■INNOCENCE / 囚われの姫君? (限定受注)■
藤森イズノ |
【7433】【白月・蓮】【退魔師】 |
巨大蜘蛛の魔物『フラスター』
その討伐と捕獲に赴いた梨乃と千華。
二人が本部を出たのは、午前十時頃。
そして、現在時刻は…午後八時。
フラスターは、さほど強敵という魔物ではない。
梨乃と千華が二人でかかれば、おそらく瞬殺だろう。
けれど、二人は一向に戻ってこない。
携帯の電源も落ちているようで、連絡がつかない。
何かあったのだろうか。
少し不安になりつつ、再び時計を見やったときだった。
「だいじょーぶだとは思うけどなー」
「遅すぎるよね」
海斗と藤二が寄ってくる。
二人も梨乃と千華が心配らしい。
…様子を見に行った方が、良さそうだ。
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INNOCENCE 囚われの姫君?
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OPENING
巨大蜘蛛の魔物『フラスター』
その討伐と捕獲に赴いた梨乃と千華。
二人が本部を出たのは、午前十時頃。
そして、現在時刻は…午後八時。
フラスターは、さほど強敵という魔物ではない。
梨乃と千華が二人でかかれば、おそらく瞬殺だろう。
けれど、二人は一向に戻ってこない。
携帯の電源も落ちているようで、連絡がつかない。
何かあったのだろうか。
少し不安になりつつ、再び時計を見やったときだった。
「だいじょーぶだとは思うけどなー」
「遅すぎるよね」
海斗と藤二が寄ってくる。
二人も梨乃と千華が心配らしい。
…様子を見に行った方が、良さそうだ。
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「様子、見に行こうか」
襟を整えつつ言う蓮。
海斗のいうとおり、そこまで心配する必要もないとは思うけれど。
さすがに遅すぎるしね。連絡もつかないみたいだし。
もしも、万が一。二人が危機にさらされているとするなら。
それを救う王子的な役が必要なわけだし。
そうくりゃあ、当然…俺が行かないと駄目でしょ。
そういうのって、俺の役目でしょ?
そういうポジション、美味しいしさ。
「海斗くんは…免許あるのかい?」
「原付だけー」
「ん。それじゃあ、藤二」
「はいよ」
「車、回して。帰りは四人になるわけだし…原付じゃキビシイからね」
「えー。俺、留守番ー?つまんねー!」
「たまには、家でおとなしくしてなよ」
「ちぇー…」
プゥと頬を膨らませて不満を露わにする海斗。
置いてけぼりにされることが悲しいようだ。
蓮は藤二が車を回してくるのを待つ間、
海斗に『ミッション』を授ける。
その内容は…終わったら連絡するから、
すぐにマスターに連絡して欲しいというもの。
地味なミッションだなーと、つまらなさそうに海斗は言ったが、
この件のシメ役、かなり重要なミッションだと蓮が言うと、
だよな、重要ミッションは俺が担当しねーとな!とノリノリに。
目立ちたがり屋な分、扱いやすい…蓮はクスクスと笑った。
本部、フロントエントランス前に黒いクラシックカーが停まる。
藤二の愛車『ミリー』である。故郷で伝承されている女神の名前を付けたらしい。
車はあちこち改造されていて、オシャレながらもクールな見栄えだ。
蓮は助手席に乗り込むと窓を開け、海斗に挨拶。
「じゃあ、行ってくるよ。ミッション、よろしくね」
「おー!任せとけー!」
車内にはカモミールの香りがフンワリと漂っていた。
彩りを加えるのは、ジャジーなミュージック。
不思議と魅力的な車内で、蓮はダッシュボードに、とあるものを見つける。
口紅やら香水のアトマイザーやらピアスやら…どれも女性ものだ。
蓮はクックッと笑って言った。
「…お盛んだねぇ」
「参るね。何かしら置いてくコがいてさ」
「そのうち刺されるんじゃない?」
「勘弁してよ」
ハンドルを切りつつ苦笑する藤二。
どうやら、ガールフレンドとドライブする際、
帰り際に彼女達が私物を置いていくらしい。
それは、存在証明。
自分は、藤二の彼女であるという自慢と釘刺しだ。
女特有の熾烈なバトルがダッシュボードで繰り広げられている…。
物々の数からして、相当な数のガールフレンドがいそうだ。
ほんとに…そのうち刺されるんじゃないだろうか。
まぁ、そうなっても自業自得だけどね。
談笑を交わしつつ、車は目的地へと到着。
異界、川の傍にある古びた洋館。
梨乃と千華は、ここにいるはずだ。
「雰囲気あるねぇ。いかにも、って感じだ」
「だね」
洋館は、あちこちにツタが巻きついており、不気味な雰囲気。
魔物が好き好んで生息しそうな場所である。
王子ということで、姑息な手は使わず。
堂々と玄関から入ろうと、蓮はスタスタと玄関へと向かう。
洋館を見上げつつ向かっている最中のことだった。
ズッ―
「!!うぉっ」
突然、蓮の体が地へと沈む。
落とし穴が仕掛けられていたらしい。なんて古典的な…。
蓮は咄嗟に藤二の腕を掴んだ。結果…。
「ちょ、おま…うぉぁぁぁ」
「あ〜〜…」
ドサァッ―
二人は、落とし穴に揃って落下。
幸いにも、穴は深くない。
余裕で登り戻ることができる。
蓮はヨジヨジと登り、地上に戻るとクスクス笑って言った。
「泥もしたたるイイ男…×2?」
「巻き添えくらったイイ男×1」
藤二は服についた泥を払いつつクックッと笑い返す。
あちこちに泥をつけつつ、館内を闊歩する二人。
こういう場所をねぐらにしている魔物は、大抵、最上階で生活している。
自分の強さやプライドを誇示する為だろう。
二人は最上階にある、一番大きな部屋を覗き込んだ。
うん、やはり大正解。
部屋には標的である魔物、フラスターが確認できた。
不気味な巨大蜘蛛の魔物だ。
虫、昆虫に耐性があっても気持ち悪いと思う。
フラスターは『ゲヒヒヒ』と気味悪く笑いつつ、愛でている。
糸で拘束した…梨乃と千華を。
(イイ趣味してるね。魔物のくせに)
現状を理解し蓮は苦笑した。
梨乃と千華は雁字搦めに拘束されている。
あれでは身動きが取れない。
ちょっと油断したのかな。
まぁ、フラスターは、さほど危険な魔物じゃないしね。
仕方ないといえば仕方ないけど。
彼女たちにしては、初歩的なミスだなぁ。
何にせよ、ムカつくのは確かだ。
ザックリと制裁させてもらうよ。
ドカッと扉を蹴り開けて部屋へと入る蓮と藤二。
「「お迎えにあがりましたよ、お姫様」」
二人は口を揃えて王子演出発言。
そんな二人に少し呆れつつも、
梨乃と千華はホッとした表情で二人を見やった。
「や。お姫様方、元気?でもないよね」
クスクスと笑い、腕を組む蓮。
突然部屋に侵入してきた二人に驚きつつも、
フラスターは不快を露わに『ギィギィ』と鳴いた。
通訳するなれば『何の用だ』とか、そんなところかな。
蓮は淡い笑みを浮かべ、フラスターに告げる。
「梨乃ちゃんで遊んでいいのは俺だけなんだよ」
『ギィ?ギィィッ?』
「って言っても、わかんないだろうね。言葉を理解できない低脳じゃあ…」
蓮はクスクスと笑いつつ組んでいた腕を解き、
スススッ…と腕を躍らせ、身構える。
蓮の体をつつむ蒼い光。
それは、自身に肉体強化を施した証だ。
「今日は毒舌だな」
クックッと笑いつつ、藤二も魔銃を抜き構える。
二人が敵意を向けた途端、フラスターも臨戦態勢に。
フラスターはガサガサと徘徊しつつ、糸をビュッと飛ばしてきた。
「隙だらけ」
糸をヒョイと避け、蓮は『抜き足』で一気にフラスターへと近付く。
肉体強化を施した蓮の動きは、目で追うのが困難なほど俊敏だ。
フラスターも俊敏な魔物ではあるが、まるで別格。
ドドッと藤二が発砲。
放たれた風は、フラスターの足を数本切り刻んだ。
足を失い、バランスの崩れるフラスター。
そこへ蓮が、とどめの一撃。
フワリと風に乗り舞い、操り『刃』と化した風で、フラスターを斬り裂く。
ザザザザザッ―
目にも留まらぬ連続斬撃。
スタン、と着地すると同時に、
フラスターは切り刻まれた紙のようにバラバラと散った。
無事に梨乃と千華を救出した蓮と藤二。
一向は藤二が運転する車で、本部へと向かっている。
「王子っぽかっただろ?」
「…少しだけね」
「少しかよ」
運転しつつ笑って言う藤二と、
そんな藤二にクスクス笑う、助手席の千華。
後部座席には梨乃と蓮。
大活躍した王子…蓮は、グッタリと背もたれに凭れている。
肉体強化の反動、リスク。
一時的に神がかりな身体能力を解放することができるものの、
この能力は、後々に凄まじい反動、副作用を伴う。
割れるような頭痛と、痺れるような筋肉痛。
それらに苛まれている蓮に、いつもの元気はない。
だがしかし、どんな状態でも蓮は蓮。
「梨乃ちゃん…王子様に膝枕してくれないかなぁ」
海斗への連絡(ミッションの)を済ませた後、
蓮は窓の外、流れる景色を見つつ哀愁漂わせて言った。
藤二はケラケラと笑い、梨乃に促す。
「梨乃。してあげなさい。王子様に膝枕」
「え…」
「そのくらい、してあげても良いんじゃないかしら?ふふ」
藤二と千華に笑われつつ促され、梨乃は少し躊躇うも…。
「ど、どうぞ」
自身の膝をポン、と叩いて捧げた。
コテン、と梨乃の膝に頭を乗せて満足そうに微笑む蓮。
本部に着くまでの一時間半。
梨乃の膝で、蓮はグッスリと深い眠りへと落ちた。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度様です、いらっしゃいませ('-'*)
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。
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2008.03.29 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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