コミュニティトップへ




■INNOCENCE / ニックネームと絆創膏■

藤森イズノ
【7440】【月宮・香織】【お手伝い(草間興信所贔屓)】
特に何の用もないのだが、近くを通りかかったので、
INNOCENCE本部に顔を出してみる。
まぁ、相変わらず。
本部内には、様々なエージェントがいる。
これから任務に出掛けるであろうエージェントから、
そこらへんに転がって仮眠をとっているエージェント、
他愛ない話でキャッキャと盛り上がっているエージェントなどなど…。

来たものの、どうしようか…と思いつつ、
とりあえず二階へ行こうと階段を登りだした時だった。
「あ!」
背後から聞き覚えのある、いや…ありすぎる声が。
振り返ると、そこには笑顔の海斗と、ペコリと頭を下げる梨乃がいた。
何か用かと二人に尋ねると、海斗は楽しそうに笑って、
「ちょっと来いよ。会わせたいヤツがいるんだ」
そう言って、またも強引に手を引き、どこかへと連れて行く。
どこへ行くのかと思いきや、連れてこられたのは、本部二階の医療室。
任務で怪我を負った者や、具合の悪い者が利用する、
学校でいうなれば、保健室のような場所だ。

アルコール消毒液の香りが漂う医療室。
そこで、二人のエージェントと出会う。
INNOCENCE // ニックネームと絆創膏

------------------------------------------------------

OPENING

特に何の用もないのだが、近くを通りかかったので、
INNOCENCE本部に顔を出してみる。
まぁ、相変わらず。
本部内には、様々なエージェントがいる。
これから任務に出掛けるであろうエージェントから、
そこらへんに転がって仮眠をとっているエージェント、
他愛ない話でキャッキャと盛り上がっているエージェントなどなど…。

来たものの、どうしようか…と思いつつ、
とりあえず二階へ行こうと階段を登りだした時だった。
「あっ…」
背後から聞き慣れた声が。
振り返ると、そこには笑顔の梨乃がいた。

------------------------------------------------------

「こんにちは、香織さん」
「うん、こんにちは…」
ペコッと軽く頭を下げて挨拶を返す香織。
梨乃はクスクス笑う。
イノセンスに所属して、それなりの時間が経過したけれど。
香織は相変わらずだ。遠慮がちというか、控えめというか。
それでも、はじめのころと比べれば、かなり明るくなった。
海斗に文句を言ったり叱ったりするようになったし。
香織の変化・成長は、間違いなくディテクターによるものなんだろうな。
そう思いつつ梨乃は笑う。
「あ、そうだ。香織さん。お暇ですか?」
「…一応」
「じゃあ、ちょっと付き合ってくれません?」
「仕事…?」
「いえ。会わせておきたい人がいるんです」
「…うん、わかりました」
「じゃ、行きましょう」
ニコリと微笑み、香織の手を引いて歩き出す梨乃。
梨乃に手を引かれ、香織がやって来たのは…本部二階の医療室。
(怪我人さん…?)
キョトンとしつつ医療室の扉を見やる香織。
梨乃はカチャッと扉を開けて、どうぞと促した。
消毒液の匂い…この匂い、嫌いじゃないかも…。
促されるまま、医療室に入った香織。
キョロッと辺りを見回すと、
医療室、窓の傍に見知らぬエージェントが二人。
梨乃が言っていた "会わせておきたい人" とは彼等のことだ。
ペコ、とお辞儀して「こんにちは」と挨拶する香織。
すると見知らぬエージェント二人はスッと立ち上がり、
香織に歩み寄って握手を求めた。
「はじめまして。あなたが香織ちゃんね。千華です。青沢・千華。よろしくね」
「こんにちは。黄田・浩太です。よろしく」
二人と握手を交わし、交互に見やる香織。
千華と名乗った女性は、とてもスタイルが良い美人さん。
浩太と名乗った少年は、爽やかな印象。
医療室で、一行はホットミルクを飲みつつ言葉を交わす。

*

驚いたことが二つ。
一つは、千華が武彦の幼馴染だということ。
もう一つは、浩太が零の彼氏だということ。
零に、彼氏がいることを本人から聞いて知っていた香織は、
じっ…と浩太を見やって言う。
「あなたが…そうなんですか」
「あはは。は、はい」
照れ笑いし、少々どもって返す浩太。
梨乃はホットミルクをコクリと一口飲み、クスクス笑う。
「香織さん。あんまり見つめちゃ駄目ですよ。浩太は照れ屋ですから」
「そうなの…?」
キョトンと首を傾げて尋ねる香織。
浩太は、さりげな〜く目を逸らし、
頭を掻きつつ「すみません」と謝った。
どうやら、本当に照れ屋さんらしい。
「あらあら、浩太。浮気しちゃ駄目よ?」
ふふふと笑いつつ言うのは千華。
浩太は、浮気なんてしてないじゃないですかっとムキになる。
同様に、香織もちょっとムキになって。
「私も…絶対しません」
真剣な表情で言った。
香織が武彦に想いを寄せていることを、
武彦本人から聞いていた(半ばノロけ)千華は、
香織の頭を優しく撫でて言った。
「こんな可愛いコに好かれるなんて。贅沢ねぇ、あいつ」
「知ってる…んですか」
「もちろん。色々聞いてるわよ〜?」
「い、色々…ですか」
どんなことを聞かされたんだろう…と微妙に照れる香織。
千華は、武彦から聞いた甘〜い二人の関係を、少しオーバーに話した。
「ラブラブなんですねぇ」
「想い合ってるって感じですねぇ」
ほのぼのしつつ、老人のように微笑んで言う梨乃と浩太。
いつの間にか、立場が変わっている。
浩太が照れて赤くなっていたのに。
今は、自分が照れて真っ赤になっている。
他人に自分の恋愛を語ったりしない香織にとって、
初めての 恥ずかしい状況だ。

香織の恋愛話を中心に、会話の弾む一行。
途中、千華は香織に、あだ名を付けた。
気に入った子には、ニックネームをつける。
それは、千華の習慣であり、モットー。
で、つけられた、あだ名は… 『かおりん』
何の捻りもない…ごく普通のニックネームだ。
すごく真剣に暫く悩んでいたから、
どんな大層なものなのかと思っていたのだが。
香織はクスクス笑う。
美人さんなのに、ネーミングセンスはないのね。
とはいえ千華は気に入ったようで。
何度も嬉しそうに、香織を呼んだ。かおりん、と。
特に用もないのに。
消毒液の香りが漂う医療室。
知り合い、言葉を交わしたエージェント。
面倒見が良くて美人で、そしてネーミングセンスのない千華と。
照れ屋だけど爽やかで、でも鼻のてっぺんに絆創膏…な浩太。
二人との出会いは、香織にとって意味あるものになっただろうか。
この先、千華や浩太と一緒に仕事をしたりすることもあるだろう。
そうして同じ時間を重ねて、仲良くなっていけたらいいな。
恋の相談でも、辛い悩みでも…何でも話せるくらい。

------------------------------------------------------

■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです! ('∀'*)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます〜!
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

-----------------------------------------------------
2008.05.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------