■INNOCENCE / IO2共同任務2 (限定受注)■
藤森イズノ |
【7440】【月宮・香織】【お手伝い(草間興信所贔屓)】 |
IO2との共同任務、野犬討伐。
共同任務なだけに、報酬は高額だ。
たかが野犬と侮るなかれ。
奴等は魔物に魅入られた愚かな獣。
併せて、その"数"にも注意せねばならないだろう。
「よっしゃー。行きますかー!」
「…大声出さないでよ」
気合十分な海斗に呆れて警告を飛ばす梨乃。
二人の変わらぬ遣り取りに、ディテクターは煙草を踏み消して苦笑した。
薄暗い山の中…野犬討伐、開始。
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INNOCENCE // IO2共同任務2
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OPENING
IO2との共同任務、野犬討伐。
共同任務なだけに、報酬は高額だ。
たかが野犬と侮るなかれ。
奴等は魔物に魅入られた愚かな獣。
併せて、その"数"にも注意せねばならないだろう。
「よっしゃー。行きますかー!」
「…大声出さないでよ」
気合十分な海斗に呆れて警告を飛ばす梨乃。
二人の変わらぬ遣り取りに、ディテクターは煙草を踏み消して苦笑した。
薄暗い山の中…野犬討伐、開始。
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ピピッ―
「っだー!またかよ!しつこいぞ、ミグっ!」
懐から携帯を取り出し、苦笑する海斗。
取り出した携帯、ディスプレイには、ただ一言。
五月蝿い―
そう表示されていた。
人語を理解できるが喋れないミグにとって、
メールは唯一の意思疎通手段で、便利なものだ。
山に入ってからずっと、わけのわからない歌を歌っている海斗に、
ミグは、こうして何度も忠告している。
今ので、十五回目……かな?
「チャッキョにしてやろーかしら」
ケラケラ笑う海斗に、ミグは尋ねる。
ピピッ―
チャッキョとは何だ?−
「着信拒否だよ。っつか、いちいちメールしてくんなやー!」
ピピッ―
なるほどな―
「うぜー!」
まぁ、楽しそうで何よりなのだが。
仕事中だということを、理解しているのだろうか。
まったくもう…と溜息を落とす梨乃。
その少し後ろで、ディテクターは、お疲れさんと労いの言葉を掛けた。
ディテクターの隣には、香織がいる。
遠慮がちに、ちょこちょこと彼の後を追うような足取りで。
個性豊かなメンバー。総勢五名。
彼等は、今まさに任務の途中。
イノセンスとIO2の共同任務。
内容は、野犬の討伐という、至ってシンプルなもの。
とはいえ、相手となる野犬は群れを成して襲ってくる。
故に油断は禁物。
魔物が憑依して凶暴化していることもあり、
一斉に不意打ちされては、かなり危うい。
だからこそミグは海斗に忠告・警告を飛ばす。
出来うる限り、慎重に行動するべき。
自ら存在をアピールするなんて、言語道断なのだ。
だが何度言っても、海斗は止めない。
そもそも、何なんだ、その歌は。
「ヘルガイトって……何ですかね」
ミグの疑問と同じことを、香織がポツリと呟いた。
ディテクターは苦笑しつつ、適当な説明をする。
「戦隊モノだよ。かなり昔のな。マニアックだな、あいつ」
「戦隊……って、合体とかするやつですか?」
「あはは。そういうのばっかりじゃないけどな」
任務中とは思えない、何とも和やかな雰囲気。
大丈夫かな……と不安を人一倍覚えている梨乃。
ミグは、不安というよりは、呆れ返っている御様子だ。
油断禁物。
山に入る前、散々言って聞かせたのに、どうしようもない。
好き勝手に自由奔放に動き回る海斗。
木の枝を振り回したり、変な虫がいる!と騒いでみたり。
嫌な予感。
それは、全員が感じていた。
山に入って早々……いや、山に入る前から。
海斗が同行すると聞いた瞬間から。
結果として、その嫌な予感は見事に的中する。
しかも、今時そんな御約束な展開……?と苦笑してしまう形で。
「……うそーん」
苦笑しつつ、ゆっくりと振り返る海斗。
彼の足元で、不愉快そうに揺れる尻尾を確認した一行は、
すぐさま事態を把握し、一斉に溜息を落とした。
それと同時に、誰が合図するわけでもなく、全力でダッシュ。
ピピッ―
この馬鹿―
「うっせー!事故だ、事故!」
尻尾を爽快に踏んづけられた不憫な野犬は、
当然、ガウガウと激しく叫びながら牙を向いて追ってくる。
その声に応じるかのように、次々と湧いてくる野犬。
振り返れば、真っ黒な波が……。
追ってくる野犬もいれば、前方から迫ってくる野犬もいるわけで。
すっかり事態は、てんやわんや。
四方八方から襲い掛かってくる野犬は、聞いていた以上に、数が多い。
このままでは、埒が明かない。
むしろ、こっちが不利になる。
前方から飛び掛ってくる野犬を始末しつつ、全員が同じことを思っていた。
その中で二人、この状況を打破しようと身を挺する者が。
ピピッ―
少し、時間を稼げ―
「稼げったって……おま……この数じゃー……」
どうしろってんだ、という表情で見やれば、
ミグはニヤリと不敵な笑み(を浮かべているように見えた)。
何か、作戦があるのだろう。
それは、すぐに理解できた。
けれど、どうやって時間を稼ぐべきか。
広範囲魔法でも使ってみる? でも、山ン中で火はマズイでしょ。
あ、梨乃の水ならイケるかも?
全力疾走しつつ、脳みそフル回転。
梨乃に、提案というか、御願いを飛ばそうとした海斗。
そこへ、意味深な言葉が聞こえてきた。
「あの……ディテクター…さん。武彦、さん……迷惑、かけたら……ごめんなさい」
「んっ?何だ、急に。どした?」
「図々しいかもですけど……嫌いに、ならないで下さい」
「香織?」
神妙な面持ちで呟き、ピタリと足を止めた香織。
香織の吐いた言葉は、何とも意味深で、少し恐ろしいものだった。
一行も、すぐに慌てて立ち止まったが、声を掛ける余裕はなかった。
すべては一瞬、一瞬の出来事。
ぼんやりと香織の身体に紫色の灯りが灯った、その直後。
牙を向いて襲い掛かってくる野犬が、すべて石と化した。
呆気に取られていたのは、海斗と梨乃とディテクター。
ミグは、すぐさま事態を把握し、始末をかける。
呼び寄せた怨霊をミサイルに変え、一斉射撃。
不気味な声を上げるそれは、石と化した野犬を、粉々に吹き飛ばした。
辺りに飛び交う、野犬の残骸。
ふわりと舞う冷たい風と、鼻をくすぐる緑葉の香り。
ミグの身体を覆う銀色の毛が、しなやかに揺れる。
同時に、香織は、その場に膝をついた。
呆気にとられていた海斗たち。
一番に我に帰って動き出したのはディテクター。
「香織!」
すぐさま香織に駆け寄り、彼女の肩を揺らす。
焦点の定まらぬ香織の瞳には、不気味なものが映っていた。
それは、悪魔の姿。メデューサと呼ばれ伝承されている、その姿。
影のように香織の瞳に映っていた、その不気味な存在は、やがてフッと消え。
いつもの、愛らしい瞳に戻った……かのように思えた。
「大丈夫か……?」
小さな声で尋ねたディテクターに、香織は微笑みを返す。
だが、見やっている方向が妙だ。
その視線の先に、ディテクターはいない。
「香織さん……?」
恐る恐る声を放つ梨乃。
ピピッ―
ハイリスクな憑依…だな―
ミグの言葉に、息を飲む海斗と梨乃。
不安を抱く一行、重い空気。
それを払うかのように、香織は淡く微笑んだ。
少しだけ、目が見えなくなるだけ。
けれど、失明の可能性はゼロじゃない。
だからこそ、伝えた。不安だったから伝えた。
もしかしたら、あなたの笑顔を見ることが出来なくなるかもしれない。
そう思って、怖くて、嫌いにならないで。なんて……重い言葉を。
*
山を下り、依頼人の元へ任務完了の報告へ向かう。
その道中、一行に笑顔は微塵もなかった。
もしかして……そうは思うものの、口に出来ない。
海斗に至っては、俺の所為で……と自責の念に苛まれ。
気まずく、重苦しい雰囲気の中。
ミグの背中で揺れる香織が、ツンとミグの髭を引っ張った。
振り返れば、香織はニコリと、柔らかな笑みを浮かべている。
その表情に、すべてを把握したミグは苦笑しながら海斗にメールを送った。
ピピッ―
俺の髭は、何本だ?―
届いた、突拍子もないメールに顔を顰める海斗。
こんなときに、何くだらないこと言ってんだ?
そう叱ろうと、バッと振り返った瞬間。
「七本です」
クスリと微笑み、小さな声で香織が言った。
「………」
立ち止まり、顔を見合わせる海斗と梨乃とディテクター。
三人はミグに駆け寄り、目の前でしゃがんで、ジッと見つめた。
ミグの鼻付近。一、二、三…………。
確認できた髭は、確かに七本。
「ちょっと、少ないですね」
ピピッ―
戦で、持って行かれてな(笑)―
携帯に届くメールと、香織の台詞。
成立している会話から、把握できる視力の回復。
ホッとすると同時に、叫ぶ海斗。
「カッコワライ。とか、ふざけんなっ!」
ピピッ―
(笑)―
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / ♂ / 5歳 / 元・動物型霊鬼兵
7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
シナリオ参加、ありがとうございます。
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2008.06.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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