■INNOCENCE / モテ期 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】 |
軽く食事してあげるだけで良いんだ。
それで、きっと満足するだろうから。
そう言って両手を合わせ、何度も「オネガイ!」と頼み込む。
何とも必死な、その姿に、うーんと苦笑…。
参ったなぁ…正直、面倒くさいっていうか、
気乗りはしないんだけど…。
そこまで頼まれちゃあ、断れないよね。さすがに。
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INNOCENCE // モテ期
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OPENING
軽く、お話してあげるだけで良いの。
それで、きっと満足するだろうから。
そう言って両手を合わせ、何度も「オネガイ」と頼み込む。
何とも必死な、その姿に、うーんと苦笑…。
参ったな…正直、面倒くさいっていうか、
気乗りはしないけれど…。
そこまで頼まれちゃあ、断れない…。さすがに。
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「連絡先は?」
「あっ、はい。えと……」
しばらく悩んでいたけれど、凍夜はOKしてくれた。
友人と、食事してくれるって、OKしてくれた。
きっかけは、先週。
本部に遊びにきていた友人が、凍夜とすれ違ったこと。
トイレから戻ってきた友人は、頬を染めていた。
どうしたの?と尋ねれば、友人は躊躇いがちに呟いた。
「一目惚れとか…ありえないよね?」
誰か、気になる人…見つけたの?
可愛らしく照れる友人に尋ねていけば。
一つ一つ、特徴が漏れていく。
銀色の髪、赤い目、背が高くて、ちょっと…冷たい感じの…。
大雑把な特徴でも、うん…?と思ったけれど。
より細かく特徴が漏れていく度に、それは確信へと変わっていった。
友人の心を奪った人物、それは…梨乃がよく知る人物。いや、知りすぎている人物…。
友人から預かっていた名刺を手渡す梨乃。
名刺には、友人の名前と携帯電話の番号が書かれている。
「すぐに…連絡したほうが良いのか?」
「あっ、はい。出来れば…」
「わかった。じゃあ、部屋戻るから」
「はい」
名刺片手に、部屋へと戻って行く凍夜。
その背中を見やって、梨乃は目を伏せた。
沸々と湧いてくる…歪んだ気持ちに耐えながら。
凍夜に心を奪われた女性、梨乃の友人であるその女性の名前は『ミオ』
年齢は、梨乃と同じ、十八。
イノセンスに所属はしていないが、よく本部に遊びにくる女の子だ。
直接言葉を交わしたことはないけれど、何度か見かけたことがある。
まぁ、凍夜がそれに気付くのは、ミオと対面した時だけれど。
さて……。どこに誘えば良いんだ?
…というか、ここは俺が決めて良いところなのか?
でもな…電話をかけて、じゃあどこにする?って話になると、
何だかグダグダになりそうだ。任せる、って言い合いになりそうだしな…。
そうなったら面倒…というか、どうすれば良いかわからない。
決めてから連絡した方が良いな、うん…。
さて、どこにしようか…と雑誌を手に取る凍夜。
と言ってもなぁ…デートってやつだろ?要するに、これは。
デートらしいデートなんて、したことないんだよ…。参ったな…。
うーんうーんと唸る凍夜。扉の前、梨乃は複雑な表情だ。
伝えに来たのに。友人が、行きたがってる場所があるのって。
伝えに来たのに。扉をノックできない。
心のどこかで、伝えたくないって思っている自分がいるから。
協力するって言って引き受けたのに。どうして、こうなるの?
こんなの、裏切り…みたいじゃない。どうして…。
凍夜の部屋、扉の前。身動きできずに目が泳ぐ。
戸惑っている梨乃。そんな梨乃を、コソコソと観察している人物が…。
「悩んでるなぁ…」
「何か、初々しいわよねぇ」
「懐かしいよなぁ、ああいう感じ」
「あんたにも、あったの?ああいう時期」
「失敬だな、お前」
壁に隠れてクスクス笑う藤二と千華。
二人にとっては懐かしい…甘酸っぱい、そんな光景。
結局、伝えることができずに、梨乃は逃げ出してしまう。
部屋に戻って、後悔に苛まれて…。
*
「き、今日はありがとうございました!」
「…あぁ(それ、言うタイミング…今か?)」
待ち合わせ場所の公園で、顔を合わせて早々、感謝を述べたミオ。
それは一般的に、別れの際に言うべき台詞だ。
ペコペコと頭を下げるミオ。そこまでペコペコしなくても…。
壊れた玩具のようにお辞儀を連発する中、ミオの耳からピアスが落ちた。
どんだけ頭振るんだよ…ヘッドバンギングか。
苦笑しつつ、歩こう、と踏み出す凍夜。
「は、ははははいっ」
ジタバタと後をついてくるミオ。
彼女の落ち着きない言動から、凍夜は把握する。
なかなかのドジ娘のようだ。
公園を並んで歩く二人。
隣に、心を奪った人物。夢のような展開。
ミオは舞い上がり、ドジを連発。
何か…こう、呪われてるとかじゃないのか?と思うほどのドジっぷり。
失敗してはペコペコと謝るミオに、凍夜はクックと笑う。
見ていて飽きない…何というか…小動物みたいな奴だな。
どんなにドジっても、気にするなと微笑んでくれる凍夜。
冷たそう…そう思った第一印象と、違う暖かさ。
いや、その冷たそう…っていうのも心を奪った原因の一つなんだけれど。
意外な裏切りというか、嬉しい裏切りというか。
かっこいい上に優しいなんて…もう、どうしようもないじゃないですか。
他愛ない話をしつつ、ミオは戸惑う。
一度だけ、会って話がしてみたい。
二人きりで、話がしてみたい。
それだけでいい。それだけでいいって…思っていたはずなのに。
欲張りになっている自分がいる。
いけないことかな。欲張るのは。
でもでも…こうなるんじゃないかって気はしてた。
話すだけで満足なんて…するわけないんだもの。
黙りこくったままのミオ。
何か…不愉快にさせるようなことをしただろうか。
「…どうした?」
不安になった凍夜が首を傾げて尋ねる。
ミオは頬を染め、俯いたまま…小さな声で呟き、伝えた。
とどめておくことの出来ない、自分の想いを。
*
本部に戻ってきて早々、凍夜は梨乃を発見する。
まぁ、目に入って当然だ。
セントラルホールのソファで本を読んでいるのだから。
気になって、気になって、仕方なくて。
部屋でジッとしていることができなくて。
うっとおしいかな、とは思ったけれど。
待っていた。帰ってくるのを、待っていた。
「あ、おかえりなさい…どう…」
どうでした?と聞こうとするも、口ごもってしまう。
気になるけれど聞きたくない…もやもやする気持ち。
俯く梨乃の肩をポン、と叩き、凍夜は微笑み歩いて行く。
「今日の食事当番、お前だろ?」
「えっ…あ、は、はい」
「メニューは?」
「えと、今日は…カルボナーラです」
「はは。美味そう。もう…食えるよな?」
「は、はいっ。すぐ準備しますっ」
パタパタと階段を上り、レストラン・キッチンへと走っていく梨乃。
梨乃の背中を見やりつつ、凍夜はふ、と淡い笑み。
ミオが伝えた想い。
付き合ってくれませんか?
その真っ直ぐな想い、ありがたいとは思った。
けれどOKはしない。できない。できなかったんだ。
そりゃ、そうだろ。気になってる奴がいるんだから。
嬉しかったよ。嬉しかったけど…受け止めることはできなくて。
申し訳ないなとは思うけれど、心から感謝してる。
同時に、強く思ったんだ。
俺も…想いを伝える努力をしていこう、と。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^
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2008.05.28 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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