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■INNOCENCE / 聖なる祭典 (限定受注)■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
聖なる祭典。
正式名称は『セント・ニルヴァ・フェスティバル』
イノセンスに所属する大半のエージェント達の故郷、
『聖なる島:ニルヴァナ』で毎年春に行われるお祭りである。
とある事情で、異界に本部を移してはいるものの、
故郷での伝統行事をないがしろにするわけにはいかない。
ということで…今年も本部では聖なる祭典が催される。
今年は新たに組織に加入したエージェントも多いことだし…。
例年よりも、賑やかに…鮮やかになるだろう。

「こ〜ら、サボってんじゃないぞ〜。海斗!」
「サボってねーし!真剣に作ってるし!」
「…うわぁ。お前ってさ、不器用だよね」
「うっせー」
本部では祭典準備が行われている。
海斗が作っているのは、本部のあちこちに飾る造花。
彼等の故郷、ニルヴァナにしか存在しない虹色の花『リモル』を模した造花だ。
だがしかし、藤二の言うように海斗は不器用。
造花でも何でもない、ただの ”くちゃっとした物体” である。
二人の他、エージェント達も皆、本部各所で祭典準備中。

聖なる祭典は、今宵二十時から。
美しい魔灯が彩る、聖なる祭典。
ロマンチックな一夜を…。
INNOCENCE 聖なる祭典

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OPENING

聖なる祭典。
正式名称は『セント・ニルヴァ・フェスティバル』
イノセンスに所属する大半のエージェント達の故郷、
『聖なる国:ニルヴァナ』で毎年春に行われるお祭りである。
とある事情で、異界に本部を移してはいるものの、
故郷での伝統行事をないがしろにするわけにはいかない。
ということで…今年も本部では聖なる祭典が催される。
今年は新たに組織に加入したエージェントも多いことだし…。
例年よりも、賑やかに…鮮やかになるだろう。

「こ〜ら、サボってんじゃないぞ〜。海斗!」
「サボってねーし!真剣に作ってるし!」
「…うわぁ。お前ってさ、不器用だよね」
「うっせー」
本部では祭典準備が行われている。
海斗が作っているのは、本部のあちこちに飾る造花。
彼等の故郷、ニルヴァナにしか存在しない虹色の花『リモル』を模した造花だ。
だがしかし、藤二の言うように海斗は不器用。
造花でも何でもない、ただの ”くちゃっとした物体” である。
二人の他、エージェント達も皆、本部各所で祭典準備中。

聖なる祭典は、今宵二十時から。
美しい魔灯が彩る、聖なる祭典。
ロマンチックな一夜を…。

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(おや。随分と賑やかだなぁ)
異界を離れて仕事をしていた為、久しぶりに本部を訪れた蓮。
足を運んだイノセンス本部では、何やら催しの準備が行われていた。
全エージェントが、こぞって準備中。
かなり大掛かりな催し物のようだ。
あちこちで準備しているエージェント達を見やりつつ本部を歩く蓮。
ふと、階段付近で、せっせと何かを作っている海斗が目に留まる。
よっぽど真剣なのだろう。蓮が、すぐ背後にいるのに気付いていない。
蓮は海斗の耳元で、わざと少し大声で尋ねた。
「それ、何?」
「うおぁー!?」
驚き肩を揺らして、作業中の物体を落としてしまう海斗。
海斗が、せっせと作っているのは…造花…造花?造花…?
とても花には見えないが、とりあえず造花のようだ。
「ビックリさせんなよ。せっかくイイ出来なのに。潰れちゃうだろ!」
「はは。ごめんごめん(くちゃくちゃだけどね、既に)」
「お前も手伝えよー」
「あぁ、ごめん。俺、そういう細かい作業ダメなんだよね」
「ばかー。俺だって嫌いだっつーんだよー」
「梨乃ちゃんは、どこ?」
「ん、梨乃?料理作ってんじゃねーか。多分ね」
「そっか。じゃ、頑張ってね」
「あっ、てめ、こらっ、蓮!手伝えってー!」
喚く海斗をスルーして、蓮はスタスタとキッチンへと向かう。

海斗の言ったとおり。梨乃は、キッチンで料理を作っていた。
充満している良い香り。ここにいると、お腹が空いてくる。
テーブルに並ぶ、たくさんの料理。
色とりどりで、見栄えも見事なものだ。
見慣れぬ料理もある。梨乃たちの故郷の料理だろうか。
見た感じでは、肉料理っぽいが…。
(どれどれ?)
ヒョイッと抓み食いする蓮。
口に運んだ見慣れぬ不思議な料理は、舌を蕩けさせるほど美味なものだった。
「うまっ」
思わず口にしてしまった素直な感想。
その声に反応し、鍋の様子を見ていた梨乃が振り返る。
「…?あっ!!蓮さんっ!ダメです、抓み食いしちゃ!」
「美味しいね、これ。何て料理?」
「ヴェナールっていう故郷の料理です…って、あっ!また!ダメです!」
「ワインとかに合うだろうね、これ。うん」
指をペロリと舐めて、ウンウンと頷く蓮。
梨乃はツカツカと蓮に歩み寄って叱る。
「ダメですー!はい、出てくださーい」
「うわっ、ちょっと、酷いなぁ」
「開宴まで我慢して下さいね」
「………」
ニコリと微笑む梨乃に、何も言い返せない蓮。
キッチンから追い出され、蓮は渋々、他所へと移動する。

(あ、いた)
千華はどこにいるのだろう、とウロウロしていた蓮。
千華は、自室で何やら裁縫をしていた。
黒いショールのようなものに、不思議な飾りを縫い付けている。
慣れた手付きだ。器用なんだなぁと思わされる。
「器用ですね」
部屋へ入り、千華の隣に腰を下ろして言う蓮。
千華はクスッと笑って言った。
「このくらいは、ね」
「………」
「………」
静寂。時計の針が時を刻む音と、呼吸の音が鮮明に聞こえる。
自分たち以外には誰もいない、二人だけの空間。
傍に、とっておき極上の美人。針と糸を操る白い指。
憂いを含んだ横顔、綺麗な髪、長い睫毛。
至近距離で見る千華に、思わず生唾を飲んでしまう蓮。
「千華さん。綺麗ですね…」
「ん?ふふ。ありがとう」
「貴女と部屋に二人っきり。おかしくなるな、なんて無理な話ですよ。ね」
淡く、それでいて妖しく微笑みつつ、スッと千華の首に触れる蓮。
本能のままに、魅了されるがままに。
蓮が取るのは、男として当然の行動。
だが。
プスリ−
「!!いっ…!?」
手に針を刺されてしまった蓮。
パッと首から手を離すと、千華は何事もなかったかのように微笑んで言った。
「駄目よ。邪魔しないでね」
「………」
言い返せない。何も言い返せない。
言い返したところで、惨めになりそうだ。
蓮はフゥ、と息を吐いて、仕方ない…と部屋を後にした。

どこへ行っても、追い出されてしまう。
それだけ、みんな真剣に準備をしているということなのだが。
こうも追い出されることが続くと、切ないし空しい。
何だかなぁ…と思いつつ、中庭にやってきた蓮。
中庭では、浩太が、あれこれ準備に忙しなく動いていた。
「やぁ、浩太くん。頑張ってるね」
「あ。蓮さん。こんばんは」
テーブルに皿を並べつつ言う浩太。
キッチリと並べられている皿からは、几帳面さが伺える。
蓮は適当な席に座り、働く浩太を見つつ言った。
「いいね。レイレイちゃんの好みだ」
「へっ?レイレイ…の?」
「うん。手伝いをしてくれる男性が理想だって言ってたよ」
「そ、そうなんですか?はは…」
照れくさそうに笑う浩太。もちろん、口から出任せだ。
蓮は、レイレイから、そんなことを聞かされていない。
すんなりと出任せ出来てしまい、それを疑わせない辺りは流石というか何というか。
心なしか嬉しそうに準備を続ける浩太に、蓮は尋ねる。
「レイレイちゃん、呼ばないの?」
「え?」
「せっかくのお祭りなのに。恋人なんだろ?呼んであげたら?」
「あぁ、えっと…このお祭りは、ちょっと特別なので…」
「あ、そうか。準備に忙しくて呼べないんだね」
「え?いや、そういうわけじゃ…」
「俺が呼んできてあげる。みんなに紹介するといいよ」
「ちょっ、ちょっと待って下さいっ」
ガシッと蓮の腕を掴んで止める浩太。
蓮はキョトンとして尋ねる。
「うん?呼びたくないの?そんなわけないよね」
「も、もうみんな知ってますから、いいんですよ」
「正式に紹介したの?僕の彼女です、って」
「し、してないですけど」
「じゃあ呼んでくるよ。しておいた方が良いって、絶対」
「ちょ、ちょっと、や、やめて下さいぃぃぃ…」
耳を赤く染めて、必死に止める浩太。
全員の前で紹介するなんて…恥ずかしくて堪らない。
あれこれ詮索されたり、指笛を吹かれたりしたら、もう…堪らない。
必死にやめてくれ、と乞う浩太を見つつ、
すぐに彼が照れているのだと理解した蓮。
けれど蓮は、しつこく、呼んでくると繰り返した。
浩太の反応が面白いが故に。


二十時。
いよいよ開宴。
開宴と同時に、マスターが呪文を唱えると、
本部中庭に、七色の魔灯がポポポポポッと灯った。
幻想的な雰囲気の中、エージェント達は宴を大いに楽しむ。
梨乃が作った料理に舌鼓を打ったり、会話やゲームを楽しんだり…。
宴の途中では、強制イベントとして、とあるワインの一気飲みが催される。
飲むのは、ニルヴァナ名物の 『エリティ』 というワイン。
蒼く美しいワインなのだが、これがまた曲者なのだ。
「よっし。蓮、勝負するか」
並々とエリティが注がれたグラスを差し出して言うのは藤二。
「オッケー」
不敵に微笑んで、勝負を受ける蓮。
勝負の行方を不安そうに見守っているギャラリー。
彼等が不安そうにしているのには至極当然な理由がある。
エリティは、その美しさからは想像できぬほど、キツいワインなのだ。
舌に乗った直後は甘く、喉に落ちる瞬間は滑らか。
それゆえに、何も知らぬ者は、グビグビと躊躇なく一気飲み出来てしまう。
エリティの恐怖は、喉に落として数秒後に襲いくる。
どんなに酒に強くても、クラッと眩暈を覚えてしまうのだ。
現に、酒に抵抗力のある藤二と蓮も…フラッフラになっている。
組織で女癖の悪い二人が酔うと、それはもう大変な事態に。
藤二は脇目も振らず、人目を気にすることなく、
女性エージェントにイヤラしく触れつつ口説き、卑猥な言葉を耳元で囁く。
蓮は蓮で、梨乃にベッタリくっついて、離れようとしない。
「れ、蓮さん…飲みすぎですよ」
苦笑しつつ言う梨乃。蓮は梨乃の肩に顎を乗せて言う。
「大丈夫だよ。だいじょうぶ〜」
…明らかに大丈夫じゃない。
泥酔している者が、必ず吐く台詞である。
梨乃は微笑みつつ、蓮の手から、ごく自然にグラスを奪って尋ねた。
「お水 飲みますか?」
「うん。あ、口移しだよね?」
「ちっ、違いますっ」
「またまた…何を今更照れてるの?」
「も、もう…。ちょっと待って下さい。今、グラスに…」
「もう、我慢できない」
「え?って、ちょ…きゃぁぁぁぁ」
ドサァッ−
梨乃を押し倒す蓮。
だが、押し倒すというよりは、押し潰しているだけのような…。
「れっ、蓮さんっ。は、離して下さいっ」
「あぁ、いい匂いだ…。梨乃ちゃん」
「…れ、蓮さんってば!」
「美味しそうだ。うん。うん………」
「?蓮、さん?」
「…ぐぅ」
「ねっ、寝てる…。だ、誰かっ。蓮さんを避けて下さいぃ〜」
蓮の下でジタバタともがく梨乃。
だが宴ということで、みんな酔っ払ってケラケラ笑うばかり。
誰も助けようとはしない。過酷である。
「助けてやったらどうじゃ」
「しーらね」
「やれやれ。おぬしは意地っ張りじゃのぅ」
「うるせー。ほら、マスターも飲めよー」
「もう勘弁してくれ。老体にエリティは、しんどいんじゃ…」
「何言ってんだ。そんなの通用するわけねーだろ。はい、一気〜〜〜」
「参ったのぅ……」

年に一度、春に催される聖なる宴。
七色の光に照らされて、宴宵は続いていく。
エリティを口にした者は、翌日以降、頭痛に襲われること間違いナシ。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です!('ー'*) ニヤ。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.16 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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