■INNOCENCE / 灯月 -toge- (限定受注)■
藤森イズノ |
【7433】【白月・蓮】【退魔師】 |
「…あらら」
任務を終え、本部に戻ろうとしたのに。
何でこった。大雨で土砂崩れ。
唯一の交通手段である列車がストップしてしまっている。
駅員に尋ねてみれば…回復には、かなり時間が掛かるらしい。
外は大雨。歩いて帰るには、かなりキツイ。
遠出してきてるしね…。
参ったな…。
さて、どうしたものか。
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INNOCENCE // 灯月 -toge-
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OPENING
「…あらら」
任務を終え、本部に戻ろうとしたのに。
大雨で土砂崩れ。
唯一の交通手段である列車がストップしてしまっている。
駅員に尋ねてみれば…回復には、かなり時間が掛かるらしい。
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「…困りましたね」
ちょこん、と駅のベンチに座り呟く梨乃。
蓮は、梨乃の濡れた髪に、そっと触れる。
大雨ね…うん、まぁ、怪しいかなとは思ってた。
でもまさか、ここまで大降りになるとは思わなかった。
予想外、想定外の事態。帰れなくなって、足止め。
列車は動かない。唯一の交通手段なのにね。
歩いて帰るには、遠すぎる。
そもそも、こんな雨の中、歩いて帰るのは無謀だね。
八方塞がり、どうしようもない。
だからキミは困ってる。俯いて、どうしようって考えてる。
一つしか、ないでしょ?もう、こうなったら一つしか。
キミは、それに気付いてる。気付いてるはずだ。
だからかな?だから、そんな顔…してるのかな?
「蓮さん…?」
髪に触れつつも、何も言葉を発さない蓮を覗き込む梨乃。
蓮はジッと梨乃を見つめる。
パッと慌てて目をそらした梨乃。
ほらね、やっぱり。気付いてる。
キミは、気付いてるんだ。その上で、戸惑ってる。
本当、いつまでも初々しくて。可愛いよね、キミは。
「よし、行こうか」
「えっ…あの……」
「どこに行くんですか?って?」
「……い、いいえ」
行くべきところは一つしかないからね。
だからこそ戸惑うんだろうけど。大丈夫だよ。…多分ね?
ズブ濡れのまま。手を繋いで二人が向かうのは、駅のすぐ傍にあるホテル。
*
駅と同じくらい…いや、それ以上に混雑しているホテルロビー。
待ってて、と蓮に言われて、梨乃は片隅で待機している。
しばらくすると、人混みを掻き分けて、蓮が戻ってきた。
蓮はニコッと微笑み、ちょっとワザとらしく指先で鍵を回す。
指先で踊る鍵は一つだけ。
まぁ、こうなる予感はしていた。
これだけ混雑しているのだ。部屋が空いていないことくらい…。
一部屋空いていただけでも、運が良いと思う。
そうは思うけれど。戸惑いを隠せるわけもない。
部屋に向かうまで、エレベーターの中、廊下…梨乃は俯いたまま。
梨乃の反応を楽しみつつ、蓮は鍵を開けて部屋の中へ。
二人が泊ることになった部屋は、七階中央の部屋。
和洋折衷なホテルの部屋は、何だかノスタルジック。
広くはないけれど、不思議と落ち着く空間だ。
バルコニーからは、海が一望できる。
靴からスリッパに履き替え、パタパタと部屋の各所を回る蓮。
「いいね。こういう雰囲気。俺、好きだよ」
「そ、そうですね…」
ソファに座る梨乃は、ぴしっと背筋を正して礼儀正しい。
クスッと笑い、蓮は梨乃の隣に腰を下ろす。
「本部に連絡入れないとね」
「あっ!そ、そうでした…」
「ふふ。いいよ。俺がやるから」
「は、はい…」
懐から携帯を取り出し、本部へ連絡を入れる蓮。
任務は無事に完了した、けれど土砂崩れでそっちに戻ることができない。
だから、今日は近くのホテルに泊る。明日には…帰れると思う。
蓮の報告を聞いて、藤二は「了解」
だが、その後ろで海斗と浩太がワーワー騒いでいる。
緊急警報!梨乃が危険だ!緊急警報!梨乃が危険だ!と騒ぐ二人を千華が叱っている声…。
携帯から漏れてくる音を、梨乃は目を伏せて聞いている。
ポソポソと、藤二は言った。「優しくしてやれよ」と。
その言葉に、あははっと笑い、蓮は繰り返す。わざと、少し声を張って。
「うん。わかってるよ。優しく…ね」
(やっ…!?)
パッと目を開けて蓮を見やる梨乃。
蓮は、ニヤニヤと笑っている。
目を逸らして俯いた梨乃に、蓮は満足そうな笑み…。
連絡を終え、携帯をテーブルにコトリと置いた蓮。
蓮は「さて」と言って、スッと立ち上がる。
俯いたままの梨乃。蓮は、そんな梨乃を見つつ…ハラリとシャツを脱いだ。
「!!」
ビクーッと肩を揺らす梨乃。耳まで真っ赤だ。
過敏だなぁ…それだけ意識されてるってことだよね。
光栄ですよ、梨乃ちゃん。
「お風呂入ってくるね」
ぱふ、と梨乃の頭に手を乗せて、バスルームへと向かう蓮。
お、お風呂ですか。お風呂…お風呂ですか。ですよね。
ズブ濡れですもんね。風邪、引いちゃいますもんね。
「は、はふ………」
くたっとソファに寝転がる梨乃。
何を考えているんだか…梨乃は、自分の有様に照れた。
互いにシャワーを浴び、浴衣に着替えて、一息。
窓際のソファに並んで座る。会話は…ない。
ずずず…と御茶を飲む梨乃の手が震える。
どうすれば良いのか、わからない。
テレビ…って感じでもないし、寝るにはまだ早いし。
何か、話を…と思っても、言葉が閊えて出てこない。
押しつぶされそうだ…何に?わからないけれど…。
震える梨乃の手を見つつ、蓮は物思い。
さて…どうしたもんかな、この状況。
ぶっちゃけていい?ぶっちゃけていいならさ。
押し倒したい。今すぐにでも。
でもねぇ、さすがに、それはねぇ。
めっちゃ震えてるし…怖いんだろうな。色んな意味で。
そんな姿を見たら、押し倒すなんて、出来ないよね。
うん、出来ないよ。でもさ、難しいよね。
だってほら、俺も男ですし。
「…ひゃ!?」
湯のみをテーブルに置いた瞬間。
クルリと引っくり返されて…梨乃の目には、蓮と天井が映る。
両腕を押さえて、ソファの上。
見つめ合えば。梨乃の頬は、みるみる紅く染まっていく。
…まぁね。ほら、難しいんだよ。やっぱり。
頭では理解っててもさ。難しいんですよ。
この状況で、我慢しろって…キツい話でしょ。
固く目を閉じている梨乃の首筋に口付ける。
ビクリと揺れる梨乃の身体。その瞬間、蓮の耳が赤く染まる。
(…うわ。何だ、これ)
熱くなっていく耳に慌てて、パッと離れる蓮。
梨乃はゆっくりと目を開き、蓮を見やる。
口元を大きな掌で覆っている蓮の顔が…赤い。
耳まで真っ赤に染めて、あさっての方向を見ている蓮。
回数とか経験とか、そんなものは役に立たない。
本当に愛しい人を抱こうとするとき。
ふと、臆病になってしまう。
それだけ、相手を大切に想っている証。
けれど、初体験の感覚に、さすがの蓮も困惑を隠せない。
何ですか、これは。どうしちゃったの、俺ってば。
あそこまでいって、やっぱ止めた、はないでしょう。
止めたくなんてないくせに。何でだ…何で、こんなにドキドキすんの…?
戸惑い、目を泳がせている蓮。
そんな蓮を見て、梨乃はクスクス笑った。
想いの強さが、緊張を解くこともある。
ふかふかのベッドで身を寄せ合う。
腕の中、すやすやと寝息を立てる愛しい人。
あんなに震えて、強張っていたのに。
安らいで…安心しきった寝顔。
不甲斐ない…この状況で、モノにしないなんて不甲斐ない。
男として、これってどうなの?
っていうか、白月・蓮として、どうなの?
そうは思うけれど、どうすることもできない。
その、揺れる睫を見ているだけで。心臓が爆発しそうなんだ。
いつも傍にいて、話して、触れているのに。
どうしてだろう。どうして、こんなに緊張するのか。
(はぁ…も〜…何なの俺…)
キュッと梨乃の頭を抱き寄せて、目を伏せる。
想いの強さを痛感して。いつもと違う自分を見つけた。
高鳴る鼓動に戸惑いを隠せないまま。
眠る宵に、銀の月。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^
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2008.05.30 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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