コミュニティトップへ




■INNOCENCE / 唯一、愛した女 (限定受注)■

藤森イズノ
【7433】【白月・蓮】【退魔師】
本部に立ち寄ったときのことだ。
正面エントランスで、見知らぬ女性と擦れ違う。
(…?あんな人、いたっけな?)
イノセンスに所属して、それなりの時間が経過した。
もう、ひととおりのエージェントと接触している。
けれど、女性に見覚えはなかった。
あれこれと思い返してもみるが…。
やはり、心当たりはない。
もしかして、加入希望だろうか。
それなら、案内してあげなくては…。
そんなことを考えていると、女性が声をかけてきた。
女性の第一声、それは。
「ねぇ。藤二、いるかしら?」

また?もしかして、この人も、藤二がナンパしてきた人?
ちょっと呆れもしたが…女性の表情から察するに、
何やら…訳ありというか…妙な感じがする。気のせいかな?
INNOCENCE // 唯一、愛した女

------------------------------------------------------

OPENING

本部に立ち寄ったときのことだ。
正面エントランスで、見知らぬ女性と擦れ違う。
(…?あんな人、いたっけな?)
イノセンスに所属して、それなりの時間が経過した。
もう、ひととおりのエージェントと接触している。
けれど、女性に見覚えはなかった。
あれこれと思い返してもみるが…。
やはり、心当たりはない。
もしかして、加入希望だろうか。
それなら、案内してあげなくては…。
そんなことを考えていると、女性が声をかけてきた。

------------------------------------------------------

「ねぇ、ちょっと。そこの…あなた」
「はい?」
ニコッと微笑む蓮。
蓮が満面の笑顔なのには理由がある。
声をかけてきた見知らぬ女性は、とてつもなく美人。
イノセンスで一番の美女…と言えるであろう千華に引けをとらない美しさだ。
うーん。美人さんだ。
どこから見ても美人さん。
スタイルいいなぁ、バランスが良いっていうか。
ん、でも、ちょっと化粧が濃いような気もするかな。
もう少し軽いほうが良いんじゃないかなぁ。
肌、綺麗だし…っていうか、いくつなんだろう。
パッと見た感じだと、同い年か…少し上ってところだけど。
見やりつつ、そんなことを考えていると、
女性は残念な言葉を吐いた。
「藤二、どこにいるの?」
「………」
苦笑してしまう蓮。
何だ…藤二のお手つきか。
それなら、どうにもならないな。
ちょっと期待したんだけど。色々と。
ん?例えば…そうだな、案内した"お礼"とかね。
ふぅ…やれやれ。ま、仕方ないか。よし。
「地下ラボにいると思います。案内しますよ」
「ありがとう」
「いえいえ」

「一つ、聞いても良いですか?」
「何かしら」
「藤二とは、どういう関係ですか?」
「秘密」
「…そうですか」
淡々と、素っ気無く、綺麗な声で返答する女性に苦笑する蓮。
何だろうな、この感じ。…あ、あれだ。
千華さんと喋ってるときみたいな感じなんだ。
そうそう、こんな感じなんだよなぁ。いつも。
この人の雰囲気は…ちょっとキツい感じがあるから、その辺は違うけど。
薄暗い階段を降り、蓮は地下ラボに女性をご案内…。

*

「えーと…あ、いた」
キョロキョロと辺りを伺いながら進む地下ラボ。
藤二は今日も、機械弄りを楽しんでいる。
「藤二」
蓮が声をかけると、藤二はゴーグルを外し微笑んで蓮を迎える。が。
「おぅ、蓮。どした…って、うぉっ!?」
ギョッとして、一歩退く藤二。
動揺しているのだろう、外したゴーグルが勢い良く後方に吹っ飛んだ。
いつでも余裕の構え、そんな藤二の動揺っぷり。
それは、蓮にとって非常に興味深い反応だ。
動揺の原因は、間違いなく…この女性。
女性は、動揺している藤二を見つつ腕を組み不敵な笑みを浮かべている。
(これは…面白そうだ)
二人の関係に、ワクワクする蓮。

藤二が淹れたコーヒーを一口飲み、
足を組みなおして「相変わらず、不味いわね」と苦笑する女性。
女性のその言葉に藤二は「すみませんね」とはにかみ笑い。
仲が良いような悪いような…不思議な感じだ。
蓮はコーヒーを飲みつつ、藤二に尋ねる。
「藤二、この綺麗な人は…キミの何?」
「あ〜〜〜〜…」
「何、躊躇ってるのよ」
言葉を濁す藤二にスパッと言い放ち笑う女性。
藤二は、ガシガシと頭を掻き、小さな声で言った。
「……モトカノ」
ほぅ、モトカノですか。
うんうん、まぁ。そうだろうとは思ったけどさ。
それだけじゃないよね、絶対。
ただのモトカノじゃないでしょ。
蓮はニヤニヤしつつ、更に追求。
「それだけ?」
「あ〜〜〜〜…」
「あんた、そういうところも相変わらずなのね」
言葉を濁す藤二にスパッと言い放ち呆れ笑う女性。
藤二は、ワシワシと頭を掻き、小さな声で言った。
「……名前を聞けば、ピンとくるんじゃないかな。蓮なら」
名前?この人の…?そういえば、まだ聞いてなかったな。
蓮は、コーヒーカップをテーブルに置いて女性に聞いてみた。
「えぇと。というわけで…お名前は?」
女性はクスクスと笑い、目を伏せて返す。
「華恋よ。青沢・華恋」
「華恋さん、ですか。ふぅん…って、あれ?」
反応する蓮。反応すべきところ。
それは、ファミリーネーム。
青沢…青沢って…千華さんと一緒だ。
え?あれ?もしかして…あれれ?マジで?

*

女性の名前は、青沢・華恋。
蓮がピンときたとおり、彼女は千華の実の姉だ。
年齢は、千華の一つ上。要するに、藤二と同い年の三十歳。
まるで三十歳には見えないことにも驚くが、
やはり、千華の実姉だということのほうが、驚きを上回る。
「千華さんのお姉さんだったとは…どおりで、綺麗なはずだ」
「あら。お上手ねぇ」
「いえいえ、真実を言ってるだけですよ」
「ふふ。ありがとう。藤二、このコ…似てるわね。あんたに」
「…かもなぁ」
「ま、あんたと違って素直そうだけど」
「…はは」
しばらく言葉を交わしているが、藤二は相変わらず、ぎこちない。
付き合っていたときも、こんな風にぎこちなかったのだろうか。
…いや、それはないよな。さすがに。
様子がおかしいままの藤二を見つつ、むーと考える蓮。
すると、華恋が、蓮のその疑問を払うかのような言葉を放った。
「で、藤二。あれから、どうなの?順調に数は重ねてる?」
(…数?)
む?と藤二を見やる蓮。
蓮の眼差しに、藤二は気まずそうな顔をしつつ言った。
「おかげさまで…」
「そう。安心したわ。不能じゃなくて」
「…お前も相変わらずだな」
苦笑する藤二。華恋が放った"安心"の理由で全てを理解する蓮。
そう、この二人は二年間のお付き合いの中で、キスしかしていないのだ。
あの藤二が、キスだけなんて、おかしな話。
まったくもって、それ以上をしなかったわけじゃない。
試みはした。けれど、どうしても抱けなかった。
抱きたい、愛しているから。
その想いは確かにあるのに、抱けない。
何度も試みては断念する藤二を見て、
華恋は、その度に不安になったという。
自分に何か、至らないところがあるのではないか…とか、
それこそ、本当に…抱けない身体なのではないか…とか。
口では冷たく「だらしないわね」と言うも、不安だった。
けれど、藤二の女好きは当時から、かなりのもので。
当然のごとく、藤二は何度も浮気を重ねた。
その浮気相手の中に、華恋の友人がいたのがウンのつき。
何の問題もなく一夜を共に明かしたことを聞いた華恋は、
すぐさま藤二をフッた。
その後、すぐに華恋は仕事で異国へ行ってしまった為、
二人はそれっきり会っていなかった。実に、八年ぶりの再会だ。
華恋に、あれこれ説明されて、頷きつつクスクス笑う蓮。
蓮が笑っている理由をすぐさま理解した藤二は、
もう勘弁してくれ…と華恋に願う。

*

一日だけ完全フリーを取れたから、と藤二の様子を見に来た華恋。
明日からまた仕事だわ、と溜息混じりに笑い、
彼女は千華に挨拶してから帰るわと言って地下ラボを後にする。
華恋が去り、蓮と藤二は二人きり。
蓮はニヤニヤ笑い、藤二を見やって言う。
「本当、綺麗な人だね」
「…まぁなぁ」
「ふふふ」
「何だよ…」
「藤二も可愛いとこあるよね」
「うっさいよ〜」
「ね、まだ愛してるんでしょ? …誰よりも。ふふふふ…」
「はい、うるさい〜。黙れ〜。帰れ〜」
「藤二」
「何だ」
「コーヒーおかわり、もらえる?」
「………」
蓮の追求から逃れることは出来ない。
地下ラボで、じっくりと話す二人。
愛しているがゆえに、愛しすぎているがゆえに。
そういうことも、あるもんだ。

------------------------------------------------------

■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・華恋 (あおさわ・かれん) / ♀ / 30歳 / 藤二のモトカノ・千華の実姉・デザイナー

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です! (ΦωΦ)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

-----------------------------------------------------
2008.05.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------