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■INNOCENCE / 灯月 -toge- (限定受注)■

藤森イズノ
【7403】【黒城・凍夜】【何でも屋・暗黒魔術師】
「…あらら」
任務を終え、本部に戻ろうとしたのに。
何でこった。大雨で土砂崩れ。
唯一の交通手段である列車がストップしてしまっている。
駅員に尋ねてみれば…回復には、かなり時間が掛かるらしい。
外は大雨。歩いて帰るには、かなりキツイ。
遠出してきてるしね…。
参ったな…。
さて、どうしたものか。
INNOCENCE // 灯月 -toge-

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OPENING

「…あらら」
任務を終え、本部に戻ろうとしたのに。
大雨で土砂崩れ。
唯一の交通手段である列車がストップしてしまっている。
駅員に尋ねてみれば…回復には、かなり時間が掛かるらしい。

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「…参ったな」
駅のソファに凭れて、はぁ…と溜息を落とす凍夜。
何となく、ザッときそうな予感はしてたんだ。
風の匂いだとか、そういうものに気を配れば、そのくらいは理解る。
でもまさか、ここまで大降りになるとは思ってなかった。
いざとなれば、あいつらを召喚して飛んで帰れば…とか考えていたんだけど。
さすがに、この大雨じゃあなぁ…。
梨乃は、風邪なおったばかりだし。
また引きなおしちゃあ、可哀相だしな。
…かといって、どうしろと。
どうにもならない。帰れない。
唯一の交通手段が停止してしまっては、どうすることもできない。
任務は、滞りなく。いとも容易く片付いた。
あとは戻って、依頼人に報告して報酬を受け取るだけ。
だってのに、身動きが取れない。
いくら異能者だからといって、自然現象を覆すことはできない。
「あ。はい、梨乃です。…はい、そうなんです」
凍夜の隣で、本部へ連絡している梨乃。
帰りが遅くなっては心配するだろうと、事前に連絡を入れる。
了解するものの、どうしたもんかのぅ?と苦笑するマスター。
その隣で、藤二が叫んだ。
『一泊してこい!』
「いっ…!?」
叫びにギョッとする梨乃。
目を泳がせている梨乃の頬が赤い。
何だ?と首を傾げる凍夜。
何も知らない凍夜の所作が、また戸惑いに拍車をかける。
わたわたしつつ、ピッと逃げるように通話を終了した梨乃。
動揺している梨乃に凍夜は尋ねる。
「どうした?」
「…い、いえ。あの。その…」
俯き、小さな声で梨乃が呟く。
「一泊してこい…って」
「………」
あぁ、なるほど。そういうことか。
一泊…な。まぁ、そうするしかないかなとも思ってたよ。
幸い、駅の近くにはホテルがあるしな。
この人混みだから、ホテルも人でごった返してる可能性が高いだろうけど。
まぁ、そうするとなると…早いほうが良いよな。
「行くぞ」
「あっ、あの」
梨乃の手を引き、いそいそと駆け出す凍夜。
そうするしかないのは理解っているけど。
でも、さすがに、これは…戸惑うなって、無理な話。
凍夜に手を引かれつつ、頬を染める梨乃。
あ、でも、大丈夫かも。って、何が大丈夫なのか…わからないけど。
部屋が別々なら、何の問題もないもの。って、何が問題なのか…わからないけど。

案の定、ホテルは人でごった返し。
この状況下ということに加え、このホテルは元々人気のあるホテル。
故に、フラリと立ち寄って一泊できることは、早々ない。
確認してくるから待ってろ、と言われてホールの隅で待っていた梨乃。
なかなか戻ってこない凍夜を心配し、一歩踏み出したとき。
人混みを掻き分けて、凍夜が戻ってきた。
けれど、戻ってきた凍夜は、複雑な表情…。
部屋、取れなかったんですか?と尋ねる梨乃。
すると凍夜は、いや…と言って、チャリッと鍵を見せた。
鍵は、一つだけ。要するに、二人で一部屋、同じ部屋。

*

静かな部屋の窓際、向かい合って座る凍夜と梨乃。
黙りこくって十分間。無言のまま、会話はない。
二人の内にあるのは、戸惑いばかり。
この状況で、落ち着けなんて無理な話。
綺麗な部屋に、ベッドは一つだけ。
チラリとベッドを見やる度、恥ずかしさに俯いてしまう。
別に、一緒に眠る必要はないわけだから。
どっちかがソファで休むとか、そうすれば問題ないのだけれど。
二人とも、そこまで頭が回らない。
一つしかないベッドを見て、一緒に眠ると連想してしまうあたり、
二人とも、互いに意識しあっていることが丸わかり。
「…風呂、入ってくる」
「えっ!?あ、は、はいっ」
立ち上がり、バスルームへと向かう凍夜。
雨に打たれて、濡れ冷え切った身体を温めるのは当然のこと。
ごくごく普通のこと、なのに。
この状況だと、妙にイヤラシイ展開に思えてしまう。
なんてことを考えてしまう自分に、嫌悪感。
何考えてるの…私ってば。馬鹿じゃないの、ほんとにっ。
落ち着きなさい、冷静に。
そうすれば、何ともないのに。
そう出来るはずもなく。
いちいち過敏に反応してしまう。
お風呂から上がった凍夜の「どうぞ」の言葉も、
濡れた髪から滴り落ちる雫も、何もかもが "布石" に思えてしまう。
意識しているから、好きだからこその過剰反応。
梨乃は、バスタオルをギュッと抱えて逃げるようにバスルームへ。
見て取れる、梨乃の戸惑いよう。
かくいう凍夜も、同じような想いだ。
故に、梨乃の緊張は、そのままダイレクトに伝わり、伝染る。
ぱふっ、とベッドに座り、憂いの溜息を。
大して意識してなかったんだけどな。
ホテルに入るまでは。しかたのないことだと悟っていたから。
でも、渡された鍵が一つだった、というあの時点から…意識してしまった。
そりゃあ、そうだろう。好きな女と同じ部屋に一泊するんだ。
気にするな、楽にいこう。だなんて、できるわけがねぇ。
ロクに会話もしていない状況。これが、一番気がかりだ。
何でもいいから、話をしなくては。
気まずい状態のまま、二人揃って完徹…とかは勘弁。
いつもどおり、本部にいるみたいに。そうありたい。
さて、どうしたものか。先ず、互いに落ち着くことが大前提なわけで…。

お風呂から上がった梨乃が、キョトンとしている。
ベッドにコロンと寝転んで…眠っている凍夜。
あれこれ考える内に、眠ってしまったのだろう。
ゆっくり歩み寄り、覗き込む顔。
子供みたいな、可愛い寝顔。
その屈託のない寝顔に、ゆっくりと晴れていく緊張。
それまでの戸惑いや妄想、過剰反応が嘘のように。
梨乃は、ストンとベッドに腰を下ろして、凍夜をじっと見つめる。
ちょっと前から気になっていたけれど…目の下に隈がある。
ぐっすりと眠れていないのだろうか。
何か、悩み事だとか、そういうものがあるのだろうか。
凍夜はクールで、弱音を吐かない。
だからこそ、不安になる。
無理して、限界まで耐えるんじゃないかとか、
抱え込み過ぎて、いつか壊れてしまうんじゃないかとか。
そういう性格だから、どうしようもないのかもしれないけれど。
いざというときは、頼って欲しい。
いつも、私が救われて、与えられてばかりだから。
たまには、お返しがしたい。
…って言っても、笑うだけなんだろうな。
何ともないよ、って返して。いつものように微笑むだけなんだろうな。
淡く微笑み、凍夜の瞼に、そっと触れる梨乃。
ふっと目を開ける凍夜。
(ふわっ!!)
慌ててバッと手を離す。
ぼんやりと映る、梨乃の顔。
寝ぼけ眼に、腕を引き。
抱き寄せる、愛しい人。

寝ぼけて、うっかり…抱き寄せてしまった。
既に目は冴えている。意識も、はっきりと。
けれど、一度抱き寄せてしまった以上、押しのけるなんて出来やしない。
自分の腕の中で、顔を真っ赤に染めている梨乃を見やり、凍夜は戸惑う。
何をやってるんだ、俺は。寝ぼけて、こんな展開?漫画じゃねぇんだから…。
やれやれ…と落とす溜息は、自分への呆れ。
その溜息に反応し、ゆっくりと梨乃が顔を上げる。
至近距離で、バチリと交わる視線。
あわわ…と腕の中に潜っていく、その姿。
戸惑いや、呆れは、どこへやら。
その仕草に、心を奪われている自分がいる。
可愛い。
そう思うと同時に、沸々と込み上げる偽りようのない想い。
こう考えてみるのは、どうだろう。
これを、一種の好機だと悟る。
いつも伝えようとして肩透かしを食らう。
この想いを伝える好機だと。そう思えば…。
「梨乃」
「はっ、はぃっ」
名前を呼んではみたものの…照れくさい。
耳が、熱い。俺、今、どんな顔してるんだろう。
想いを伝えようと足掻けば足掻くほど、それは相手に伝わる。
何を言おうとしてるか、嫌でも理解る。
でも、もしも。私の勘違いだったら?
そうだとしたら、みっともないし、恥ずかしい。
何ですか?って聞くべきかな。でも、それって催促っぽくないかな。
っていうか、全然違うことだったら、催促も何もないよね。
あれ…でも、何だろう。微妙に期待してる自分がいるの。
もしかしたら…って予感。ほんのりと、待ち焦がれている自分がいるの。
(う〜……)
どうすれば良いのかわからず、梨乃がとった行動。
それは、ギュッと凍夜に抱きつくこと。
鼻先をくすぐる、濡れた髪。
胸元で重なる、乱れ気味の鼓動。
背中に、ぎこちなく回った腕。
それらに背中を押されるように、凍夜は囁いた。
「…好き、だ」
言葉にしなくても、態度で理解っていたかもしれないけれど。
こうして口にして、言葉にして伝えなきゃ駄目だと思ってた。
何となく、仲が良くて。何となく、恋人みたいで。
そんな曖昧な関係を続けていきたくはないんだ。
愛しいと思うからこそ、腕に閉じ込めておきたいと。
その独占欲は、日々募るばかりで。
告白に、梨乃は言葉を返さない。
言葉の代わりに返すのは、頬に落とす甘い口付け。
何?それじゃあ、わからない。ちゃんと言葉で返して?
そんな野暮なことは、言わない。
十分だ。お前の想いは、伝わってる。

*

夜空に浮かぶ、銀の月。
雨音に紛れて、鼓動の高鳴り。
一つのベッドで身を寄せ合い、抱き合い眠る、銀の夜。
言葉にすることで、更に実感する想い。
重なりあって、揺るがない。互いの想い。
不安なわけじゃないけれど。
何度も交わす口付けに、微笑み合って確かめる。
夢じゃないと、実感したい。酔いしれたい。ただ、それだけ。
恋人として、一緒に眠る始めての夜。
抱く腕にギュッと力を込めたのは、逃がさないの意思表示。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.03 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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