見ているセイラの元へと近づいた。
「こんにちは」
「? ……あ、貴方、この間の…」
 にっこりと笑みを浮かべつつ声をかければ、視線を合わせたセイラはすぐに宗真のことを思い出したようだった。
「先日は、どうも」
「……こちらこそ……」
 いささかの皮肉を交えて言えば、それを察したらしいセイラが苦々しげに応えた。
 それに胸のすく思いをしながら、宗真は尚も笑顔のまま言葉を続ける。
「まさかこんなところで会うなんて、奇遇ですね。あなたと本屋で顔を合わせる事になるとは…。でもあなた、本とか読まなさそうな雰囲気ですよね。というか、似合わないですよ?」
 にこやかに宗真が紡いだ言葉に、セイラは僅かにむっとしたようだった。注意深く見ていなければ分からないほどの変化だったが、ほんの一瞬眉が不愉快そうに歪んだ。
「悪かったわね。個人の嗜好に雰囲気は関係ないでしょう。似合わなかろうが私は本が好きなのよ。っていうか偶然会った、一度顔を合わせただけの人間にそんな嫌味言ってる暇があったら、さっさと自分の用事済ませて帰ったほうが建設的よ」
 淡々と、しかし含んだ棘は隠さずに告げられた内容に、思わず宗真は苦笑した。セイラの眉間に皺が寄る。
「……何よ」
「いえ、はっきり物を言う方だな、と思いまして」
「少なくとも貴方よりはそうかもしれないわね」
 その切り返しに、宗真はつい声を上げて笑ってしまった。怪訝そうな顔をするセイラ。
「そんな風に笑われるようなことを言った覚えはないのだけど」
「いえ、あんまりにもいい反応だったので。そこまで遠慮がないといっそ清々しいですね」
「……あ、そう」
「一応言っておきますけど、さっきのはささやかな意趣返しです。この間は問答無用で利用されてしまいましたからね」
 宗真の言葉に、セイラは心底呆れたような顔をした。
「……確かにこの間の私の行動は褒められたものじゃなかったけれど、――貴方思ったより性格悪いのね」
「善良に見える、という褒め言葉として受け取っておきます」
「…お好きにどうぞ」
 大きく溜息を吐いたセイラは、付き合ってられないとばかりに手にした本に視線を戻した。
 しかし、『似合わない』などと言ったものの、宗真としては彼女がどんな本を読んでいるのか純粋に気になる。
 なので率直に尋ねてみることにした。
「どんな本を読んでいるんですか?」
「…………」
 ちらり、と宗真を見たセイラが、無言で本の表紙を見せてくる。
「…雑学書、ですか」
「そうよ」
 彼女が読んでいたのは、いわゆる雑学書だった。他にも彼女の手には古典やら童話やら小説やら、あまつさえ辞典まであったりする。統一性はなさそうだ。
 意外と何でも読むタイプなのだろうかと考えつつ、何となく口を開いた。
「面白いですか?」
「まあまあかしら。もう少し文章にユーモアがあれば文句はないのだけど」
 何の気なしに投げた質問だったが、思ったよりまともに答えが返ってきた。
(よっぽど本、好きなんでしょうね……)
 なんだかとても意外な一面を見た気がする。
 こうして自分がすぐ近くに居て、しかも話しかけたりしても本からあまり目を離さないところからすると、活字中毒と呼んでも差し支えないタイプの本好きなのかもしれない。実情を知らないので推測でしかないが。
 いい意味で裏切られたな、と心中で呟く。そしてなんとなくそのまましばらく、真剣に本を黙読するセイラを眺めていた宗真だった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【7416/柳・宗真(やなぎ・そうま)/男性/20歳/退魔師/ドールマスター/人形師 】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして、柳さま。ライターの遊月と申します。
 「D・A・N 〜本屋にて〜」にご参加くださりありがとうございました。
 お届けが大変遅くなりまして申し訳ありませんでした…。

 セイラとの会話、いかがだったでしょうか。
 からかうってこんな感じでいいのかな…と不安になりつつ。じゃれあい?じゃれあいってどんな?みたいな…。
 柳さまの性格などがちょっと外れ気味だったりしないかと戦々恐々としています。
 あっさり会話風味ですが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 ご満足いただける作品に仕上がっているとよいのですが…。
 リテイクその他はご遠慮なく。
 それでは、本当にありがとうございました。