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■D・A・N 〜First〜■

遊月
【7469】【白妙・煌】【永遠の子供】
 自然と惹きつけられる、そんな存在だった。些か整いすぎとも言えるその顔もだけれど、雰囲気が。
 出会って、そして別れて。再び出会ったそのとき、目の前で姿が変わった。
 そんなことあるのか、と思うけれど、実際に起こったのだから仕方ない。
 そんな、初接触。
【D・A・N 〜First〜】




 白い髪、白い肌。その中にあって鮮やかな赤い瞳。
 身に纏う色に揃えたかのような、白いレインコートと赤い傘。
 夜闇に浮かぶかのような外見の子供の名は、白妙煌と言った。
「おなか、すいたなぁ……」
 ぽつり、と呟く。
(さっき、おいしそうなご飯食べたけど。でも、まだお腹空いてる……)
 眉尻を下げて考える。煌にとっての『食事』の対象は、人にすら及ぶ。つい先ほども、『おいしそう』なご飯を食べてきたばかりだ。
(そうだ、いつものコンビニでお菓子貰おう)
 『いつものコンビニ』で妙はよく賞味期限切れのお菓子を貰う。『いつもの』と言ってしまえるくらい頻繁にそこに行くものだから、その近くに『印』をつけてあったりする。
 己の影を通ってその『印』がある場所から出ようとした煌だったが、そこに出た瞬間何かにぶつかり、こけた。
 鈍い衝撃が身体を襲い、尻餅をつく。赤色の瞳が潤む。しかし、煌は零れそうになる涙を堪えた。
(いた……くないもん。なかないもん……)
 口を真一文字に結んで、懸命に自分に言い聞かせていると。
「子供?」
 声が、落ちてきた。
 潤む瞳を前に向ければ、そこには夜闇を体現したかのような人物。
「こんな夜更け――いや、もう夜明けに近い時間か――に子供が外にいるなど……親は何をしているんだ」
 不愉快そうに眉根が顰められるのに、煌はびくりと肩を震わせた。
「ご、ごめんなさい……」
 殆ど反射的に謝罪の言葉を零すと、目の前の人物――少々冷たい雰囲気を纏った女性は、慌てたように口を開いた。
「いや、今のはお前に言ったのではなく、……その、独り言のようなものだから謝らなくていい」
 わかったか?と確認する言葉とともに微妙にぎこちなく頭を撫でられる。煌はこくりと頷いた。
(このお姉さん、きれいだなぁ……かっこいいなぁ)
 なんだかテレビで見た『ごくどーのあねさん』みたい、と煌は思う。
「それで、親はどうしたんだ? はぐれたのか?」
 煌の顔を覗き込みながら問われる。煌は首を横に振った。
「ボク、ひとりだよ」
「ひとり?」
 怪訝そうに眉根を顰めた女性は、目を眇めるようにして煌を見た。
「…………ああ、なるほど」
 そして何かに納得したように頷いて、ほんの僅か、口端を緩めた。
「私の名は円だ。円と書いて『まどか』。お前の名は?」
「白妙煌、だよ。ねえ、お姉さんのこと円ちゃんって呼んでもいい?」
 尋ねれば、円は少しだけ目を見開いた。
「構わないが……久しくそう呼ばれたことはなかったから、どうも照れるな」
 照れ隠しなのだろうか、煌の頭を再び軽く撫でて、円は屈みこんでいた体勢から立ち上がった。 
「どこに行こうとしていたんだ?」
「コンビニでお菓子をもらいに行こうと思ってたの」
「貰いに?」
 軽く首を捻った円は、まあいいか、と呟いく。
「それなら、私も共に行こう。せっかくだから何か買ってやる。何がいい?」
 そうして2人でコンビニへと向かうこととなったのだった。

◆ ◇ ◆

 円にコンビニで買ってもらったお菓子を食べながら、煌はじっと円を見つめる。煌にお菓子を買い、自分には飲料水とおにぎりを購入した円は、財布の中身を確かめてそれをポケットに仕舞うと、やっと煌に視線を向けた。
 もくもくとお菓子を頬張る煌に、ぽつりと問う。
「おいしいか?」
「……ん」
 頷いた煌に円は満足げに少しだけ目尻を下げる。そして不意に東の空を仰いで、時間か、と呟いた。
 言葉の意味が読み取れず見上げる煌に、円はどこか陰のある表情を浮かべた。
「お別れの時間だ、ってことだ」
 朝陽が円を照らすと同時、それは起こった。
 円の輪郭が、揺らぐ。色彩が褪せて、薄れる。空気に溶ける。
 そして極限まで薄れたそれは、陽が完全に昇ると同時、再構築される。
 揺らいだ輪郭は、先程より硬いフォルムで、しかしはっきりと。
 褪せて薄れた色彩は、色を変え、鮮やかに。
 そして先ほどまで円が立っていたそこには――…見知らぬ男。
 朝陽に淡く透ける茶色の髪に、ダークブラウンの瞳。男性にしては細身だろう身体はしかし、貧弱な印象はなかった。
 彼は煌を認めるとにこりと笑い、それから煌に目線を合わせて膝をついた。
「びっくりさせたか? ごめんな」
 目を丸くしている煌の頭をよしよしと撫でるその手に我に返り、煌はキラキラとした眼差しで眼前の男を見た。
「すごーい! てれびにでてくる人みたいだった! ぴかーって出たら変身するの!」
 興奮する煌に男は一瞬虚をつかれたように目を丸めたが、すぐに破顔した。
「変身ヒーローものみたいだった、ってことか? そんな風に言われたのは初めてだな」
 ぐりぐりと煌の頭を撫で繰り回しながら、男は言葉を紡ぐ。
「俺はユギ。円の――まぁ幼馴染ってやつかな。今はちょっと色々厄介な事情で同じ身体を共有してっけど…。日が出てる間は俺、日が沈んでる間は円が表に出てくるって感じなワケ。まー、とにかく同じ身体だけど別人だってことだけわかってくれりゃいい」
 だいじょぶか?わかるか?とのユギの言葉に、煌は考える。
(円ちゃんとユギちゃんは違うひとだけど、おんなじ身体で、太陽が出たり沈んだりすると変身するってことだよね?)
 うん、大丈夫だ。ちゃんとわかる。
 自分に確認して、こくんと頷いた煌にユギはえらいえらいとまた頭を撫でた。
「うし。んじゃ俺はどっか休めそうなとこ探しに行くから、お前は家があるならちゃんとそこに帰れよー」
 そしてさっさと踵を返し、歩き出すユギ。ひらひらと背中越しに振られる手に、見えないことを承知で自分の手を振り返す。
(あ、名前しか教えてもらってない……)
 遠くなった背中を見ながら思う。
(また、会えるかな)
 会えるといいなぁ、と呟いて、煌もまた歩き出したのだった。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【7469/白妙・煌(しろたえ・きら)/女性/6歳/子供】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして、白妙さま。ライターの遊月です。
 「D・A・N 〜First〜」にご参加くださりありがとうございました。
 もう遅いとかそういうレベルじゃないほどお届けが遅くなってしまいまして申し訳ありませんでした…。

 専用NPC・円とユギ、如何でしたでしょうか。
 どちらもそこそこ子供好きらしく、結構友好的な感じです。あくまで『子供相手』としてですが。
 円は『極道の姐さん』というか、ただの堅苦しい口調のお姉さんという感じですね…。何気に面倒見が良いようです。
 ユギはまだまだ表面だけ、という感じです。さっさと去ってしまっていますし…。

 ご満足いただける作品に仕上がっているとよいのですが…。
 リテイクその他はご遠慮なく。
 それでは、本当にありがとうございました