■INNOCENCE / 料理当番 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7433】【白月・蓮】【退魔師】 |
「腹へったー♪腹へったー♪」
テーブルに両足を乗っけて変な歌を歌っている海斗。
とても嬉しそうな顔をしている彼は、催促している。
時刻は十七時半時。一般家庭では、夕飯の支度で忙しい時間帯だ。
イノセンス本部でも、それは同じ。
とはいえ、本部では料理当番がいる為、
準備やら何やらに忙しいのは、当番人物だけだが。
イノセンスに所属して、何度目かの土曜日。
とうとう自分にも、当番が回ってきた。
うるさい催促に背中を押され…準備に取り掛かる。
(さて、何を作ろうか?)
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INNOCENCE // 料理当番
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OPENING
「腹へったー♪腹へったー♪」
テーブルに両足を乗っけて変な歌を歌っている海斗。
とても嬉しそうな顔をしている彼は、催促している。
時刻は十七時半時。一般家庭では、夕飯の支度で忙しい時間帯だ。
イノセンス本部でも、それは同じ。
とはいえ、本部では、毎週土曜日は料理当番がいる為、
準備やら何やらに忙しいのは、当番人物だけだが。
イノセンスに所属して、何度目かの土曜日。
とうとう自分にも、当番が回ってきた。
うるさい催促に背中を押され…準備に取り掛かる。
(さて、何を作ろうか?)
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まぁ…そうだな、ここは変に凝ったものを作らなくても良いよな。
適当に…っていうと聞こえは悪いけどさ。
さっき着いたばっかりだし、当番だってこと忘れてたし。
というわけで、何も用意してきてないんだよね。
だから、冷蔵庫に入ってるものでササッと…。
お。卵がたくさんあるな。よし。
オムライスでも、いってみますか。
うし、と気合を入れて腕をまくる蓮。
今週の料理当番は、彼である。
とはいえ、料理当番だということを忘れていたらしく、
先程本部に到着して、そこでようやく思い出した。
物凄いスピードで海斗がタックルしてきて、
めしー!と喚いたからだ。
それ以降も、海斗はずっと、
「ごはん、ごはん、腹減った」と繰り返している。
まるっきり子供だ。海斗をチラチラと見やりつつ、
苦笑して調理を進める蓮。
すぐ作るから、おとなしくしてなさいと命じたのだが、どうにも落ち着きがない。
蓮の初料理ということでワクワクしているのだろう。
水を引っくり返したり、フォークを落としたり…と、やかましい。
その度に、海斗の隣で本を読んでいる梨乃が彼を叱る。
いつもの光景。何の変哲もない、いつもの光景。
ほのぼのとした夕食時。
蓮は手際よく調理を済ませていく。
なかなかの腕前だ。
普段から料理しているんだな、と理解る。
ふんわり卵のオムライス。
隣に、ちょこんと温野菜を沿えて…。
見栄えも御見事。
先ず目で食べる、という料理の極意を理解っている。
「はい、おまたせー」
器用に、腕に皿を乗せてキッチンから出てくる蓮。
テーブルに突っ伏していた海斗は、ガバッと起き上がり、
待ってましたーとスプーンとフォークを重ねてキンキン言わせた。
さて、料理の味は…というと?
「うめー!うめー!」
美味しいようだ。海斗がウルサイ。ガツガツ食べている。
もう既に、完食しそうな勢いだ。
落ち着きのない海斗の隣で、梨乃は呆れつつも、
オムライスの美味しさに、ニコリと微笑む。
「ん…。美味しいです、本当に。ほんのり甘い…」
「ふふ。一応、得意料理だからね。大したもんじゃないけど」
「そんなことないですよ。すごく美味しいです。ちょっとビックリ」
「ははっ。意外、って?」
「えっ。いえ、そういうわけじゃ…」
他愛ない言葉を交わしつつ、賑やかなディナー。
しばらくすると、レストランにゾロゾロと人が集まってきた。
お腹を空かせたエージェントは、
テーブルの上でキラキラと輝く黄金色のオムライスに、よだれダラーリ。
がっついて食す姿は、見ていて気持ちの良いものだ。
うんうん、良かった良かった。
オムライス、正解だったみたいだね。…お。
レストランに、藤二・千華・浩太もやって来た。
三人は、見るからに美味しそうなオムライスに満面の笑み。
パン、と両手を合わせて「いただきます」
三人も、素朴なんだけど美味しい…そんなオムライスに舌鼓。
*
ただ料理を振舞って、みんなを満足させて。
それで、はい、おしまい。というわけじゃない。
忘れてもらっちゃ困る。蓮は "悪戯好き" なのだ。
じーっと梨乃と千華を見つつ、何やら不敵な笑みを浮かべる蓮。
「ん?何?」
「何かついてますか?」
キョトンとする梨乃と千華。
蓮は、ううん何でもないよ、と微笑みを返す。
何か…悪戯を仕掛けたな、即座に理解した藤二は、
コツン、と蓮の足を蹴り、何やったの?と小声で尋ねた。
「ちょっと…惚れ薬をね」
テーブルに頬杖をついたまま、ニッコニコな蓮。
以前、アンティークショップで入手した惚れ薬。
それを、ここぞとばかりに。
蓮は、梨乃と千華の食後のスープに混ぜた。
まぁ、場所が場所なだけに、過剰に摂取させては大変かなと思い、
ほんの僅かに、一、二滴垂らした程度だけど。
だが、蓮が入手した惚れ薬は、超絶、と銘打っている代物だ。
ほんの僅かでも、素晴らしい効果が期待できる。
完食し、ごちそうさまでしたを言った直後。
梨乃と千華の体に異変が起こる。
トロン、とした目線を、揃って蓮に向けるのだ。
(きたきた…)
ワクワクから、笑みが止まらない蓮。
梨乃と千華の異変に気付いた海斗は、
ゴクゴクと水を飲みつつ、不思議そうな顔で言う。
「ん?どした?何か変じゃね?」
「…?どうしたんですか、二人とも…」
スプーンを咥えつつ、浩太もキョトンとしている。
「うん?そうかな?」
「気のせいだろ…くっく…」
何食わぬ顔で言う蓮と、事情を知っていて苦笑する藤二。
突如、梨乃と千華は揃ってガタン、と席を立つ。
「うぉ!何だ。びっくりする…」
ギョッとした海斗が、更にギョッとする。
梨乃と千華が、揃って蓮の隣に座り、
彼の頬やら耳やら腕やら…体中をまさぐりだしたからだ。
何とも…イヤラシイ手つき。見てるこっちが恥ずかしい。
「ちょ、え、何。何してんの」
「り、梨乃さん?千華さん?」
サッパリ事態を把握できず、キョトンとしっぱなしの海斗。
浩太は恥ずかしいのか、直視できていない。
美女(?)二人にペタペタ触られている蓮を見つつ、
藤二はニヤニヤ笑って言った。
「いいなぁ、それ」
摂取量が僅かといえど、やはり超絶。
その効果は、確かなものだった。
揃って蓮に甘ったるい視線を送る梨乃と千華だが、
双方の視線が交わると、ちょっとした修羅場に進展…。
「千華さん、部屋で休んだらどうですか?」
「あら。梨乃こそ。疲れてるでしょ?休んできなさいよ」
「いえ。私は疲れてませんから」
「私も疲れてないわ」
「………」
「………」
蓮を挟んで、むむっ…とした表情を浮かべる二人。
梨乃も千華も、蓮を独り占めしたい、と思っているのだろう。
「蓮さん、喉渇いてないですか?はい、お水です」
「蓮くん、私が飲ませてあげるわ」
「何言ってるんですか、千華さん。はしたないです」
「あらぁ。いいじゃない別に。ね、蓮くん?」
「蓮さん、私が飲ませてあげます」
「口移しよ?梨乃、できるのかしら?」
「できます」
口にワインを含み、蓮に口移しをかます梨乃。
ありえない梨乃の大胆な行動に、
レストランは、おぉ…!?と、どよめいた。
それに続くかのように、千華も。
口にワインを含み、蓮に口移し。
梨乃よりも色っぽく…手馴れている感じだ。
組織トップエージェントの女二人に、
揃って口移しをかまされた蓮に、
レストランにいるエージェント達は、皆、羨ましそうな顔…。
「っはは」
口端から漏れて頬を伝うワインを指で拭い、クスリと笑う蓮。
ご満悦な彼は、自分を挟んで睨みあう梨乃と千華、双方の耳元で囁く。
「喧嘩しないで。二人とも、平等に…可愛がってあげるからさ」
蓮の、その言葉に微笑み、
梨乃と千華は左右から蓮にギュッと抱きつく。
まさに両手に花…。
何の変哲もないレストランの一角で、ハーレムが実現している…。二人だけど。
梨乃と千華、双方に平等に接して、
甘い言葉や、口付けを交わす蓮を見つつ、海斗は呆気。
「…器用だな、ほんと」
「完全に平等に接してますね…。凄いかもしれない」
自分には到底無理なテクニックだ…と浩太は感心している。
蓮達を直視せず、あさっての方向を見つつ呟く海斗と浩太に、
藤二は「見とけよ、そして盗め。テクニックを」そう言って、
煙草に火を点け、テーブルに頬杖をついて、ゆったりと閲覧。
何を職人みたいなこと言ってるんだか…。
そんなこんなで、蓮の初料理当番は、美味しい展開になった。
見てごらん、あの嬉しそうな顔…。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度様です〜! (ΦωΦ)ノシ
ここで惚れ薬を使いますか。参りました(笑) 楽しかったです…^^
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!
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2008.05.13 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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