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■INNOCENCE / マディカの書 (限定受注)■

藤森イズノ
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
マディカの書。
そう呼ばれる古書。
漆黒の紙に、銀のインクで連ねた想い。
マディカの書。
そう呼ばれる古書。
著者不明。魔物が書いたのではないかという噂もある。
とにかく謎だらけな書物だが、
この書には、魔法に関する秘術が書かれているという。
その情報を得たイノセンス・マスターは、エージェントに命じた。
秘術記されし、マディカの入手を。
INNOCENCE // マディカの書

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OPENING

マディカの書。
そう呼ばれる古書。
漆黒の紙に、銀のインクで連ねた想い。
マディカの書。
そう呼ばれる古書。
著者不明。魔物が書いたのではないかという噂もある。
とにかく謎だらけな書物だが、
この書には、魔法に関する秘術が書かれているという。
その情報を得たイノセンス・マスターは、エージェントに命じた。
秘術記されし、マディカの入手を。

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(………)
ふと、振り返るミリーシャ。
神妙な面持ちの彼女に、シュラインは立ち止まる。
「ん…?どうしたの。ミリーシャちゃん」
「ううん…何でもない…」
そうは返すものの、違和感が拭えない。
誰かに、尾行られているような気がするのだ。
…気配の消し方が荒い。
おそらく…盗賊か、その辺りの輩だろう。
タタッと駆けて、シュライン・藤二と並ぶミリーシャ。
三人は、これから揃って、お仕事。
マスター直々の依頼で、禁書を入手すべく、洞窟へ向かっている。
何でもない、と言ったものの、ミリーシャの表情は微妙に強張ったまま。
そんな彼女を見て、異変を察知できないわけもなく。
元より、シュラインも藤二も、自分達を尾行ている輩には気づいている。
シュラインは、自慢の耳で足音を察知し、藤二は自慢の五感で察知。
正体不明なままだが、ファンではないことは確かだ。
(ちょっと、面倒なことになりそうだな)
歩きつつ、ほぼ同時に同じことを思う三人。
禁書が眠っているという、異界辺境にある洞窟。
そこは、洞窟というよりも遺跡といった感じで…。
巨大神殿かのような…立派な造りだ。
入口前、シュラインはタシ・エクを出現させると同時に、
懐を漁って、一枚のメモを取り出した。
記されているのは、情報。
事前に、古書に詳しい梨乃から情報を得ていた。
とはいえ、ブツは禁書。故に、大した情報は得られなかったけど。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん…」
「便利だなぁ、そいつら」
梨乃から聞いた情報によると、この中は数え切れないくらいの罠が張られている。
目的の禁書は、最奥、祭壇の上に。
さて、何が飛び出すやら…。
わからないけれど、進まないことには、どうにもならない。
タシ・エクを戦闘に、遺跡内部へと入っていく一行。
眩く光るタシのお陰で、視界は良好だ。
(猛獣使い…?)
タシ・エクを自在に操るシュラインを見つつ、首を傾げたミリーシャ。
ちょっと違うけれど…まぁ、似たようなものかな?

*

任務同行を藤二に御願いしたのはシュライン。
彼を指名したのには、ちゃんとした理由がある。
トラップギミックに詳しそうで…且つ、風圧でそれらを制御できるのではないかと。
海斗や浩太でも、それは可能だろうけれど、
彼等の場合は、大暴れして遺跡を滅茶苦茶にしてしまう可能性が高い。
禁書の入手、それはすなわち禁忌。
悪事に使うわけではないけれど、
一般的には、してはいけないことを私達は実行する。
その為、大暴れされては…後々厄介なことになってしまう。
まぁ、要するに、尻拭いが面倒だということ。
「どう…?」
ゆっくりと歩きつつ、ちらっと藤二を見やって尋ねるシュライン。
藤二は、参ったね、と笑って、ポリポリと頭を掻いた。
既に、ある程度制御はかけているけれど、
どう足掻いても、制御することが出来ないトラップが多数あるという。
藤二の魔力をものともしないトラップ。
それは、仕掛けた者が藤二の魔力をはるかに上回っていることを意味する。
魔力全開で、無理矢理抑えることは出来なくもないけれど、
おそらく制御返しをくらって、早々にリタイアすることになってしまう。
どんなものなのか、それは理解らないけれど、
何とか、掻い潜って最奥を目指すしかなさそうだ。
何が飛び出すやら…と警戒しつつ歩く中。
突然、背後からバサバサと…羽音のようなものが。
振り返れば、そこにはコウモリの群れ。
「きたきた…一発目、だな」
苦笑しつつ、魔銃を抜いた藤二。
シュラインとミリーシャも構え、応戦。
藤二の発砲により、煙となって消えていくコウモリ。
シュラインは、音を操り、コウモリと超音波合戦。
怯んだところを、ミリーシャが容赦なく叩く。
煙となって消えたことで、魔法生物であることが理解る。
まだまだ序の口、大したことはないけれど…先々、面倒だなぁ。
ふぅ、と息を吐き、一行は先へと進む。
その後も、次々と襲い掛かってくるトラップ。
動く石像が追ってきたり、巨大な岩が転がってきたり、
ビュンビュンと、どこからともなく矢が飛んできたり…。
襲い掛かってくる石像は、藤二とミリーシャが魔銃で始末。
転がってくる岩は、あちこちに配置された落とし穴を利用して回避。
飛んでくる矢は、タシ・エクにバッサリと始末してもらい。
音や振動で察知し、シュラインが手早く指示する為、
一行は、襲い掛かってくるトラップをものともせず。
けれど、油断した隙を突くかのように、トラップが襲ってくるため、
警戒を解くことは許されず…ずっと気張ったまま。
分かれ道に差し掛かるたび、蛍光塗料を噴霧して印をつけるシュライン。
ぬかりなく、確実に進んでいる…はず。
なんだけど、さすがに疲れてきた…。
ミリーシャも藤二も、大きな溜息を落とす。
「まだなのか…。さすがにキツいんだけど…」
煙草に火をつけ、苦笑する藤二。
ミリーシャは、魔銃を腰元に収めて同感…とばかりに頷いた。
「多分、もう少しよ。…多分だけどね」
少し前から何となく、妙な鼓動を感知しているの。
落ち着いた、それでいて鋭いような…不思議な鼓動。
きっと、禁書が放っている鼓動だと思うの。
「あっ…あったよ…」
ピッと前方を示して、淡々と言うミリーシャ。
シュラインの言ったとおり、禁書は、すぐ傍にあった。
ようやく辿り着いた最奥。
紫色の祭壇の上に祭られている、黒い禁書。
何というか…まさに禁書。
触れれば、ただでは済まないぞ、というオーラを放っている。
けれど、ここで引き返すなんて出来るはずもない。
仕事はキッチリと片付けなくては。
「じゃ、ササッと持って…帰ろうか」
煙草を踏み消し、一歩踏み出す藤二。
と、そのとき。
ザザッ―
「!」
足音に振り返れば、そこには盗賊が。
一、二、三…四人か。
察知していた鼓動の数と重なることに安心を覚えるシュライン。
極まれに、鼓動だとか息遣いだとか、
そういうものを完全に消せる厄介な者がいる。
けれど、この盗賊たちは…いとも容易く察知できた。
一応、気配を抑えてはいるけれど、どれも荒い。
所詮は盗賊…といったところか。
スッと身構えるミリーシャ。
藤二は、は〜…と面倒まみれの溜息を落とした。
いつでも、かかってきなさい。臨戦体勢の一行。
そんな一行に怯むことなく。
盗賊たちは、本領発揮!とばかりに…盗んだ。
祭壇に祭られていた禁書を、手にとってしまった。
一瞬の隙をつくとは…なかなかのスピードだ。
ザコだと思っていたけれど、そうでもないらしい。
それはそれで面倒だなぁ…と苦笑した藤二。
一行がトラップを掻い潜り進む、その後を尾行ていた盗賊たちは、息切れ一つしていない。
そりゃあ、そうだ。何の苦労もなく便乗したようなものなのだから。
体力的には、ちょっと劣勢か。
でも、この程度の人数なら、一気に畳み掛けてしまえば楽勝…。
シュラインとミリーシャに、藤二が指示を飛ばそうとしたとき。
「何か…変な音……」
「これって…」
二人が、天井を見上げて、小さな声で呟いた。
二人につられるようにして見上げれば…。
パラパラと振ってくる…欠片。
ゴゴゴ…という不気味な音は次第に大きくなり、揺れを伴う。
禁書を祭壇から下ろしたことで、何らかの制御が外れたのだろう。
遺跡は、間違いなく崩れる。
まずい、そう思うと同時に、シュラインとミリーシャは能力を解放。
超音波に怯みフラついたところへ、ミリーシャの飛び蹴りが炸裂。
手放された禁書を手に取り、襲い掛かってくる盗賊には回し蹴り。
小さく細い身体の、どこにそんな力が眠っているのやら。
蹴りを食らった盗賊たちは、地に伏せてピクピクしている。
また、ヒットしたところが酷い。
狙って仕留めたのだろうから、余計に怖い。
下半身に走る激痛と痺れ。盗賊たちは、しばらく動けまい。
崩れていく遺跡から、逃走を試みる一行。
モタモタしている暇はない。
シュラインがつけた印に従い、来た道を全速力で引き返す。

*

「ふぉっふぉっ。見事じゃな」
禁書を受け取り、満足気に微笑むマスター。
マスターの前で一列に並ぶ三人は、ボロボロだ。
埃まみれ、服は所々が破けて、髪もボサボサ。
さすがに疲れた…ゆっくりと風呂にでも使って、のんびりしよう。
その後は、レストランで美味しいスイーツでも。
体力回復を計ろうと、一礼し、マスタールームを去ろうとした一行。
だが、顔を上げた瞬間、目を疑うような光景が飛び込んでくる。
ポンッと消えて…一輪の花と化した禁書…。
花を手に取り、マスターは不敵な笑みを浮かべた。
…あぁ、なるほど。要するに、アレだ。
腕試しされていた…そういうことだ。
秘術が書かれた禁書なんて、存在していなかった。
あの遺跡も、マスターが魔法で構成したもの。
トラップ制御が出来なかったのも…頷ける。
「さすがじゃな」
一輪の花を差し出し、ふぉっふぉっと笑うマスター。
三人は顔を見合わせ、はぁ…と溜息を落として、同時にプッと吹きだした。
ボロボロな互いの姿と、まんまとハメられた事実が可笑しくて。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.11 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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