■INNOCENCE / メロメロ・ロメオ (限定受注)■
藤森イズノ |
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】 |
敵対する、もしくは己が気に入った人物を魅了し、
虜にさせて、自分のものにしてしまうモンスター、ロメオ。
サキュバスという悪魔の進化系であるモンスター。
近頃、このロメオによる被害が、あちこちで報告されている。
あまりにも酷い有様ということで、本部に届く討伐要請。
報酬は、そこそこ。
気合を入れて望んでも良い仕事だ。
だがしかし、同行するエージェントが、
まさか…ロメオに魅了されてしまうだなんて。
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INNOCENCE // メロメロ・ロメオ
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OPENING
敵対する、もしくは己が気に入った人物を魅了し、
虜にさせて、自分のものにしてしまうモンスター、ロメオ。
サキュバスという悪魔の進化系であるモンスター。
近頃、このロメオによる被害が、あちこちで報告されている。
あまりにも酷い有様ということで、本部に届く討伐要請。
報酬は、そこそこ。
気合を入れて望んでも良い仕事だ。
だがしかし、同行するエージェントが、
まさか…ロメオに魅了されてしまうだなんて。
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「魅了が厄介なんですよね…」
むむぅ…と考え込みつつ歩く梨乃。隣には、凍夜。
二人は、揃ってロメオの討伐に向かう途中だ。
ロメオの厄介な能力 "魅了" への対策を考えるものの、
如何せん、パッとした対策をキメられない。
というのも、ロメオの魅了は、
警戒したところで、どうにもならないという最悪な能力。
故に、この任務の報酬は破格だ。
ロメオ討伐にあたり、必要最低限な条件。
それは、異なる性別同士で組むこと。
こうしておけば、勝率は格段に上がる。
同姓には、魅了は効果を発揮しないから。
だが、ロメオは魅了以外…戦闘能力も、それなりに高い。
梨乃が悩んでいるのは、まさに、そこだ。
最低限の条件は揃えた、それは当然だ。
けれど、そこから。そこから、どうする?
更に勝率を上げる為、任務を完遂する為に。
何が出来るか、どうすべきか。梨乃は悩みに悩む。
(…悩んでるな)
真剣に思案する梨乃を見つつ苦笑する凍夜。
凍夜の笑みは、余裕のそれではない。
梨乃の、悩みまくっている顔が…可愛らしいのだ。
こんなときに不謹慎かもしれないが、実際。
眉間にシワを寄せて、下唇を甘噛みしている姿は、
何とも、あどけなく…。まさに、少女、といった感じだ。
「駄目です。頭、パンクしちゃいそう…」
ぷはぁ…と息を吐き、思案を止める梨乃。
凍夜は苦笑しつつ言った。
「何とかなるだろ。…臨機応変に対処すれば」
「うぅ。そうですね」
凍夜の言うとおり、いくら考えても無駄。
出来うる限りのことをするだけ。
それしかない。
*
ロメオは、異界にある氷の森に棲んでいる。
魔界から湧いたが故に、薄暗くも神秘的な氷の森は、居心地が良いのだろう。
森に到着して、凍夜と梨乃は武器を構える。
いとも容易く、ロメオを発見できたからだ。
ロメオは大樹の下で、うたたねしている。
またとない好機。攻めるなら、今しかない。
凍夜と梨乃は顔を見合わせ、コクリと頷くと同時に駆け出す。
魅了能力を発動する前に仕留める事ができれば、完璧だ。
まさかの好機を、二人は見逃さない。
だがしかし…ロメオは罠を張っていた。
眠っているフリをしていただけだったのだ。
二人が駆け出すと同時に、パチリと目を開くロメオ。
まずい。
そう思った凍夜と梨乃は、咄嗟に反対方向へ駆けて散った。
くそ…まんまと、やられた。
焦ってしまったのが、まずかったな。
魅了という能力の回避に拘りすぎた。
少し冷静になれば、眠っているフリをしているかもしれないと疑っただろうに。
茂みに身を潜め、チッと舌打ちする凍夜。
見やれば、ロメオはゆっくりと立ち上がり…ニヤリと笑んだ。
何とも不気味な笑みだ…と苦笑した直後。
凍夜は、更にまずい…と顔をしかめる。
立ち上がったロメオが、ニヤニヤしながら、梨乃の方へ歩いて行く…。
ロメオの性別は、どこから見ても男だ。
魅了能力を発動されたら、梨乃は…。
(ちっ…)
凍夜は武器を構え、ザッと茂みから飛び出して梨乃の元へ。
梨乃を背に庇うかのような体勢で、キッと睨みつける凍夜。
するとロメオは、微笑を浮かべつつ、独特の艶っぽい声で言った。
「無粋だねぇ。どいてくれよ」
「…そう言われて、どくと思うか?」
「まぁねぇ。そうだよねぇ」
ニヤニヤと笑みつつ、髪をかき上げるロメオ。その瞬間。
背に庇っていたはずの梨乃が、ロメオに向かってタタタッと駆け出してしまう。
「…梨乃?」
声をかけるものの、梨乃は振り返らない。
まさか…。そう、その、まさかだった。
ロメオは、凍夜と言葉を交わしている間に、魅了を発動していたのだ。
魅了に堕ちてしまった梨乃。
彼女の行動は、まさに、魅了されている状態そのもの。
ロメオにぺったりとくっつき、トロンとした目で見上げる…。
甘い眼差しを向けられ、ロメオはご満悦。
梨乃を抱き寄せ、耳元で囁く。
「僕のこと…好きかい?」
ロメオの囁く問いに、梨乃はコクリと頷き、
ぎゅっ…とロメオに抱きついた。
目の前で繰り広げられる、甘ったるい展開。
凍夜は、梨乃の変貌ぶりに驚きを隠せず、しばらく唖然…。
だが、梨乃とロメオが、脇目も振らずにイチャついている様を見ている内に、
次第に我に返り、同時に苛立ちが募る。
そして、その苛立ちは、ロメオが梨乃に口付けをしようとした瞬間、
メーターを振り切り、憤怒の感情を生んだ。
「………」
眉間にシワを寄せたまま、描く黒い魔法陣。
それは、高位悪魔…ゼンを召喚する魔法陣だ。
影のような不気味なものが辺りを旋回し、
やがて、それらが一斉にピタリと止んで消える。
それは、すなわち…ゼンの召喚に成功した証。
魔法陣からヒュッと姿を現した高位悪魔、ゼン。
ゼンは、辺りを見回し、自分が召喚されたことを理解すると同時に苦笑した。
「これはまた…珍しい御呼ばれだ」
契約はしているものの、凍夜はゼンを滅多に召喚しない。
それ故に、自分が呼ばれるイコール、よほどの事態だと把握できる。
ゼンは、目の前でイチャつく梨乃とロメオ、
そして、自分の後ろで険しい顔をしている凍夜を見て、状況を瞬時に把握。
クックッと笑うゼンに、凍夜は険しい顔つきのまま言った。
「ゼン…。あのクソ悪魔を跡形もなく焼き尽くせ」
淡々と言っているようにも聞こえるが、ゼンには理解る。
凍夜の放つ声が、如何に鋭利なものであるか。
肩を竦めて苦笑と溜息を落としつつも、
スッ…と両腕を広げて構えるゼン。
凍夜とゼンの鼓動が、ピタリと重なり合った、その時。
「格の違いを、教えてやれ!!」
大声で凍夜が叫ぶ。それと同時に、黒炎の龍影を躍らせるゼン。
同じ悪魔とはいえ、ゼンの能力はロメオと比べ物にならない威力を誇る。
命乞いをする間もなく、あっさりと黒炎に飲まれて、
ゼリー状の泡となって、ボコボコと消えていくロメオ。
消失と共に、ロメオに抱かれていた梨乃が、気を失いパタリと倒れた。
*
ロメオの討伐を追え、イノセンス本部へと戻る途中。
梨乃は、まだ目覚めぬまま、凍夜の背中で目を伏せている。
背中に感じる、確かな梨乃の鼓動に安心しつつも、未だに気分の晴れない凍夜。
荒々しく歩く凍夜を見つつ、ゼンはククッと笑う。
「珍しいな。お前が感情を剥き出しにするなんて」
「………」
「あの程度ならば、軽く捻れたであろうに」
「………」
「我を喚ぶほどに、あの状況が不快だった…というわけか」
「………」
「くっく…何とも可愛らしいものだな」
「…うるさい」
本部に到着し、梨乃が目覚めるまで、彼女の傍にいた凍夜。
魅了されていたときの記憶は欠乏しており、
梨乃は事態を飲み込めずキョトンとしていた。
その、あどけない表情に解されていく尖った心。
色々な意味を含む大きな溜息を落とす凍夜に、
梨乃は役立たずでゴメンナサイ…と頭を下げる。
二人の遣り取りを夜空に浮かびつつ見やっていたゼンは、
淡く口元に笑みを浮かべて、在るべき場所へと戻っていった。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
7425 / ゼン・ダークネス (ぜん・だーくねす) / ♂ / 999歳 / 高位悪魔
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度様です〜! (( ̄∀ ̄))
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
お二方の遣り取りが素敵でした…^^ そして、凍夜さんがカワイスギル…!(悶)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。
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2008.05.17 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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