■INNOCENCE / 38度5分 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7182】【白樺・夏穂】【学生・スナイパー】 |
どうやら、かなり大きな仕事だったようだ。
結果報告を兼ねて話すエージェントは、
見るからに着かれきった表情をしている。
「部屋で、ゆっくり休んだら?」
そう労いの言葉をかけたとき。
ドサッ―
突如、エージェントが その場に倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと…!?」
慌てて抱き起こせば、その熱さに、すぐ気付く。
酷い熱だ。風邪を引いているのだろう。
こんな状態で過酷な仕事に行くなんて…無茶するなぁ。
とりあえず、運ばなきゃ。
看病…してあげなきゃね。
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INNOCENCE // 38度5分
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OPENING
珍しく、一人でイノセンス本部にやって来た夏穂。
ゆったりと歩き、セントラルホール。
何か、面白そうな仕事はあるかしら?
リクエストボードを見やり、美味しそうな仕事はないか、と探す
今日も今日とて、リクエストボードには、たくさんの依頼。
けれど、そのほとんどが低額報酬の…張り合いのなさそうな仕事ばかり。
美味しい仕事は、すぐに取られてしまう為、
なかなかどうして、掴むことができない。
それこそ、リクエストボードをずっと見ていないと駄目だ。
もしくは、たまたまタイミング良く、良い仕事を見つけるか。
要はタイミング勝負。
(んー…ないみたいね)
残念そうに息を吐く夏穂。
どうしようかな、このまま帰るのも何かね。
そう思った夏穂は、お気に入りの場所…ライブラリーへ向かおうとする。
新書…入ってるかな?
ワクワクしつつ、階段を上っていた、その時。
バタン、と勢い良く扉が開く。
医療室から出て来たのは…海斗だった。
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「具合、悪いの?」
テテテ…と海斗に歩み寄り尋ねる夏穂。
すると海斗は、わしわしっと頭を掻いて返す。
「いや、だいじょーぶ。ちょっと、頭がねー」
頭が悪いの?と聞こうと思ったが、やめた。
夏穂はクスッと笑い、海斗を見やる。
寝起きなのだろうか、海斗の頭には、かなりの寝癖が。
ピョコンと跳ねたアンテナのような髪は、何だか可愛らしい。
「髪、立ってるよ」
クスクス笑いつつ、立っている髪に触れて言う夏穂。
海斗は、マジで?と苦笑…したのだが。
「あ」
「ん?」
「やべ…」
「え?…あ、えっ?」
突然、夏穂に抱きつく海斗。
夏穂は驚き、キョトンと目を丸くしている。
まるで、藤二のような…海斗のらしくない行動に疑問を抱く夏穂。
おかしい、そう思ったのは正解だった。
海斗は、抱きつくというよりは、凭れかかっている感じだ。
そっと額に触れてみれば…。
(あら…凄い熱)
海斗の額は、お湯が沸かせそうなほどに熱い。
一人で医療室から出てきたから、変だなとは思ってた。
やっぱり、具合悪かったんだ。
うぅ〜…と唸る海斗。
夏穂は、やれやれ…と苦笑し、海斗を引きずるようにして部屋に連れて行く。
…重い。細いけど、やっぱ男の子だな。
うぅ、よいしょ、よいしょ…。
*
部屋に運ばれ、ベッドに寝かされる海斗。
唸る海斗に布団を被せ、夏穂はふぅ、と息を吐いた。
海斗の部屋…そういえば、初めて入るね。
ふぅん、こんな部屋なのね…。
棚やテーブルに並ぶ、いくつもの玩具。
戦隊モノのフィギュアが、その大半を占める。
部屋の隅には、サッカーボール。
お世辞にも綺麗とは言えない海斗の部屋は、
まさに、男の子の部屋、という感じだ。
「ごめんなー…夏穂」
ベッドでモソモソと動き、夏穂を見やって言う海斗。
「うん?何が?」
「何か、色々。めんどくせーことになって…」
「ううん。別に」
ニコリと微笑み、ベッド横に椅子を置く夏穂。
夏穂は、じっと海斗を見て尋ねた。
「お薬、飲んだ?」
「うん、いちおー」
「ちゃんと、風邪薬飲んだ?」
「たぶん…」
「うんうん、お腹は?空いてる?」
「少し…」
「待ってて、何か持ってくるから。何か、食べたいものある?」
立ち上がり夏穂が尋ねると、海斗は弱々しく笑って、少し遠慮がちに言った。
「林檎」
「林檎ね。うん、わかった」
「うさぎ…」
「ウサギ?」
「うさぎみたいに切ってー…」
林檎をうさぎのように切って…と御願いする海斗。
うさぎって、あの、よくお弁当とかで見かける、ああいうやつ?
ぽわん…と"うさぎ林檎"を思い浮かべて理解した夏穂は、
クスクス笑って「わかったよ」と部屋を出て行った。
小さな子供みたいね、ほんと。ふふ。
キッチンへ行き、うさぎ林檎と一緒に、林檎シャーベットも作って持ってきた夏穂。
こんな短時間で、シャーベットを作るなんて、どういうこと?と思うかもしれないが、
簡単なことだ。キッチンにあった、魔法の冷凍庫を使っただけ。
マスターが氷の魔法を纏わせている、その冷凍庫は、
いつまでも冷たく凍り付いて、入れたものを瞬時に凍らせる。
ぬるくなった飲み物をサッと手早く冷やすときとか、
それこそ、氷のうを作ったりするときに便利だ。
持ってきた二つを海斗に見せて、
どっちから食べる?と首を傾げて尋ねる夏穂。
すると海斗は、シャーベットを見つめた。
うん、わかった。こっちね。
夏穂はクスッと笑い、ベッドに腰を下ろすと、
スプーンでシャーベットをすくい、それを海斗の口へ。
これは…俗にいう「あーんして」というやつでは。
ほんのりと、それに憧れを抱いていた海斗は、
照れくさそうにしつつも、おとなしく口を開けてモグモグ…。
「どう?」
「…んまいです」
「ふふ。何で敬語なの?」
「わかんない」
その後も、夏穂は甲斐甲斐しく海斗の看病。
氷のうを額に乗せたり、熱を測ったり、
ただゴロゴロ寝ているだけの状態がつまらないのか、
起き上がろうとする海斗を、おとなしくしてなさいと叱ったり。
パッと見ると、妹のように小さく可愛いのに。
海斗を叱る夏穂の姿は、姉…いや、母親のようにも思えた。
微笑んではいるものの、夏穂は怖〜いオーラを放っている。
言うことを聞かずに動き回れば、もっとこっぴどく叱られてしまうだろう。
そう判断した海斗は苦笑しつつ、
ぱたり、と横たわり、大人しく安静に…。
アクティブというか落ち着きがないというか、
そんな海斗にとって、安静にしているという行為は退屈で仕方のないこと。
相変わらず、頭は痛いけれど…それよりも暇だというツマラナさが、それを上回る。
ゴロン、ゴロンとベッドで落ち着きなく海斗。
退屈で仕方ないのね。まぁ、わかるけど…気持ちは。
おとなしくしてないと、治らないでしょ。
早く、良くなって欲しいもの。やっぱり。
退屈そうにしている海斗を見つつ笑い、
海斗の話し相手となって、色々と聞いてあげる夏穂。
ほとんどが、よくワカラナイ、ロボットやらアニメの話だが、
喋っている海斗は、何とも楽しそうだ。
夏穂は、うんうん、と頷き、
一生懸命に話す海斗にクスクス笑う。
ほのぼのとしていて、それでいて良い雰囲気なような。
海斗と言葉を交わす夏穂も、楽しそうだ。
そんな夏穂の笑顔を見て、
彼女の傍にいた護獣、蒼馬と空馬は、ちょっと不機嫌になったらしく。
ポカッ、ポカッと二匹揃って海斗の頭に軽い蹴りを入れた。
「いて。ひでー。病人に何すんだよ」
苦笑しつつ、蹴られた頭をさする海斗。
夏穂は、ふふふ…と笑って言った。
「気に入られてるみたい。良かったね」
「気に入られてるって…これで?…あ、いてっ」
疑惑の眼差しを向けるも、夏穂はニコニコ。
うん…いや、気に入られているわけじゃないと思う。
いや、絶対に違う。やきもちを焼いているんだと思う。
いや、絶対にそうだ。
けれど夏穂は、ずっとニコニコ。気付いていないようだ。
さすがに、ちょっと驚きはしたものの、
海斗は確実に回復してきている。
まだ少し顔が赤いけれど、いつもの海斗だ。
蒼馬と空馬に、やめろーと言う海斗を見つつ夏穂は微笑む。
早く、良くなるといいね。
いつもの元気な海斗に、戻って欲しいよ。
ちょっとウルサイな、とは思うけど。
元気がない海斗なんて、海斗じゃないものね。
うん。早く、良くなりますように。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■
7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度さまです! ゝ(▽`*ゝ)(ノ*´▽)ノ
今更ですが、夏穂ちゃん可愛いっす!こんな可愛いこに看病されるなんて。
羨ましい限りです。夏穂ちゃんのお陰で、きっとすぐに良くなると思います。
ありがとうございます!…と海斗が申しておりました(笑)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!
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2008.05.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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