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■INNOCENCE / 38度5分 (限定受注)■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
どうやら、かなり大きな仕事だったようだ。
結果報告を兼ねて話すエージェントは、
見るからに着かれきった表情をしている。
「部屋で、ゆっくり休んだら?」
そう労いの言葉をかけたとき。
ドサッ―
突如、エージェントが その場に倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと…!?」
慌てて抱き起こせば、その熱さに、すぐ気付く。
酷い熱だ。風邪を引いているのだろう。
こんな状態で過酷な仕事に行くなんて…無茶するなぁ。
とりあえず、運ばなきゃ。
看病…してあげなきゃね。
INNOCENCE // 38度5分

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OPENING

(お。梨乃ちゃん、帰ってきたね)
エントランスから歩いてくる梨乃を見つけ、微笑む蓮。
中央階段を降りつつ、梨乃に寄って行く蓮の髪は濡れている。
どうやら、お風呂上りのようだ。
海斗に付き合って、ソルティアレンジャーごっこ(何だそれ)をしたことで、
予想外の汗をかいてしまって気持ち悪いが故に、サッと湯浴み。
梨乃が仕事から戻ってくるまでの、暇潰しも兼ねて。

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「梨乃ちゃん。おかえり」
微笑み声を掛ける蓮。
俯き歩いていた梨乃はパッと顔を上げ、蓮を確認すると、
微笑み返し「ただいま」と言って、テクテクと歩み寄ってきた。
湯浴みをする前に、すれ違ったマスターから聞いていた情報。
梨乃の仕事は、かなり過酷なもの。
一人で遂行するには、ちょっと難儀な気配。
それでも梨乃は、一人で仕事に行った。
依頼人が友人だったこともあり、気張って行ったとのこと。
蓮は梨乃の頭を撫でつつ言う。
「声、掛けてくれれば手伝ったのに」
「ふふ。そうですね…声、掛ければ良かったなぁって思います」
苦笑して返す梨乃。よほど疲れているのだろう。
どことなく、梨乃の笑顔は、憂いを含んでいる。
「軽くマスターからは聞いたんだけどさ。どんな仕事だったの?実際」
マスターから聞いた情報は、あくまでも軽いもの。
ただ過酷だ、と聞かされただけで、
実際、どんな仕事なのかは聞かされていない。
蓮の問いに、淡く微笑んで言葉を返そうと、小さく…息を吸い込む梨乃。
その時、突然、目の前が真っ白に。
(あれっ…)
何だろう、と思えたのは、一瞬だけ。
梨乃は、そのまま蓮に凭れるようにして気を失ってしまう。
「え。梨乃ちゃん?ちょ…」
いきなり抱きついてくるなんて、大胆になったなぁ。
と思うも、すぐに蓮は梨乃の異変に気付く。
触れれば、梨乃の身体が熱く火照っているではないか。
呼吸も荒く、額には汗が滲んで…。
明らかに、風邪を引いている。その症状だ。

*

抱きかかえて、梨乃を部屋に運んだ蓮。
ベッドで眠る梨乃を見つつ、蓮は肩を竦めて笑う。
やれやれ…真面目すぎるのも考え物だね。
具合、悪かったんだろうな。出発する前から。
こんな状態で、過酷な仕事なんて…無茶するなぁ、本当に。
ベッド横に椅子を置き、座って梨乃の様子を窺う蓮。
やがて、気を失っていた梨乃がフッと目を開く。
「………?」
飛び込んでくる、見慣れた自室の天井。
そのはずなのに、何が何だか、わからない。
自分が、どうやってここまで来たか。覚えていない。
覚えているのは、蓮が声を掛けてきて、それから…それから…?
虚ろに目を泳がせて、チラリと横を見やる梨乃。
すると、そこにはジッと自分を見つめる蓮の姿。
いつもの梨乃ならオーバーな程に驚き、
慌ててジタバタするだろうけれど、さすがに今は…。
「蓮さん…?」
どうして、ここにいるの?と言いたげな梨乃。
蓮はクスクス笑い、倒れたこと、運んできたことを梨乃に説明した。
「…ご、ごめんなさい…」
覚えていないが故に、更に申し訳ない。
梨乃は虚ろな目で蓮を見つめつつ、何度も謝る。
「そんなに謝らなくていいよ。当然だしね、介抱するのは」
「…ありがとうございます」
「ところで、どう?具合は」
「えと…ちょっと頭が痛い…です」
「他は?」
「…えぇと、特には」
「そっか。凄いな、さすがだ」
「…?」
実は、先程、梨乃の身を案じてマスターが様子を見に来た。
その際、マスターは梨乃に治癒の魔法をかけていったそうだ。
マスターの魔法は、やはり、かなり強力。
梨乃を唸らせていた高熱を、丸ごと癒してしまった。
とはいえ、魔法は万能薬ではない。
とりあえず落ち着きはしたものの、完治というわけにはいかないのだ。
僅かに残る頭痛は、その証。

「梨乃ちゃん…何か、色っぽいね」
「え…?」
髪に触れながら、淡く微笑んで言った蓮。
確かに、何となく…今の梨乃は色っぽい。
目がトロンとしているからだろうか。
いつもどおり見つめられているのに、何だかドキドキする。
いや、寧ろ…。
「ソソるね」
梨乃の髪に指を絡ませつつ言う蓮。
蓮の言葉に頬を染め、思わずタジろぎ起き上がろうとする梨乃。
蓮は、そんな梨乃を押さえて言う。
「あ〜駄目駄目。寝てないと。ね?」
「うぅ…」
だいぶ回復したとは言え、まだ微妙に身体が言うことを聞かない。
至近距離で微笑む蓮に、梨乃の心臓はバクバク。
さっきよりも、様態が悪化しているような感覚…。
熱は下がったはずなのに、真っ赤な梨乃。
蓮はクスクス笑い、そのまま梨乃をベッドに寝かせる。
いや…押し倒したというべきか…。

沈黙し、どのくらいの時間が経過しただろう。
両腕を押さえられ、梨乃は身動きが取れない。
泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ視線。
心臓が飛び出しそうだ、息苦しい。
うまく、呼吸ができない。
乾く喉に、コクリと息を飲んでは落とす梨乃。
波打つ、梨乃の喉。それを見下ろす蓮は、何とも楽しそう。
まだまだ、ゆっくり眺めて観察していたいけれど。
このままだと、梨乃ちゃん、また気を失っちゃいそうだね。
蓮はクスクス笑うと、ふっと身体を少し起こした。
押さえられていた腕が解放される。
慌てて起き上がろうとする梨乃。
だが蓮は、まだ悪戯を止めない。
勢い良く起き上がった梨乃の両腕を掴んで。
そのまま、再び…パタリ。
「うぅ…」
先程と同じ体勢になってしまった。
遊ばれてるとわかっていても、恥ずかしくて仕方ない。
どうすればいいのか、まるでわからない。
梨乃の頭は、ポンッと破裂しそうな状態だ。
過剰に反応し、その度に染まっていく頬。
それを楽しみつつ、蓮は、梨乃の腕を押さえたまま耳元で囁く。
「貰ってあげるよ」
「な、何をですか…」
あさっての方向を見つつ言う梨乃。
蓮は、そんな梨乃の唇に口付けを落とす。
「!」
身動きがとれないゆえに、梨乃は逃げ出すことも拒むこともできない。
キュッと固く目を瞑って、爆発しそうな心臓にハラハラする梨乃。
七秒間のキス。
ふっと唇を離す蓮。
僅かに開いた、唇と唇の間で蓮はクスクス笑って呟く。
「これで完璧に治るよ、きっと。…風邪」
「………はぅ」
くたっ、と脱力してしまう梨乃。
貰う、とは…風邪のことだったのか。
気付いたものの、何も言葉を返せない。
風邪は、治るかもしれないけれど。
それよりもっとタチの悪い…"病"に堕ちていく感覚。
偽りようのない想いに、梨乃はただ、戸惑うばかり。
「ゆっくり休みなよ」そう言って部屋を出て行った蓮。
扉が閉まると同時に、梨乃は、はふぅ…と息を漏らした。
おだいじに。…色んな意味で、ね。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! (ΦωΦ)ノシ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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