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■INNOCENCE / 極甘カレー (限定受注)■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
特に用があるってわけじゃないんだけどな。
何つぅか、近くを通ったから。ついでに。
(ジィさん(マスター)に挨拶でもしてくかな…)
近くを通りかかったついでに、イノセンス本部に立ち寄ったディテクター。
本部は相変わらず、優美である。
ウチの本部も、こんくらい綺麗だったらなぁ…。
ムサ苦しいんだよな、ウチは…。
そんなことを思いつつ、セントラルホールを歩いていると。
「あれ。ディテクターさん?」
背後から、聞きなれた声が。
振り返ると、そこには浩太の姿。
どうやら、これから昼食らしい。
浩太は、手にカレーを持っている。
「………」
沈黙してしまうディテクター。
その理由は、カレーから放たれている、何とも甘ったるい香り。
カレーだよな、うん。見た感じはカレーだ。
見まごうことなき、カレーだ。
でもな、何なの、その匂い。
胸ヤケしそうだ…。
本当に、カレーですか、それは。
っつうか、何だろう。とてつもなく嫌な予感がする。
ディテクターの額に、ジワリと汗が滲んだ。
INNOCENCE // 極甘カレー

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OPENING

特に用があるってわけじゃないんだけどな。
何つぅか、近くを通ったから。ついでに。
(ジィさん(マスター)に挨拶でもしてくかな…)
近くを通りかかったついでに、イノセンス本部に立ち寄ったディテクター。
本部は相変わらず、優美である。
ウチの本部も、こんくらい綺麗だったらなぁ…。
ムサ苦しいんだよな、ウチは…。
そんなことを思いつつ、セントラルホールを歩いていると。
「あれ。ディテクターさん?」
背後から、聞きなれた声が。
振り返ると、そこには浩太の姿。
どうやら、これから昼食らしい。
浩太は、手にカレーを持っている。
「………」
沈黙してしまうディテクター。
その理由は、カレーから放たれている、何とも甘ったるい香り。
カレーだよな、うん。見た感じはカレーだ。
見まごうことなき、カレーだ。
でもな、何なの、その匂い。
胸ヤケしそうだ…。
本当に、カレーですか、それは。
っつうか、何だろう。とてつもなく嫌な予感がする。
ディテクターの額に、ジワリと汗が滲んだ。

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(ん…?何だろう。スパイシー…なんだけど甘い香り?)
イノセンス本部、書庫で古書を満喫し、
外に出てきたシュラインは首を傾げる。
辺りに充満している、何ともいえない香り。
一体どこから…と、キッチンを覗いてみるものの…誰もいない。
うーん?香辛料たっぷり使ったパンケーキかしら、これ。
っていうか、一体どこから……あっ。
香りの出所を探してウロウロしていると、
セントラルホールに、見慣れた姿が。
ディテクターの傍には、浩太もいる。
何してるのかしら…まさか、喧嘩じゃないわよね。
ちょっとだけ不安に思いつつ…シュラインは階段を降りて二人に駆け寄った。

「何してる…のって、わぁ…?」
近寄り、ギョッとするシュライン。
彼女が目を丸くしている原因は、浩太が持っている…カレーだ。
まぁ、見た感じは普通のカレーなんだけど。
ものっすごく甘ったるい香りが湯気と共に漂っている。
何ともいえない香りは、このカレーから発されているようだ。
ディテクターに、どうしてここにいるの?と質問する気が失せた。
それほどまでに、浩太が持っているカレーは珍妙な香りを放っているのだ。
じーっとカレーを見つめるシュライン。
海斗くんが…言ってたわね、そういえば。
浩太くんの作るカレーは、砂糖を食べてる感じだ、って。
う〜ん。見た感じは普通なんだけどね。
この匂いは…妙よねぇ。べっこう飴みたいな匂いがするもの。
カレーなのに…。うん、妙よねぇ…。
じっと、揃ってカレーを見つめるシュラインとディテクター。
二人の熱い(熱くない)眼差しに、浩太はニコリと微笑んで言った。
「ご一緒に、いかがですか?たくさんあるので」
「え?」
「………」
キョトンとするシュラインと、
しまったぁぁぁぁ…と、苦笑を浮かべるディテクター。
そういうつもりじゃなかったんだけど。
ただね、どうなんだろう…って気にしてただけなのよ。
あぁぁ…でも、そんな爽やかに微笑まれたら…断れないわよね。
「喜んで、ご一緒するわ」
ニコッと微笑み返すシュライン。
ディテクターは諦めたのか、はぁ…と溜息を落としている。
「じゃ、行きましょう。中庭で食べようと思ってたんです」
「あ、そうなの?じゃあ私、飲み物取ってくるわね。二人は先に行ってて」
「げ。お、おい、シュライ…」
不安気な表情で、がしっとシュラインの腕を掴むディテクター。
シュラインはクスクス笑い、小声でディテクターに呟く。
「逃げないから安心して。私が行くまで、口に入れないで待っててね」

*

中庭…向かい合って座る浩太とディテクター。
目の前で美味しそうにカレーを食す浩太を見つつ、
ディテクターは口半開きで苦笑している。
パタパタと駆け寄ってくるシュライン。
「お待たせっ」
席に着き、ニコリと微笑むシュライン。
浩太は、どうぞどうぞ、とカレーを勧めた。
御用意されたカレーを三秒ほど目で楽しんで、
意を決し、パクッと一口…。
(うわぁ……)
何という甘さ…。
海斗が言っていたとおりだ。
砂糖だ。ドロドロになった砂糖を食べている感じ。
妙に舌触りも、ザラザラするし…お世辞にも、美味しいとは言えない。
というか、不味い。甘い、不味い、甘い、不味い…。
何とか堪えつつ、カレーを食していくシュライン。
隣のディテクターは、俯きプルプルと震えている。
口は、もごもご…。飲み込めずにいるようだ。
「得意なんですよ、僕。カレーだけは」
ニコッと屈託なく笑って照れくさそうに言う浩太。
「ふふ。そうなんだぁ」
シュラインはニコニコ笑い返しつつ、
テーブルの下、ディテクターの膝にコツンとあてる。
あてているのは、タバスコやラー油、唐辛子など。
せっかく振舞ってくれたんだもの、食べなきゃ失礼。
けど、探偵さんに、この極甘は…拷問ね。
飲み物を取りにいったついでに、かき集めてきた香辛料。
どうぞ、使って下さいな。…バレないようにね。
ディテクターは、ありがたい…と一礼し、
香辛料を受け取って、さりげな〜く極甘カレーに混ぜる。
辛さで相殺…とまではいかないけれど、何とか誤魔化して…。

さすがに、キツかった。
やはり、どう足掻いても誤魔化しにしかならないわけで。
甘いもんは甘い。それは、拭えぬ事実だった。
加えて、唐辛子が強烈だったこともあり。
甘い…辛い!甘い…辛い!その繰り返し。
百面相のように表情が変わるディテクターを見て、終始キョトンとしていた浩太。
今日ほど…今日ほど、その無垢な表情を憎いと思ったことはない。
ぐったりとソファに凭れるディテクター。
何とか完食することは出来たけれど、負ったダメージが大きすぎる。
「気持ち…悪っ」
うぷぷ…とうな垂れて、ゲッソリなディテクター。
シュラインは、ディテクターの背中を擦りつつ、レイレイに連絡。
さすがに、今日はもう無理よね。
こんな状態で歩かせるのは気が引けるし…。
タシ・エクの背中に乗せて帰っても良いけど、
…何か、余計に具合悪くなっちゃいそうだものね。車酔いみたいな…。
本部にお泊りしていくことと、その事情をレイレイに説明した後、
シュラインは、クスクス笑ってディテクターの背中をポンポンと叩く。
頑張ったわね、探偵さん。
ちゃんと全部食べて、うん。偉い、偉い。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です! (ΦωΦ)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.05.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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