■INNOCENCE /トーキョーへの興味:前編 (限定受注)■
藤森イズノ |
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】 |
「はー…楽しそーだなー…」
「そうね…あ、これ美味しそう」
「どれどれ?うぉっ、マジだ」
「ここも楽しそうじゃない?綺麗」
「おおおお…マジだなー」
「本当に色々あるのね、こうして見ると」
「だなー。ああああ…楽しそーだなー…」
「うん、本当に…」
目をキラキラと輝かせながら海斗と梨乃が見やっているのは、
東京という街について、あれこれ書かれたガイドブック。
彼等は、東京に行ったことがなく、憧れにも似た興味を抱いている。
今まで興味、関心で留まっていたが…そろそろ限界。
次々と目に耳に入ってくる情報にウズウズウズウズ…。
およそ五分後、彼等は『外異許可』を貰いにマスタールームへと向かう…。
|
INNOCENCE // トーキョーへ!
------------------------------------------------------
OPENING
「はー…楽しそーだなー…」
「そうね…あ、これ美味しそう」
「どれどれ?うぉっ、マジだ」
「ここも楽しそうじゃない?綺麗」
「おおおお…マジだなー」
「本当に色々あるのね、こうして見ると」
「だなー。ああああ…楽しそーだなー…」
「うん、本当に…」
目をキラキラと輝かせながら海斗と梨乃が見やっているのは、
東京という街について、あれこれ書かれたガイドブック。
彼等は、東京に行ったことがなく、憧れにも似た興味を抱いている。
今まで興味、関心で留まっていたが…そろそろ限界。
次々と目に耳に入ってくる情報にウズウズウズウズ…。
------------------------------------------------------
イノセンス本部にある書庫。
膨大な数の書物があるそこは、
シュラインのお気に入りの場所だ。
顔見せがてら…と、彼女はよく書庫に足を運ぶ。
逸話や伝記、童話、魔書…一日中いたって飽きない場所。
書物の多くは、マスターが取り寄せているらしく、
彼等(イノセンスの面々)の故郷から直輸入とのこと。
魔法の国…というだけあって、魔法や魔力に関する書物が多い。
未だ、行ったことのない国の文化に触れる。
それに、シュラインは幸せを覚える。
(新書…入ってるかな)
ワクワクしつつ、書庫へと向かうシュライン。
道中すれ違ったエージェント達と丁寧な挨拶を交わした。
今日も書庫かい?なんて笑いながら尋ねてくる者もいた。
もちろん、と笑顔で返したのは、言うまでもない。
(あら…?)
書庫に入って早々、シュラインはキョトンと目を丸くした。
珍しい人物…海斗がいたからだ。傍には、梨乃もいる。
梨乃は愛読家のため、ここに入り浸っているから不思議ではない。
けれど、海斗は文字(活字)を嫌う。
そんな彼が、いったいどうして?どういう風の吹き回しだろうか。
「珍しいわね、お勉強?」
微笑みつつ二人に歩み寄って尋ねるシュライン。
すると海斗と梨乃は、パッと顔を上げて、しばらく沈黙。
その後、不敵な笑みを浮かべた。
(な、何…?)
苦笑しつつ見やれば、二人の手元には『東京』のガイドブック。
へぇ、こんなものまで置いてあるのねぇ…などと感心したが、
すぐに、彼等の不敵な笑みの意味をシュラインは理解する。
お察しのとおり。
海斗と梨乃は、地球という星にある国、
日本の首都、東京に憧れを抱いていた。
目や耳から入ってくる情報、一つ一つに心躍らせて。
「シュラインが一緒なら、絶対オッケーだろ!」
「そうだね」
満面の笑みで言葉を交わす海斗と梨乃。
二人の東京に対する想いは募るばかりだったが、
実際に東京に足を運んだことは一度もなく、
行くことを、許してもらえなかった。
その理由は、迷惑をかけて混乱を招いては困るから。
マスターは、二人に東京へ行くことを断じて禁じた。
藤二や千華や浩太は良いのに、
どうして俺達は駄目なんだよーと文句を漏らしていた海斗。
確かに、どうして彼等だけ禁じられていたのだろう。
引っかかるところだが、そこには、
マスターの『思惑』と『願い』が込められているようで。
どんなに二人が御願いしても、マスターは許してくれなかった。
(うーん。引率がいれば問題ない…のかしら?)
シュラインは疑問を抱きつつ、
海斗と梨乃に連れられて、マスタールームへと向かう。
*
「ふむぅ…。まぁ、そこまで言うのなら仕方あるまい」
「よっしゃー!!」
「やったぁ」
海斗と梨乃の熱意溢れるオネダリと、
そんな彼等をフォローするかのようなシュラインの言葉に、
マスターは渋々許可を下ろした。
但し、条件つき。
一つ、絶対に迷惑をかけないこと。
一つ、向こうでは魔法を使わないこと。
一つ、シュラインのいうことを、ちゃんと聞くこと。
この三つを守れるというのなら、許可してやっても良い。
マスターの提示に、海斗と梨乃は「わかった」と即答した。
気持ちよい返事だが、それゆえに不安を覚えるところ。
「すまんのぅ。よろしく頼むわい」
苦笑しつつ言うマスター。
シュラインはクスクス笑い「御任せ下さい」と返す。
何においても自由奔放にさせてるのかと思ったんだけど。
この件に関しては、厳しいのね。
…何だろ。何か引っかかるなぁ。
マスターさん、何か大事なこと隠してるんじゃないかしら。
まぁ、問い詰めたところで教えてはくれないだろうけど。
うーん…気になるなぁ。何だろ、このモヤモヤ感。
覚える違和感にムゥと眉を寄せるシュライン。
そんなシュラインの悩みなんぞ、ツユ知らず。
海斗と梨乃は、シュラインの腕をグイグイ引っ張って、
早く早く、早く行こう、と繰り返した。
「わ、わかったから。ちょっと落ち着いて二人とも…」
キャーキャーと大騒ぎしている二人を纏めるシュラインは、
何というか…さながら、保育士のようだ。
異界から他国、他星へ向かうには、専用のゲートを通らねばならない。
ここを通ることで、どんな世界とも行き来が可能になる。
シュラインが、東京から、こちらへ来る際にも、このゲートを使用している。
ゲートの、すぐ傍までは来たことのある海斗と梨乃。
けれど、マスターに禁止!と耳にタコが出来るくらい聞かされていた為、
通ったことは一度もない。海斗なら気にせず突っ込んで行きそうなのに…。
マスターとの約束を破ることを、心から恐れていたのだろう。
何だかんだで、絶対的な立場にいるのね、マスターさんは。
クスクス笑いつつ、海斗と梨乃と手を繋ぎ、ゲートを通るシュライン。
フワリと体を包む、甘い風。
「うぉー…」
「わぁ…」
海斗と梨乃は、初めての体験に目をキラキラと輝かせていた。
*
晴れて、東京に踏み入った海斗と梨乃。
日本時間は、現在午前十時。観光するには、まだまだ時間がある。
感動しているのか、海斗も梨乃も、キョロキョロと辺りを見回しっぱなし。
(何か…エサを待つ雛鳥みたい…)
二人の姿にクスクス笑い、シュラインは東京案内を始めた。
海斗が、一番行ってみたかったのは、遊園地。
きらびやかなアミューズメントパークは、異界にはないものだ。
「うおー!すげー!めっっちゃ、いっぱいあるぞー!悩む!悩むな!!」
見渡す限りに並ぶアトラクションに興奮を抑えきれない海斗。
海斗に付き添う形で、シュラインと梨乃もアトラクションを満喫。
絶叫マシーン、観覧車、メリーゴーランドなどなど…。
中でも海斗は、やはり絶叫マシーンを気に入ったようで、
何回乗れば気が済むんだ…というほどに繰り返し乗っては大笑い。
楽しそうで何よりだが、絶叫系が苦手な梨乃は、
信じらんない…と言った表情で、ポカーンと海斗を見やっている。
「楽しそうね、海斗くん」
「…馬鹿丸出しですよね」
「ふふ。いいんじゃないかしら?子供に戻る場所だもの」
「そういうものですか…」
「そうよ。あ、デートにもオススメよ、遊園地は」
「え。ここで…ですか?」
「うん。仲良く色んなアトラクションを楽しむの。ほら、カップル多いでしょ?」
「あ、本当だ。言われてみれば…そうですね。へぇー…」
「一緒に来れば良いわ。彼氏が出来たら。ね? 楽しいわよ」
「…は、はい」
恥ずかしそうに俯き微笑む梨乃。
そんな梨乃の反応を満喫するシュライン。
二人の上では、海斗の楽しそうな笑い声。
遊園地のあとは、都内散策。
浅草やアメリカ横町の活気溢れる雰囲気は、
ただ歩いているだけでも、元気を注入されるかのよう。
都庁の展望台は、一見の価値アリ。
海斗と梨乃は、何枚撮るんだ…というほどに携帯に景色を保存していた。
少し疲れたら、適当なカフェで一休み。
向こうにはない果実を使ったデザートに舌鼓。
来たからには、お土産を買わないと!とショッピングも。
海斗は木刀を、梨乃はキーホルダーを買った。
何故に木刀…? 何か、修学旅行みたいね。
ん?そうなると、私は教師とか、そんなあたり?
ふむふむ、先生か。そういうのも、悪くないかもねぇ。
でも大変そう。叱ってばかりで、怖い先生だって思われちゃうかも。
でも、アメとムチの使い分けには自信あるからなぁ。
意外と…人気先生になったりするかも?なぁんて…。
キャッキャとはしゃぐ海斗と梨乃を見つつ、
もしもの話・妄想に、しみじみ浸るシュライン。
一行は、その後も東京を満喫。
雑誌で見た、そのまんまの憧れの風景が目の前に。
海斗が元気にはしゃいでいるのは、いつものことだが、
梨乃までもが、はしゃいでいるのは珍しい。
本当に、せわしなく落ち着きなく、
子供のようにはしゃぐ二人を、
シュラインは時々叱ったりもしつつ、笑顔で見守った。
そろそろ帰ろうか、マスターも心配してるだろうし。
そうシュラインが提案すると、海斗は何言ってんの?という顔で、
「今日は、シュラインの家に泊まるよ。な、梨乃?」
さも当然かのように言った。戸惑ってはいるが、梨乃も、そのつもりだったようだ。
(んー。何も連絡してないけど…大丈夫よね、きっと。うん)
まさか、二人が興信所に泊まる、ということになるとは思っておらず、
適度な時間になったら満足して本部に戻るのだろうと思っていた。
けれど楽しそうで嬉しそうな二人の顔を見てたら、
断るこなんて出来やしない。断る気も、ないし。
シュラインは海斗と梨乃を連れ、興信所へと向かう。
シュラインの帰宅を出迎え、
腹が減った…と訴える武彦が、
意外な客人二人にキョトンとしたのは、言うまでもない。
今夜は、賑やかになりそうだ。色んな意味で、眠れないかも…?
------------------------------------------------------
■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度さまです〜! (*´▽`*)ノ゛
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!
-----------------------------------------------------
2008.04.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------
|